ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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流石に一週間に四本、文字数にして合計一万六千字弱は無茶なのではないかと思い始めた今日この頃。


ラップランド防衛戦 中編

「非番の連中も集まったし私達はさっさと撤退する事にしようか」

 

宣戦布告から三時間が経過したが未だにバルトランドの国境警備隊が攻撃してくる様子はない。

 

「どうしてバルトランドは攻撃して来ないんでしょうか」

 

アウロラ達にとっては幸運な事に、バルトランドの国境警備大隊は何故か一切の攻撃をせず沈黙を保っていた。

 

「ありがたい事じゃないか。これで民間人を無事に避難させられる」

 

人口が国境警備大隊の一割以下と言う小さなカリガスニエミなら、民間人の収容も三時間あればほぼ完了している。残るのは余程強情な人間か、親バルトランド派の人間くらいのものだろう。

 

「民間人を護衛している第二中隊を先頭に後退を開始する。私とシニは敵が仕掛けてきたら迎撃する為に最後尾につく」

 

上がりを迎えたとはいえまだ魔法力を使えるウィッチであるアウロラとシニがいればバルトランドの国境警備隊くらいならいともたやすく撃退できる。

 

「しかしどうしてバルトランドは攻撃して来ないんでしょうか。宣戦布告までしてきたのに準備不足と考えにくいですが」

 

「さてな。奇襲性を重んじるならここで仕掛けてくるはずだが……」

 

スオムスにとってバルトランドが仕掛けてくるのは完全に予想外だった。しかしせっかく不意をついたと言うのにバルトランドが攻撃してくる気配はなく、アウロラは拍子抜けしていた。

それが一転したのは翌日のことだった。

 

「アウロラ隊長! バルトランドの機械化歩兵と戦車の混成集団が後方約五キロの地点まで接近していると報告がありました!!」

 

それに気が付けたのはアウロラが常にバルトランドの追撃を考え、監視のために人員を割いていたからこそだった。

 

「規模はどれくらいだ」

 

「見える範囲で機械化歩兵は大隊規模。戦車は中隊規模との事です。現在確認中ですが後方からさらに大規模な部隊が行軍しているとの事ですから……」

 

「先行する部隊が大隊規模なんだ。連隊ではないだろう。最低でも旅団、もしかしたら師団規模かもな」

 

アウロラの予想は当たった。

 

「続報きました。師団規模のバルトランド軍を確認したとの事です」

 

民間人を連れての撤退とあってアウロラは追撃してくるであろうバルトランド軍の情報収集に余念がなかった。すぐに入ってきた続報から敵の規模を確認したアウロラは、バルトランドが何故直ぐに攻撃して来なかったのかを理解した。

 

「なるほどな。奴ら国境警備隊では勝てないとみて主力部隊で私達を確実に叩くつもりだったのか」

 

「隊長は随分と高い評価をされているみたいですね」

 

感心した様子のシニにアウロラは不満そうな表情を浮かべた。

 

「馬鹿を言うな。私を倒したければもう後二、三個師団を持ってきてもらわないと困る」

 

「隊長ならそれくらいいなければ倒せなさそうですが、今は民間人を逃さなければなりません。一個師団しかいない事を不満に思うよりは喜んだほうがいいでしょう」

 

シニとてアウロラが一個大隊程度でやられるおは思っていない。なんなら戦場を離れて随分と経つシニ自身が、一個大隊相手に負ける事はないと思っているのだからウィッチとして実戦経験豊富な実力者であるアウロラが負けるはずがない。

 

「その通りだな。シニ、早速で悪いが狙撃ポイントを探してこい」

 

「了解しました。隊長はどうされますか?」

 

「遅滞戦闘と、お前が狙撃しやすい場所への誘導と足止めをしてやる」

 

「ありがとうございます。敵を誘導するのなら狙撃ポイントは街道から外れた場所の方がいいでしょうか?」

 

民間人への被害を極力減らすためにシニは敢えて狙撃しやすい街道沿い以外への誘導を提案した。

 

「できれば先行している一個大隊は叩き潰しておきたい。多少リスクはあるが、街道なら見通しがいいから戦果も大きくなるだろう」

 

「了解です」

 

「私が先に仕掛けて奴らを足止めする。配置に着いたら連絡してくれ」

 

バルトランド軍にとっては驚くべき事に、アウロラは堂々と姿を現した。スオミ KP/-31を肩から掛けて仁王立ちし、片手にはヴィーナの瓶を手にしている。スオムス軍の軍服を着ていなければ、それが敵だとは認識できなかっただろう。

 

「やっと来たか盗人ども」

 

魔法力を発言する事もなく、待ちくたびれたぞと呑気にヴィーナを呷るアウロラに、バルトランドの兵士たちは戸惑った。

 

「盗人とはなんだ!」

 

兵士たちは戸惑っても、士官はそうではない。盗人などと言われて黙っていては兵士の士気に影響しかねない。小隊長らしき人物がアウロラの侮辱に対して怒鳴り返した。

 

「人の領土に土足で踏み入る奴を表現するのにこの上ない言葉だろう」

 

「我らはバルトランドの安全を脅かすスオムスと言う犯罪国家を成敗する正義の使者だ!」

 

「安全を脅かすだと? 私達が一体何をしたと言うんだ」

 

心底訳がわからないと言わんばかりの態度でアウロラは言った。

 

「ネウロイを倒し平和になったと言うのに一向に軍事力を減らさず、イタズラに周囲を威圧する。これで我らの安全を脅かしていないとよく言えるな!!」

 

「スオムスはネウロイとの戦いが終わってから常備軍の数を減らしてきた。それに待ったをかけたのはお前達バルトランドだろう。バルトランドが軍拡を進めるから私達の軍縮は止まった。せめてこちらに敵意を向けなければまだなんとかなったものを、何かと難癖つけてきたのはそっちだ。バルトランドこそが犯罪国家と言うべきだ」

 

そう言うとアウロラは再びヴィーナを呷った。

 

「だが私は優しいからな。犯罪国家バルトランドに対しても慈悲をくれてやろう」

 

ギロリと鋭い視線を向けるとバルトランド軍の兵士達は息を飲んだ。

 

「今引き返せば皆殺しは勘弁してやる。だがここで引き返さないなら貴様らは生きて祖国の地を踏めないと思え」

 

「笑わせるな。たった一人で一体何ができると言うんだ」

 

アウロラの言葉を士官は鼻で笑った。普通に考えればたった一人で一個大隊を相手になどできるわけがないからだ。

 

「そうか、お前達には見えていないのか。スオムスを守る白い妖精の姿が」

 

その瞬間、アウロラに反論していた士官の額に赤い花が咲いき、その場に崩れ落ちた。

 

「しょ、小隊長!?」

 

「小隊長が撃たれた!」

 

「狙撃手がいるぞ! 全員障害物に身を隠すんだ!!」

 

その言葉にバルトランド軍が慌ただしく動き始めるがそれを見逃すアウロラではない。

 

「おいおい。私がいるのを忘れてないか?」

 

魔法力を発現し、バルトランド軍の頭上に飛び上がるといつの間にか手に持っていた大量の手榴弾をばら撒いた。

 

「撃て! 撃て!!」

 

手榴弾の爆発後、アウロラを自由にはさせまいと指揮官が指示を出すが簡単に捕まるアウロラではない。

 

「馬鹿を言うな! 味方に当たる!!」

 

アウロラ一人のために機関銃を乱射する訳にもいかずバルトランド軍が戸惑う間にも被害はどんどんと拡大していく。

アウロラのスオミ KP/-31に撃ち抜かれる者、手榴弾の爆発に巻き込まれる者、何処からともなく飛んでくる狙撃に撃ち抜かれるもの、同士討ちに巻き込まれる者と理由は様々だが着実に数を減らしていく。

いつのまにかアウロラが消えて、気がついた時にはバルトランド軍一個大隊は死者42人、負傷者は重軽傷者合わせて100人を超える被害が出ていた。たった一人、狙撃手を合わせても二人の人間の手で中隊規模の被害が出た事にカリガスニエミから侵入したバルトランド軍の司令部は驚きを禁じ得なかった。

だがこれはバルトランドにとって悪夢の始まりに過ぎなかったと言う事をこの後嫌と言うほど思い知る事になる。




陸戦ウィッチってあまりいないですよね。
ミハエル・ヴィットマンとかオットー・カリウスあたりは陸戦ウィッチとして出せそうなのに何故かアールネ・ユーティライネンが陸戦ウィッチとして出ると言う……。
いや、まぁエイラがいるからって事なんでしょうけど他にも出して欲しかったな……。
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