「501がヴァシリー破壊に携わらないとはどう言う事だ!?」
会議室代わりになっているテントに集められた501の隊員達にエイラからヴァシリー破壊に関する作戦の概要を伝えると真っ先に噛み付いたのはマルセイユだった。
「あの巣はスオムスと、いや北方方面軍と戦い続けていた。その巣をいきなり501か掻っ攫うなんて事してみろ。北方方面軍からの501の印象は最悪になって今後の作戦行動に影響が出かねないぞ」
「私には関係ないね」
「マルセイユさんはそうかもしれないけど私達には関係のあることよ。この作戦が終わった後、残敵掃討があるでしょうけど北方と東方が主力になる事は間違いないわ」
「そうだな。その時501が加わるかどうかはわからないけど各方面軍との関係がいいに越したことはない」
ミーナ大佐の意見にエイラが同意するとマルセイユは不機嫌そうに口を尖らせた。
「そんな事言って自分だけ参加してスコアを伸ばすつもりじゃないだろうな」
「今回はネウロイの巣を無視して大部分の部隊は前進するっていう初めての試みだ。そこにウィッチ隊の総司令官がいないわけにはいかないだろ」
当然とばかりにエイラが言うとマルセイユは疑うような視線を向けた。
「まさか負けたくないからと言って自分だけ参加してスコアを稼ごうと言うつもりじゃないだろうな」
「そんなわけないだろ」
エイラは否定したがマルセイユはそれを信じようとしなかった。
「どうだか。ウィッチ隊総司令官などと言う顕職に祭り上げられて自分の腕が鈍った事を隠したいから1人だけ出撃するつもりに決まっている」
「わたしの腕が鈍っていたとしてもそんな卑怯な事をするほど落ちぶれちゃいないさ」
そうは言ったがエイラにマルセイユとハルトマンが参加しない作戦でスコアを伸ばそうと言う気持ちがなかったと言えば嘘になる。ウィッチ隊の指揮統率をメインで行う関係からスコアはそう大きく伸びないだろうが多少伸びる可能性はある。ハルトマン、マルセイユという世界最高峰のウィッチとの戦いなら一度の出撃機会で大きな差ができる事は必定。ここでのスコアが勝敗を分ける可能性も十分に考えられる。
「ほぅ、やはり鈍っているのか」
「そう思うなら試してみるか?」
突如として剣呑な雰囲気が流れ、魔法力が風のように迸り始めた2人に周りは焦った。
「2人ともこんなとこらでそんなに殺気立つな。やるなら外でやれ」
「止めないんですか!?」
バルクホルンが場所を変えるように声をかけた。少し前なら2人の諍いを仲裁したであろうバルクホルンの予想外の言動に宮藤が驚いた。
「宮藤の言う通り。お前は戦闘隊長だろ。止めろよバルクホルン!」
シャーリーが宮藤に同意するとバルクホルンに詰め寄った。
「どちらか1人ならともかくあの2人を止めるのは流石に骨が折れる。ハルトマンが協力してくれるなら考えよう」
「えぇ〜。私はパス。好きにやらせなよ」
ハルトマンは心底嫌そうな表情を浮かべた。
「そう言う事らしい」
「それならミーナ隊長と協力して止めればよろしいのではなくて?」
「私は魔法力が全盛期よりも落ちているし無理よ」
ペリーヌの言葉にミーナ大佐は首を横に振った。
「ルッキーニちゃんならもしかしたら……」
昔からその才能に期待されていたルッキーニにリーナが白羽の矢を立てた。
「ダメだ。時間が遅いせいで完全に眠ってる」
シャーリーの横には毛布に包まるルッキーニがいた。
「そもそもルッキーニはウィッチとしては確かに優秀で才能もあるがこの手の争いに介入するには他の要素がまるで足りていない」
バルクホルンがそう言った。
「他の要素ってなんですか?」
「格闘術とかその他身体的な面だ。私やミーナ、ハルトマンはある程度その辺の訓練も受けているがルッキーニはサボり癖のせいでその辺りが未熟だからな」
「そうね。エイラさんは軍歴はこの中で一番長いからそう言った技術も卓越しているからルッキーニさんじゃ無理よ」
宮藤の質問にバルクホルンとミーナ大佐が答えた。
「じゃあ魔法力が強大な宮藤さんも……」
「無理だろうな。宮藤のように戦争が始まってからウィッチになったものは訓練を短縮してウィッチとしての必須技能以外を学んでいないことが多い。だからコイツらみたいな古参ウィッチの諍いを止める事はできない」
服部の疑問にバルクホルンが答えた。
「魔法力で強化されたウィッチを、それも訓練されたウィッチを止められるのは同じ訓練をされたウィッチだけ。ネウロイがいなければそんなウィッチも多かったんでしょうけどね」
ミーナ大佐がため息を吐いた。
「ミーナ隊長。2人が外に出て行きました」
サーニャの冷静な報告に流石のミーナ大佐も慌てた。
「ええ!? いくらなんでもこの最前線で作戦行動中でも無いのにストライカーで飛ぶのは無理があるわよ。訓練だって言い張るのも現状難しいし」
501は前線が動くたびにその配置を変えている。固定の基地があった時とは違い補給にやや不安が残るため訓練などは殆ど行っていない。それだけでなくネウロイの勢力圏との距離が近すぎるため下手にウィッチを上げてネウロイが感知して戦線を突破されると厄介な事になるためウィッチの出撃に関してはかなり慎重になる必要があった。
「トゥルーデ、エーリカ止めてきてくれるかしら」
「私が行ったら逆効果な気がするけどなぁ」
「それもそうね。ならシャーリーさんお願いできるかしら」
「あたしかよ……」
ミーナ大佐に指名されたシャーリーは心底嫌そうな表情を浮かべた。
「シャーリーさん怪我をした時は任せてください!」
宮藤が握り拳を作りシャーリーを励ました。
「そう言うなら手伝ってくれよ」
「それはちょっと……」
魔法力と治癒魔法以外はエースウィッチとしてはバルクホルン達ほど特筆したもののない宮藤にエイラとマルセイユの争いに介入できるほどの力はない。
「あたしじゃ怪我するだけだと思うんだけど」
「他のみんなよりはその可能性は低いわ」
実力面でリーネ、宮藤、服部は除外されペリーヌは3人よりはマシだかそれでも超一流のエースウィッチと比べれば一段劣る。シャーリーも劣りはするが年の功でミーナ大佐はシャーリーを選んだ。
「やっぱりミーナ大佐が言ってくれよ」
「いやよ。あんなのに巻き込まれたくないわ」
にべもなく断るミーナ大佐にシャーリーは鼻白んだ。
「自分が嫌なのにあたしにはやらせるのかよ」
「私は隊長よ嫌な事は部下に任せるに決まってるじゃない」
ミーナ大佐の発言にシャーリーは絶句した。少し前までは真面目で優秀な隊長だったのに最近は自分の好き嫌いで行動することが多くなっていたからだ。
「職権濫用じゃないか」
「職権は濫用するためにあるのよ」
「ならせめてもう1人くらい寄越してくれよ。私1人じゃハルトマンの半分くらいの力しかないぞ」
「それもそうね」
ミーナ大佐は少し考えると宮藤と服部に視線を向けた。
「宮藤さん、服部さん。お願いできるかしら」
「私ですか!?」
「宮藤さんはともかく私はお二人を止める事なんてできるとは思えません」
「大丈夫。服部さんはトゥルーデとシャーリーさん、それと宮藤さんのサポートをしてくれればいいのよ。後の事は3人がやってくれるわ」
「あの、私もシャーリーさん達のサポートに回った方がいいんじゃ……」
宮藤が反対意見を述べたがミーナ大佐は無視した。
「3人と比べて経験の薄い貴女に必要以上に負担をかけるつもりはないわ。あまり気負う必要はないわ」
「わかりました……」
服部が渋々頷いた。
「あの、わたしもエイラを止めに行きましょうか?」
「言ってくれるのならありがたいけどサーニャさんはこの後夜間哨戒でしょう?」
「エイラを止めるくらいならできます」
いつになくやる気を見せたサーニャにミーナ大佐はエイラ達を止める事を依頼した。
「ならお願いしようかしら。トゥルーデ、シャーリーさん、サーニャさん、宮藤さん、服部さんの5人であの2人を止めてきてちょうだい」
その言葉に1人はやる気に溢れ、残り4人はめんどくさそうにテントから出ていった。
結果としてサーニャの鶴の一声でエイラは争いをやめ残りの4人でマルセイユは取り押さえられこの騒動は幕を下ろした。
原作のエースウィッチ、仮に実力で順位をつけるならどんな順番になるんでしょうね。ハルトマンがトップ5に入るのは当然としてマルセイユもハルトマンに近いから入る。バルクホルンは作中描写的にハルトマンよりやや弱い気もしますけどまぁ誤差の範囲でしょう。固有魔法で考えるとエイラも相当いいところに来そうですし後はラルとかも中々順位が高そう。ミーナ隊長は評価が難しい気がします。指揮官として優秀なのは確かですがウィッチとしての実力がハルトマン達と比べた時どれくらいのレベルなのか判断つけられる描写が少ないですから