ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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メリークリスマス!

クリスマス特別編みたいなのはないです。


JV44

エイラを護衛するJV44と合流してその指揮官と出会った時、エイラは開いた方が塞がらなかった。

 

「やぁユーティライネン少将。同じウィッチの将官だと言うのに会うのは随分と久しぶりだな」

 

「ガ、ガランド中将!?」

 

アドラフィーネ・ガランド。カールスラント空軍のウィッチ総監であり階級的にも中将とエイラよりも上の立場にある。しかし連合軍内では特に役職についているわけではなくエイラの方が立場的には上だった。しかしカールスラントの中将ともなればスオムスの少将などとは比べ物にならないほどの大物でありエイラが護衛役に選べるような人物ではなかった。

 

「どうして中将がこんな最前線にいるんですか?」

 

「私がこのJV44の指揮官だからに決まっているだろう」

 

「上がりを迎えているはずですよね!?」

 

ガランド中将は坂本少佐が新人の頃には既にエースウィッチとして名を馳せている。彼女が活躍したのはヒスパニアでの怪異発生からこの大戦の初期にかけてでありウィッチとしては既に引退済みのはずだった。

ガランド中将直属の部隊にジェットストライカーを配備した部隊がある事はエイラも知っているがまさか自らが直接率いているとは思っていなかった。

 

「ジェットストライカーの速度ならば上がりを迎えていてシールドが張れずとも危険は少ない。そもそもジェットストライカーでレシプロストライカーのような格闘戦などできないしやる必要もないなだがな」

 

そう言ってガランド中将は笑った。

 

「事情はわかりましたけどそれをわたしが把握できていない理由にはなりませんよ。いくら所属がカールスラント空軍でもガランド中将が率いて前線で戦っているとなればわたしの耳に入らないわけがありません」

 

「公式的には私は基地で部隊運営のためにネウロイではなく書類と格闘している事になっているからな」

 

事も無いように言うガランド中将にエイラは頭を抱えた。

 

「もしそれで戦死でもしたらどうなさるおつもりですか?」

 

「いくら衰えたとは言え私とてエースと言われたウィッチだ。そう簡単に死んだりはせんよ」

 

「貴女の実力を信用してないわけでは無いですけど……」

 

「それにそうならないためのジェットストライカーだ」

 

まるでおもちゃを自慢する子供のような表情をガランド中将は浮かべた。

 

「随分とソレを信用なさっているんですね」

 

バルクホルンの件から未だにジェットストライカーの信用が薄いエイラは嫌悪感を隠そうともせずにそう言った。

 

「ユーティライネン少将はロマーニャにいた時、バルクホルンの事故に遭遇しているんだったな」

 

「嫌な記憶ですよ。できる事ならわたしが現役を退くまで実用化されないで欲しかったです」

 

ジェットストライカーがレシプロストライカーよりも優秀であると言うのはエイラも認めるところだ。だがそれはすなわちレシプロストライカーがジェットストライカーに劣るというわけではない。いずれそうなるとしてもジェットストライカーにはまだレシプロストライカーを駆逐できるほどの力はない。

だが一度実用化されてしまうとウィッチとしては最上位に位置するエイラが一度も履かずに終わると言う事はまずない。なんらかの形で履く機会が回ってくる事はまず間違いがなくそれを思うとあいらの気持ちは沈んだ。

 

「そう嫌う事も無い。存外これはいいものだぞ」

 

「レシプロストライカーが生産されなくなれば履く事を検討しますよ」

 

暗にジェットストライカーを履く事を否定したエイラをガランド中将は笑った。

 

「まあいい。少将ならばこれを履かずとも並大抵のネウロイに負ける事はないだろうからな」

 

エイラの固有魔法はかなり汎用性が高くジェットストライカーであってもレシプロストライカーであってもエイラ自身が高いパフォーマンスを発揮できる下地を整えてくれる。そして同時にエイラと相手に隔絶した能力の差があったとしてもそう簡単に負けないだけのポテンシャルがエイラの未来予知という固有魔法にはある。

負けないと言う事に徹すればエイラの固有魔法は無敵と言ってよかった。

 

「そんなユーティライネン少将に護衛が必要とは思えんが、要請されたからには務めは果たさせてもらおう」

 

「……まさかと思いますけどガランド中将直々にじゃあ無いですよね?」

 

「当然私が指揮する。これは私が指揮する私の部隊だ。私以外に誰が指揮を取ると言うんだ」

 

「それでガランド中将が戦死なされたりしたらスオムスは責任を負う事ができません」

 

カールスラントの重鎮たるアドラフィーネ・ガランドを顎で使った上に戦死させたとあってはスオムスがカールスラントから一体どんな目に遭わされるのか、想像しただけでも恐怖で体が震えてきそうだった。

 

「少将がそんな事を心配する必要はないだろう。私が死んだとしてもそれは私自身が弱かった事が原因だ。私が自分の弱さで死んだと言うのにそれを他者の責任にして私の死を辱めるような事を我が皇帝陛下(マイネカイザー)は仰らないだろう」

 

「カールスラントの皇帝陛下はそうだとしてもその周りは? これを機にスオムスを口撃しようと考えないと言いきれますか?」

 

そう問いかけながら諸外国の重鎮と話しているときでさえ痛まなかった頑強な胃がキリキリと悲鳴を上げるのをエイラは感じた。

 

「それを言われると自信はないな。だが差し当たり少将には護衛が必要で私達は前線に行く用事がある。このジェットストライカーはそれほど燃費がよくない事を考えるとそう議論の時間は多くないのではないかな?」

 

「エイラ、ガランド中将の言う通りよ。ここは大人しく護衛してもらいましょう」

 

そこで声を出したのはこれまでずっと黙っていたサーニャだった。

 

「ちょっとサーニャ! いくらなんでもガランド中将はダメだろ!!」

 

エイラは顔を青ざめさせて言った。

 

「ガランド中将が護衛ならエイラも危ない事はできないでしょ?」

 

サーニャの言葉にエイラは顔を顰めた。

 

「そのために他国の将軍を危険に晒すのか!?」

 

「違うわ。ガランド中将を危険にさらさないためにもエイラと一緒に安全な場所で護衛してもらうのよ」

 

サーニャの予想外の言葉に今度はガランド中将が顔を顰めた。

 

「待ちたまえリトヴャク大尉。私はカールスラント皇帝の命令によりこのJV44の司令官に任じられたんだ。そこのユーティライネン少将と一緒にされては困る」

 

「けど公式的には基地にいる事になってるんですよね?」

 

サーニャの問いかけにガランド中将は口を噤んだ。

 

「2人とも前線は行くのはいいと思います。だけど積極的に戦闘をしようとするのは危ないからやめてください」

 

前線に行く事については引き止めないという最大限の妥協を示しそれでいて比較的安全な位置で大人しくしていろと言うサーニャの主張にエイラとガランド中将は互いの視線を合わせた。

誰もサーニャの言葉に反論できないかな思われたがこれに反論する猛者がこの空間にはいた。

 

「流石にそれは言い過ぎだと思うのであります」

 

ヘルマ・レナンツ曹長だった。ジェットストライカーの開発に携わった経験からこのJV44の中でもジェットストライカーの操縦技術は隊内屈指の実力者だ。

 

「軍隊は規律が全て。そして軍隊の規律を守るためには上位下達が必要条件であります。リトヴャク大尉の言葉は正論かもしれませんがガランド中将もユーティライネン少将も何か特別な意図があって前線に行き戦おうとしているに違いないのであります。なのにそれを危険だからの一言で捻じ曲げようとするのは軍の規律を乱す事になりかねないのであります」

 

「この2人にそんな特別な考えなんてないと思うわ。きっと戦いたいから前線に行くだけよ」

 

サーニャは優秀なウィッチがどれほど自分勝手な存在で他者への迷惑を鑑みない存在がよく知っていた。故にエイラだけでなくガランド中将もそうであろうと考えてそう言った。

 

「そんなわけないのであります! ガランド中将は皇帝陛下からの信頼も厚く優秀な人であります!! きっと連日秘密裏に行っている出撃も何か意図があっての」

 

サーニャの言葉にレナンツ曹長が反論しようとしたがそれをガランド中将が遮った。

 

「ま、まぁ確かにリトヴャク大尉の言う事はもっともだ!」

 

額に浮かべた汗を拭いながらガランド中将は頷いた。

 

「そうだな。少し安全なところから前線の様子を観察する事にしよう」

 

そんなガランド中将に胡乱な視線を向けながらエイラは今回の出撃で撃墜スコアを伸ばす事を諦めた。




JV44事実だとバルクホルンとかも参加してますけどストライクウィッチーズだとどうなんでしょうね。ちなみに本作は参加してませんので悪しからず。

実際のところJV44はエース揃いだったのはジェット戦闘機の操縦が難しかったと言うのもありそうですよね。エンジン焼けて片肺飛行とか結構ありそうですし。いや、ジェットでも片肺できるのかよくわかんないんですけど。
実のところあの辺の年代から自分の航空機の知識が甘くなるんですよね。そもそも一番好きなのは海上。なんで実はあの辺の歴史は太平洋とか北海の歴史が一番好きなんであまり詳しくない……
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