ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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なんとなく三人称の物語の時は会話文三つにつき地の文一つを目安に書いてます。
これが一人称ならもっと頻繁に地の文で大量の心情描写を入れるようにしてます。まぁ、あくまでも目安なんで会話にスピード感を出したかったりしたら会話文を連続させたりもしますけど。


主犯は誰か

ニパがもたらした報告はエイラを驚愕させるには十分なものだった。

 

「ニパさん達が攻撃体制をとり接近すると、直ぐにトラックの幌の中から人が出てきて自動小銃による射撃、更に一両は幌を外すと対空砲が出てきて対空射撃を実施。即座に鎮圧したって話だけどこれは紛れもない敵対行為だよ。イッル、直ぐに反撃しよう。魔導軍の方は準備ができてるよ」

 

「ハッセさん、それはあまりにも早急ではないでしょうか。今スオムスは戦争状態にないとは言え、これ以上戦争をする余裕もありません。エイラさんの選挙も、もう数日後に迫っているわけですし、ここは自重した方がいいのではないでしょうか」

 

「選挙中の安全を確保するためにも、直ぐに反撃するべきだよ。反乱軍主力はオラーシャ軍と相対しているからこっちはガラ空きなわけだし、楽に鎮圧できる」

 

リバウ方面にいる反乱軍は二万から二万五千であり、リバウのスオムス軍凡そ十万を持ってすれば楽に倒す事ができる相手だった。

お互いの意見にはどちらもメリットデメリットがあり一概にどちらがいいと断言する事はできない。自然と二人な視線はエイラに向いた。

 

「問題は本格的な侵攻なのか、牽制目的なのかだな」

 

「前者であれば反撃を、後者であれば非難声明くらいで抑えると言う事ですか?」

 

「……そう簡単な問題でもないな」

 

エイラは不機嫌そうに頬杖をつくとサーシャに一つの報告書を差し出した。

 

「これは各地の反乱軍が様々な国から支援を受けている事を裏付ける報告書ですよね」

 

「それを持ってきたのは誰だった?」

 

「スオムス外務省です」

 

「厳密にはブリタニア大使館からスオムス外務省を経由してわたしの手元にきただな」

 

スオムスにもたらされる情報の大半はブリタニアからもたらされる。スオムス自身の諜報能力には限界があり、自国で欲しい情報全てを取り揃える事が困難だからだ。

 

「今回もブリタニアは善意で情報を提供してくれたんだよね。こっちが聞く前に先手を打って欲しい情報をくれるから助かるよね」

 

ブリタニアという協力者がいたからこそスオムスはこれまで勝ち続ける事ができた。もしもブリタニアがいなければ、こんなにも上手くはいかなかっただろう。

 

「ハッセ、奴らにとって善意って言うのは相手を思うままに動かす事を指すんだぞ。ブリタニアを信じる事ほど愚かな事はないな」

 

「そんな言い方ないだろ。ブリタニアは私達の味方なんだし」

 

味方であるブリタニアを悪く言うエイラをハッセは嗜めた。

 

「本当にそうかな」

 

「エイラさんにはブリタニアが味方ではないと言う根拠があるんですか?」

 

サーシャの問いかけにエイラリズムをとるように指先で机を叩き考え込むと暫くして言った。

 

「ブリタニアはどうしてこんなにも正確な報告書を持って来れたんだろうな」

 

その報告書は反乱軍と義勇軍の兵力やその配置、武装の内容まで事細かな報告がなされている。いくら諜報能力に優れたブリタニアといえど怖いくらいに正確な報告書だった。

 

「それはブリタニアの諜報能力が優れているからでしょ?」

 

「ブリタニアが支援しているコーカサスの反乱軍ならともかく、他の地域の反乱軍に対しての各国の義勇兵や支援物資を事細かに記すことができるのも諜報能力の高さのおかげだってか?」

 

馬鹿馬鹿しいとかぶりを振るとエイラは憎悪を込めて書類を叩いた。

 

「こいつは他でもないブリタニアがコーカサス以外の反乱軍にも大なり小なり支援をしているからこそ、ここまで正確な報告書が書けるんだと思う」

 

「いくらなんでもそれは論理が飛躍しすぎてるんじゃないかな。たしかに義勇軍の大まかな数と配置、支援された物資の目録は内部にいなければ手に入らないようなものかもしれない。だけど反乱軍内部にまでブリタニアの手のものを紛れ込ませる手腕は、他の国の追随を許さない高い諜報能力の裏付けになるんじゃないかな」

 

「ブリタニアの諜報能力が高いのはわたしも認めるけど、反乱が全てに紛れ込ませられるほどの人材は確保できないだろうな」

 

ブリタニアの人口はスオムスの凡そ十倍だが、七つの理事国の中ではスオムスとガリアの次に人口が少ない国だ。更に言えば他のカールスラント、オラーシャ、扶桑、リベリオンと言った国は軒並み一億人を超える人口を有している。

 

「ブリタニアの人口が少ない事は事実ですが、植民地の人間を含めればその数は数倍に膨れ上がりますよ」

 

「たとえ使えたとしても、植民地はアフリカやアジアにあるんだぞ。欧州の人間とは肌の色が違うから目立ちすぎる。諜報員としては使えないんじゃないか?」

 

「たしかにそうかもしれなけど、だからと言って直接支援しているって理由にはならないんじゃないかな」

 

あまりにも頑固なエイラにハッセは戸惑いを覚えながらも反論した。

 

「今回の件に関しては特に根拠はない。だけどブリタニアはたとえ味方でも、それがブリタニアにとって脅威であれば容赦なく排除するような奴らだ。わたしはそれを身に染みて知っている」

 

苦々しげに顔を歪めるエイラに二人は顔を見合わせた。あまり見ないエイラのその表情からエイラとブリタニアにはなんらかの因縁がある事が見てとれたからだ。

 

「エイラさんはブリタニアに一体何をされたんですか?」

 

サーシャの問いかけにエイラは再び頬杖をつくと不機嫌そうにため息を吐いた。

 

「わたしの足はブリタニアにより奪われた可能性が高い。証拠はないけどな」

 

「どう言う事? あれはリベリオンのカルト教団のせいだよね?」

 

「あの事件にはガリアの工作員が関わっていたんだ」

 

エイラの発言にサーシャとハッセは驚き目を見開いた。ただのカルト教団による襲撃が、実際は国の陰謀によるものだった。それも当時は一介の少佐であったエイラを狙ったとなればそれも無理からぬ反応だった。

 

「ただの少佐だったエイラさんを狙った理由はなんだったんですか?」

 

「サーシャは知ってるかもしれないけど、あの当時わたしはスオムスとオラーシャ、カールスラントの三カ国での秘密同盟の連絡役を担ってたんだ」

 

あの当時サーシャはその固有魔法の性質から、西欧におけるオラーシャの情報全てを集約するデータバンクのような役割を果たしていた。当時のオラーシャ事情のほとんど全てに精通しているといえ、当然当時のエイラがしていたことに関しても把握していた。

 

「秘密同盟ってなに!? わたし知らないよ!」

 

「まぁ、それについてはいずれ話してやるよ。当時はブリタニアのとある情報をスオムス経由でカールスラントとオラーシャに流して、その見返りに両国からスオムスに対する援助をしてもらってたんだ」

 

「戦争中なのに味方同士で一体なにやってるんだよ……」

 

ハッセは呆れた様子で肩を落としたが、エイラはそれを無視して話を続けた。

 

「その情報はガリアもまた手に入れたいものだった。教授が言うにはあの事件があった日、わたしがその欲しい情報を持って移動しているって情報を入手したらしい」

 

「ではあの教団はガリアが送り込んだものという事ですか? ならブリタニアは無関係なのでは……」

 

「慌てるなよサーシャ。本題はここからだ。どうやらガリアはガセネタをつかまされたらしい。教授曰く、ガリアの諜報能力はブリタニアよりも下らしい」

 

「それだけでガリアを信用するの?」

 

その言葉だけであればエイラも信用しなかっただろう。だがそれとは別に、とある人物に告げられた言葉からあの事件にはブリタニアも関わっていると確信が持てた。

 

「死んだマロニー大将に入院中に言われた言葉がある。『我々ブリタニア人は自分の庭で勝手にティータイムをされるのは許すが、ティータイム中にコーヒーを飲まれる事だけは許さない』」

 

「それどういう意味なの?」

 

その意味を理解できなかったハッセと違い、ラルと一緒に後ろ暗い事をしてきたサーシャはその意味をすぐに理解する事ができた。

 

「……ブリタニアはコーヒーよりも紅茶の方がよく嗜まれています。紅茶派は味方、コーヒー派は敵という事でしょうね。つまりその言葉はこう言い換えられるのではないでしょうか。ブリタニアで密談する分には見逃すが、ブリタニアと敵対するような事を話し合うのであれば容赦はしないと」

 

「多分そう言う事だと思う。今スオムスは明確にブリタニアと敵対しているわけじゃないけど、ブリタニアの利益にならなければたとえ味方であろうと容赦なく攻撃してくる。このままスオムスが大きくなればブリタニアにとっても面白くないだろうし、この反乱をコントロールできるのであれば欧州のパワーバランスをブリタニアの好きなように調整する絶好のチャンスになる」

 

「つまりエイラさんはブリタニアがこの反乱を機に欧州情勢を積極的に操ろうとしていると考えているわけですね。その為に各地に兵士や物資を送り込んでいると」

 

サーシャの問いかけにエイラは頷く事で答えた。

 

「反乱軍の首脳部に食い込み、軍の意思決定に介入する為には諜報員なんて必要ない。優秀だが数の少ない貴重な諜報員を犠牲覚悟で送るくらいなら、兵士や物資を援助してしまう方が手っ取り早いからな。なによりいくら諜報員が優秀でも、短期間で首脳部に食い込むことはできないだろしな」

 

エイラの言葉に二人は眉間に皺を寄せながらも同意した。




今回は随分と前の伏線の解説的なのを挟みました。多分四十話くらいと九十話くらいの話の奴でした。

さて、いつも通り何か考察書こうと思いますけどうーん……
あぁ、一つあった。単純な疑問として強力な魔法の定義はなんなんでしょうか。昔のウィッチは今のウィッチよりもより強力な魔法が使えたとのことですが、それは果たして固有魔法として強力なのか、それとも固有魔法みたいな魔法を一人の魔女がいくつも操れたと言うことなのか。
個人的にはそれこそ物語のように一人の魔女がなんでもできてたみたいなのだと思っているんですがどうなんでしょうか。
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