エイラに出撃している事を知られたルーデルは出撃をエイラに対して隠さなくなった。
『ユーティライネン次は何処に向かえばいい』
「戦闘集団の撃ち漏らしが後続部隊に被害を与えてる。そのネウロイを駆逐してくれ」
当初はこの質問に対して出撃を自重するよう通達するか無視するかで対応していたがどのみち出撃されるならばと諦め今では攻撃場所を指定して効率的に戦果を上げるようになっていた。
本来であればサーニャを介して行う通信も後でバレた時にサーニャに責任が行かないように配慮してエイラと直接通信を行っている。
「優秀なのはいい事だけどとんでもなく使いにくいな」
「ルーデル大佐?」
サーニャの問いかけにエイラは頷いた。
「英雄視されるようなウィッチってのはどうしてあんなに自分勝手なやつばっからりなんだろうな」
「エイラもあまり人の事言えないと思うわ」
「わたしはあそこまでぶっ飛んでないぞ!?」
使いにくさという点ではエイラは他の癖の強いウィッチ達と比べたらマシな方だと自負していた。好き勝手動く時もあるがそれらは基本的に軍の利になる事であり上層部から何か言われることはない。
「エイラは上層部からは何も言われないかもしれないけどわたし達に心配をかけているわ」
「ごめんよサーニャ〜」
確かにエイラは上司に対して迷惑をかけていないかウィッチの仲間に対してはかなり心配をかけている、特にサーニャなどはその筆頭でありそのサーニャからこう言われては反論のしようがなかった。
「けど今はわたしが前線に出なきゃいけない時なんだ。多分この戦いが終わればそれも無くなる」
「……もうすぐ戦争が終わるのね」
「うん。オラーシャを奪還できさえすれば終戦はもうすぐそこだ」
「そうしたらお父様とお母様を探しに行けるかしら?」
サーニャはオラーシャ軍の中では
「当たり前だろ。わたしの持てる力全部使って誰がなんと言おうとサーニャの両親を探しにいけるようにする」
サーニャはオラーシャ所属のナイトウィッチとしては文句なしのトップエースである。そのサーニャが軍を離れる事がそう簡単に許されるとは思えなかった。
「けどもしかしたらサーニャが探す必要はないかもしれないな」
「どうして?」
「だって考えてもみろよ。サーニャは501の一員としてガリア奪還にもヴェネツィア奪還にもベルリン奪還にも参加した有名人だぞ。何もしなくてもサーニャの両親の方から接触してくるんじゃないか?」
ウィッチは若い少女に人気があることから有名なウィッチであれば軍はその所在を隠すことはしない。これはさらに多くのウィッチを獲得するための広報活動の一環としてみなしているからだ。サーニャもまたその一人であり調べればサーニャの居場所は簡単に知る事ができる。
「モスクワの奪還が完了すればサーニャにはわたしと一緒に新聞の取材にでも答えてもらえれば確実にサーニャの両親の目につくはずだ」
もっともこれには生きていればという注釈がつくがそんな事言わずともサーニャはわかっている。エイラが敢えてそれを口に出す必要もなかった。
「ありがとうエイラ」
「お礼なんていいよ。サーニャの両親を探すのを協力するって言ったのはわたしだしな」
照れくさそうにエイラは頬をかいた。
なんとなく気恥ずかしくてしばらくの間沈黙が流れたがサーニャの魔導針の煌めきごそれを破った。
「エイラ、ラル隊長から緊急通信よ」
「ラルから? 前線部隊じゃなくて?」
ラルは安全な後方で事務作業に忙殺されているが緊急などと言う物騒な言葉を使う事は起きないはずだった。それはエイラとラルの共通認識でありもし仮に彼女から緊急通信があるとすれば書類の山に潰されるか恨みを買っていたウィッチからの襲撃だろうと出撃前に軽口を交わしていた。そんなラルからの緊急通信とあっては何よりも優先される。
「内容は?」
「ミーナ大佐が……」
「負傷したのか!?」
そう言ったものの内心でエイラはそれを否定していた。もし負傷したのならラルからではなく前線の誰かからになる。
「シールドが張れないみたいなの。だからラル隊長の判断で指揮官から外すって」
それは衝撃的な報告ではあったが不思議な報告ではなかった。本来なら20歳のミーナ大佐がまだ前線で指揮をとっている事がおかしな話だからだ。
「今まで誰も気が付かなかったのか……」
どうしてこのタイミングでとエイラは嘆いた。今以外であれば対処は容易だったがモスクワ奪還目前というこのタイミングで知らされるのはあまりにもタイミングが悪すぎた。
「ハルトマンさんとかバルクホルンさんはもしかしたら気がついてたかもしれないけど……」
シールド昨日今日で突然使えなくなるとは考えにくい。ミーナ大佐が坂本少佐同様隠していたことは明白だった。
「あの二人ならミーナ大佐が強く言えばそれを誰かに教えようとしたりはしないだろうな」
エイラはため息を吐きながら前線指揮官に考えを伸ばした。今現在指揮をしているのはサーシャだ。代わりの指揮官としてはハッセ、バルクホルンがいるがバルクホルンの顔を思い浮かべてエイラは思わず声を上げた。
「バルクホルンはどうだ!?」
「バルクホルンさん?」
「アイツもミーナ大佐と誕生日はあんまり変わらないはずだぞ! ラルは何か言ってなかったか!?」
エイラの記憶が確かなら二人の誕生日は一週間程度しか変わらない。
「なにも言ってなかったわ。聞いた方がいい?」
サーニャの質問にエイラは考える素振りを見せた。
「いや、いい。ミーナ大佐の魔法力に気がついたラルがバルクホルンの魔法力に気が付かなかないわけがないしな」
ミーナ大佐が上がりを向かえた時点でバルクホルンもまたその危険性がある。それに気が付かないラルではない。
「ラルから他に何か報告は?」
「指揮官不足についてはラル隊長が埋めるって言ってるわ」
「……ラルも堪え性がないな。それは必要ないって伝えてくれ」
「いいの?」
たとえラルがこの最後の大舞台に自分が前線に立ちたいと言う自分勝手な思いからだったとしてもこの申し出はありがたいものはずだった。
「ハッセ、サーシャ、バルクホルンの三人がいれば最低限、指揮官の数は足りてるしもしもの時はわたしもいる」
指揮官の負傷などを考えると本当に最低限しか存在しないがまだラルが出る局面ではない。
「それにモスクワのネウロイの巣はもうすぐそこだ。仮にラルが指揮に入るならその時だな」
ラルも決して万全とは言い難い状況でありできる事ならギリギリまで使いたくはないのが本音だった。
「ネウロイの巣を破壊するとなればローテーションをとき出撃可能なウィッチ全てでの攻勢に出ることになる。そうなれば指揮官の数が流石に足りない。ラルの出撃はその時だな」
「わかったわ」
サーニャがラルに命令を伝えているのを横目に思わずエイラは呟いた。
「まったく、どうして優秀なウィッチってのは問題児ばっかりなんだろうな」
モスクワ奪還まで下手をすれば一日を切っているこの状態で比較的優等生のミーナ大佐が起こした事件にエイラはため息を禁じ得なかった。
「作戦中に判明するよりはマシだったって考えましょう」
「そうだな。そう考えなきゃやってられないよな」
ネウロイの巣攻撃中に判明していたらミーナ大佐を下げる事もできない。仮に撃墜でもされたら部隊が混乱した事は間違いない。それが原因で作戦が失敗したら目も当てられない。今判明した事を幸運に思うしかなかった。
「幸い他の連中は……いや、クルピンスキーがいたな」
「バルクホルンさんと同じようにラル隊長が気づくんじゃない?」
「可能性はあるけど指揮官に指定してるのは三人。その中にアイツはいない。指揮官って認識がなかったからわたしも考えの外にいたしもしかしたらラルも気がついてないかも。一応確認してくれ」
ラル直属の部下のため流石にそれはないだろうと思いながらもサーニャに連絡をとってもらいクルピンスキーが上がりを迎えていない事を聞いたエイラはやっと一息つく事ができた。
サーニャは両親探そうとしてるけどアレ絶対両親の方が居場所知ってるから会いに来ますよね?
ストライクウィッチの世界ってウィッチのブロマイドとかあるくらいウィッチ個人にアイドル的な人気があるわけで501メンバー、それもオラーシャで唯一となれば人気にならないわけがなく……。オラーシャ奪還したらそう時間をおかずに手紙なり直接会いに来るなりで接触がありそうな気がします。と言うかそうであって欲しい。