スオムスの短い夏が終わり冬が近づき寒さがますにつれてラドガ湖を超えてくるネウロイが徐々に増えつつあった。しかしこの年は例年に比べてラドガ湖を超えてくるネウロイが少なく新兵の訓練にはうってつけと言える年になっていた。このまま穏やかに年が明けるかに思えたその時、それは現れた。
緊急招集の号令によりブリーフィングルームに集まったエイラ達に向かってルーッカネンが言葉を発した。
「現在大型陸戦ネウロイがオラーシャ領を突破し国境を越えて首都に向かって真っ直ぐ侵攻してきているとの報告を受けた。我々は直ちにこれの迎撃に向かう」
スクリーンには円柱の両脇に直径100メートル以上はありそうな大きな輪っかのついた巨大なネウロイが映し出されていた。
「ずいぶん変わった形だなぁ」
「車輪型?」
「サイズや見た目も規格外だがそれだけじゃない。スオムスが弱小国ながら今までネウロイの侵攻に耐えれていた地の利、つまり奴らの嫌いな豊富な水場と入り組んだ森林があったからだ。コイツはそれらをなぎ倒し陸戦ネウロイが悠々と侵攻できるルートを確保しようとしている。さらにはコイツ自体がネウロイを生成できこのまま放置していては対処できなくなるため早急に倒す必要がある」
「けどこの大きさじゃコアの位置を特定するだけでもかなりの時間がかかりそうだな」
思わずエイラがそうつぶやくとルーッカネンが答えた。
「それはすでに先に接触していたオラーシャ軍が壊滅と引き換えに特定済みだ」
ルーッカネンの発言により新兵の間に漂っていた緊迫していた空気がやや薄まりコアの破壊だけならば簡単だと言う空気が流れた。
「問題はコアの場所が分かっていても護衛多すぎて近づけないってことだな。写真を見た感じ護衛の数は50〜80程度、けど撮ってから時間が経っているからどれだけの数が増えてるか見当もつかないな」
エイラがそう言うと緩んだ空気が再び引き締まった。
「そうだな、だから長距離射撃によるコアの破壊を狙う。作戦内容はコアを破壊する狙撃班と護衛機の排除と大型ネウロイの足止めを担当する本隊の二つに分かれ本隊が射線を確保し狙撃班が狙撃をするシンプルなものだ。狙撃担当はハッセ、護衛にニパ、イッルは固有魔法でハッセのサポートだ」
「本隊じゃなくてサポートですか?」
「そうだ不整地の振動や護衛機が射線を遮るといった不確定要素が多すぎるから狙撃は万全の状態でいきたい。目標を都市部に侵入する事は絶対に防がなければならない。各員心してかかれ!」
「了解!」
大型ネウロイ迎撃はトライカーユニット回収班のアウロラを含めヴェルツィレ基地の総力を上げたものとなった。しかしその甲斐あってか護衛機の排除と大型ネウロイの足止めは順調に進んでいた。
「ネウロイが左右に分断されてる、隊長達うまくいってるみたいだな」
後はイッルとハッセ次第だなと思い2人の方をチラッと見た。その時、大型ネウロイが突如歩みを止めた。
「あれ?動きが止まった?」
『ニパか!?今すぐその場を離脱しろ!』
「アウロラさん!?でも2人共もう…」
『小型の斥候型ネウロイがいる!お前達の居場所もバレたかもしれん!そのままとどまり続けるのは危険だ!今すぐ狙撃ポイントを変更しろ!』
「2人共今すぐここから」
離れるんだと言おうとしたその時、大型ネウロイから極太のビームが発射された。
『…しろイッル!生きているなら応答しろイッル!』
インカムから流れるルーッカネンからの呼びかけにより目を覚ましたエイラはルーッカネンからの呼びかけに応じた。
「こちらユーティライネン、なんとか生きてます」
『よかった生きてたか、近くにハッセとニパがいるはずだから合流してくれ』
「了解」
ユニットに魔法力を込めて少し浮き上がると2人を探し始めた。
「ニパ!ハッセ!聞こえてるなら返事しろ!」
「ここだよイッル」
近くから声が聞こえ見てみるとニパに支えられたハッセがエイラに向かって近づいてきていた。
「怪我したのか!?傷の深さはどれくらいだ?」
「わたしはそのうち魔法で治るから大丈夫。けどハッセが」
そう言われてハッセを見ると利き腕に添え木がしてあり骨折しているようだった。
「少しひびが入ったくらいだけどちょっと狙撃は無理そうだね」
当初の作戦通り狙撃するのは不可能となった以上第24戦隊が取れる選択肢は一つしかなかった。撤退して体制を立て直しラッペーランタなどのウィッチと協力体制を敷くしき迎撃体制を整えるしかない。しかしそれではさらに増えるであろう護衛機を突破できるかどうか分からないためできればここで撃破しておきたかった。そこまで考えるとエイラは一つの作戦を思いついた。エイラの未来予知を駆使して大型ネウロイに近づきコアを破壊すると言う作戦とも言えないような代物だった。それをルーッカネンに伝えようと口を開こうとした時、ハッセが先に言葉を発した。
「隊長、一つ提案があります」
「ハッセ?」
「2人共私とひと勝負してみないか?」
ハッセが語った作戦はエイラとハッセの役割を逆転させると言うものだった。つまりエイラが狙撃手となりそれをハッセがサポートすると言うものである。そのためにまず本隊から一部の隊員を抽出し狙撃ポイント周辺の斥候型ネウロイの排除を行っていた。
「わたし長距離射撃はそこまで得意じゃないんだけどな」
手渡された狙撃銃を見ながら思わず呟いた。
「けどそれ以外に何か手はある?」
「ないわけじゃない。けどハッセの方が安全かつ確実だな」
「なら問題ないね。大丈夫、イッルはならきっとできるさ」
『こちらアウロラポイントC〜F周辺の障害物は片付け終わった』
『こちらラプラポイントL〜Mの斥候型は排除した。引き続き囮として排除を継続する』
「さて、どうやら準備は整ったみたいだね」
「みたいだな。ハッセサポート頼む」
「仰角を2度上げて。距離は900、風速は5、風向きは南南西」
エイラは銃のの位置を指示に合わせて調節しながら士官学校での狙撃訓練で習ったことを思い出していた。狙撃前には息を止め、鼓動にあわして引き金を引く。
「よし、いいよ。後はイッルのタイミングで撃てばいい」
集中すればするほど鼓動に意識がいき耳元で心臓が脈打っているのかと錯覚するほど大きな音となっていく。
ここしかないと言うタイミングでリズムを合わせるとエイラは息を止め引き金を引いた。
「どうだ!?」
コアのある円柱の中央付近に着弾したのを見てハッセが思わず声を上げた。
「クソ!最後の最後でリズムが狂った!」
そう言うエイラの視線の先には着弾点が徐々に再生しつつある大型ネウロイの姿があった。
大型ネウロイはエイラ達の方にその巨体を向けるとビームの発射体制に入った。
「位置がバレた!主砲が来るぞ!」
長距離射撃と固有魔法を用いたサポート、さらには墜落と言った普段殆ど経験したことのない出来事の連続で思いの外疲労の溜まっていたエイラはほんの一瞬、回避が遅れた。しかしそれは致命的な隙となりエイラにビームが降りかかった。エイラが被弾を覚悟したその時、目の前に2人の人影が現れシールドを展開した。
「ニパ!?それにラプラ!」
「しっかりしろよイッル!お前はわたし達のエースだろ!」
まだもう一度チャンスはある、ニパ達のおかげでできたこのチャンスを逃すわけにはいかない。その一心でもう一度銃を構え直すとハッセのサポートのもと再び大型ネウロイのコアに照準を合わせた。そして大型ネウロイのビームが途切れたその瞬間、エイラは引き金を引いた。その銃弾は真っ直ぐと大型ネウロイのコアへと向かいそれを破壊した。
「今度こそ…ホールインワンだ!」
そこまで言いとうとう疲労が限界に達したエイラは意識を手放した。
今回はブリタニアの懐事情について少し触れてみようと思います。
ストライクウィッチーズrtbの一挙放送でどっかの軍隊が貧乏軍隊とか言われてだけどなを見て(多分スオムス)思わずブリタニアの方が貧乏になってるのではと思ったので詳しく書きます。
一番の理由は難民です。おそらくオストマルクとガリアあたりの国民の多くがブリタニアに避難していると思われそれらに対する支援によりかなり財政が逼迫していると考えられます。さらには本土の防衛や他国への支援などによりかなり金が必要となります。501ができるまでは恐らくある程度の財源が確保できていると思います。
しかし本土防衛のために501ができれば財務官僚はその部分を削減しにかかると考えられます。軍隊の中でも特に空軍や陸軍への予算の割り振りが減ることになると思います。
そしてガリアが奪還されると多くの軍人、特に陸軍は保持し続ける必要性が薄れます。勿論国際協調のために大陸に軍隊を送る必要はありますが財務官僚はおそらく本土の安全性を指摘して予算を減らすでしょう。そうなると果たしてスオムスとブリタニア、一体どちらが金がないのでしょうか。(これでも多分スオムスの方が少ないですが軍人一人当たりの予算を考えるとどちらが高いかは不明)
もちろんスオムスもかなり安全になっていて軍事予算を減らしている可能性もありますがスオムスの場合ブリタニアと違いネウロイ勢力圏と陸続きのため大幅に減らす事はないと思います。
後多分1話スオムス編を挟んでブリタニア編へと突入します。やっと501メンバー出せます。ここまで長かった(笑)