ワルシャワ奪還作戦はネウロイとの戦いが始まって以来初めてウィッチが完全な脇役になった戦いだった。
その前哨戦でもウィッチの活躍はワルシャワ方面からのネウロイを押し留めると言う限定的なものだったが今回はそれ以上であった。あくまでも対ネウロイ用気化爆弾を筆頭としたネウロイ対策の兵器が主力でありウィッチはそのサポートに留まりウィッチがしたことと言えばせいぜい制空権を取るくらいのものであった。
この戦いに参加したウィッチ、特に統合戦闘航空団所属のウィッチはこれまでと違った簡単な任務に拍子抜けした。
「いよいよウィッチの時代も終わりが始まるのかもしれないわね」
それはワルシャワ奪還後、隊長達が集まった時にミーナ大佐が言った言葉だった。
「終わりって言うならこの間の作戦からその兆候はあっただろ」
「そうだけどまさかこんなにも早いと思っていなかったのよ」
「私もモスクワ奪還くらいまではウィッチが主役のままネウロイ対策の兵器に遅れなどとることはないと思っていたな」
「前々から思ってたけどお前らって戦うの好きすぎないか?」
ラルがミーナ大佐に同意するのを見てエイラは呆れた様に言った。
「あら、貴女に言われるなんて心外だわ」
「わたしはストライカーで飛ぶのが好きなだけでネウロイと戦うのは好きじゃないぞ」
「ユーティライネン、一度胸に手を当てて考えてみろ」
ラルがエイラに胡乱げな視線を向けた。
「アンナを除くすべてのネウロイの巣の破壊に携わったウィッチがネウロイと戦うのが好きでないはずがないだろう」
「わたしが好きで参加してると思うのか?」
「エイラさんががどう思っているかではないわ。客観的に見てどう見られるかよ」
軍のシステムをよく知るものなら自分が好きな戦線に好きな時に行けるわけではないと理解しているがそうでないものにとってはエイラが好き好んでネウロイとの戦いに赴いている様に見える。さらに言えば作戦に参加するたびに大幅に撃墜スコアを伸ばしている事がそれに拍車をかけていた。
「お前達ならわたしがどんな奴かくらいわかってるだろ」
「勿論だ。ネウロイを撃ち落とすのが大好きな極一般的なウィッチだろう?」
「そうね。エーリカやトゥルーデに追い付こうと毎回必死に撃墜数稼いでいるわね」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながらラルが言うとミーナ大佐もそれに追従した。
「ミーナ大佐って年々ラルに似てきてるよな」
「ちょっとそれどう言う意味よ!」
「自分の胸に手を当てて考えてみればいいんじゃないか?」
「……いつも思っていたんだが私の名前を悪口にするのは何故なんだ?」
「グンドュラは自分の胸に手を当てて考えてみなさい」
もしこの場を見ているものがいれば大量のブーメランが飛び交う会話に呆れて声も出ないだろうが不幸な事にここにはエイラ達3人しかいない。
「さっぱり心当たりがないな」
エイラとミーナ大佐に睨みつけられる中ラルは肩をすくめた。
「そんな事よりユーティライネン、次の作戦について聞きたい」
「……なんだ?」
話を逸らされた感じがするが真剣な様子のラルに内容を尋ねた。
「流石に次の作戦もこうだと部隊の士気が維持できない」
「そんなに酷いのか?」
「菅野は露骨に訓練に身が入っていないし他のメンバーも気の抜けた空気の奴が多い。例外はサーシャとニパくらいか」
サーシャは自国の奪還という最大の目的の達成が間近だから当然としてニパはいまだにスオムスがカールスラントほど安全になっていない影響から辛うじて士気を保てていた。しかしそれはラルの実力ではなく個人の事情からであり部隊の士気は最低にまで落ちていると言って良かった。
「ミーナ大佐はどうだ?」
「ダメね。士気を保てているのはエーリカとルッキーニさんかしら」
「バルクホルンはダメなのか?」
「ダメね。ベルリン奪還以来日に日に覇気が無くなっていっているわ」
501の中でも特に真面目なバルクホルンがダメなら他のメンバーの士気が保てないのも無理かなる事だとエイラは思った。
「バルクホルンがダメなのにハルトマンとルッキーニはよく士気を保てているな」
ラルが感心した様に呟くとミーナ大佐は首を横に振った。
「2人とも元々やる気がある方では無いから士気が保っていると言うより下がりようがないだけね」
ミーナ大佐の言葉にエイラは納得した様に声を上げた。
「そういやそうだな。2人とも普段の訓練でさえ気分次第で適当に済ませる事もあるし」
「是非ともオラーシャ奪還には我々ウィッチの力をメインに進めてもらいたい」
力説するラルにエイラは困った様に頭を掻いた。
「そうは言われてもなぁ。わたしとしてはウィッチの犠牲が少ない作戦は大歓迎だし積極的にウィッチを使う気はないんだよな」
ウィッチ全体で見ても最古参の部類に入るエイラはウィッチの犠牲の多さも怪我をして引退したウィッチの苦しみもよく知っていた。
ウィッチよりも効果的かつ効率的にネウロイを倒す術があるならそれでいいと考えていた。
「結局のところ対ネウロイ用気化爆弾も魔導徹甲弾も数が少ない上にどちらも機動運用にはそれほど向いていないわ。局所的な戦闘に使うならウィッチの方が優れているし士気の維持は急務じゃないかしら」
対ネウロイ用気化爆弾は単独の敵に使うにはコストパフォーマンスが悪く魔導徹甲弾は長期間の保存は難しいと言う欠点があった。
またどちらもウィッチほどの機動力はなく普段の防衛についてはウィッチが主力となる事は疑い用がなくその主戦力たる統合戦闘航空団の士気の低下は避けねばならない事だった。
「お菓子とか嗜好品の増加でなんとかならないか?」
「それはただの前提条件にすぎん。根本の原因がワルシャワ奪還に際してウィッチの必要性低下により部下達のモチベーションが下がった事が士気の低下につながっている。それを戻すなら必要なのは作戦参加、それも主力としての参加の確約だろう」
「最近のお前達の部隊の様子は知らないしそれは事実なんだろうけど……」
「なにか問題でもあるのか?」
「ラルがそれを言うとどうしても嘘っぽく聞こえるんだよな」
疑う様な視線を向けられ憮然とした表情を浮かべるラルにミーナ大佐が助け舟を出した。
「グンドュラの言っていることは事実よ。ワルシャワ奪還の時も部隊内の通信で結構愚痴が出ていたのよ」
ワルシャワ奪還の際エイラは殆どの時間を地上からの指揮に徹していた。
ワルシャワの巣破壊直前は空で指揮をとったがその時はネウロイの攻撃が激しく雑談をしている時間もなく部隊内の通信のことを知らなかった。
「ミーナ大佐が言うならそうなんだろうな」
エイラの言葉にラルが不服そうな視線を向けたがそれを無視してエイラは続けた。
「ウィッチの被害を抑えるのも大事だけどその為には統合戦闘航空団の士気が高いに越した事はないな」
「オラーシャ奪還には我々を使ってもらえると言うことか?」
「確約は無理だけどな」
「今はそれでいい」
「そうね、これで暫くは士気を保てるわ」
エイラの想定以上に士気の低下は深刻だった様で安心した様に息を吐いた。
「じゃあ嗜好品の増加は無しでいいな」
さらりと面倒な仕事を回避しようとしたがそれは許されなかった。
「クルピンスキーとエディータがキャビアにあうガリア産のワインを欲しがっていた。よろしく頼む」
「宮藤さんとリーナさんがお茶にあうお菓子を欲しがっていたわ」
余計な事を言うんじゃなかった項垂れながらもエイラはそれを了承するのだった。
対ネウロイ用気化爆弾とか出てきた時点でウィッチの時代は終わりつつある。って事でワルシャワ奪還はダイジェストでお送りしました。
オラーシャは割とちゃんと書く予定です。