ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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なんか思いの外ベルリン奪還後の話が長引いてて自分でも驚いてます。


虚報

ベルリンのウィッチ隊司令部からその命令が届いたのはラルが帰還する2日前のことだった。

 

「そんな命令承諾できません!」

 

『悪いなサーシャ、もう決まった事なんだ。これにはラルの奴も同意してる。次の作戦に向けて、私にはサーニャが必要だ』

 

ベルリンのエイラから502宛てに直接通信がなされ下された命令はサーニャの配置転換だった。

 

「ウチはナイトウィッチがサーニャさん以外いないんですよ!なのにサーニャさんを引き抜かれたら夜間哨戒はどうするんですか!」

 

珍しく声を荒げるサーシャに通信先のエイラは苦笑いを浮かべながら答えた。

 

『そうは言ってももう決まった事なんだ。夜間哨戒に関してはラルの奴がなんとかしてくれるはずだぞ』

 

「そんな……あの業突く張りな隊長が簡単にサーニャさんを手放すなんてあり得ません!!」

 

『業突く張りってお前……仮にも自分の隊長だろ?』

 

「だからこそです。あの人の手の内は知り尽くしています。貴女にサーニャさんを返すと口だけで行動に起こさない可能性の方が高いに決まっています。と言うかそうしない方が不自然です」

 

彼女の手癖の悪さはエイラもサーシャもよく知るところだ。そんな彼女があっさりと手放すはずがないというサーシャの主張にエイラは同意の言葉を口にすると言った。

 

『ラルの奴を説得するのは随分苦労したよ』

 

「本当、よく隊長を説得できましたね」

 

自分の隊長の往生際の悪さと出癖の悪さを思い起こしてサーシャは感嘆した様に息を漏らした。

 

『根気よく説得してなんとか了承してもらったんだ。流石に次の作戦のことを持ち出したらアイツも反論できてなかったよ』

 

「……うちの隊長がその程度で本当に納得しますか?」

 

あの隊長が無償で隊員を引き渡すだろうかと疑問に感じたサーシャは尋ねた。

 

『……ちょっと電波が悪いみたいだ、よく聞こえない』

 

「ですからうちの隊長が次の作戦に必要だと言うくらいで納得しますか?」

 

『あー、全然聞こえない。仕方ないからもう切るぞ』

 

そう言ったきりエイラとの通信は途絶えた。

 

「……逃げられましたね」

 

きな臭いところはあるが命令自体は正式なもの、仕方なくサーシャはサーニャを呼び出しすぐにベルリンに向かう準備をするように指示を出した。手際のいいことにエイラはサーニャがベルリンに向かうための飛行機まで手配していて翌日にはサーニャはリバウを立った。

それはラルがベルリンから帰還する日でもありちょうど入れ替わりになる形で2人は飛びだったことになる。

 

「サーシャ、私がいない間何か問題はなかったか?」

 

「特に大きな問題はありませんでした。ただ昼間の事務作業があまりにも多かったのでサーニャさんを夜間哨戒から外して昼間事務作業を手伝ってもらいました」

 

「……そんなにキツかったか?」

 

「いえ、量自体は問題ではありませんでしたけどあまりにもニパさんがストライカーを壊すものですから……」

 

結局ニパはこの1週間で4機のストライカーユニットを大破させた。サーシャの想定ではもう1機くらい大破させると思っていたため予想よりも少ない被害に内心胸を撫で下ろしていた。

 

「そうか。しかしリトヴャクを夜間哨戒から外したなら誰が夜間哨戒をしていたんだ?」

 

「レーダーを中心に哨戒網を敷きネウロイが現れた時は菅野さんとひかりさんで対処しました」

 

菅野たちが出撃したのはたった一度だけだったが普段誰かを指揮して飛ぶ事をしない菅野は夜間ということもあり疲れ切った様子でその日の夜勤を終えていた。

 

「そうか。リトヴャクの奴はどうだ。うまく事務仕事をできていたか?」

 

「はい、流石はエイラさんですね。あれなら大抵の部隊なら指揮官としてやっていけると思います」

 

「それはいい。ウチはそう言う仕事が苦手な奴が多いから今後はリトヴャクも使えるとなれば私の仕事が楽になる」

 

ラルの言葉にサーシャは不思議そうな表情を浮かべた。

 

「サーニャさんはベルリンに帰還しましたけど……」

 

「……なに?どう言うことだ」

 

「次の作戦にサーニャさんが必要だと泣きついたエイラさんに泣きつかれて返したと聞きましたが……」

 

「それは事実だ。だが返すのは今ではない」

 

その言葉にサーシャは自分がエイラに騙された事を、自分が感じていたきな臭さが正しかった事にようやく気がついた。

 

「奴との約束では作戦が実行される直前にリトヴャクを奴の手元に戻しその後は新たな人員補充について話し合うはずだった」

 

「なら返すのが少し早くなっただけですね」

 

思ったよりも自分の失態が小さなことにサーシャは安心した様にそう言った。

 

「返すつもりはなかったんだがな……」

 

未練がましくラルは呟いた。

 

「今度の作戦、501、502、504、506がネウロイ戦力地域に空挺降下すると言うものだった」

 

「空挺降下ですか。501がベルリンでやったと言うアレですか?」

 

サーシャの問いかけにラルは頷くと言葉を続けた。

 

「ユーティライネンが506を直卒して司令部の予備戦力とする予定だったがそれをうまく運用するためにナイト・ウィッチのリトヴャクが必要だ主張した。だが作戦を聞けば聞くほど506のヴィトゲンシュタインでも事足りるように思えてきてな、返すつもりがなくなった」

 

当初506のA部隊の隊長であるヴィトゲンシュタインをエイラの元で通信担当として使う事は予備戦力である506の力を著しく損なうと言われていた。しかし予備として派遣する部隊がA、Bと言った部隊単位ではなくロッテ単位で派遣になる可能性にラルは気がついた。

しかしそれを会議の場で言うとまたもや不毛な言い争うに発展する事を予期したラルはサーニャを作戦実行前にエイラの元に返さないことに決めていた。

 

「ですが作戦後に補充に関して話し合うですよね?」

 

サーシャの言葉をラルは鼻で笑った。

 

「それもどこまで本気にしていいものかわからんがな」

 

「約束を破られると思ってるんですか?」

 

「約束ならとうに破られている。リトヴャクを返すのは作戦前のはずだったんだからな」

 

自分が約束を破ろうとしていた事は棚に上げてラルは言った。

 

「きっと作戦の事後処理が忙しいとか適当な理由をつけて話し合いを回避してくるだろう。と言うか確実にしてくる。だからリトヴャクは返したくなかったんだ」

 

そう言ってラルはため息を吐いた。

 

「隊長じゃないんですからそんな卑怯な手を使うわけないじゃないですか」

 

「……お前の私に対する印象について膝を突き合わせて問いただしたいところではあるが今回はそれは置いておこう。

ユーティライネンも大概、いや私以上にそう言ったことには精通しているぞ」

 

「そんなわけないじゃないですか。いくら世界広しと言っても人を騙すことに関しては隊長以上のウィッチはいませんよ」

 

褒めているのか貶しているのか、判断に迷うところではあるが今回は褒められているとラルは受け取ることにした。

 

「ならその部下として少しでも私の技術を学んでもらいたいものだ。そうすれば今回の様にユーティライネンに騙されることもなかっただろうからな」

 

「え、それは嫌ですよ。隊長みたいに方々から恨みを買いたくないですし」

 

サーシャの言葉にラルは面白そうに笑みを浮かべた。

 

「それにエイラさんの事です。きっと隊長の悪巧みを看破して先手を打ったんだと思いますよ」

 

何故か隊長である自分よりもエイラの方が信用している様子のサーシャにラルは憮然とした顔を向けるのだった。




次回あたりからワルシャワ奪還に向けて進めたいなぁ
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