お願い誰か新作書いて……
カールスラントとオラーシャで起きた反乱は、きっかけを作ったブリタニアでも予期していない場所にまで影響を及ぼした。
スオムスはオラーシャ侵攻開始後、極めて順調に兵を進めていた。ペテルブルクまで約百キロメートル、ムルマンスクから伸びる鉄道の一部を抑えたのは開戦から約二週間後の事だった。オラーシャの反乱はペテルブルクを除いて反乱軍優勢で推移しており、ペテルブルクの反乱はスオムス軍優勢、オラーシャ軍は介入せずという有様だった。
ほぼ同時期に反乱が始まったカールスラントも、戦況はよくない。本土からの物資の輸送が距離の問題で順調とは言えず、たとえ輸送ができたとしても、ノイエ・カールスラント全土に反乱軍に加担するものが潜んでいるため、ついた途端に焼き払われる事もあった。
そんな中、この状況を好機と捉えた者達がいた。
「ガリア南部で反乱?」
ミッケリにやってきたエイラから、ハッセが伝えられた情報はなんとも不可解なものだった。
「ブリタニアから工作を受けていたのは、オラーシャとカールスラントだけのはずだよね」
「ブリタニアがガリアに介入しなかったのは、あの国がブリタニアのお膝元で、あの国の混乱がブリタニアの不利益につながるからだ。リベリオンなり、扶桑なりが介入していても不思議じゃないさ」
ガリアの混乱は、ブリタニアの不利益になり得る。ドーバー海峡は世界でも有数の海運の要衝だ。ブリタニアに来る貨物船も多くがここを通る。
そんなドーバー海峡はブリタニアとガリアで成り立ち、そのいずれかが不安定化すれば、貨物等の輸送コストが増大する事は間違いなく、島国のブリタニアにとってそれは経済的な混乱を招く要因になり得る。
「だけど、反乱は少し前に死んだペタン将軍の率いたヴィシー政権の残党と王党派みたいだし、案外欧州が混乱したことに乗じただけかもな。リベリオンとは相容れないし、扶桑も欧州に対してそれほど感心があるわけじゃないしな」
リベリオンは支持するとしても、共和制の現政府を支持するだろう。扶桑は現在、リベリオンとの関係性に苦慮している事もあって欧州情勢に対して必要以上の干渉をすることができない。もっとも、それはリベリオンにも言える事だった。しかしリベリオンはブリタニアとの関係が深いため、欧州情勢も重視しなければならなかった。
扶桑もリベリオンも、欧州に対して深く関わる気がない以上、ガリアの一件は反乱軍の中に頭が回る者がいたのだろう。
「これからどうなるんだろうね」
「わたしに聞かれても困るよ」
こういった政治に関することは、政治家の仕事であってエイラ達のような軍人が考えることではない。しかし、聞かれたからには自分の考えくらい述べてもいいだろうとエイラは続けた。
「だけどガリアの反乱がスオムスに直接的な影響を与えることはないと思う」
「カールスラントやオラーシャみたいな、直接の利害関係にないから?」
「まぁ、そうだな。もしもガリアがスオムスに影響を与えるとしたら、変な正義感を持った連中が義勇軍としてオラーシャに加勢するくらいなものだけど、その可能性は反乱でなくなった」
「義勇軍って言っても、精々数百人だろうし反乱が起きようが起きるまいが、あんまり変わらなさそうだね」
エイラ達は知らなかったが、ちょうどガリアの反乱が起きる直前、ペリーヌは旧式のストライカー・ユニットを手に入れる事に成功している。もし反乱が後一日遅ければ、世界最高の対地攻撃能力を持ったウィッチが、ペリーヌ達の静止を無視してオラーシャとの戦争に介入していた事だろう。
「今更数百人くらいがオラーシャに加勢したところで、意味はない。鉄道線はほとんど無抵抗で奪取できているし、ペテルブルク方面は烏合の衆の反乱軍。正規軍が負ける道理はない」
「反乱軍にウィッチが加わったかもしれないけど、今の所目撃されていないからね。空軍の規模もスオムス空軍で十分制空権が取れるくらい小さいし、ペテルブルクの陥落は時間の問題だね」
オラーシャの反乱には軍の一部が参加している事が、オラーシャがペテルブルクを除いた他の反乱軍の鎮圧を困難にしていた。それどころか一部の戦線でオラーシャ軍は、徐々に後退し反乱が支配領域を拡大しているという。
「……サーシャは無事かな」
オラーシャ軍に対して優勢に事を進めている反乱軍には共通点があった。現地の軍の若手将校が作戦を主導しており、それらは往々にして旧来の軍の指導者達の古臭い戦争指揮をことごとく粉砕していった。
ペテルブルクはどうかというと、この地は共産主義と言われる思想家達が中心となって市民を煽動していたため、数こそは多いがそれ以外は大したことがなかった。特に銃などは二人に一つ程度の割合でしか所持しておらず、兵士達の士気も低かった。
「ポクルイーシキン中佐が反乱軍に協力している可能性は考えないんだね」
「それだけは絶対にないって断言できる。て言うか、思いの外反乱軍の連中の頭が回らなくて助かるくらいだよ」
エイラの言葉に、ハッセは首を傾げた。今の所オラーシャ陸軍の元中佐であるサーシャが反乱軍に加入した、あるいは協力しているという情報は入ってきていないが、だからと言ってそれが反乱に対して協力していないという事と同義にはならない。
「もし仮に、サーシャが反乱軍に加担しているなら奴らはサーシャを旗頭として利用するだろうな。その方が軍や市民からの協力を得られやすい。もし協力していなくてもサーシャを拘束するなり監禁するなりして、協力しているって事にしてしまえばいいのに、それをしていない時点で反乱軍の連中の頭は大したことないな」
元第502統合戦闘航空団の戦闘隊長を務めたオラーシャの英雄だ。彼女が参加すれば、それだけで無条件に反乱に加担するものもいるだろう。
「随分と悪どい考えだけど、どちらにしろポクルイーシキン中佐が表に出ていないって事は、加担していないって事だね」
「そうだな。それともう一つ、もしサーシャが協力してるならこんな拙い指揮はしない。あいつ自身に大規模な軍の指揮経験はないけど、固有魔法を元にした莫大な知識とそれを上手く利用する知恵がある。間違いなくもっと厄介な事になっていただろうさ」
エイラはサーシャを高く評価しているからこそ、心配もしていた。これまで音沙汰がないという事は、反乱軍に協力していない事は間違いない。だが反乱軍がサーシャに目をつけないはずがない。なのになんの動きもないということは、サーシャが逃走しているか、それとも拘束され何もできない状態にあるのではないかと考えていた。
「ポクルイーシキン中佐が秘密裏に協力していたりする可能性もあるよね」
「もちろんある。けどその場合は、わたしがサーシャを過大評価していたって事になるな」
そう言ってエイラは肩をすくめた。
「だけどわたしが知るサーシャは間違いなく優秀な奴だ。多分逃げてるのか、捕まっているのか。もし反乱軍の連中がサーシャの有用性に気がついていなくて、何の危害も加えられてないのならいいんだけどな」
流石にそれはないだろう。そう思いながらも、引退して平穏に暮らしている友人が今回の反乱に巻き込まれていないことを祈らずにはいられなかった。
「ポクルイーシキン中佐を見つけたらどうしたらいいかな」
引退したとはいえ、サーシャはオラーシャ政府にとって重要な人物だ。固有魔法を活かして様々な機密情報をその頭脳に保管しているサーシャは、簡単に手放す事はできない。
「久しぶりに会いたいな……」
終戦後、文通こそしているが直接会う事はなかった。久しぶりに会いたいと思うのは無理からなことだった。
「だけど流石に合わせる顔がないし、サーシャがもしわたしとの面会を希望するようなら会うよ」
エイラはオラーシャに侵攻した加害者で、サーシャは侵攻された被害者の関係だ。会いたいと言われたら一発殴られるくらいは覚悟しておかなければならないなとエイラは思った。
さてさて、今週もまたネタ切れで呻いています。
って書いてたらふと思ったんですけど、あの世界線のウィッチってどんな扱いなんでしょうね。軍事的な意味とかではなく、民間からと言うかなんというか。
一応軍ではあるわけですが、ルミナスウィッチーズみたいに市井に密接につながるような人達はグッズとか売れそうですよね。なんなら容姿がいいウィッチはアイドルとして売り出す事まだ来そうだし、軍の広報としても使えそう。
現代の軍隊でも、軍という性質上どうしてもマイノリティになる女性を広報に使ったりしていますけど、ウィッチは女性よりもさらにマイノリティ。もっと言うと世界的に見てもマイノリティと言える存在です。
もしかして将来的にはクリアファイルだとか、ブロマイドだとか……いやそう言えばブロマイドはもうあったな。あれ、もしかしてあの世界のウィッチって既にアイドル扱いなのか? だとしたら戦死とかした時って普通のエースパイロットが戦死した時よりも軍の士気に影響するんじゃ……
追伸
今回の後書きはマジで思ったことそのまま書いちゃってるんでろくに考察とかできてないです。と言うか、最後の一文書いた時点で本作と言うか、ストライク・ウィッチーズの二次創作を書くにあたってのハードルがメチャクチャ高くなる疑惑が……(主に設定的にウィッチの戦死者を出さない的な意味で。と言うかうちの作品、最近バルトランドのウィッチを戦死させまくったばかりなんですけど)