ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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暑さもだいぶマシになってきましたね。
それはそうと気がつけばいつの間にやら本作を投稿し始めて四年が経過していました。当初の予定よりも随分と長く続いているなぁと呆れ半分、我が事ながらよく週一投稿が続いているなぁと感心半分の気持ちです。


ヘルシンキにて

スオムスがオラーシャ領土へと侵攻した直後、一番大事な時期にエイラは私的な会談を行った。

 

「エイラ、説明して」

 

オラーシャからスオムスに家族で訪れ、そのまま五ヶ月近くスオムスに留め置かれた上、祖国に攻め入ると言う暴挙を犯したエイラに対して、サーニャは怒り心頭の様子だった。

 

「わたしだって説明したいさ。だけど無理なんだ」

 

「言い訳は聞きたくないわ」

 

サーニャが望むのは、スオムスがオラーシャに侵攻した理由を聞く事だ。言い訳など聞きたくないと強い口調で詰め寄った。

 

「今回の侵攻はパーシキヴィ大統領が決めて、命令を下した事なんだ。わたしは反対したけど、大統領が決めて、議会もそれを後押しした以上はどうしようもないんだよ」

 

今回の侵攻に関して、エイラは一貫してエイラは反対の立場を取っていた。もし仮にオラーシャで起きた反乱が予想以上に早く鎮圧された場合、いたずらにオラーシャを刺激する事になり、国際社会での孤立を招く事になる。

 

「エイラは軍の総司令官でしょ」

 

「司令官である事は、軍の全てを思い通りにできる事とイコールにはならないよ。スオムスは大統領を国家元首に定めているから、大統領がそう望んで実行の裁可を下せば、私に止める手段はない」

 

今回のオラーシャ侵攻は、エイラにとっても予想外のものだった。政府がムルマンスクを欲している事は知っていたが、まさかオラーシャに攻め込んでまで獲得したいほどとは思っていなかった。

 

「嘘はやめて」

 

「嘘じゃないさ」

 

サーニャはエイラが嘘をついていると確信を持っているようだったが、エイラからすればとんだ言いがかりをつけられているようなものだった。

 

「こんなにもスムーズにオラーシャに攻め込んだのは、スオムスが事前に計画を立てていた証拠よ」

 

スオムスがオラーシャ侵攻を決意したのがいつにせよ、それがバルトランドとの戦争が終わってからなのは間違いない。どれだけ長くとも一ヶ月程度しか猶予がないのに、ここまで鮮やかに侵攻できたのは事前計画あっての事なのは間違いない。

 

「……事前計画があった事は否定しない」

 

エイラの言葉に、さらに追撃を仕掛けようとするサーニャを制すると言葉を続けた。

 

「だけどそれは、どこの国でも持っているものだ。いくら友好国でも、何かの拍子で敵に回るかもしれない。そんな時に、対応できないようじゃ軍が存在する意義がない」

 

サーニャとてウィッチとして軍に所属していた身だ。軍というものがどれだけ用意周到なのかはよく知っている。しかしだからと言って納得できるものではなかった。

 

「それを今回の侵攻に転用したって事でしょ。それに、エイラはオラーシャで反乱が起きる事を予期していたわ。元から反乱が起きた時に攻め込むような作戦だったんじゃないの?」

 

「そんな事はない、って言っても信じてはくれないんだろうな」

 

いくらエイラとサーニャが親友同士だとしても、今はサーニャの祖国に攻め込んだ加害者と被害者と言う構図がついて回る。いくら親友が相手でも無条件に信じるなど不可能だった。

 

「少なくとも、わたしはそんな計画を立てるよう命令してない」

 

信じてもらえないと言う事を理解した上で、エイラは断言した。

 

「仮に命令したとしても反乱なんて言う、不確定要素を考慮に入れた上で作戦を立案するなんて馬鹿な事を参謀連中がしたがるとも思えないけどな」

 

「だけどスオムスは高い確率で反乱が起こると思っていた。だからエイラはわたしをスオムスに呼んだんでしょ」

 

サーニャとその家族が反乱に巻き込まれないように、エイラはスオムスに呼び寄せた。反乱が起こることは、ブリタニアが介入していた以上既定路線ではあった。だがだからと言ってそれに乗じてオラーシャを攻撃しようなどとは考えていなかった。

 

「スオムスはバルトランドと戦争をしてなかったら、総動員をしていなかったんだ。本来スオムスが想定していた対オラーシャ戦は、総動員が完了するまでは防衛、その後は他の列強の助けを借りて講和に持ち込むものだったんだ」

 

総動員完了後は、ムルマンスクや鉄道線を遮断する事は作戦に組み込まれているが、それはあくまでも他の列強からの介入が得られなかった場合の非常手段だった。

 

「スオムスが自分から積極的な攻勢を考慮した作戦は存在しない」

 

スオムスに存在したのは、オラーシャからの攻撃に対する反撃作戦であり、侵攻作戦の計画は存在しなかった。もっとも今回の侵攻はその反撃作戦を元にして、侵攻に適した形に組み替えたものだったが。

 

「……どうしてスオムスはオラーシャに攻め込んだの?」

 

まだ納得はしていないようだったが、エイラから聞けることはこれ以上ないと判断したサーニャは、スオムスの考えを尋ねた。

 

「おそらく大統領は、スオムスがこのまま大国の影響力を受け続けることをよく思っていないんだ。今のスオムスが貿易しようと思えば、必ず他国の影響を受けるからな。ムルマンスクがあればそれが解決できる」

 

「それが、それだけがオラーシャに侵攻した理由?」

 

「それは分からないな。わたしだって全てを知らされているわけじゃない。今の大統領は明らかに以前の大統領とは違う。もしかした、正気じゃないのかもしれないな」

 

バルトランドとの講和を不本意な形で迎え、国民からの批判にさらされて以来、パーシキヴィ大統領の外交政策は変わった。果たしてそれが、自分の権力を守るためなのか、本当にスオムスを思っての事なのかエイラには判断ができなかった。

 

「正気じゃないかもしれないって、エイラはそんな人の下にいて不安じゃないの?」

 

「今までのわたしの上官たちは、みんな武官だった。それが文官に変わったから、相手の正気を疑っているだけなのかもしれないからな。不安がないと言えば嘘になるけど、今はまだ大統領を見限る段階にはないさ」

 

武官と文官では、当然見えるものも目指すものも違う。その違いによって、パーシキヴィが暴走しているように見えているのではないか、エイラはそう考えていた。

 

「ネウロイとの戦いが終わったゴタゴタで混乱していた世界情勢の中で、ある程度スオムスの安全を確保する事ができたのは間違いなく大統領が優秀だったからだ」

 

戦後のスオムスは、一歩間違えればオラーシャの衛星国になっていてもおかしくはなかった。しかしパーシキヴィはブリタニアの介入を誘発する事で、オラーシャの影響力を限定的なものに留める事に成功していた。

 

「そうやって、様子見をしている間に手遅れになるかもしれないわ。いいえ、オラーシャに侵攻した時点で、スオムスの大統領は正気ではない、手遅れだと思うわ」

 

サーニャの言葉に、エイラは苦笑いを浮かべた。その考えを否定する明確な理由を待っていなかったからだ。

 

「わたしもそう思わないでもないけど、少なくともわたしが見たところまだパーシキヴィ大統領は正気に見えたんだよ」

 

エイラは軍の最高司令官として度々、大統領と面会している。普段の言動に変わりはなく、正気でなくなっているとはとても思えなかった。

だが同時に、自分よりも遥かに経験豊富な政治家が、自らが正気でない事をそう簡単に悟らせるだろうかとも思い確信は持てなかった。

 

「それに、もし正気ではなかったとしてもサーニャの言う通りもう手遅れだ。正気でないのなら、わたしはオラーシャに侵攻する前に止めるべきだったし、侵攻してしまった以上はもう突き進むしかない」

 

道を違えていたとしても、もう引き返すことができないところにスオムスはきてしまった。エイラとて引き返せるのなら引き返したいが、スオムスは進み続けるしかない。

 

「サーニャには悪いけど、もうオラーシャに返すわけには行かなくなった。このままスオムスに止まってもらうぞ」

 

エイラの言葉に、サーニャは渋々頷いた。少し前まで連絡を取り合っていたサーシャは音信不通になり、ペテルブルクで反乱が起きたことから巻き込まれた事はほぼ間違いない。

もしオラーシャに帰れたとしても、戦火に巻き込まれる事は半ば確定しているようなもの。それならまだスオムスにいた方が安全なのは間違いなかった。自らと家族の安全のために、サーニャはスオムスに留まることを決意した。




いや〜、度々言ってますけど後書きのネタがマジでないですね。いや、厳密には昔ネタにしようとして記憶の奥底にしまったやつとかはあると思うんですけど、そう言うのって往々にして引っ張りたす事ができないんですよね。ふとした瞬間に思い出して、書き忘れてたってなるんですけど、それもまた奥底にしまい込んでしまって……

なんか前にも少し触れた気がしますが、取り敢えずまた書きます。
現代の戦闘機、と言うか航空機って昔と比べていろんな計器が追加されていて、コッグピットで得られる情報が増えているわけです。
それってコックピットにある程度拡張性があるが故だと思うんですけど、ストライカーユニットだとどうなんでしょうね。いや、足を入れる不思議空間とか利用すれば機械そのものは載せられるかもしれませんけど、計器類の確認方法が難しそうなんですよね。タブレットとかができれば比較的楽でしょうけど、そう言うものがなければ、無駄に計器類を持つことになってウィッチの負担になりそうな気が……
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