オラーシャ解放はこれまでのガリア、カールスラントとやること自体はそう大きく変わらないが国土の関係でその規模はこれまでで最大のものとなる。そのため用意する物資も桁違いであった。
「それにしても参加ウィッチが統合戦闘航空団だけで50人を超えるなんて思わなかったなぁ」
「オラーシャはカールスラントよりも広いもの。作戦だって大規模なものになるわ」
「そうなんだけどまさかバルカン方面の504部隊以外全部の部隊が参加する事になるなんて思わないだろ」
現在501、506がオラーシャ東部を担当し502、507がオラーシャ北部、503と505がそれぞれオラーシャ西部と南西部を担当している。
「まさか海上での任務がメインの508まで持ち出すことになるなんてな」
アフリカ北部はいまだにネウロイ占領下にありその関係で地中海西部の航行はやや危険を伴うが空母を拠点とする508にここを突破させ黒海方面からもオラーシャ奪還のための部隊を編成、東西南北全てからオラーシャ奪還の為の部隊を侵攻させるのが今回のオラーシャ奪還作戦となっていた。
「これに加えて他の航空ウィッチが数百人規模、陸戦ウィッチが数千人規模で投入予定。大盤振る舞いだな」
「オラーシャが奪還できれば後はバルカン半島とアフリカ方面だけ、ヨーロッパの安全は取り返したも同然になるもの。みんなやる気も出るわよ」
「バルカン半島もアフリカもそれほど大きな巣は確認されてないしもしかしたらオラーシャを奪還したら連合軍は規模を縮小するかもしれないな」
バルカン半島もアフリカもオラーシャやカールスラントと比べたら格段に楽な戦場になる。アフリカは強力なネウロイが多く苦戦しているがその最大の理由は戦力の欠如でありヨーロッパの戦線が片付き有力な部隊を送り出せる様になればさほど時間をかけずに奪還できると多くの関係者は考えていた。
「そうなったら統合戦闘航空団も数を減らすのかしら?」
「むしろ置いといて他の部隊を減らすんじゃないか。少ない数で大きな戦果を上げられるんだから置いとくほうが間違いなく得だろ」
「たしかにそうね。じゃあわたしたちもオラーシャが奪還されればバルカン半島やアフリカに行くことになるのかしら」
サーニャの言葉にエイラは顎に手を当て考える様子を見せた。
「……オラーシャウィッチに関しては希望するなら奪還後の残敵掃討のためにオラーシャに残してもいいかもしれないな」
オラーシャ解放後連合軍が縮小されるなら凡そ五年ぶりに解放された故郷の地で少しばかりの休息を与えるのも良いのではないかとエイラは思った。
「サーシャさんきっと喜ぶわ」
「サーニャもしばらくオラーシャにいてもいいんだぞ」
「わたしは別にいいわ」
「なんでだよ。この機会にサーニャの両親を探しに行ってもいいんだぞ」
サーニャの予想外の答えにエイラは訝しげな表情を浮かべた。
「いいの。お父さまもお母さまもあの日生きている事がわかったしわたしだけ勝手な事をするわけにはいかないわ」
「サーニャがそういうならいいけど……」
「それにまだオラーシャが奪還されたわけじゃないんだし今こんな話をしてもしょうがないわ」
オラーシャ奪還作戦はほぼ立案が終わっているがその実行は約一ヶ月後。解放されるとなればそこから数ヶ月かかる。まだ終わってもいない事を終わったと仮定して話すことの不毛さにサーニャに指摘されてエイラはようや気付いた。
「そらもそうだな。今はこの面倒な書類の山を片付ける事が先だな」
ため息混じりに向ける視線の先には連合軍ウィッチ隊に関する書類が山の様に積まれていた。
これまででも最大の作戦となるオラーシャ奪還作戦。当然ウィッチ隊の司令官たるエイラの忙しさもからまでの比ではない。補給や部隊の移動、それに関わる人や物の手配と仕事は多岐に渡った。
「これが最後になるならわたしも前線に出ようかな」
「エイラが自分から戦おうとするなんて珍しいわね」
「この間の会議の後、マンネルヘイム元帥にどうせなら撃墜スコアを300にしたどうだって言われたんだよ」
もちろんこれは命令ではない。しかし直属の上司とも言えるマンネルヘイム元帥からの言葉でありこれを達成しないという選択肢はエイラの中に存在していなかった。
「人類で三人目の撃墜数300越えを目指すの?」
現在撃墜スコアトップはハルトマン、そして二番目がバルクホルンと続いている。どちらも撃墜数は300に達していて今後さらにその数を伸ばすと考えられている。特にハルトマンに関してはまだまだ上がりを迎えるまで時間がある為さらに撃墜スコアが伸びる事が予想される。
もっともそれはエイラにも同じ事が言え、裏では誰が最終的に撃墜スコアトップになるか賭けが行われているとかいないとか。
「そうなるな。まぁどうせあと20もないしオラーシャを奪還する頃には自然と達成してると思うけどな」
普通のウィッチであれば鼻で笑われる様な発言もエイラはどのエースであればその実現性は増す。
おそらくこのオラーシャ奪還は多くのウィッチにとって最後のスコアを伸ばす機会でありそのため必死に出撃を繰り返す事が予想されたがそれでもエイラの目標とする帰還中に達成すべきスコア20プラス、厳密には17だがそれに匹敵する数のスコアを出せるウィッチは少数であろう事は想像に難くない。
そもそもエイラがオラーシャ奪還での目標スコアよりも通算の撃墜スコアよりも少ないウィッチの方が多くなんなら統合戦闘航空団に所属するウィッチでもオラーシャ奪還作戦でそれを達成できる者は殆どいない。
「それをできるのなんてハルトマンさんやマルセイユさんくらいじゃないかしら」
「バルクホルンとクルピンスキーとかも行けるだろ」
エイラとサーニャの共通の知り合いだと負傷さえしていなければ502のラルも候補に上がるが生憎彼女は腰を負傷して以来出撃回数を落としていて達成は不可能だろうと容易に想像がついた。
「バルクホルンさんはカールスラント奪還前なら行けたかもしれないけど……」
最近のバルクホルンは規則が服を着て歩いていたブリタニアにいた頃からすれば信じられないくらい丸くなっていた。最近では頻繁にクリスに会うために部隊を抜け出すなどもはや別人と言った方が納得できる有様だった。
「じゃあクルピンスキーは?」
「ストライカー・ユニットを破壊しすぎてきっとサーシャさんから出撃を制限されるわ」
サーニャの言葉にエイラは思わず笑い声を上げた。まさか本人の気質や実力以外のところで撃墜スコアを伸ばす事ができないなど思わなかったからだ。
「確かにそうだな。けどそっか、バルクホルンはサーニャの目から見てもそう思うか」
エイラ、というよりエイラとミーナ大佐にとって最近の悩みの種となっているのがバルクホルンだった。いつだったか暴走したバルクホルンを見てハルトマンが私の知ってるトゥルーデじゃないと言った事があるがまさしくその状態、いやそれ以上の状態だった。
「正直しばらく501から離れて休んだ方がいいと思うわ」
「けどオラーシャ奪還にはバルクホルンの力が必要だ。そんな時間はないぞ」
「オラーシャ奪還までの間なら休暇をあげられるでしょ?」
現在の501の任務はワルシャワの防衛だがそれには506などの部隊も関わりそれほど忙しいわけではない。一人くらい、なんなら複数人に長期の休暇を与えてもその防衛網に穴が開くことはない。
「ならバルクホルン以外にも休暇をやってもいいかもしれないな」
そう思うとエイラは早速行動を開始してカールスラント出身者を中心に数人のウィッチに対して交代で1週間程度の休暇を与える為の書類を作成し始めた。
最近撃墜王調べてたんですけど最終的な撃墜スコアはすぐに見つかるけど年代ごととなるとなかなか見つからないなって思い自力で作ろうかなと一瞬思ったんですけどそもそも自分の手元に撃墜王関連の資料が一切ないので諦めました。
よくよく考えたらマルセイユとハルトマンって活躍した年代が一年ばかりズレてるから(マルセイユが1941年半ばから1942年、ハルトマンは1942年半ば以降)年代ごとで見たら意外な人物が撃墜スコアトップだったりするんでしょうね。
撃墜王とか関連でおすすめの本とかあったら教えて欲しいです。