「シャーリー!!」
そう叫んで迎えにきたシャーリーに抱きついたルッキーニは、シャーリーが最後にあった時と比べて随分と大人びた雰囲気を纏い身体も大きくなっていた。しかしその言動は昔と同じものであり、シャーリーは時の流れとを実感すると同時に懐かさかしさを感じていた。
「久しぶりだな、ルッキーニ!!」
シャーリーとルッキーニが再会するのは、意外な事に501部隊解散後初めての事だった。2人の仲の良さを考えるともっと頻繁に会っていても良さそうなものだが、統合戦闘航空団に所属していた者はそれだけで軍の中で多大な評価を得る事になる。中でも数多くの巣の破壊に貢献してきた501部隊に所属していたとなればその武功は絶大だ。相応に重要な職責を与えられる事になる。シャーリーは大佐となりリベリオン空軍のテストパイロット及びウィッチ養成学校の校長に、ルッキーニは今では中佐に昇進しロマーニャ公国近衛ウィッチ隊、通称縞ズボン隊の隊長となり皇族の護衛とウィッチ隊への教導任務をこなしていた。
「……シャーリーちっちゃくなっちゃった?」
かつてはルッキーニの顔の位置にあったシャーリーのたわわに実ったおっぱいが、今は自分の胸のあたりにありその柔らかさを感じる事もできない。ルッキーニがシャーリーが小さくなったと驚愕するのも無理からない話だった。
「私が小さくなったんじゃない、お前が大きくなったんだ」
身体は成長しても中身は昔のままのルッキーニに少しの安堵を覚え、笑みを浮かべた。
「そうなの?」
暫く会わない間に随分と大きくなったルッキーニと違い、シャーリーはルッキーニと別れた時点で身体的な成長は殆ど終わっていた。ルッキーニからすればシャーリーが変わっていないのに、自分だけが変わるはずがないと不思議な気持ちだった。
「そうだ。ルッキーニはあの時からは考えられないくらい立派に成長した。私は嬉しいよ」
かつては問題行動が多く、それが原因で統合戦闘航空団に移動してきたルッキーニが、部下を持ち立派に役目を果たすなど当時を知る誰もが予想していなかっただろう。シャーリーでさえそうだ。戦争が終われば軍など辞めて一緒に世界中を旅してまわろうと思っていた。
だが実際のところ501のメンバーで軍を辞めたのは意外な人物が多かった。もっとも軍人らしく、軍に対する思いが強かった坂本やカールスラント本国奪還に全てを賭けていたミーナなどはその意外な人物の筆頭と言える。軍人らしからぬハルトマンや、元々ガリアの貴族で政治と大きな関わりのあったペリーヌとその手伝いをしていたリーネが辞めた事と比べれば、この2人が軍を辞めた事に対する驚きは大きかった。
「ルッキーニは軍を辞めて自由に過ごすと思っていたから、残るって言われた時は驚いたよ。あの時は理由をはぐらかしてたけど、今なら教えてくれてもいいんじゃないか?」
当時のシャーリーはルッキーニが軍を辞める事に疑いを持っていなかった。ルッキーニと一緒に旅をするのに必要な物は一通り揃えていたし、提出する辞表も用意していた。だが501の解散が決まった時、ルッキーニが言った言葉はシャーリーの予想とは異なる物だった。
「……501での生活って楽しかったんだ。軍での生活って家族とは離れ離れになるし楽しい事なんて何もなかったのに、501に来てシャーリーやみんなと会って、一緒に暮らして。もちろん大変な事も多かったけど、それ以上に楽しかった事に気が付いたんだ。だからロマーニャ軍にこれから入って来るあたしの後輩達にも軍に入る事は嫌な事だけじゃない、楽しい事もいっぱいあるんだって教えてあげたいって思ったの」
シャーリーと別れた時点でのルッキーニは良くも悪くも出会った時と大きな違いはない。それがシャーリーの考えだった。しかし今の話を聞くに、別れた時点で身体的にはともかく、精神面では大きく成長していた事がわかりシャーリーは驚きを禁じ得なかった。
「そうならそう言ってくれればいいだろ。何か妙な事に巻き込まれたとか、軍に残る事を強制されたとか色々考えたんだぞ」
軍に残るはずのない人間が残るとなれば、何か陰謀に巻き込まれているのではないかと疑うのは無理のない話だった。
「シャーリーそんな事心配してたの!?」
「そりゃそうだろ。手紙を送っても返事が来るまでめちゃくちゃ時間も掛かったし、何かあったと思わない方が無理だろ」
「ごめんってば! あたしも忙しかったしシャーリーの手紙に返事する余裕がなかったんだよ」
手紙を送っても中々返事がない事がシャーリーの不安を増大させた。今回リベリオンにルッキーニが来る事になり、もしもルッキーニが不本意な事をさせられているのなら無理矢理にでもリベリオンに亡命させる覚悟だったが、真相はなんて事はない物だった。
「まぁ、ルッキーニが自分の意思で残ったならいいんだ。安心したよ」
想定していた最悪の事態にならず、シャーリーは安堵した。考えすぎではないかと言う思いがないわけではなかったが、それよりも心配の方が勝っていたからだ。
「あたしなんかよりエイラの方が心配じゃないかな」
「エイラか。アイツも損な性格をしてるよな。マンネルヘイム元帥達スオムス軍の重鎮と一緒に軍を辞めれば今頃は好きな事をして悠々自適に過ごせてただろうに。変に真面目だからスオムス軍の総司令官だとか、スオムスの大統領だとかをやらされそうになるんだ」
真面目で優秀なウィッチというのがシャーリーのエイラに対する印象だ。だが彼女が、軍に好んでいるような人物かと言えばシャーリーには疑問が残った。
例えば坂本やバルクホルンなどはプライベートでも体を鍛える武人然とした人物でいかにも軍人と言ったような性格だが、エイラはどちらかというとそういう事とは無縁だった。むしろハルトマンやルッキーニように、休日は好きなように過ごすし、争いを好むタイプではない。これは単純に努力型のエースと天才型のエースという違いもあるだろうが、それはそもそも軍隊というものが良くも悪くも好きでなければ努力というものを続ける事は困難だ。天才型のエースとは即ち、軍隊に向かないが才能だけは持っていた、持ってしまっていたという人物だとシャーリーは考えていた。
もっともルッキーニは意外な事に軍隊に残ったし、エイラも残る事になったのだから自分の考えはあてにならないのかもしれないとシャーリーは思った。
「エイラは真面目だからそんな事できないよ。それよりあたしはシャーリーがまだ軍に残ってる事の方が驚きだよ」
「そりゃルッキーニが心配だったからな。国は違っても同じ軍人なら何かと接点を持つ事もあるだろうし」
シャーリーが軍に残った理由の最たる理由がルッキーニだった。元々民間人に戻るつもりだったが、戦争中もっとも親しい付き合いのあったルッキーニが妙な事になっているかもしれないとなれば、その情報がもっとも手に入れやすいであろう軍に残るのは当然の事だった。
「まぁ、取り越し苦労でよかったよ」
シャーリーは心底ほっとしていた。ルッキーニが不本意な事をさせられている可能性は少なからずあった。その可能性を完全に排除できた事に対するものだった。
「いくらあたしでも、そんな陰謀に巻き込まれたりしないよ。シャーリーは心配しすぎだよ」
「よく考えたらルッキーニが隠し事をできるはずもないし、私の心配しすぎだったな」
笑って言うシャーリーに、ルッキーニは頬を膨らませた。
「あたしだって隠し事くらいできるもん!」
その言葉にシャーリーはさらに大きな声で笑い、ルッキーニは昔よりも強くなった力でその脇腹をこづくのだった。
いい加減後書きのネタも無いですね。まぁ、二百話超えてるし当然と言えば当然ですが。
さて、まぁ単純な疑問としてあの世界は魔法力に対してどんな認識なんでしょうね。というか、どの程度の理解度なんでしょうか。
即ち研究対象として、例えば医学や科学などある程度身近な存在なのか、それとも宇宙のようまだまだ未知の多い未発達な研究分野なのか。
魔法力そのものの利用についてはある程度の習熟度があると思いますが、人類とは時々原理がよく分からずに技術として使う事がありますから、利用できることがイコール魔法力の理解度に繋がるわけではなく……。
よく分からないものをなんとなくで利用しているのか、それともある程度原理を理解した上で利用しているのか。個人的には前者な気がします。