エイラの提案は認められた。
7年にも及ぶ戦争をこれ以上長引かせる事を誰1人として望んでないなかった。それは予算面や世論だけでなく現場の軍人達をしてそうだった。たとえ安全に勝てる方法があったとしても少しの危険を犯すだけでこの戦いがより早く終結に向かうのであればそちらを取る。あるいはこれは長い戦争により正常な判断が出来なくなっていただけなのかもしれないがオラーシャを奪還したとていまだバルカン半島北部やアフリカの大地にはネウロイがいる。差し向ける戦力はそれほど多くなくても良いがオラーシャ奪還が長引く事は戦争終結が遠のく事と同義である。これを良しとするものはいなかった。
「何をやったの?」
オラーシャ奪還の最前線で空を飛ぶエイラに呆れたような声音でサーニャが問いかけた。
「何をって何がだよ」
「どうやってエイラが前線に出られるようにしたの?」
エイラが連合軍のウィッチ隊の最高司令官に就いて以来サーニャはエイラが最前線に立つ事をよしとしなかった。しかし今回エイラはそのサーニャの努力を嘲笑うかのように上層部の決定という強権を持って突破した。
「出られるようにしたというより出ざるを得なくなっただけだよ」
「屁理屈よ。前線で戦う事には変わりはないわ」
「今までは潤沢な兵力の力押しで勝てたけどネウロイ側が効果的な防衛をこなすようになってウィッチの稼働率が下がった。そうなると優秀なウィッチを集中投入して戦線をこじ開けネウロイの巣を破壊するって手段に打って出るのは当然の話だろ。それでその指揮官にウィッチ隊のトップが据えられるのもな」
ウィッチは実力主義の世界だ。一部に例外はあるが基本的に戦果を上げたウィッチは順当に階級を上げていく事になる。しかしその階級は多くの場合佐官で止まり将官となると現在エイラとガランド中将の2人しかいない。格統合戦闘航空団の隊長達はエイラの代わりに最前線で部隊を率いる事ができないわけではないが階級こそ違えど立場は同じ統合戦闘航空団の隊長であり同格として扱われる。臨時で上位職を設置して作戦終了後その任を解く事が出来なくもないが結果としてそれは降格という扱いになるため外聞が良くなかった。
「サーニャはわたしの事を心配してくれてるのは分かるけど今回はハルトマン、マルセイユを筆頭に世界でもトップのエースウィッチがゴロゴロいるんだ。サーニャが懸念するような事にはならないよ」
「ハルトマンさん達の実力もエイラの実力は疑っているわけじゃないわ。だけどその義足に関してわたしは信用しきれないわ。何かの拍子で魔法力の伝導率が悪くなるかもしれないしそうなればいくらエイラでもネウロイ相手に遅れを取っても不思議じゃないわ」
ウィッチが四肢の欠損で引退するという例は意外と多い。人とは無意識のうちに重要器官の詰まった体を腕や足で庇うためだ。魔法力を発現しているウィッチは通常よりも力も体の強度も上がるため間に腕一本、足一本でもあればネウロイのビームを致命傷でなくすくらいのことはできる。もっともそれで四肢を欠損するような事になれば大抵のウィッチは前線から退く事になる。例外はエイラを含めてまだ二例しかない。
「わたしには未来予知があるから大丈夫だって」
「エイラと同じくらい強いハルトマンさんは撃墜されたわ」
エイラに対抗しうる実力者のハルトマンでさえ新型のネウロイにより撃墜された事がある。心配するなという方が無理な話だった。
「それはそうだけど……」
ハルトマンの話を出されるとエイラも弱かった。ハルトマンが撃墜された時、エイラも衝撃を受けた。ハルトマンの実力はエイラもよく知るところでありあれほどの実力者が撃墜されるとなればより多くのウィッチが撃墜され命を落とす可能性もあった。当時は未来予知が使える自分ならなんとかなると考えていたが今にして思うと圧倒的に速度のあるネウロイに未来予知での対抗はできなくはないがその数が増えればどこかで限界が来る事は目に見えていた。
「だからここまで最前線に出て戦う必要なんてないと思うわ」
ナイトウィッチのサーニャがいれば多少前線から遠くとも指揮は十分取れた。
「サーニャは自分の故郷の奪還に最前線で戦いたいって気持ちはないのか?」
エイラの問いかけにサーニャは驚いた。
「わたしのために前線に出ているの?」
「それだけが理由じゃないけどな。だけどわたしに付き合わせて祖国の奪還を指を咥えて見てるだけにさせたくないってのも本音だよ」
「エイラ。わたしはウィッチとして戦えるのとお父様とお母様と一緒にウラルへ疎開できるのどちらがいいって言われたらウラルに行く方がいいの」
サーニャにはウィッチとしての訓練終了後、両親と共にウラルへの疎開を希望した過去がある。サーニャにとって祖国の奪還よりも両親と共に生活する方が幸福な生き方である。もちろん祖国の奪還は喜ばしいがそれよりも両親を優先する事は責められるものではないだろう。
「サーニャがそう言うならいいけどさ。だけどそれはそれとしてわたしが前線に出るのはもう止められないぞ」
「それはもういいわ。だけどできるだけ安全なところでいてね」
サーニャの言葉にエイラは苦笑いで答えた。そもそも最前線に安全なところなどないしサーニャ自身もそれをわかっていてあくまでこれは形式的なものでしかなかった。事実、サーニャの魔導針はすぐにネウロイの反応を捉えた。
「エイラ、ネウロイよ。七時の方向、数は中型二、小型が十三」
現在エイラ達は統合戦闘航空団にエイラ達の数キロ先を先行させエイラの左右を他の部隊で固めている。疲弊すればそれぞれの部隊は代わりの部隊と交代、統合戦闘航空団は501、502、503がそれぞれ交代で先頭に立つ。この配置では必然的に後方が疎かになるがネウロイの巣を叩けば良いと言う考えのもと電撃的に進行していく作戦となっていた。
「追いつかれそうか?」
「このままだと5分後には追いつかれるわ」
「仕方ないな。反転して迎撃しよう」
本来であればエイラは複数のウィッチを指揮下に収め司令部の予備として活用すべきだが今現在その全てを両脇を固める部隊に対して送り込んでいる。想定よりも多くのネウロイがアンブッシュで潜んでいたため戦力が不足し始めていたからだ。
「もっと戦力があればいいのに」
「基地をネウロイに破壊されたからな。仕方ないさ」
そう言うとエイラは空中で停止した。
「サーニャ、他の部隊にわたしが交戦を開始することとしばらく指揮が取れない事を連絡しといてくれ」
「分かったわ」
サーニャが各部隊に通達するのを確認すると2人は反転してネウロイの迎撃に向かった。
「わたしが突っ込むからサーニャは援護を頼むぞ」
サーニャが返事をするとエイラは速度を上げた。後ろからはサーニャのフリーガーハマーの発射音が響きすぐにエイラを抜き去っていく。
何体かの小型ネウロイにヒットし爆炎を上げるとその爆炎にエイラは突っ込んでいく。
爆炎を抜けると二機の中型ネウロイと数機の小型ネウロイが慌てたようにビームを撃つ兆候を見せたがエイラの未来予知は全てを見通していた。急上昇してビームを避けると小型ネウロイのコアを撃ち抜いた。
そのまま今度は中型ネウロイに突撃して一機を撃墜した。そのエイラを追撃するべく中型ネウロイと残っていた小型ネウロイがビームを撃つがエイラは全てを避けた。さらに追撃をしようとするネウロイをサーニャのフリーガーハマーが撃ち抜き体勢を崩した隙にエイラは突撃した時のスピードを活かして再び急上昇し攻撃位置につくと今度はそのまま射撃を行い中型ネウロイ撃破した。
「サーニャこれで全部か?」
「ええ。もう反応はないわ」
ものの数分で全てのネウロイを倒しエイラとサーニャは元の位置へと戻っていった。
ナイトウィッチって結局人工的に作り出せるんですかね。
魔女達の航跡雲とノーブルで(レントと多分ブランク)それについて言及があったと思うんですけど結局アニメの方では特に言及がなく特に気にせず本作を書いてたんですけど今になってどうしようかなとなら始めました。と言うのも現実では技術の発展で戦闘機が精密機械になっていますけどストライクウィッチーズの世界だとどうなのか。魔法力の効率が良くなりその分を他の魔法を使うための補助に回せるのではないかとか色々考えてられるのではないかとふと思いました。
まぁ、本作ではそんな先までやるかわからないので考えるだけ無駄になる可能性もありますけど。