「久しぶりだね、ペリーヌ、リーネ」
招かれざる客ばかりが訪れていたペリーヌの屋敷に良き客人が訪れるのはおよそ半年ぶりの事だった。
「お久しぶりですわね、ハルトマンさん」
久しぶりの良き来訪者に、ペリーヌは笑顔でそう言った。
「ガリア議会の議員になったんだってね、おめでとう!」
「……ええ、ありがとうございます。ハルトマンさんも試験合格、おめでとうございます」
一般的に社会的地位を得ると言う事はめでたい事であり、ハルトマンの来訪もペリーヌがガリア議会で議員としての地位を得た事に伴うものだった。
「あんまり嬉しく無さそうだね」
「ペリーヌさんとしては不本意な形での立候補になりましたから」
不本意な形での立候補。その意味をどうやらも先に、ペリーヌは表情を明らめるとハルトマンを屋敷の中に誘った。
「そんな私の些細な事情よりも今は久しぶりの再会を喜びましょう。立ち話もなんですし中へ入ってくださいまし」
「私お茶を用意してきます。ペリーヌさんはハルトマンさんを部屋に案内してあげてください」
医者になる事を表明していたハルトマンは、戦争終結後にあった試験で医大に合格していた。今年の10月に入学予定であり、一番暇な今の時期に色々なところを旅しようと思いたったハルトマンが最初に訪れたのがガリアだった。
「ガリアには一週間ほどの滞在予定とのことでしたけど、何をするかもう決めていますの?」
「実はまだ決まってないんだ。パリとかはサン・トロンにいた頃に何度か行ってるしあんまり魅力を感じないんだよね」
「あら、パリはあの頃とは間違えるほど活気に満ち溢れてたいますわ。一度訪れてもいいと思いますわよ」
ハルトマンがサン・トロンにいた頃のガリアはまだまだ復興途中で、人もそう多くはなかった。だがガリア解放から数年が経ち、海外に避難していたガリア国民の大半は帰国している今は戦前の活気を取り戻していた。
「じゃあ最終日にパリに寄ってから空港に行こうかな。どうせその日の一番最後に飛ぶ便でブリタニアに向かう予定だし」
「それではパリの案内は難しいですわね。時間が短すぎます」
「案内してくれるの?」
「当然でしょう。今はパリのホテルに滞在すればいくらでも楽しめるのに、態々ガリアの端にある私の屋敷を訪れてくれた友人をただ泊めるだけと言うのは私の矜持が許しませんわ」
ペリーヌの提案は嬉しい物だったが予想外のものでもあった。議員としての仕事と、身寄りのない子供達の世話。ただでさえ忙しいペリーヌに、部屋を貸してもらっているのだ。これ以上の負担を押し付けるのは心苦しかった。
「だけど忙しいでしょ? 嬉しいけどペリーヌにこれ以上負担をかける訳にはいかないよ」
「否定はしませんが、ハルトマンさんを迎え入れる為にこなさなければならない仕事は一通り終わらしています。お気になさる必要はありませんわ」
ペリーヌらしい配慮だった。だがそれはあくまでも現段階でやらなければならない仕事を終わらしているだけで、これからハルトマンが滞在する一週間の仕事全てを終わらしている事にはならない。
そもそも真面目なペリーヌの事であるから、現段階で終わらすことの出来る仕事はハルトマンの訪問がなくとも終わらせていただろう事は簡単に想像がついた。それに気が付いた上でハルトマンはペリーヌの好意を素直に受け取る事にした。
「ありがとう! じゃあお言葉に甘えさせてもらうよ」
こうして、ハルトマンのペリーヌ宅での生活が始まった。
「ルーデル!? なんでここにいるの!?」
始まってそうそうハルトマンを驚かせたのは、カールスラント本国では行方不明になっていたルーデルが隣国ガリアにいた事だった。
「なんだ、私がここにいたら悪いか?」
「悪いと言うか、結構色んな人が探してるよ」
「探している? ちゃんと辞表は出したし何も問題はないはずだ」
普段のめちゃくちゃな言動とは裏腹に、最低限の規則は守るルーデルはきちんと辞表を提出してから出国していた。何を問題視する必要があるのか分からずに首を傾げるルーデルにハルトマンはため息を吐いた。
「正式に受理される前に出奔したでしょ。皇帝陛下とかから勲章貰ったりやる事は一杯あったのに、急に行方不明になるから予定が全部パァだってゲーリング元帥が怒ってたよ」
「辞表を受け取ったのは元帥閣下だ。受け取った以上、その時点で私は軍を辞めたと言う事だ。それ以降のことに関しては知らん」
「ゲーリング元帥、盛大な式典をしてからって伝えてたはずだよ?」
意外な事にゲーリング元帥はルーデルは辞める時、一切引き留めなかった。代わりに引退は軍と政府の高官、そしてカールスラント皇帝を招いて盛大に行うと通達しそれまで待つよう指示した。
もっとも、ゲーリング以外の軍高官の多くはルーデルを引き留めようとした。その煩わしさからルーデルは想像に軍宿舎を出立し、ガリアに向かう事になった。
「私が国外に出た事は少し調べれば分かるはずだ。なのに今まで連絡がなかったと言う事は特に問題はなかったのだろう」
そう言えばゲーリングがそんな事を言っていたな、と思い出しながらも過ぎた事は仕方がないと切り替えると言った。
「私達が辞めるっていう事は、争いの時代が終わった事を意味するんだよ。だからルーデルとか私みたいな有名なウィッチがまとめて辞めるこのタイミングで、ネウロイに打ち勝った記念式典をかねて盛大に祝う事になってたんだよ。問題がない訳ないじゃん」
ネウロイとの戦争において、ウィッチは重大な役割を果たした。特にハルトマンやルーデルのようなエースと呼ばれるウィッチは民間での知名度も高く、ある種ウィッチの象徴的存在だった。それが軍を辞めるとなれば、本格的な平和な時代の到来を意味する。平和の到来と同時に市井に戻るウィッチも多く、それらに対する慰労の意味も込めてカールスラントでは式典があった。
「私一人が式典に出なくとも他に幾らでもウィッチはいる。問題はないだろう」
「人によってはそうかもね。だけどルーデルがいなくなったせいで私達が式典で喋る時間が伸びたんだよ」
ハルトマンだけではない。同じタイミングで軍を辞めたミーナなども式典では観衆の前で演説をする事になった。
死んでいった戦友に対する思いや、これからのカールスラントの明るい未来に対しての思いなどなど。話した事は多岐に渡るが、本来であればルーデルが話すはずだった分の時間を数分ずつ加算される羽目になった。
元来、ハルトマンはこの手の演説が苦手だ。事前に台本を作ってはいたが、何度もリテイクする事になり受験勉強の時間が大幅に削られる事になった。
「それはすまないな。だがその程度の影響だったのならそう目くじらを立てなくてもいいだろう」
「私も別に怒ってる訳じゃないけどさ。ルーデルってなんだかんだで人望があったでしょ」
特に対地攻撃を主任務としていたウィッチ達からは絶対な信頼を得ている。撃墜され生還が絶望的な状態でも部下を見捨てず、また圧倒的な実力で地上のネウロイを焼き払う姿は対地攻撃ウィッチの憧れであり理想だった。ルーデルの現役最後の日になるとの事で多くの対地攻撃ウィッチが現役、非現役を問わず参加を熱望した。
「みんなガッカリしてたよ。せっかく休暇を勝ち取れたのにって」
そもそも対地攻撃を主任務とするウィッチがこれほどまで長きに渡り活躍し、かつ第戦果を上げる事そのものが殆どない。対地攻撃はその特性上、濃密なネウロイの対空攻撃に自ら近づく事になる。それだけ撃墜確率も生還率も下がる為、多くの対地攻撃ウィッチは命を落とすか、大怪我をして戦線を離脱する事になる。
ルーデルにはネウロイの巣を直接破壊したような華々しい戦果はないが、ネウロイの撃破数だけで見ると全軍の中でもダントツのトップになる。そのルーデルが引退すると聞いて駆けつけない対地攻撃ウィッチは存在せず、カールスラント中の対地攻撃ウィッチが休暇を申請して式典に参加しようとしたほどだった。
「それはなんとも悪い事をしたな」
流石のルーデルも態々会いに来てくれたウィッチ達に無駄足を踏ませて事には罪悪感を覚えたようで気まずそうな顔をした。
「だがまぁ、ネウロイを滅ぼし平和になったんだ。焦らずとも生きていればいずれ出会う機会もあるだろう」
ウィッチである以上、死と隣り合わせの戦争の時代は終わった。そう焦らずとも、いずれ自分がカールスラントに帰国した際に元部下達には自分から顔を出せばいいだろう。そうルーデルは思った。
対地攻撃ウィッチってどんな評価なんでしょうね。
スコアって地上型ネウロイ、飛行型で厳密に別れてるんでしょうか。それともネウロイで統一されているのか。
個人的には統一されてる気がするんですよね。まぁ、コアのあるなしでスコアに換算されなかったりするしスコアを数えるのは結構めんどくさそうですけど。
それはともかく、ルーデルのネウロイ撃破数は史実の戦車撃破数がコアありネウロイだけだとしてもダントツでトップなんですよね。その他トラックとかも含めると余裕で千を超えると言う……
下手せずともこの世界で一番の功労者はルーデルさんですね。流石閣下。