歴史の証言者
カールスラント空軍 ウィッチ総監
グンドュラ・ラル中将(当時)
モスクワ奪還前後からその兆候はあった。少なくとも私はノイエ・カールスラントにカールスラント本国に帰ることをよしとしない勢力があった事を認識している。
そしてガリアにおいては所謂王党派が南部ガリアの旧ヴィシー政権の連中と接触したと、これを耳にしたのは完全な偶然だったが同時期に耳にしている。
今にして思うと戦中に武力を用いた動乱など起こりようがないとわかるが当時はあり得ると思っていた。だからユーティライネンにも忠告したしネウロイとの決着がつくのも長引くだろうと思っていた。
当時は気がついていなかったが実際に動乱が起こる可能性が高いのは戦後だ。なぜなら戦中に大量生産された武器及び失業した兵士達が新たな職を求める事になるからだ。コイツらの末路を知っているか?
……答えは犯罪者になるだ。これらの多くは犯罪組織勢と結びつく。有名どころだと扶桑のヤクザだな。だがカールスラントやガリアではそう言った組織ではなく反政府組織と結びついた。
ノイエ・カールスラントの民主独立勢力、ガリアの王党派と旧ヴィシー政権。
もっともカールスラントはリベリオン、ガリアはブリタニアの介入があったのは知っての通り。奴らのせいでウチの国はめちゃくちゃだ。
……私が何故犯罪者にならなかったかだと? 一体誰から何を聞いたのか知らないが私は犯罪行為は一切していない。これほど清廉潔白なウィッチも少ないだろう。
……なんだ今のは質問じゃなかったのか。ところで誰が私が犯罪者のようだと言ったのか聞かせてもらえるか?
……なるほどよくわかった。アイツには後で抗議しておこう。
……あの国を恨んでいないかだと?
アレは我が国があの国を必要以上に警戒したから起きたことだ。恨みなどあるわけがないだろう。そもそも我々にはアイツを恨む権利がない。権利があるとすればそれはアイツの方だろう。
カールスラント空軍 ウィッチ養成学校校長
ゲルトルート・ヴァルクホルン少将(当時)
あの戦争でもっとも大きな反応を示したのは私だった。私の教え子が数十人単位で戦死したのだからそれも当然だろう。
……今にして思えば愚かだったよ。本国は戦うことはあり得ない。これはあくまでもアピールに過ぎないと言い張っていたから送り出したがそんなわけはない。あの地に送り出した以上は戦う事になるのは間違いないというのに。
……私自ら出撃すると言った事が事実かどうか?
事実だ。上がりを迎えシールドもまともに張れない私が出撃したところで撃墜されるの目に見えている。だが無謀な戦いに送り出してしまった責任と教え子の仇は私自身の手で取らなけれならない。結局、ミーナ達に力尽くで止められて実現しなかったがな。
……悪いがもう帰ってくれないか。あまりその話はしたくない。
医師
エーリカ・ハルトマン(当時)
私があの件に関して何か言うことはないよ。私はあの戦争後すぐに軍を辞めて医師を目指した。人には人の生き方がある。あの時代を医者の卵として過ごしていた私には何かを語る権利はないよ。
ガリア共和国 下院議員
ペリエッテ・アンリ・クロステルマン(当時)
王党派と旧ヴィシー政権が合流するなど予想だにしていませんでしたわ。ヴィシー政権はペタン将軍をまるで王のように扱い王党派は旧王族こそがガリアの政党なら支配者だと主張する。その二つの勢力が結びつくはずがないと多くの人が考えていたはずですわ。
ご存じのとうりブリタニアが介入してこの二つの勢力は結びつきました。彼の国の主張はノイエ・カールスラントの動乱で我らガリアが邪な考えに至ったが故との事でしたが……。
……ええ、そうですわ。実際のところは戦後復興の真っ最中でそのような余裕はありませんでした。我がガリアはこの動乱で更なる荒廃を招きリベリオン、ブリタニアへの依存が強くなる事になりましたわ。
……あの頃は他国の状況なんてとても考えている余裕がありませんでしたわ。確かにきっかけはあの国なのは認めますが立場的には当然のことだったのではないでしょうか。それを過剰に警戒した国があって対応した。
その後はまるでドミノのように止まる事なく倒れ続け我が国もその煽りをくらった。ですがだからと言ってあの国を恨むのはお門違いですわ。結局のところこの事態を止められなかった責任はガリア政府にあるのですから。
……私が事態を予期していた、ですか?
……ルーデルさんがガリアにいたのはあの人自身の事情です。まったく、優秀なウィッチってどうしてああも人の話を聞かないんでしょうね。あなたもそう思いません事?
アレクサンドラ・イワーノブナ・ポクルイーシキン
一体どれだけ知っていたのか、ですか。難しい質問です。少なくとも私が当時住んでいたペテルブルクで何かが起こることは察していました。彼女からも事前にペテルブルクを離れるようにと忠告がありましたし何かが起こるのだろうとは思っていました。
ですが思い入れのあるあの地を離れる気がどうしても起きなかったんです。それを伝えると離れるつもりがないのであれば手伝って欲しいと言われました。
彼女の国の状況を考えれば頷きたくなる気持ちはありました。しかし同時にこうも思ったんです。上がりを迎え、ウィッチを引退した私にいったい何ができるのだろうと。固有魔法こそまだ使えますが引退して随分と経っていますからブランクで戦う事は難しい。
事務処理能力もあの人には劣る。犯罪同然の手法はラル隊長を見ていますから知っていますしやれます。それを交えれば力になれるとは思っていましたけど当時のあの人にこれは不要だと思いましたから。
……犯罪同然の手法はどんなものなか、ですか?
聞かなかった事にしてください。おそらくあの時代を生きたウィッチの多くが知っている事ですが、好き好んで話したい事ではありません。
……未だにここに私が住んでいるの理由は実のところ私にもよくわかりません。ですが強いて言うなら私達が勝ち取ったこの国の平和の行く末を見届けるためではないでしょうか。お金なら有り余っていますし職につく必要はないですしね。たまに気まぐれで歴史の公演や今回のように取材に答えたりしますけど基本的にはこの町で静かに暮らしていきたいんです。
だから貴女の本では無職と紹介してくださって構いませんよ。
……そうですか。ならただのポクルイーシキンとして紹介してください。昔の肩書は当人の過去を語るためには必要ですが今回の私はただの語り手です。肩書は不要でしょう。
世界ウィッチ権利保護連盟 第二代会長
ハンナ・ウルーリケ・ルーデル(当時)
知っての通り私はネウロイを全て倒せばそれは即ち世界平和の到来だと考えていた。馬鹿な話だがな。ネウロイを倒し切った後、私は戦争終盤に知り合った友人のクロステルマンの家に居候する事になった。
するとどうした事だろう、世界中で戦争が起こり始めるじゃないか。これはダメだ。世界の平和を守るためにも私はストライカー・ユニットに足をとうそうとした。結局それはクロステルマンとその同居人のビジョップに止められたがな。
私も力になれることはないかと自分なりに考えてみるとなんとガリアでは対地攻撃の経験が不足していて教官を探していると言うではないか。
私はクロステルマンの運転する車でパリに向かいそのままガリア空軍のウィッチに対地攻撃のやり方というものを教えてやった。お陰でガリアは半年ばかりで平和になった。良いことだ。
……私が出撃していたかどうかだと? 貴様も一緒だっただろう。知っている事を何故聞く。
まったく、世界の平和を守るには私が出撃しなくてどうすると言うんだ。
……当然他の国にも行きたかったが、知ってのとうり各地の国境で止められている間に全部終わってしまった。
……今こんな大層な役職についているのは奴の考えが世界平和のためになると感じたからだ。事実、この連盟ができて以来大きな戦争は起きていない。あっても地域紛争程度のものだ。それすら私達が対応するからすぐに鎮圧される。世界平和のなんといい事か。
最後に著者として名前を出すつもりだったのにルーデルのところで二、三回ニールマンの名前出しそうになり結局こうなりました。
退役したウィッチの一部は犯罪組織と合流してる可能性もゼロじゃない気がしたきました。完全に魔法力を失ってないならシールドは無理でも筋力くらいは強化されているかもしれませんし使い道は多そう。
何より勉強面で不利を受けているから真っ当なところへの就職が難しそう。
まぁ、エイノ・ユーティライネンみたいに曲芸飛行とかで生計立てたり単に結婚したりとかも多そうな気がしますけど。