ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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ふと前書きを見返してみると、三分の一くらいは日記みたいになってる事に気がつきました。


義勇兵

カールスラントの義勇兵がバルトランドに入ったと言う報告は、スオムスに激震を与えた。

 

「一個航空団のウィッチと戦車一個大隊が技術交流の目的でバルトランド入りしたって話だけど……」

 

毎年カールスラントとバルトランドは技術交流が目的の軍事交流を行っているが、今年は例年よりもその規模が大きかった。

 

「生憎、それを馬鹿正直に捉えられるほどスオムスは愚かじゃない」

 

カールスラントが敵にまわることは想定通りの事態だった。そしてもしそれが誰の目からも明らかなものとして現れるとすれば、この技術交流だとも考えていた。だがその規模は想定よりも大きなものだった。

 

「例年はウィッチが一個中隊、戦車も一個小隊程度だっだよな」

 

「そうだね」

 

「カールスラントの奴ら、やる気だぞ」

 

一個大隊もの戦車部隊があれば、それもカールスラントの戦車大隊ならば戦況をひっくり返すことは容易だ。

 

「まだそうと決まったわけじゃないよ」

 

「今このタイミングであんなものを送って来るなんて、やるって言ってるようなもんだろ」

 

既にエイラの中ではカールスラントの介入は確定事項だ。後の問題は義勇兵がどのタイミングで投入されるのか、それだけだった。

 

「例の特別作戦を急がせる必要があるな」

 

「ウコンバサラ作戦なら予備役の動員が終わらない事には戦力が足りないよ」

 

「そんな事は知ってる。だけどカールスラントが介入するとなれば、多少無理矢理でも作戦を決行しないと、本格介入されてからだと手遅れになる」

 

「だけど……」

 

バルトランドとの戦いを終わらせる為の作戦は、もとより作成済みではあった。今回の開戦にあわせて多少の変更はあったが、予備役の動員が終わる頃にはそれが実行される手筈になっていた。

 

「それともう一つ。ブリタニアからノイエ・カールスラント及びオラーシャで反乱の機運が高まるって連絡があった」

 

「それって確かなの?」

 

ハッセは言葉をそのまま受け取ったが、ブリタニアのやり方を知っているエイラはその意味を正確に理解していた。ブリタニアは高まるという言い方をしているが、実際は意図的に高めると言うのが正しい言葉だ。

 

「どうやらあの国はこの戦争にオラーシャとカールスラントを介入させたくないみたいだ」

 

現時点において、他国の軍事専門家からの戦争の評価はバルトランド優位が一般的な論調だった。スオムスはいくつかの大きな勝利を得ているが、いまだ全体兵力でバルトランドが有利。たとえスオムスの予備役が動員されても、オラーシャを経由する以外で物資を得る事のできないスオムスでは時間の問題だろうと考えられていた。

 

「多分ブリタニアはなし崩し的にカールスラントとオラーシャが戦争にならないようにしたいんだろうな」

 

「そのための手段がオラーシャとカールスラントの混乱? そんな事しなくとももっと平和的な方法があるんじゃないかな」

 

「その平和的な方法が、理事会の決議だったんだけどな」

 

ブリタニアが望むのは、欧州の平和だ。ネウロイの戦火により荒廃した欧州が元に戻るにははまだまだ時間がかかる。比較的被害がマシなブリタニアはそんな復興活動に物資や人材を派遣し、そのための資金も貸し出して景気がよくなっている。下手に戦争が起きてそれらが中止されると折角の好景気が台無しになるため、戦争が起きてほしくはなかった。

 

「欧州で大国が戦争を起こせば、ブリタニアも否応なしにそれに巻き込まれる」

 

「ガリア南部の旧ヴィシー政権はオラーシャと、王党派はカールスラントに近い。だからオラーシャとしては旧ヴィシー政権にガリアの主導権を握らせてカールスラントを後ろから攻撃させたい」

 

「カールスラントは対抗するために王党派を使おうとするけど、現政権を支持しているブリタニアはそれら二つの勢力がガリアの主導権を握る事を許さないよね」

 

ブリタニアとガリアの間はドーバー海峡で分たれているが、最狭部は三十四キロメートルしかなく、簡単にブリタニア本土を攻撃することができる。

もしガリアの主導権をブリタニアと敵対的な勢力が持つ事になれば、今のような高みの見物をする事ができなくなる。

 

「自分達が血も汗も流さずに今の状態を維持するなら、カールスラントとオラーシャ両国に政治的不和を起こせばいいって事だね」

 

「謀略が好きなあの国らしいやり方だよな」

 

ガリアは本来、今回の戦争に全くの無関係にある国だ。だと言うのに大国の思惑で、ネウロイによる戦火から復興したばかりのガリアが再び戦火に見舞われるのはあまりにも哀れだった。

 

「だけど意図がわかっているのなら、対策は簡単だよね。ガリア国内で不和が起きてもすぐに対応できる、もしくは起きないように各陣営の首脳部を拘束すればいい」

 

ハッセの言葉にエイラは頷いた。ブリタニアなどの大国に比べると、スオムスの情報機関は貧弱だ。しかし国内が混乱してスオムス以上に貧弱な情報機関しかないガリアの情報くらいならば自前で集める事は容易だった。

 

「ガリアには元501のクロステルマンさんとリネットさんがいるよね。警告して事前に国内の不和に対策させる?」

 

「必要ないだろ。ブリタニアがガリアでの不和を許さないんだから何か対策するはずだ」

 

エイラの言葉なハッセは同意した。

 

「ブリタニアの作戦についてはどうする?」

 

カールスラントにいるバルクホルン達やペテルブルクに住むサーシャの事を思えば、ブリタニアの作戦を伝えたいと言う思いがないわけではない。だが今のエイラはスオムスを守らなければならない立場にいる。時には私的な感情を捨て、非情な決断を出す必要があった。

 

「いや、むしろ好都合だ。ブリタニアはスオムスが独力で勝利を得る事は難しいって考えているって事だからな。下手にカールスラントやオラーシャの本格介入を招いて不確定要素を入れたくない」

 

カールスラントが義勇軍を派遣する程度ならまだ許せる。だが本格的な介入を受けてはスオムスもオラーシャに救援を要請せざるを得なくなる。そうなれば勝つにしろ負けるにしろ、戦後のスオムスは大国の強い影響下に置かれる事になり独立を維持する事は難しくなる。

 

「カールスラントが本格介入しなければスオムスはバルトランドに勝つ事はできる」

 

「勝つためにはカールスラントの本格的な介入は防がないといけない。いくら戦友とはいえ、スオムスの不利益になる事は教えられないよね」

 

ハッセは悲しそうな表情を浮かべたが、スオムスの事を考えそう言った。ハッセもエイラほどではないにしろ、カールスラントやオラーシャに知り合いはいる。その人々が戦火に巻き込まれる事を喜ぶことはできない。

 

「だけどオラーシャについては警告くらいは送ってもいいかもな」

 

「本気で言ってるの?」

 

「引退したウィッターに限っては警告してもいいと思う。MiG-15を送ってくれるオラーシャは一応味方と言っていいだろ?」

 

「……この戦争で一儲けするためだろうけどね」

 

このMiG-15の代金は通常の一割り増しの値段になっている。最新のストライカーユニットではあるが、それは明らかに足元を見た値段設定であった。他にもスオムスがオラーシャから輸入する物、食料や燃料に関しては軒並み、値上がりしている。しかし武器弾薬についてはやや安い値段で取引できているのが唯一の救いだった。

 

「それでも味方には違いない。それに上手くやればウィッチを増やせるかもしれないぞ」

 

「どういう事?」

 

「私はペテルブルクにいるサーシャに助けを求めるつもりだ」

 

「502の戦闘隊長だった人だよね。引退したって聞いたけど……」

 

サーシャは現在、ペテルブルクにある祖母の家で隠居生活を送っていた。軍に留まるよう慰留する声も大きかったが、それを振り切っての隠居だった。

 

「だけど固有魔法は健在みたいだし、事務処理能力も高い。オラーシャの事についてはぼかす必要があるけど、スオムスの現状は正直に伝えるんだ。そうすれば、もしかしたらオラーシャよりもスオムスの方が安全だと思ってこっちにきてくれるかもしれない」

 

「ブリタニアみたいな事するつもり?」

 

「オラーシャが危険になるのは事実だ。だけどそれをはっきりと伝えて、何かの拍子に漏れてみろ。ブリタニアとオラーシャの国際問題に発展するぞ」

 

オラーシャとブリタニアの関係は比較的良好だ。わざわざ波風を立てる必要はなかった。

 

「それに、元々わたしたちはオラーシャで混乱が起きる前提の兵力配置をしていたんだ。元ウィッチならそれくらい知っているはずさ」

 

元々ブリタニアがなにかせずとも近い将来、オラーシャで反乱が起こるだろうというのは各国の共通認識だった。

 

「わたしもハッセもオラーシャには元ウィッチの知り合いが何人もいる。サーシャだけじゃなくそいつらにも声をかけよう」

 

「気が乗らないなぁ」

 

「気が乗らなくともスオムスのためにできる事をやらないとな」




まぁ、いくら派遣元が技術交流と言い張ってもどっからどう見ても義勇兵ですよね。

ふと思ったのが、ストライクウィッチーズって東南アジアはどうなっているんでしょうか。
植民地政策はあったとして、第二次世界大戦がないから旧日本軍の武器や兵士が手に入ることはない。あるとすれば扶桑がアジア開放を掲げて何かするくらいですけど……それやってたら欧州との関係が最悪になってそうだからそれはしてなさそつ。もしかして東南アジア、欧州の植民地のままなのでは?
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