リベリオンの先走りは思わぬ効果を呼んだ。
ベルリン奪還から続くリベリオンのカールスラント軽視とも取れる行動は大国カールスラントのプライドを大きく傷付けた。
このまま引き下がるのは大国のプライドが許さない。カールスラント本土が奪還された事でリベリオンに対する遠慮と言うものが消え失せたカールスラント政府はいささか強硬な手段に打って出た。
まず手始めにカールスラントに駐留するリベリオン軍航空ウィッチに対してカールスラント領空の飛行禁止令を出すと本土に戻ってきていたウィッチ隊ほぼ全軍を用いてシュトゥルムティーガーの上空援護を行うと瞬く間に5つのネウロイの巣を破壊しリベリオン軍に対して撤兵を要求した。
もちろん、本気でリベリオンに撤兵をしてほしかったわけではなくあくまでもポーズであったがカールスラントの怒りを示すにはそれで十分だった。
アイゼンハワー元帥はこの事件の原因となった司令官を解任するとその足でカールスラント軍参謀本部に向かい直接謝罪の意を伝えた。そして同時に作戦の前倒しを提案。カールスラント軍のウィッチ隊の直掩で大規模攻勢を行い、結果事件の2日後には10のネウロイの巣を破壊しさらに翌日に2つの巣を破壊。4日で全ての作戦目標を破壊する事に成功した。
同時に統合戦闘航空団の任務を終わりを迎え、隊長達は前線司令部の会議室に集まっていた。
「なんと言うか……」
エイラが初めに口を開いたがその先を言うのを躊躇っているとミーナ大佐が後を引き継いだ。
「ナイト・ウィッチどうこうで騒いでいた私達が馬鹿みたいね」
「まったくだ。まさか本国がこれほどまでの戦力を投入できるとはな。
もっとも、そのおかげでこんなにも早く目標を達成できたわけだしきっかけを作ったリベリオンには感謝すべきかもしれないな。
ラルの言葉にプレディ大佐が居心地悪そうに身じろいだ。
「けどこの後が大変かもな」
「何が大変なの?」
「結局のところリベリオンにとってネウロイとの戦いは対岸の火事に過ぎないだろ?
これ幸いとリベリオンの派遣反対派が動き出せばガリアみたいに非協力的になる可能性は否定できないぞ。そこのところどうなんだプレディ大佐」
エイラの問いかけに考えるそぶりを見せた後プレディ大佐は言葉を発すした。
「少数ですが議会に派遣反対派がいる事は確かです。ガリア奪還前はそれほどでしたけどここ最近、ネウロイとの戦いに終わりが見え始めて市井にもその考えが波及しつつあるようです」
ガリア失陥後は軍事大国であったカールスラントやオラーシャからの軍備の輸入が止まりその代替国となったのがリベリオンだった。それから暫く世界最大の武器輸出国として散々に儲けていだが最近はカールスラントが息を吹き返しそれも少しづつ縮小しつつあった。
そのため所謂特需と言うものがなくなりつつある今リベリオン国民の間でそろそろ派遣を辞める、あるいは縮小してもいいのではないかと言う考えが浸透しつつあった。
「まさかと思うけど本当にリベリオン軍が撤退するとかないよな?」
「それは私にはわかりかねます」
今の所リベリオン軍には撤退の意思はないが世論が動けば話は別、撤退もあり得た。
「カールスラント本土が復活したと言っても軍備は完全に整えられていません。それはどの国も承知していますし流石に撤退はないんじゃないですか?」
ドッリオ中佐が懐疑的な意見を述べると会議室の視線がエイラに集まった。
「リベリオンは国民主権だからな。国民が否と言えば逆らえる奴はいないだろ」
「だが少なくともアイゼンハワー元帥に撤退の意思はないのだろう?」
「その意思があればカールスラントに頭を下げたりしないだろうな」
ラルの言葉にエイラは頷いて同意すると会議室の緊張が緩まった。
「それににしても科学の発展とは恐ろしいものね。ほんの数年前にはネウロイにいいようにしてやられていたのにいつの間にかそれに対抗する兵器ができウィッチは過去の遺物へと追いやられる。ガリアを解放した時にはこんな事になるなんて思いもしていなかったわ」
「私達ウィッチが必要なくなるのもそう遠くない未来かもしれないな」
ミーナ大佐の言葉にラルが同意した。
「ワルシャワにあるネウロイの巣の破壊には統合戦闘航空団が直掩として使われるしまだまだ暫くは現役だろうな」
「ワルシャワを奪還する作戦はもうできていたのか?」
「そりゃそうだろ。あくまでも今までの戦いはワルシャワ奪還のための前哨戦、これからが本番だ」
今回の作戦はあくまでもワルシャワへの道を切り開くためのものだがそれが目的ではない。目的はワルシャワの巣の破壊であり今回の作戦はあくまでもそのための準備に過ぎない。
破壊すべきネウロイの巣はオラーシャ領にもバルカン半島にもまだまだ沢山ある。
「投入される部隊はどこの部隊なの?」
「501と502になる予定だな」
「504と506はどうなるんだ?
ここにいるんだしせっかくだ、参加させてやればいいじゃないか」
ミーナ大佐の質問にエイラが答えるとラルが質問した。
「504はバルカン半島方面に再展開。506は奪還した地域の防衛と残敵討伐だな」
「美味しいところを私達が持っていく事になるのか。申し訳なくなるな」
表情一つ変えずに呟くラルにエイラは疑うような視線を向けた。
「そう思うならもっと申し訳なさそうな顔しろよ」
「善処しよう」
おそらくその態度が変わる事はないのだろうなと思いながらもその方がラルらしいと納得した。
「グンドュラじゃないけど本当にいいのかしら。これじゃ501と502に功績が偏りすぎないかしら」
501と502はそれぞれ3つの巣を破壊しているがそれ以外の部隊は最大で一つ。ミーナ大佐の言う通りこのままだとあまりにも功績に差がですきた。
「別にいいだろ。こう言ったらなんだけど最初に作られた501と502、それと503は明らかに他の部隊と比べたら実績も実力も世界トップクラスのウィッチが複数在籍している。少しでも作戦の成功確率を上げるならこの3つのどれかを使うだろ」
この3つの部隊は撃墜数3桁が複数人在籍していて他の部隊とは一線を画する。作戦に使うのならこの部隊から使いたいと思うのも仕方がなかった。
「けど今回はウィッチじゃなくて対ネウロイ用の兵器を中心に攻略を進める作戦だしわたしたちの出番はないぞ」
「そう言ってコアを破壊したのがベルリン奪還だったと思うのだけど違ったかしら?」
「記憶にないなぁ」
司令部はベルリン奪還作戦の頃からウィッチを重視した方針から科学の力を用いてネウロイに対抗する方向へとシフトしようとしていた。
しかしそれは失敗し、結局一番美味しい所を持っていったのは501だった。
「しかし今度も複数の部隊での作戦か。またユーティライネンが指揮を取るのか?」
「その予定だな」
「そうか。しかしないのならリトヴャクを返してもらおうと思っていたのだが……」
「グンドュラ、その話はまた今度にしましょう。話がややこしくなるわ」
意外な事にミーナ大佐がラルを諌めた。
「勿論だとも。私も前回はあまりにこの話に拘りすぎたと反省している」
何か企んでいるのではないかと思わないでもなかったがその話をしないでもらえて助かったのも事実でありエイラは話を続けた。
「て事で504、506とはここで一旦お別れだな」
「また機会があればご一緒したいです」
ドッリオ中佐がそう言うとプレディ大佐もそれに同意した。
「ユーティライネン将軍の指揮下で戦って改めて自分の未熟さに気がつきました。今度会った時は部隊の指揮や作戦の立て方について教えて貰いたいです」
そう言って2人は会議室を去っていった。
濃厚なエイラーニャの話を読みたい。誰か書いてくれないかなぁ。