ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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ストライクウィッチーズ、アニメ4期とかないかなぁ。


第一次ポルカッラ半島沖航空戦

エイラとバルトランドの爆撃機隊と護衛のウィッチとの戦闘は、スオムス湾の入り口でにあるポルカッラ半島の沖合で始まった。

ポルカッラ半島は戦略的に極めて重要な場所にある。この地点を押さえればスオムス湾の通航を制限できるだけでなく、要塞砲を設置すればスオムス湾の半分ほどまでを射程に収める事ができる。

現在のスオムスではポルカッラ半島に要塞はないが、監視所と沿岸砲台を設置して船舶を監視している。もし仮に海からスオムスの首都、ヘルシンキを攻めるのであれば必ず通る必要があり、後々スオムス全土を手に入れるつもりならばこのポルカッラ半島の抵抗力は削いでおきたい。

そんな考えからバルトランドはヘルシンキへの空襲のついでにポルカッラにも攻撃をするつもりだった。

 

「……きたか」

 

固有魔法により、バルトランドの爆撃機隊の到着を察知したエイラは前を睨みつけた。

数秒後、小さな黒い粒が現れそれが段々と人の形をなし始めた。後ろには大型の爆撃機の姿も見え始め、それを見てエイラは口を開いた。

 

「こちらスオムス魔導軍所属、エイラ・イルマタル・ユーティライネン大将。貴女達はスオムスの領空を侵犯している。所属と目的を述べ、領空の外にでろ。さもなくば撃墜する」

 

形式的にではあるが、エイラは警告を送った。これで引き返してくれるのであれば御の字。引き返さずともエイラを撃墜しようと無理に攻撃してくればヘルシンキへの攻撃を遅れさせる事ができる。

いくらエースとは言え、一人でジェットストライカー相手に堂々と正面から名乗りを上げるなんて無謀極まる。罠か何かであろう。相手の指揮官が冷静であればそう判断する。だが同時に、敵国の総司令官が最前線にいるこの好機を逃すわけには行かないとも考える。

スオムス側の航空戦力がバルトランドに比べて数的に劣勢なのは間違いない。たとえ罠だとしてもバルトランド軍の戦力を上回る物を用意しているとは考えにくい。

 

「高度の優位を活かせ! 敵は一人、一撃離脱で確実に葬るぞ!!」

 

バルトランドの爆撃機を護衛するウィッチの判断がここでエイラを排除するというものになるのは当然の帰結だった。

それを認識したエイラは、緊張を解きほぐすように大きく深呼吸をした。

 

エイラの固有魔法、未来予知は極めて優秀な固有魔法だ。だがそれは使い手の実力が高くなければその力を十全に発揮することはできない。

たとえ未来がわかっていても回避が遅ければ被弾する事になり、逆に回避が早すぎれば、敵に射撃を修正する暇を与える事になり、元々の未来予知とは違った結果になる。故に未来予知を用いた回避はギリギリまで敵を引きつける必要がある。一見すると便利で強い固有魔法だが、その実使い手にかなりの実力を要求する難しさがあった。

突然、エイラはその要求を満たしている。必中に見えた攻撃をエイラがほんの少し体を動かすだけで全弾回避して見せると、バルトランドのウィッチは驚いた様子を見せた。

 

「な、なんで今のが当たらないんだ!!」

 

未来予知は敵の未来位置も分かるため、攻撃にも応用できる。だが高速で飛び回る敵に、それもネウロイのような大きな敵ではなくウィッチと言う小さな的に対して当てるのは至難の業だ。

もちろん、必中というような距離にまで近づく事ができれば話は別だ。ウィッチ同士の模擬空戦ではできる限り距離を詰めての攻撃をする。リーネやハッセのように、遠距離からの狙撃を得意とするウィッチもいるが、ネウロイと戦う時とウィッチ同士の模擬空戦ではその距離は大きく異なる。ネウロイと違い的が小さいため、その分だけ近くで狙撃を行う。

 

「足を止めるな! 駆け抜けろ!!」

 

速度差が小さいのなら距離を詰め、後ろをとってしまえばいい。しかしその差が大きければ相手の攻撃に合わせてカウンターをするしかない。

思わず絶句し一瞬、動きが止まったウィッチがいた。未来予知によってそれを察知していたエイラは、それを見逃す事なくカウンターを浴びせた。

 

「くそ! 誰がやられた!!」

 

「カミラとアネッテが撃ち落とされました!」

 

「ヴァネッテもいないよ!!」

 

バルトランド軍の護衛ウィッチは12名。そのうち四分の一が今の攻防で撃ち落とされた事に、バルトランドウィッチ隊の指揮官は言葉を失った。

しかしそれでもまだ、バルトランド軍が数の上で勝っている事に違いはない。バルトランドウィッチ隊の指揮官は冷静に高度を上げ、再度一撃離脱での攻撃を企図した。

もしもエイラがジェットストライカーであれば、このような迂闊な行動をとる事はできなかっただろう。だがレシプロストライカー相手ならばそんな迂闊な行動も許される。航空戦において速度差は正義だ。

実際、エイラも再上昇を阻止しなかった。いやできなかった。だが再攻撃という選択そのものは迂闊だった。航空戦における速度差の優位を覆せる数少ないウィッチが、エイラだったからだ。

 

「なぜ当たらないんだ!!」

 

「隊長、シセルがやられた!」

 

シセルは部隊の戦闘隊長でウロイとの戦闘経験もある。この部隊で一番の実力者だった。そんな人物が撃墜されたとあって部隊に動揺が走った。

 

「ソニア、キルステン、シーラもだ!!」

 

周りを見渡すと部隊は当初の半分以下にまで数を減らしていた。

 

「れ、レシプロストライカーでどうしてジェットストライカーに勝てるんだよ!」

 

「ふざけやがって! みんなの仇だ!!」

 

あまりの理不尽さに、絶叫を上げながら二人のウィッチがエイラに向かって突っ込んだ。

 

「ドリス、モア待て!!」

 

指揮官と他二人はまだ冷静だったが、仲間が突出するのを見て傍観しているわけにはいかないと反射的に追従した。だがこれが大きな間違いだった。さっきまでは高度と速度の有利を活かしての一撃離脱だったのに、それをせず下から速度の優位性を殺しながら攻撃する。それで撃墜されるようなエイラではない。瞬く間に二人を撃破し、追従していた三人も撃ち落とした。

 

「……後は爆撃機か」

 

ざっと数えたところ24機のB-17爆撃機がコンバット・ボックスで上空を飛行していた。

 

「今すぐ爆弾を海に投棄し、こちらの指示に従え。わたしは無益な殺傷行為は望んでいない。投降しろ」

 

護衛のいない爆撃機などエイラにとってはただの的でしかない。スポーツハンティングのように、無抵抗な相手を撃つ事をエイラはよしとしない。

だか、バルトランド爆撃機隊の答えはエイラの期待を裏切った。

爆撃機隊はエイラに向かって機銃を掃射し、徹底抗戦の意思を示したのだ。

 

「まぁ、そうなるよな」

 

抵抗するようならば撃墜する。バルトランドはスオムスよりも国力が上とは言っても、カールスラントやオラーシャと言った大国と比べたら随分と小さい。爆撃機もそのパイロットも、ウィッチも貴重だ。倒せる機会があるのならばできる限り倒しておくと言うのがスオムスの基本方針だった。

 

この日、エイラは十二人のウィッチと十八機のB-17爆撃機を撃墜。七機の爆撃機を鹵獲した。この日の戦果を待って、エイラはネウロイ以外の撃墜スコアでもエースとなった。

同時に、レシプロストライカーがジェットストライカーに勝ったという事実が世界中に大々的に喧伝された。これを一つのきっかけとして、各国はさらに高性能なレシプロストライカーの開発と、エイラの未来予知を人工的に再現すべく研究が開始された。これはスオムスがジェットストライカー技術の遅れを取り戻す契機の一つとなり、ウィッチ大国としての地位を確たるものとする事につながることになる。




魔女達の航跡雲で人工的にナイトウィッチをつくる実験をしていたので、エイラの未来予知も人工的に疲れたりしないんでしょうか。まぁ、ナイトウィッチと違って原理が不明確ですし多分無理な気がしますけど。作れるとしたら偏差射撃、ラルとかマルセイユの固有魔法でしょうか。
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