オラーシャ奪還作戦は最終段階に入った。優秀なウィッチの集中運用は上層部の予想以上に高い戦果を上げ突破部隊の市内突入に成功した。
「エイラ、先鋒の502がニパさんと菅野さんのユニットの破損を報告してきたわ。他の人と交代させないといけないみたい」
「またかよ〜」
当初は統合戦闘航空団ごとに交代で前線に出していた。しかし途中から502の被害が他よりも大きく502の隊員の消耗が大きくなるため統合戦闘団は一時的にその部隊の垣根を取り払い運用していた。
「それとそろそろミーナ隊長も交代しないいけないわ」
「ならサーシャと交代させるか。ハッセはさっき交代したばっかりだしバルクホルンはさっきの戦闘でユニットが破損して暫く出撃できないからな」
現在の統合戦闘航空団は各部隊の隊長及び戦闘隊長により交代で指揮されている。指揮官の中でもラルに関しては良くも悪くも事務的な能力が高いため後方で突破部隊のウィッチ隊全軍の補給等事務作業を任されていた。これを任せるに際しエイラは断腸の思いで手段は問わないと通達した為ラルはその辣腕を存分に振るい突破部隊の補給を支えていた。
「ネウロイの巣がもう目の前だってのにこのタイミングで離脱すると破壊に間に合わないんじゃないか?」
「ラル隊長に予備のユニットがあるか聞いてみるわ」
そう言うとサーニャはラルに通信を送りもたらされた返答をエイラに伝えた。
「『心配する必要はない。ユーティライネンはただ前だけを見続ければいい』って言ってるわ」
「あいつ、敵だと厄介だけど味方だとこんなにも頼もしいんだな」
「ラル隊長が敵だった事はないわ」
「それは知ってるけどアイツは味方じゃなけりゃ実質的には敵みたいなもんだろ」
エイラやミーナがラルに散々煮湯を飲まされてきたことを知っているサーニャはその問いかけに沈黙で答えた。
「エイラ、地上部隊からの航空支援の要請が来ているわ。モスクワ中心部に続く道に大量のネウロイが立ち塞がってるそうよ」
サーニャが詳しい状況を聞き出すとどうやら建物内だけでなく街のど真ん中にも自らの体で道を塞ぐようにしてネウロイがいるようだった。総数は100を超える。
「気化爆弾が使えれば楽なのに」
ウィッチを飛ばすために殆どの基地を利用しているため、対ネウロイ用気化爆弾を運用するB-17は簡単に飛ばす事ができない状況にあった。地上支援をしようにも、数が数だけにある程度まとまった数の対地攻撃ウィッチが必要だが、数を揃えるにはしばらく時間が必要だった。
『その要請、カールスラント空軍第二急降下爆撃航空団に任せてもらおうか』
耳につけたインカムから勇ましい通信が聞こえた。
「陸戦型のネウロイは強力な対空攻撃手段を持っている事が予想される。申し出はありがたいけどある程度まとまった数じゃないと、被害甚大戦果過小なんて事になりかねない。しばらく待ってくれ」
『そうか。なら問題ないな』
「話聞いてたか? 他の部隊の集合を待ってくれ」
『今我々が動けばネウロイは即座に撃滅され、進軍速度は変わらない。だが増援を待っていては進軍速度が大幅に落ちることは間違いない。私に任せろ』
「だからそんな事したらオマエの隊の被害が大きくなって、作戦全体で使える対地攻撃ウィッチが少なくなる。許可できない」
『問題ない。私の隊なら大きな被害を出さずにネウロイを倒せる。少将閣下にも我がカールスラント空軍第二急降下爆撃航空団の実力をとくとご覧に入れよう』
この頑固なウィッチをどう説得するかエイラは返事をせずに考えた。
『我々に任せてもらえると言う事でいいな。いくぞニールマン。目標変更だ!』
「ちょっと待て!」
その沈黙を了承と受け取って通信相手のウィッチが嬉しそうに何者かに声をかけるのを最後に通信は途絶えエイラが静止する声は相手に届く事はなかった。
「サーニャ、今のウィッチにサーニャからもう一回通信を送って止めてくれ!!」
カールスラント空軍第二急降下爆撃航空団はこれまで多くの戦果を上げてきた精鋭部隊だ。下手をするのその精鋭達がこの地球上からなくなりかねないとあって、エイラは慌ててサーニャに命令した。
エイラの命令を受けてサーニャはすぐに第二急降下爆撃航空団に呼び掛けたがサーニャは力なく首を横に振った。
「インカムの電源を切ってるみたい。応答がないわ」
サーニャの言葉にエイラは頭をフル回転させた。第二急降下爆撃航空団はエイラ達よりも後方を飛行していた。第二急降下爆撃航空団が先頭集団に追いつこうとすれば自然とエイラ達の近くを通る事になり、そうなればサーニャの探知圏内に入る事は確実だった。
「多分暫くしたらサーニャの探知範囲に入るだろうしそれまで待とう」
エイラの判断は間違いではない。しかし今回は運が悪かった。
「うん? サーニャ下からビームが来る。回避するぞ」
エイラ達が回避した直後、建物内に潜伏していたネウロイのビームが建物の屋根を突き破ってエイラ達がいた場所に殺到した。
「陸戦型ネウロイね」
でてきたネウロイは5体とそれほど多くはないが、最近の陸戦型ネウロイはエイラの装備では弱点をつかなければ装甲を貫くの難しい。もちろんエイラもできる限り協力するが、実質的にネウロイを倒せるのがサーニャのフリーガーハマーだけとなれば少し時間がかかった。
陸戦型ネウロイを倒し終わった頃には第二急降下爆撃航空団は既にエイラ達の前にいて倒す敵を見定めていた。
「クソ! いくぞサーニャ!!」
少しでも被害を少なくするためにエイラは第二急降下爆撃航空団のいる先頭集団上空に向かった。しかしそれが間に合うはずもなく豆粒のような小さな点が次々と地面に向かって急降下していく。そしてそれを迎撃すべく地上からはネウロイのビームが上がり豆粒からそれを防御するシールドとビームがぶつかった光が飛び散る。
「遅かったか……」
内心分かっていた事だか悔やまずにはいられなかった。あと少しでネウロイの巣に到達すると言うこの重要局面で、第二急降下爆撃航空団と言う大きな戦力を失う事はともすれば作戦自体の失敗につながりかねない。
もしもあの部隊の隊長が生きていれば取り敢えず一発ぶん殴らなければ気が済まないなと結論付けエイラは爆撃したウィッチ達が離脱してくるであろう場所へと急いだ。
「……嘘だろ?」
エイラが見た光景は予想とは違った。ネウロイが陣取っていた道にはネウロイだったモノが光の粒子を発しながら消えていく情景しかなく、所々に撃墜されたウィッチが墜落しているがその多くは負傷はしているが死者はいないように見えた。
さらにそれより多くのウィッチが上空には飛んでいて救助作業にあたっていた事が、この攻撃が成功したことを物語っていた。第二急降下爆撃航空団とはいえエイラが把握していた限りではあの時出撃していたのは第一飛行隊のみ。100を超えるネウロイを撃破し切れるはずがなかった。
「見たか少将。我が第二急降下爆撃航空団の力を」
上空からエンジン音を響かせながらエイラの横に降りてきたウィッチは鼻の上には横一線に切り傷の跡がありいかにも歴戦と言った風体だった。それだけであれば度々、特に陸戦ウィッチや対地攻撃を主任務とするウィッチにはいる。それ以上に異様なのはそのウィッチが履くストライカーユニットだった。Ju87-bという鈍足のユニット側面に37mm機関銃が取り付けられていて明らかに安定性に欠けるユニットを履いていた。そんなウィッチをエイラはただ1人しか知らない。
「ハンナ・ルーデル大佐?」
第二急降下爆撃航空団の司令官、世界でも並ぶものがいない対地攻撃の名手ハンナ・ウルーリケ・ルーデル大佐だった。
「無傷のエースと謳われるスオムスの英雄に私の名を知ってもらえているとは光栄だな」
「貴女の名前を知らないウィッチなんていませんよ。そんな事よりどうして出撃しているんですか。ベルリン奪還時にシールドが張れなくなった事が発覚して出撃を禁止されたはずでは?」
「第二急降下爆撃航空団は私だ。書類くらいいくらでも偽造できる」
「ガランド中将といいどうしてそう出撃したがるんですかね。貴女が戦死したら世界にとって大きな損失になりますよ」
「おかしなことを言う。私が死ぬ事自体は損失にならない。もし損失があるととすれば出撃しなかった事によりネウロイを取り逃がす事だ。1匹でも多くのネウロイを倒すことが世界に平和を齎すために必要だと言うのに、ネウロイを倒せないようでは何のためにウィッチをやっているのかわからないではないか」
エイラは察した。これ何言っても聞かない人だと。
「貴女に何かあればわたしにも文句が飛んでくるんですけど」
カールスラントの英雄ハンナ・ルーデル。今現在彼女はエイラの指揮下にいる。もし彼女を死なせでもしたらカールスラントからの非難が飛んでくる事は間違いなかった。
「私とて人間だからな。自分が死なないと過信するほど愚かではない」
空の魔王とまで言われるルーデルだが、彼女は不死身の化け物ではない。それは彼女自身よく分かっていた。
「色々と人間らしからぬ噂は聞きますけどね」
「だが人間だ。私が人間でないのならこの足だった無事だっただろうさ」
そう言ってルーデルは右脚のストライカーユニットを叩いた。
「……義足ですか」
ルーデルはエイラと同じ義足のウィッチだ。彼女の場合エイラと違ってネウロイの攻撃によって右足を失っていたが、義足という共通点がある事はエイラも知っていた。
「そうだ。少将が先駆者として存在したおかげで私はこうしてネウロイを倒し世界平和の実現に貢献することができている。ありがたい事だ」
「義足な上に上がりまで迎えてるなら、尚更後方にいて欲しいんですけどね」
そういうとルーデルはニヤリと笑った。
「義足という大きなハンデを背負いながらも尚前線に立とうとする事と少将と私とでは根本的な意味で違いはないだろう。もし私が出撃する事を止めたいのなら上がりを迎えても前線に立とうとする事と、少将が義足というハンデを背負ってまで出撃する事とどう違うのか。まずはその説明をしてからにしてもらいたいものだな」
これを言われるとエイラは何も反論できなかった。少なくともエイラが出撃しようと事に合理的な理由はなく黙り込む以外に他なかった。
「どうやら少将閣下にも同意いただけたようだし今後も私は出撃しても良いという事でいいな」
「……ほどほどにしてくれよ」
力なくエイラが答えるとルーデルは手をヒラヒラと振って答えるとニールマンと相棒であろうウィッチの名を呼ぶと部隊を纏めて後方へと戻って行った。
ルーデル何処かでエイラと顔合わせてた気がするんですけど見つけられないんですよね。もしかしたらプロット段階で消した奴とごっちゃになってるかもしれないです。非常に情けない話ですけどもしルーデル出てたら教えていただけると幸いです。セリフを一部変えますので。
さてそれはそれとして未来のストライカーユニット、もしかしてパワードスーツみたいになってるんじゃないかと思いました。
なぜかというと今のままだと機体そのもののスペックはともかくレーダーだとかチャフだとか電子機器関連で明らかにキャパが足りないなと。ルーデルの場合ユニット側面に37mm機銃を増設してますけどそれと同じ感じで増設しつつ足りなくなればストライカーユニットが全体を覆うような進化をするのではないかと思いました。
もっともそうなるのは2000年代前後のことだと思うんで当分先だと思いますけど。