エイラがヴェルツィレ基地に赴任して1ヶ月ほど経った頃突然司令部に呼び出された。比較的戦線が安定していてこれと言った問題がない中呼び出された事にどことなく嫌な予感を感じながらも断ることをできるわけもなく渋々ながら司令部へと出頭した。
「良い話と悪い話、どっちから聞きたい」
人払された部屋にエイラが入るや否やどこかイラついた様子のマンネルヘイム元帥が問いかけた。
「では良い話からお願いします」
「カールスラントとオラーシャと秘密裏に同盟を結ぶ事になった」
「同盟ですか」
北方方面軍として軍事的には元々密接に繋がっていたことから今更同盟を結ぶ事にエイラは意味を見出せなかった。
「この同盟は軍事的、経済的な繋がりを強化することも目的ではあるが一番の目的は情報共有にある」
「情報共有?しかしスオムスにはカールスラントやオラーシャが欲しがるような情報はないと思いますが」
「実はそうでもない。スオムスはネウロイに関する情報がかなり豊富だ。初めはそれを両国は欲しがっていた」
「初めは、ですか?」
「そうだ、この交渉が纏まりかけていたときに起こったさっき言った悪い話に関する事について今は知りたがっている」
秘密裏に同盟を結んだという事とその目的が情報ということから来る時に感じた嫌な予感が正しかったと思ったエイラは最後の抵抗とばかりに尋ねた。
「できればそれは聞かずに帰りたいんですがいけませんか?」
「ここまで聞いといてそれはないだろう」
「しかし機密情報ならば知る人間は少ないほうがいいはずです」
「君が誰かに情報を流すとは思っていないよ」
「正直これ以上は深入りしたくないのですが」
「今更それを言うか、一年ばかりいうのが遅いんじゃないか。もう君は引き返せないところまで来ているんだぞ」
「そこまで引き込んだのは元帥じゃないですか」
「それがわかっているのならこの話を聞かないという選択肢が無いこともわかっているだろう」
どうかさ足掻いても逃げれないと悟り悪い方の話を聞く事にした。
「去年話した工廠の話は覚えているか」
「はい、カールスラントとオラーシャがストライカーユニットと航空機と戦車の工廠を作るという話ですよね」
「そうだバルバロッサの敗戦処理が終わり次第着工する予定だったがそれが無期限延期になった」
「何があったんですか」
「ブリタニアが介入してきた。奴らスオムスがカールスラントとオラーシャに近づく事が気に食わなかったようだ。表向きには地中海方面の輸送量を増やすためと言って北欧方面の輸送船とその護衛艦の数を減らして工廠を作るのを遅らせようとしている」
「しかし工廠を立てるのに必要な物資はスオムスで賄えるはずです。あまり意味がないのではないですか?」
「今はペテルブルクの復興とヴィープリなどマンネルヘイム線付近の都市の復興に物資を回していて工廠用の物資を確保できていない」
「なら物資が余ってから建てればいいじゃないですか」
「そう簡単な話ではない。まず間違いなく復興が終われば更に輸送量を減らされる。それに本来工廠は今年の夏に稼働して北方方面軍の装備品の大部分を賄うはずだった。それによって発生する経済効果を政府はかなり期待していたし軍部もそれにより予算が多く割り振られる事に期待していた。それが無期限延期だ、期待していた分落胆も大きい」
苛立ちを抑えようと乱暴な手つきで葉巻を取り出し火をつけた。
「それが秘密同盟とどう繋がるんですか」
「ブリタニアが秘密裏に交渉を持ちかけてきた。奴らの要求を飲めば元の輸送量に戻してくれるそうだ。そしてその要求してきたものの一つにカールスラントとオラーシャが興味を持った」
「何を要求してきたんですか」
「ネウロイのコアだ」
「ネウロイのコア?我が国にそんな物あるんですか」
「ない。だから取りに行く必要がある」
そう言われてエイラは自分が呼ばれた理由を理解した。
「わたしに取りに行けと」
「理解が早くて助かる」
「しかし仮に手に入れたとしてもネウロイを意図的に国境を超えて移動させる行為はヴェルサイユ条約で禁止されていませんでしたか?」
エイラの言うヴェルサイユ条約とは、第一ネウロイ大戦後にガリアの首都パリで行われたネウロイに関するルールを定めた国際会議で決まった条約のことだ。この取り決めの一つにネウロイの移動がありこれは自国領内にネウロイが出現した場合、やむを得ず国境を超えた場合を除いて他国にネウロイを意図的に移動さる事を禁じる事を定めた条文であった。そのためたとえコアだけだとしても国境を超えてネウロイを移動させる事は国際社会からの批判を招く事になる。
「だからブリタニアは秘密裏に依頼してきた」
「しかし一体何故ブリタニアは自分で手に入れようとしなかったんでしょうか」
ブリタニアほどの大国であれば自分たちでネウロイのコアぐらいならば手に入れららはずだとエイラは考えていた。
「今あの国には多くの国の軍隊がある。そんな中コアを手に入れようとしたら容易に察知される。それが嫌だったんだろう」
「ネウロイのコアを使って何をするか知られたくなかったという事ですか」
「そうだ、だからカールスラントとオラーシャはこのことに興味を持った」
ヴェルサイユ条約ではネウロイに関する研究結果は全て他国に開示しなければならないという条項もあり基本的に各国はネウロイの研究結果を開示していた。
「しかし隠そうとしている事をそう簡単に教えてくれますかね」
「そこは外交官の交渉次第だな。君は一刻も早くコアを手に入れてきてくれ」
「簡単に言いますがコアだけを取り出すのはかなり大変ですよ」
「だからこそスオムス最強のウィッチである君に頼んだんだよ」
「機密保持の観点からわたししかいなかっただけでしょう」
あまりの嘘臭さに思わずエイラはそう言った。
「勿論それもあるが君が最強だというのは私の本心から言った事だ」
「そうですか。しかしこれはスオムスがコアを手に入れた事を察知されるのもダメなんですよね」
「当然だ。だから気付かれないように夜に移動してもらう」
「わたしはナイトウィッチではありませんが」
「飛べないわけではないだろう」
「士官学校で一応訓練はしましたけど」
「なら大丈夫だ。飛んで移動するわけじゃないし仮に飛ぶ事になったとしてもそう長くはないはずだ」
士官学校で夜間飛行訓練はしたが3年以上前のことでありできればやりたくはなかったエイラは安心した。
「さっそく今日の夜NKLー16に乗ってラドガ湖を横断して単独でネウロイ勢力圏に移動してくれ」
「今日、しかも単独ですか!?」
てっきりどこかの基地から飛び立ってコアを手に入れると思っていたエイラはマンネルヘイム元帥の言葉に驚いた。
「そうだ、今日からネウロイ勢力圏に単独で潜入し一週間以内にコアを奪取してきてくれ。ちなみに書類上は参謀本部でウィッチの運用に関して研究している事になる」
「待ってください、いくらなんでも一週間は短すぎます。せめて1ヶ月ください」
「私としては時間をあげたいところだが政治家連中が早く手に入れろとうるさくてね、悪いが一週間で取ってきてくれ」
「じゃあせめて人手を増やしてください」
「機密保持の観点からそれは無理だな」
「わかりました、最善は尽くしますがあまり期待しないでください」
「きっと最高の結果を持って帰ってくると信じてるよ」
ネウロイに関する国際条約が無いはずがはないと思ってヴェルサイユ条約、作りました。
アニメでもマロニー大将の研究だと明らかに後ろ暗そうだったし多分禁止事項に抵触したたのかなって思いました。