ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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そう言えばハーメルンの広告スキップ機能って知っていますか。
自分は今年に入ってから使い始めたんですけど結構快適で今は常にこの機能を使ってます。

ちなみにこの機能、使うにはいくつか条件があるんですけど、その一つが投稿小説の評価100pt以上っていうのがありまして……
まあ何か言いたいかと言いますと皆さんストライクウィッチーズの小説作って投稿しましょう。最近新作少なくて困ってるんで、投稿したら覗きに行きます。


パ・ド・カレーにて

「一体エイラさんは何を考えているのかしら」

 

儚げにため息を吐く姿は、彼女の事をよく知らない人物が見れば深窓の令嬢とでも形容する事だろう。多くの人間が彼女に声をかけることを躊躇うだろうが、この屋敷に住まうのは気心知れた仲間ばかりで彼女の性格が深窓の令嬢なんてものとはほど遠いという事をよく知っている。それどころか、ここには儚げだろうと深窓だろうとそんなこと知った事かと言わんばかりの暴君が住んでいた。

 

「朝食の時間だぞクロステルマン」

 

そう言ってノックもなしに部屋に入ってきたのは、顔に大きな傷のある義足を履いた女性だった。

 

「ちょっと、ルーデルさん!? 入る時はノックしてといつも言っているでしょう!!」

 

抗議する彼女、ペリーヌの言葉もなんのその。ルーデルはペリーヌが手にする新聞に興味を惹かれ覗き込んだ。

 

「スオムスがオラーシャに攻め込んだのか」

 

新聞の一面を読んだルーデルは驚いた様子を見せた。バルトランドとスオムスの戦争が終わったのがおよそ一ヶ月前。それはスオムスの完勝に終わったが、だからと言って大国オラーシャ相手にスオムスが勝てるはずがない。

 

「無謀な話ですわ。いくらオラーシャが内乱で弱体化しているとはいえ、全てが終わればスオムスが占領した地域は即座に取り返されることになりますわ。エイラさんは一体何を考えてオラーシャ侵攻なんてしたのでしょうね」

 

「理由ならスオムスの声明の通りなんだろう。つまりはムルマンスクで反乱の兆しがあり、それによるスオムス経済への影響を考慮した」

 

「仮にそうだとしても、オラーシャ領土で起こることに対してスオムスが兵を出す事は立派な侵略行為ですわ」

 

「そうだな。それでクロステルマン、お前はどうしたいんだ」

 

「どうしたいか、ですか……」

 

「ユーティライネンがネウロイとの戦いを終わらせる事で、平和をもたらそうとしていた事は確かだ。しかしその結果として、不幸にも人同士の戦いにより平和が乱された」

 

ネウロイとの戦争の就活は、不幸な事に人類同士の争いをもたらした。その最初の犠牲者がスオムスであり、同時に再び平和を取り戻すためにもっとも苦心しているのがスオムスだった。

 

「あのユーティライネンが、自ら望んで平和を壊そうとするとも思えん。オラーシャ侵攻はスオムスが平和を手に入れるために必要な一手だったのだろう」

 

「……エイラさんの事を随分と高く評価していますのね」

 

「ユーティライネンが考えなしの馬鹿ではない事くらい、お前も分かっているだろう」

 

エイラが優秀な事は今更言うまでもない事だ。ウィッチとしてもさることながら、十代の年若い少女でありながら、各国の傑物たちを相手に上手く立ち回っていた事から政治的なセンスもある。今回のオラーシャ侵攻に関してもおそらく何か深い訳があることは間違いない。

 

「敵がネウロイから人に変わった事で、あるいは世界平和からスオムスの平和に規模が下がっているかもしれないが、まぁいずれにせよ平和の実現に向けて動いている事は確かだろう」

 

「その過程で無辜の市民が犠牲になる事を見逃せと?」

 

「まさか。どんな理由があるにしろ、ユーティライネンがしている事は平和を乱す行為だ。非難されてしてしかるべきだ」

 

誤解されることも多いが、ルーデルは純粋に平和を希求してネウロイと戦い続けてきた。そんな彼女が、どんな理由があっても平和を乱すような好意を許すはずがなかった。

 

「今ユーティライネンがしている事は、紛れもない悪行だ」

 

だが、とルーデルは珍しく言葉を詰まらせると近くの椅子を引き寄せ腰掛けた。

 

「かつての私の理屈で言うのなら、敵対する全ての人を打ち倒せば平和になるのだろう。しかしそれは、一部の人類に平和をもたらす事にしかならない」

 

「全ての人類が平和を享受するなど不可能だと言う事ですの?」

 

「そうなのかもしれないな。国が違えばそれぞれにしがらみが生まれる。ネウロイと言う共通の敵がいた時はよかった。あの戦争は人類の生存を賭けた戦争だったからな。団結できないはずがない。しかし人同士の戦争は国という組織単位での対立は、場合によっては国家の存亡を賭けたものになる」

 

「ですがオラーシャが仕掛けたのならともかく、スオムスから仕掛けた以上は存亡が同行という問題ではないと思いますわ。領土欲求か何かじゃありません事?」

 

戦争とは何かを得るための手段である。それがペリーヌの考えであったが、ルーデルは違った。

 

「バルトランドがスオムスに侵攻した理由は、表向きはスオムスの軍事力を警戒してのものだった。だがその裏ではカールスラントが糸を引いていた事は間違いない」

 

「カールスラント人の貴女がそんな陰謀論めいたことを口にしてよろしいのですの?」

 

驚いた様子で問いかけるペリーヌをルーデルは鼻で笑った。

 

「あんなもの、誰がどう見てもカールスラントが関わっているだろう。義勇軍にしろ、スカゲラク海峡の封鎖にしろ行動が早すぎる。いや、今はそんな事はどうでもいい。いずれにしろあの戦争はバルトランドの領土欲求からなんて言う単純な理由で起きたものではない事だけは確かだ。スオムスのオラーシャ侵攻もまた、領土欲求などと言う単純な理由だけで起きたわけではないと考えるべきだろう」

 

「バルトランとスオムスは別の国ですわよ。案外、単純な理由で侵攻しているかもしれませんわ」

 

「国は違えど、国家の中枢にいる連中の考えはそう大きくは変わらないだろう。たった一つの利益のためだけに戦争などという非経済的な事をするとは思えん」

 

「それはそうかもしれませんわね。ですが意外ですわ。ルーデルさん、貴女意外と色々考えているのですわね」

 

ルーデルは物事を考える時はかなり単純な思考をする人物と言うのがペリーヌのルーデルに対する評価だった。ネウロイとの戦争では人類が平和を得るためには、全てのネウロイを倒して実現しようとするような人物であるから、その評価は正しいのだろう。しかし、今回に限ってはそうではなかった。

 

「意外とはなんだ」

 

「ネウロイを全て倒せば世界平和が実現できるなんて考え方をする人が、そんなにも深く物事を考えているとは思えませんわ」

 

「それは違うな。ネウロイが人類にとって明確な敵であった以上、全て倒さなければならないのが道理だろう。倒し切ったところで世界平和が訪れなかった事は誤算だったがな」

 

「普通、そんな単純な考え方はしませんわ」

 

呆れた様子でペリーヌが言うと、ルーデルは呆れた様子で首を振った。

 

「ネウロイに関しては単純で構わないだろう。なんせ意思疎通もできない、人類にとって明確な敵だからな。だが相手が人であれば話は別だ。相手にも相応の理由があって戦争をするし、それを止めるためには相手の納得するモノを提示しなければならない。そしてその納得するモノを提示するにしても、足元を見られないように上手く交渉しなければならない」

 

「何事も力ずくで求めるものを求めてきた、貴女らしからぬ意見ですわね」

 

上がりを迎えてなお前線で戦い続ける許可を得た時も、ペリーヌの家で居候する事になった時もルーデルはかなり強引な手段でそれらを成し遂げてきた。

ペリーヌの印象では、欲しいモノを手に入れるのならば相手が逆らえないくらい強大な力を示せばいい。そんな言葉を述べても不思議ではないのがルーデルと言うウィッチだった。

 

「それは間違いだ。確かに力づくに見えるのは否めないが、あれもまた交渉術の一つだ。私が欲しいモノを得るために、相手がやられて嫌な事を盾にする。力づくに見えると言っても、やっている事はただの交渉に過ぎない」

 

物はいいよう、そんな言葉がペリーヌの頭には浮かんだが朝から無駄な論争に労力を使う事を避けそれを口にはしなかった。

 

「それで、結局お前はどうしたいんだ」

 

ペリーヌがどうしたいか。ペリーヌ自身は、スオムスのオラーシャ侵攻を知り、スオムスとオラーシャ両国にいる友人達の無事を祈った。それ以上を求めるとなると、ガリア政府に働きかける必要がある。今のペリーヌにそれができないわけではないが、その行為はガリアを危険に晒しかねなかった。

なかなかペリーヌが返答しない事に剛を煮やしたのか、それとも返答を聞くつもりがなかったのか定かではないが、ルーデルは唐突に椅子から立ち上がった。

 

「ところでクロステルマン、ストライカーユニットを2機用意して欲しいんだができるか?」

 

「旧式の、それもレシプロ機ならできなくはありませんがどうするつもりですの?」

 

「決まっているだろう。世界平和を実現しに行くんだ」




魔女達の航跡雲読んでたら、案外ルーデルって頭脳派なのではと思ったり思わなかったり……いや、やっぱり脳筋かも。
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