他の統合戦闘航空団を主役にアニメやってほしいなと思う今日この頃。
エイラの懸念は当たった。国連に提出された決議は棄権一、反対三、賛成三で否決された。
内訳としては棄権がガリア、反対がカールスラント、オラーシャ、リベリオン。賛成がブリタニア、扶桑、スオムスだった。これによりスオムスは本格的に戦時体制へと移行する事になった。
「ガリアは棄権か……」
「あの国は南の旧ヴィシー政権が随分ときな臭い動きを始めてるし安保理どころじゃなかったんだろうね」
苦々しげに呟くエイラをハッセが宥めた。
「ガリアもいよいよダメかもしれないな」
この安保理はガリアにとっても大きな意味を持つはずだった。通ればガリアで内戦が起きた時、現政権に対して国連が力を貸す事になる契機となり得たかもしれないがガリアはそれを怠った。仮に内戦が起きても少なくともスオムスは介入に反対するだろうしそれは今回反対したオラーシャやカールスラントも同様だろう。
「そんなガリアよりもダメかもしれないのがウチの国だけどね」
「それは言うなよ」
国境を越えたバルトランド軍の進軍速度はエイラ達の予想よりも遅かった。しかしそれはスオムスの援軍が辛うじて間に合うかどうかの速度であり今後の進軍速度によっては前線を突破される可能性は十分にあった。
「司令官、予定通りバルトランドに対する特別作戦の準備を進めてもよろしいでしょうか」
国連による戦争の終結が不可能になった今、この戦争を終わらせるにはスオムス自身の力を誇示する必要があった。
「……仕方がない。準備を進めてくれ」
バルトランドはスオムスの仮想敵国で唯一独力での勝利が望める国だ。他国と協力しなければならない他の仮想敵国とは違いスオムス独力での綿密な反撃計画が複数準備されていた。
「想定よりも敵の進軍速度が遅いのでプランBでよろしいでしょうか」
「それでいい。ところでバルト海の動きはどうなっているんだ?」
「バルト海にいるバルトランド海軍主力はストックホルムにこもっているようです」
バルトランド海軍は海防戦艦四隻とカールスラントから購入した旧式の戦艦、オスカル一世(カールスラント名マルクグラーフ)を中心とした六十隻の艦隊を有している。その内、海防戦艦二隻とオスカル一世を中心とした二十隻程の艦隊がストックホルムに駐留している。
「スオムス海軍は海防戦艦二隻とブリタニアから供与されたケント級重巡洋艦二隻の他は戦闘用艦艇が二十五隻か」
戦闘用艦艇と言ってもその殆どは砲艦や魚雷艇と言った小型の艦艇で駆逐艦などはこれまたブリタニアから供与された駆逐艦が五隻だけ。
バルトランド海軍も補助艦艇に関してはそう大きく変わらないがそれでも駆逐艦が七隻、バルト海に存在している。
「海軍力は圧倒的に不利です。事前作戦通り、積極的な戦闘は行わずに艦隊を温存する方針でよろしいですか?」
「海軍はそれでいいぞ」
エイラは頷くと空軍参謀に視線を向けた。
「ひとつ気になってた事があるんだけど……」
そんな言葉と共に放たれた一言は海軍参謀を驚かせ、空軍参謀を唸らせる事になった。
「航空機で戦艦を撃破する、ですか……」
歴史的に人類同士の戦争は度々発生している。しかしそれらの間には必ずと言っていいほど怪異との戦争が存在している。人類は怪異との戦争では怪異に対抗するための戦術、兵器を考え人類同士の戦争では対人の戦術、兵器を考える。どちらか一方との戦争中はもう片方に対抗する手段の研究開発はおろそかとなる。そのため航空機が戦艦に対して有効なのかどうかこの世界の誰一人として知る者はいなかった。
「種類によってはネウロイの装甲は戦艦の主砲で破る事ができた。そして同じように航空機の爆弾で破る事もできた。戦艦の主砲が戦艦の装甲を打ち破れるなら航空機の爆弾が戦艦の装甲を打ち破るのも道理じゃないか?」
「たしかに航空機の爆弾は中型陸戦ネウロイを吹き飛ばした記録はあります。そして同じように戦艦の主砲が中型陸戦ネウロイを吹き飛ばした事もあります。ですがネウロイと戦艦は違います」
そう言ったのは海軍参謀だ。
「戦艦とネウロイならネウロイの方が強いだろ」
「それはそうですがネウロイは全てにおいて規格外でした。その規格外に対応すべく戦艦もまた進化し続けました。ネウロイを倒せたからと言って戦艦も倒せると言うのは安直ではありませんか?」
「たしかにネウロイに対応した新型の戦艦なら航空機じゃ倒せないかもしれない。だけどバルトランド海軍の戦艦は旧型だし沈めるまでは無理かもしれないけど港湾内で座礁させるくらいはできるだろ」
エイラも戦艦を航空機で撃沈できるとは思っていない。だが水深の浅い湾内で攻撃すれば座礁させるくらいはできるのではないかと考えていた。
「バルトランドの主力艦隊を行動不能に持ち込めればスオムスの貧弱な海軍でも制海権を取る事ができる。現状バルト海の戦力はバルトランドがやや有利って感じだけど、北海にいるバルトランド海軍が来ればバルト海はバルトランドのものになる」
現状バルト海のにおけるスオムス、バルトランドの戦力比は30.5センチ砲を搭載した戦艦を保有するバルトランドが有利だが数の上では互角だ。
海軍全体では大きく優っているためバルトランドは援軍が到着するまでは大きな動きはしないだろうとスオムスは予測を立てていた。
「問題は開戦にあたってバルトランド海軍があらかじめ艦隊の配置を変えていないかどうかだけど……」
「その点に関しては問題ないかと。スカゲラク海峡をバルトランドの艦隊が通れば流石に感知できます」
情報部の将校の答えに納得したように頷くとエイラは再び海軍参謀に視線を向けた。
「時間が経てば経つほど海軍は不利になる。少しでも可能性があるなら空軍に攻撃させたいと思う」
「敵の本土に近づくとなればかなりの規模を出さなければなりません。失敗すれば我が軍は多くのパイロットと爆撃機、そして護衛の戦闘機を失う事になります」
そう言ったのはこれまで黙っていた空軍参謀だった。
「だけど放っておいても状況は悪くなるだけだ」
「安保理で味方してくれたブリタニアと扶桑の援助は期待できませんか?」
「他国の支援に期待するのを悪いとは言わない。だけど最初からそれありきで考えるのは良くないだろ。それで一切の援助が来なければスオムスは滅びかねないぞ」
「ですが作戦が失敗したらスオムスは滅びかねません」
「だからと言ってこのままバルトランド海軍を放っておくこともできない。それにブリタニア、扶桑が仮に援助してくれるとしてそれは海路からになるんだぞ」
海路はバルトランド海軍が現在では臨検や機雷等の可能性を考えると積極的に行われるとは考えにくい。
扶桑であればオラーシャの大陸横断鉄道を使うこともできるが、安保理で反対票を投じたオラーシャの鉄道を通っての援助が効果的なものになるとは思えない。
「今バルト海にいるバルトランドの主力艦だけでも撃破しないと援助も期待できない。たしかに失敗すればわたし達は負けるかもしれない。だけどここでリスクを取らないとこの先の勝利も難しいぞ」
予備役を動員できれば一時的に優位に経つ事は間違いない。しかしそれとて膨大な軍隊を支えるための物資がある事が大前提だ。不足分を輸入に頼るとしても制海権をとっておかなければスオムスが勝利を得る事は難しい。
「今ここでリスクを取るか、それとも後でより強大な海軍を相手に不利な制海権争いを繰り広げるか二つに一つだ」
現状バルトランド優位というのが世界の評価だろうとエイラは考えている。そのため決議に賛成した国からしか支援を受けることはできないだろう。だが仮にバルトランド海軍主力部隊を叩ければその評価は一転する。
勝ち馬になれるのであればスオムスに支援をしてもいいと考える国も出てくるかもしれない。それにかけるためにもエイラはバルトランド海軍主力の撃破は急務だと考えていた。
「……わかりました。司令官閣下がそうおっしゃるのであれば否やはありません。閣下のおっしゃる通り、このままだと物資不足に陥り干上がる事は目に見えていますから」
空軍参謀が賛同を示すと他の参謀達も賛成し、かくして航空機によるバルトランド海軍主力の艦隊の撃破作戦の立案が始まった。
今回の話を書くにあたってふと思ったのがストライクウィッチーズの世界、実は大艦巨砲主義のままなのではというものです。
人対人の戦争がなくて主に対怪異を考えていたであろう事から人に対する戦術研究がそれほど進んでいないのではないか。ってところから海ならまだ航空主兵論が出始め、あるいは出ていなくてもおかしくないなとこんな話を書きました。