オラーシャ奪還作戦は予想外に順調だった。作戦開始から2週間後には長年スオムスやペテルブルクを脅かし続けていたノヴゴロドのネウロイの巣、ヴァシリーに到達した。
「ようやく、と言ったところか」
「そうだな。ここまで長かった」
エイラとラルが感慨深そうにそう言った。
「スオムスじゃあヴァシリーとアンナに散々痛い目見せられてきたからね」
戦争初期から残っているネウロイの巣の中でおそらく人類が最も被害を受けた巣がこのヴァシリーだ。ウラル山脈などで守られネウロイが限定的にしか出現しない東方方面軍とは違い北方方面軍は常にネウロイからの侵攻に晒されてきた。ヴァシリー以上に人類に被害を与えたネウロイの巣も存在するかもしれなないが少なくとも人類の記録の上ではヴァシリーほど脅威度の大きな巣は現状存在しない。
「アンナは502が破壊した。次は私達の番だと思ってるんだけど?」
「もちろん主力は507だ。このままだと全体的に501、502に戦果が偏りすぎていて他の統合戦闘航空団の存在意義がなくなりそうだし当然だ」
「507が主力なのは構わんがそれなら我々はどうなる。サポートに徹しろと言うならそうするがいまだに統合戦闘航空団がまともに戦う機会がないくらいにはウィッチが溢れているこの戦線でわざわざ精鋭部隊たる502がそれをする必要も見当たらない」
507部隊は常に前線にあった501や502ほどエースウィッチは所属していないがその分後方でじっくりと訓練をできていた。現在のウィッチは促成教育が多いため十分な訓練ができている部隊は貴重で個人であればエースウィッチに劣ろうとも部隊単位で見ればエースウィッチが複数人に相当する実力を持っていた。
そしてそれを指揮するハッセも戦争前に士官教育を受けていたため戦時中にウィッチになったものよりもよっぽど部隊の指揮運営に精通していた。
「今回の作戦では統合戦闘航空団を含む一部部隊をネウロイの巣との戦いに当てて残りは無視して前進することになってる」
「そんな事をすれば背後から挟撃される可能性があるぞ」
「それをさせないだけの兵力はあるって言うのが上層部の考えだな。知っての通り今回はこれまでにない大規模な兵力を投入している。それこそ統合戦闘航空団の活躍の機会がないくらいにはウィッチの数も多い」
「そうだな。ウチの連中もそのことに随分と不満を持っている」
501でもマルセイユが不満を露わにし、他にもその事に不満を持つものは多い。
「だけどそれ以上にスオムス、と言うか北方のウィッチが不満を持ってるんだよ」
「そんな話は聞いた事がないが」
「あ〜、そう言えば私のところにも色々来てたなぁ」
2人の反応は対照的だった。ラルは現在リバウを本拠地としているからか北方の情勢にあまり詳しくなくペテルブルクを本拠地としているハッセは何か心当たりがあるようだった。
「スオムス側からはこれまでやられてきた分の仕返しくらいさせろってのが主な要望だな」
「私のところに来てたのもそれと似たような感じだったな」
ちなみにエイラの元部下だったラプラからはもしスオムスが蚊帳の外に置かれるようならなどとスオムスの土を踏まないと思えと言う脅しのような手紙が送られてきていた。
「それとオラーシャからはこれ以上オラーシャの敵グンドュラ・ラルに手柄を立てさせるなって陳情がきてたな」
「心外だ。私はオラーシャとは良い関係を築いてきたつもりなんだがな」
おそらく主にサフォーノフ中佐関連の出来事からだと考えられるがラルはすっとぼけた。
「次にカールスラント」
「カールスラントからもなのか? 私含め502はカールスラントのウィッチが多い。不満などあるわけがないだろう」
「人の部隊から隊員や物資を盗む極悪人を隊長に据えあまつさえ重用するとは何事か」
「心当たりがない……いやすまん。それは心当たりがある」
言葉を濁そうとするラルをエイラが睨みつけると珍しくラルは素直に誤った。
「だがそれは私が優秀だから重用されるのであって私よりも優秀だと上層部から判断されればそれも無くなるはずだ」
「お前が優秀なのは認めよう。だけどもう少し周囲との関係を見直せよな」
「……気をつけよう」
この間のサーシャの反応を思い出したのか、ラルは一瞬表情を曇らせそう言った。
「それで次に……」
「まだあるのか!?」
「あるぞ。今のはラル宛。次はクルピンスキーだな」
「クルピンスキーか。確かにアイツ宛ならあり得る話だ」
ラルは納得したように頷いた。
「ウチの隊のウィッチをナンパするのをやめろだとか変な遊びを教えるなとかそんな奴ばっかりだな」
だろうなとラルは頷いた。
「次はロスマン宛だな」
「エディータは私やクルピンスキーと違って誰にも迷惑はかけていないはずだが……」
あまりの衝撃にうっかり自分が悪い事をしていると認めている事にラルは気がついていなかった。
「まぁこれもラル宛みたいなもんだけどな」
「どう言う事だ」
「精鋭部隊の502に育成上手のロスマンは必要ないだろう。早く他の部隊に回せだとさ」
「……今のエディータをまともに使える隊があるとは思えんがな」
そう言ってラルはため息を吐いた。
「元々エディータは嗜好品や美味い食材に目がなかったが最近はそれがより顕著になった」
「つまりどう言う事だよ」
「普段の食事にまで質の良いものを求めるようになった。もちろん前線だと保存食だけしか食べられない事もあるがそれが仮に後方の部隊に配置されてみろ。きっと毎日のように高級食材をねだられる事になるぞ」
そう言ってラルは肩を振るわせた。
「そんな大袈裟な……」
「大袈裟なものか。この間だって執務室に置いてあったキャビアを根こそぎ持っていかれたんだぞ」
いい酒が手に入ったたら食べようと思っていたのにとラルは嘆いた。
「ならウチで貰ってもいいかな?」
ハッセが言った。
「話を聞いていなかったのか? 502でなければエディータを制御するのは不可能だ」
「ウチなら502とあまり状況は変わらないしキャビアとかの嗜好品も好んで食べる人もいないから受け入れる余裕があるよ」
ニコニコと笑いながら言っているが間違いなくハッセは本気だった。507にはエースウィッチと言えるのは2人、それも1人は引退目前だ。他は実践経験も少なく部隊としての練度は高くとも個人個人では他の統合戦闘航空団に少し劣る。教育係曹長というウィッチ教育のスペシャリストを欲しいと思うのは当然だった。
「ウチも決して戦力に余裕があるわけではないし残念ながらエディータを手放すのは難しいな」
「ならイッルに代わりのウィッチを用意してもらおうよ。今ならきっとたくさんいると思うよ?」
「既に作戦は始まっている。忙しいユーティライネン将軍閣下にわざわざ面倒な配置転換を願い出るのは心苦しいな」
わざとらしいラルの物言いにエイラは胡乱気な視線を向けた。
「今の全部嘘なのか?」
「まさか。私はこれまで一度だって嘘をついた事がない。ただそれほどのデメリットがあってもエディータは手元に置いておきたいだけだ」
嘘をついた事がないは嘘だろうとエイラは思いながらも今回の件については真実かどうか見分けられずにいた。
「それにしてもウィンド。自分の隊にウィッチを引き抜こうと言うのにユーティライネンの力を借りると言うのはいささか卑怯なのではないか?」
「お前は変わりのウィッチすら出さないけどな」
エイラのツッコミにラルは咳払いをして誤魔化した。
「そんな事よりヴァシリーの破壊だが北方方面軍と507でやると言うことか?」
分が悪いと感じたラルは話題を全く違うものへと変えた。
「……ウィッチ隊は507を主力にスオムスのウィッチ隊がサポートする形になる。地上部隊はカールスラントを中心とした北方方面軍だな」
ここで突っ込めば話がややこしくなるだけだと察したエイラは敢えてラルの話題転換に乗っかった。
「それとこの作戦がうまくいけば507はスオムスあたりからウィッチを増員することも検討するよ。いくらなんでも数が少なすぎるからな。502は当分ないからな。お前のところは持ちすぎだ」
エイラの言葉にハッセは笑顔をラルは不満そうな表情を浮かべるのだった。
ユナフロの方でアプリ新キャラとかいないのかなって調べたらサービス終了しててびっくりしました。
流石にそろそろオリキャラとか出さないとかなぁ。
あとユナフロ調べようとしたらサーニャとエイラの目覚ましアプリ出てきてびっくりしました。どちらもApple Storeで800円でした。