ペテルブルク臨時政府降伏後、リバウでの戦いは一週間で終結した。元々カールスラント方面への備えは十分だったが、背後からの攻撃に対しては備えが不十分であった。ペテルブルクに対してかなりの戦力が向けられていた事もあり上手く防衛する事ができていたが、ペテルブルク臨時政府が降伏してスオムス軍が増強されてはもはや敵わない。
もしオラーシャが援軍を送れるのなら頑強に抵抗する事もできただろうが、国内が乱れているオラーシャに外敵に対応するだけの余力はなく、リバウの指揮官は将兵の生命の安全と引き換えに降伏を受け入れた。
「降伏してきた連中はオラーシャに返してやれ。もちろん、装備はもらうけどな」
この判断は世界中で称賛されることになるが、スオムスとしては何の生産性もない捕虜を抱え込むことなどできないという事情があった。
そんな裏の事情は当然オラーシャ側の人間は知り得ないが、連邦の大統領最有力候補と目されるエイラが生命の安全を保障した事に安堵感を覚え、比較的簡単に降伏を決めた。
「一時的とはいえ捕虜を抱える事は補給に負担があります。私達も食料に余裕があるわけではありませんし、捕虜の食事は少し貧相なものになるかもしれませんが……」
スオムスの懐事情が豊かでない事は、多少スオムスに詳しければ誰でも知っている事だ。今更サーシャに言われるまでもない事だが、だからといって捕虜の食事を過剰なまでに貧相なものにする事はエイラとしては避けたかった。
「前線に送る軍需物資を減らして食料を増やしてやればいいんじゃないか?」
「ですがそれだと不測の事態に際して対応できない可能性があります」
当時はまだ捕虜に対する扱いについて、明確な基準がなかった。バルトランドとの戦争でもスオムスは捕虜を丁重に扱ったが、前線の捕虜については気候的な問題も相まってそれほど良い待遇とはいえなかった。しかしこのオラーシャにおいては時期的にも気候的にもバルトランドとの戦争当時よりも悪くはなく、比較的良い対応をされる事になった。
エイラとしては意図せぬことだったが、後にこの行動は捕虜に対する対応の模範としてスオムス式、あるいはユーティライネン式などの名前で広く浸透していく事になる。
「今更どこと戦争するって言うんだよ。オラーシャはこっちに来れないし、カールスラントもノイエ・カールスラントの民主独立派が蜂起したからスオムスにかまけている暇はない。不測の事態なんて起きないさ」
ノイエ・カールスラントて武装蜂起が
「ですがリバウはネウロイとの戦争終結以降、カールスラントとオラーシャの間で領土的な衝突の絶えなかった地域です。この機にカールスラントが奪いに来る事も考えられるのではないでしょうか」
ネウロイとの戦争以前からリバウは領土紛争の絶えない地域だった。戦時中に一時的とはいえカールスラントのウィッチが率いる部隊、つまり第502統合戦闘航空団が占領していた事が戦後にカールスラントのリバウへの領土欲をより強くさせることとなった。当時カールスラントはリバウの復興を名目に大量の人員を送り込んだが、その一部が帰ってきたオラーシャ人と結びつきリバウを第二の故郷とした。それを理由にカールスラントは度々オラーシャにリバウの統治権を求めていた。
「ノイエ・カールスラントの武装蜂起を放っておいてか?」
「しょせんは素人の集団です。カールスラントならすぐに鎮圧できるでしょう」
「その素人集団を鎮圧できていないのがオラーシャだろ。カールスラントが同じだとどうして言えるんだよ」
「オラーシャの場合、一部の軍人も迎合しています。カールスラントの場合はノイエ・カールスラントに利権のある人物達を中心とした反乱です。軍人の多くはカールスラント本国に対しては何らかの利益関係にあるでしょうが、ノイエ・カールスラントにはそれがないでしょう。この反乱は思想ではなく、自己の利益を追求しているが故に起きたものです。おそらく鎮圧には時間はかからないでしょう」
ノイエ・カールスラントでの反乱は、主にカールスラントから疎開して利益を享受した者達が起こしたものだった。戦時中に工場の移転で起きた新たな雇用、食料など一次産業の他、本国では最大手だった会社が工場移転に失敗した事をついて新たに勃興してきた新興企業。こういった企業はカールスラント本国の奪還と共に本国への工場施設の移転ができず、あるいは元々ノイエ・カールスラントが本拠地であった事から本国への帰還に伴い利益を得ることが難しくなった。
戦争特需で得た富が無くなるにつれ、ノイエ・カールスラントの治安は急速に悪化した。現地の国民の多くはこの原因をカールスラント政府にあると考えた結果、ノイエ・カールスラントで反乱が起こることとなった。
「そうかな。例えばノイエ・カールスラント出身の軍人や、ノイエ・カールスラントで親族が利益を得ていれば軍人が参加する理由になるだろ。何より今カールスラントがあるのはノイエ・カールスラントで本国並の工場を用意して、陥落前の軍事力を維持する事ができたからだ。なのに戦後、本国の復興を優先してノイエ・カールスラントを疎かにした事に、義憤に駆られた奴もいるんじゃないか?」
ノイエ・カールスラントで利益を得たといっても、それはあくまで国の為に働いた上での話で、なにも非難される謂れはない。むしろカールスラント本土復興の影の功労者とでも言うべきだろう。だというのに戦後になって本国復興のための名目で疎かにされれば、当然ノイエ・カールスラントの人間は憤りを覚えるし、本土の人間にも少しくらいは気持ちを共にする者は存在するだろう。
「軍人はカールスラント皇帝に忠誠を誓っているのであって、民衆に忠誠を誓っているのではありません。仮に義憤に駆られたとしても簡単には裏切らないでしょう」
「オラーシャの軍人も皇帝に忠誠を誓ってるはずだろ。なのに軍人の多くは反乱軍に加担した。忠誠心なんて曖昧な物を信じて反乱軍を過小評価するのはどうかと思うぞ」
「それもそうですね。私自身、皇帝陛下に対する忠誠心なんて欠片もなかったのに、他者にそれを求めるのは論理的ではありませんね」
サーシャにオラーシャ皇帝に対する忠誠心というものがあれば、今頃はオラーシャのどこかの戦線で一隊を率いて反乱軍と戦っていただろう。それをしていないあたり、サーシャにはオラーシャ皇帝に対する忠誠心なんて物は存在していない事は自明だった。
「ですが忠誠心が当てにならないからといって、私は意見を曲げる気はありません。オラーシャとカールスラントでは反乱の状況が違いますから」
尚も自説を曲げないサーシャに、エイラは呆れた様子で先を促した。
「まず第一に、反乱の場所にあります。オラーシャと違い海を隔てた場所での反乱は、カールスラントへの直接的な脅威にはなりません。ですからカールスラントは反乱以外に目を向ける余裕があります。次に反乱が一箇所で起きている都合上、カールスラントは戦力を集中でき早期に事態の解決を図る事ができます。本来ならこれに『軍人が加入するわけがなく烏合の衆であるため』という理由が付いたのですが、まぁ前者二つの理由だけでも十分警戒に値するのではないでしょうか」
オラーシャは、一歩間違えれば首都モスクワが陥落し、皇帝の身に危機が及ぶ可能性がある。しかしカールスラントの場合、その可能性は殆どない。そしてオラーシャと違い、一箇所での反乱は国力差が反乱の終結に直接的に影響する。分散していれば場合によってはどこか一つの反乱軍が勝利し、他の戦線での勝敗に影響を及ぼす、などという事も起こり得るかもしれない。しかし一箇所で反乱が起こっている以上はそのようなラッキーパンチが起こるはずもなく、直接的な力のぶつかり合いになる。
「海を隔ててるんだから、陸続きより補給に不安があるんじゃないか? なら長引いてもあまり不思議はないだろ」
「まぁ、否定はしません。一つ思ったのですが、少し挑発してみませんか?」
サーシャの提案を聞いたエイラが思わず溢した言葉は、「やっぱりラルに似てきたんじゃないか?」というものだった。
なーんかネタあったかなぁ。
という事で、ウィッチの魔法力ってなんなんでしょうか。というか、なにを原料としてできているのでしょうか。
人を含む生物はは普通、何か食べてそれをエネルギーにして活動さているわけですが、ウィッチって普通の人が必要なモノに加えて魔法力を生産しています。それってつまり、その魔法力を生産するための原料ともいうべき食料が普通の人よりも多く必要になるのではないでしょうか。
まぁ、これはなにもストライクウィッチーズだけに限られた物じゃなく、魔法という物を扱う創作物全般に言える事なのかもしれませんけど。よくよく考えたら魔法力やら魔力と呼ばれるエネルギーの、原料ともいうべき食事に関して詳しく書かれたものは少ないですね。(そもそもそんな設定あったところで作中で利用する事なんてないからなのかもしれませんが)