今後は前書きにこの手の豆知識もちょっとづつ乗せていこうかな。
「撃墜スコア歴代一位に並ばれた気分はどう?」
「私が別にスコアを気にしてない事はミーナも知ってるでしょ。何も思わないよ」
どこか投げやりな様子で答えるハルトマンにミーナは黙って頷くとカップを手に取りコーヒを口に含んだ。
「そうね。だけど世間はそうは思わないわ。メディアからの取材依頼が耐えないんじゃないかしら」
「そうかもね。実際私の周りでも色んな意見が聞こえてくるよ。ネウロイにやらない撃墜スコアは認めるべきじゃないとか、ウィッチの撃墜スコアと航空機の爆撃スコアまで加算して数えるのは卑怯だとか」
本気でどうでもいいと思っているのだろう。ハルトマンは運ばれてきたケーキに視線を移しフォークを手に取った。
「それよりもエイラが可哀想だよ。エイラも私と同じようにスコアには頓着しないタイプのはずだしね」
「きっと周りに騒がれて迷惑しているでしょうね」
クールな見た目をしているエイラはマルセイユ同様ファンが多いウィッチだ。マルセイユが引退し行方をくらましてからその人気はエイラに集中しているため、今回の一件でエイラに多くのファンレターが寄せられる事は想像に難くない。それどころかスオムス軍の中でさえ大きく騒がれる事は間違いない。
「そういう事じゃないよミーナ」
ハルトマンはどこか悲しそうに言った。
「エイラはスコアに頓着しなかったけど、だからと言って人が死んで増えたスコアにまで頓着しないような人でなしじゃあない。きっとこれで増えたスコアを喜ばないじゃないかな」
「……そうかもしれないわね」
ウィッチとして戦争を戦ったのは人々をネウロイの魔の手から守るためだっだ。そこに国による隔たりはなくいくら敵国とは言え人を、ましてやかつてはともに肩を並べて戦うこともあった国のウィッチを撃って何も思わないよようなエイラではない。それは同じ部隊で戦ったミーナ達はよく理解していた。
「嫌なものね。戦争なんて世界から無くなればいいのに……」
「否定はしないけど、人がまともな営みをしている限り争いは無くならないんじゃないかな」
「ネウロイとの戦争では人類は団結して危機に挑んだわ。できるはずよ」
投げやりに否定するハルトマンにミーナは不愉快そうに眉を寄せた。
「バルトランドは隣のスオムスやカールスラントが攻められても兵を出さずに国に閉じ籠ったままだったよね。武器や資金を提供してはくれたけど、あれで団結したとはとても思えないな」
かつてバルトランドは極少数の志願した義勇兵を除いて積極的にネウロイと戦う事はなかった。国民の犠牲の少なかったバルトランドは戦後リベリオンや扶桑とともに各国に様々な援助をし経済国としての地位を確立しつつあったが、スオムスに対する過剰なまでの恐怖から戦争を起こし敗北する事になった。
かつての戦争での自分本位な動きを知っているハルトマンからすればいい気味だと嘲笑いたくなるような酷い有様だった。
「それにほら」
そう言うとヒョイっと手に持ったフォークをミーナの前にあったケーキに突き刺しケーキに乗っていた苺を掻っ攫った。
「ちょっとエーリカ!」
ミーナの声を無視して苺を口にいれ、咀嚼し飲み込むとハルトマンは再び口を開いた。
「こう言う事でも人は声を荒げて怒るんだよ。人によっては手を出すかもしれない。人がまともに生きている限りは争いは無くならないよ」
「貴女が私の苺を食べなければ私は怒らなかったわよ」
「今のは極端な話だけど、例えばこれが仮に自分のケーキだと勘違いして食べたとすればどう?」
ハルトマンの質問にミーナは言葉を詰まらせた。
「勘違いしたのなら仕方ないと思うけど……」
「だけど私が勘違いだったと言うまでは怒るでしょ?」
「それはそうでしょう。だって私は貴女が勘違いしたとは知らないのだから」
何を当たり前のことをとばかりにミーナが言うとハルトマンは頷いた。
「どんなに仲がよくても怒ったり争ったりする事はある。それが国同士になれば小さな外交的小競り合いになって、やがて軍隊を使った戦争になる。もちろん、途中で止めようとはするんだろうけど世論が戦争するように傾いたら止める事は難しい。人が戦争をしないようにする事は不可能だよ」
「随分と捻くれた考え方のような気がするけど……」
「否定はしないよ。だけど人から争いを無くすって言うのは、目の前に出された甘いものを我慢する以上に難しいんだよ」
そう言うとハルトマンはミーナの前にあったケーキを自分の方に寄せ食べ始めた。
「一人ならともかく、国という人の集合体でともなれば意識を統一する事は難しい。ましてやそれが勘違いとは言え自国に不利益をもたらしたとなれば国民感情を沈静化させるのは容易ではない。戦争をなくすのであればお互いが相手の事を信頼し、尊重した上でよく話し合い些細なミスをしない事が肝心なのね」
それが不可能である事は考えるまでもない事だった。人類は失敗から学びを得る事で発展してきた。ストライカーユニット一つにしても、多くの失敗をへて今のジェットストライカーがある。人から失敗を無くすということは失敗から得られる学びをも無くすという事であり、それは人類の進歩を停滞させる事につながる。
「エーリカの言う通り、戦争をなくす事は無理かもしれないけどできる限り少なくする事はできるんじゃないかしら。例えば今ある国際連盟で戦争をすれば罰則を与える規定を作るとかどうかしら」
「罰則が意味をなさない事はミーナもよく知ってるでしょ。たとえ規則があっても破るやつは罰則覚悟で破るんだよ。何よりもしも規則を破るのが部隊の隊長みたいな一番力のある人なら一体誰が罰則を与えるって言うんだよ」
同じ隊長であるラルほどではないがミーナも規則を破った事はある。それでも罰則を与えられた事は破った回数と比べたら少ない。ある程度力を持っていれば罰則などあってないようなものになってしまう。国と個人の違いは規模の大きさの違いでしかなく、比較的コントロールのしやすい小規模な個人間ですら適切に運用されないのであれば規模が大きくなっても適切に運用できないのは道理だった。
「周りが力を結集して、と言うわけにはいかないでしょうね。力が大きいと言う事は利害関係も大きくなる。バルトランドのスオムス侵攻では非難決議が通らず、バルトランドの横暴を許した。あれはカールスラントを含む各国がバルトランドの侵攻が自国にとって利害のある事だと判断したから起きた事だわ」
「力のある国が正しいわけじゃない。だけど力のある国の不正を正すならその国に勝てる何かがなければいけないけど、そんな物が存在しないからこそ力のある国になるわけだし、やっぱり争いを無くす事なんて不可能だよ」
「ウィッチでもない人が空を飛ぶ事は空想上の話だったけど、航空機という存在がそれを可能にしたわ。不可能と断言するのは早計すぎるんじゃないかしら」
いつになく卑屈なハルトマンに内心驚きながらもミーナはそう言った。
「そうかもしれないね。だけど少なくともそれは今じゃないだろうし、私達が生きている間に訪れるものではないだろうね。仮にカールスラント含む主要国がそれに近い状況になったとしても、きっと世界の何処かでは争いが起きているよ」
そう言うとハルトマンは残っていたケーキを口に放り込んだ。
「ご馳走様でした」
美味しかったと口についたクリームをナプキンで拭うハルトマンにミーナはなんとも形容し難い視線を向けていた。
それに気がついたハルトマンが何かあったのか尋ねると、ミーナは徐に口を開いた。
「店員さん、ケーキ追加お願いします」
「あれ、ミーナ足りなかったの?」
「今貴女が食べたのが私のケーキよ。ついでにここの支払いはエーリカ、貴女が払ってよね」
胡乱な視線で告げるミーナにハルトマンは思わず嫌そうな顔をするのだった。
しかしネウロイってよく分かんないですね。エイラ達が倒したあのとんでもなく高いネウロイとかどうやって出てきたんでしょうか。
子機タイプのネウロイが大量に集まって合体して、最後にコアを持ったネウロイがくっついたとかなんでしょうか。うーん、謎ですね。