「蜂起し損ねた、と見るべきなのでしょうね」
果たしてあの教授に限ってタイミングを見誤る事があるのだろうか。そんな疑問が無い事もないが、一先ずガリアの危機は去った。それがバルトランドとスオムスの戦争が終結したことに対するペリーヌの考えだった。
「じゃあペリーヌさんが今までみたいに気を張り続ける必要もなくなったんですね?」
安心した様子のリーネさんに、私は彼女に随分と心配をかけていたのだと自覚した。
「そんなに態度に出ていましたか?」
「はい。特にガリア議員になる前と後じゃあ全然違いましたよ。夜も随分遅くまで起きていたみたいですし、数年前に戻った気分でしたよ」
リーネに指摘されて、ペリーヌは最近の自分がまるで軍にいた頃のような生活をしていた事にようやく気がついた。眠りは浅く、何かあればすぐに起きて対応できるように私服も近くに置いていた。
「言われてみれば、まるで501にいた頃に戻ったみたいでしたわ」
精鋭部隊であった501は比較的楽な生活をできる事が多かったが、それでも領土奪還のために最前線に配置された時などはハードな生活をしていた。その頃ほどではないにしろ、最近のペリーヌは退役してからは考えられないくらい忙しかった。
「501……ですか。結局ハルトマンさん以外とは会えていませんね」
「戦争が終われば時間さえかければ会いに行けると思っていましたけど、意外と戦後の方がしがらみも多くて会いにいけませんわね」
退役したとはいえ、人類の勝利に大きく貢献した501部隊の元メンバーは簡単に国外に出る事ができなくなっていた。例外としてリーネはブリタニアに帰る事なく退役し、そのままガリアに滞在した為国外にいるが、それ以外のメンバーは全員が所属する国にいる。
もっとも、リーネに関しては他の501メンバーと違い下士官であった事から事務手続き上でいくつかのミスがあり、本来ならば帰国してから退役しなければならない所を現地で退役を受理してしまった事が原因であった。
「本来なら私達軍を離れた側が会いにいくべきなんでしょうが、私はガリア議員ですし国外には簡単には出られませんし、リーネさんも下手にガリアから離れるとブリタニアが良い顔をしませんし……」
「かと言って誰かをガリアに招待しようとしても、ミーナ隊長とハルトマンさん以外はみんな軍に残ってるから、招待しても簡単にはこれないしもんね」
他の501メンバーで退役したのはサーニャくらいで、坂本とバルクホルンは教官、シャーリーは新設されたリベリオン空軍にテストパイロット、ルッキーニはロマーニャ公国の近衛ウィッチ隊の隊長、服部は実戦部隊の一つで隊長を任され宮藤は扶桑海軍で軍医として勤務している。
「ルッキーニちゃんが軍に残ったのは意外だったよね。てっきりシャーリーさんのところにいくものだと思ってたよ」
「そうですわね。ですがルッキーニさんがシャーリーさんにベッタリだったのは彼女の幼さから来るものでした。年齢とともに精神的な成長もあったのでしょうね」
「ペリーヌさんも昔は坂本さんに首っ丈だったけど、いつの間にかそんな事なくなったもんね」
「ちょ、ちょっとリーネさん!?」
唐突に昔の自分を槍玉に挙げられ、ペリーヌの声が裏返った。確かに今にして思えば随分とベッタリだった気もするが、だからと言ってそれを揶揄われると流石に恥ずかしかった。
「ルッキーニちゃん、元気にしてるかな」
「ルッキーニさんが元気でない姿なんて想像できませんわ。彼女はいつも元気だけは有り余っていましもの」
「だけどそれもシャーリーさんがいたからこそじゃないかな。もしシャーリーさんがいなかったらまた違った状態になっていたんじゃないかな」
「そうかもしれませんわね」
いずれまた全員で集まりたい。感情に浸りながらペリーヌはそんな事を考えた。
「またいつかみんな集まれるといいね」
リーネも同じだったようで、ペリーヌに語りかけた。ペリーヌは口元に笑みを浮かべて頷いた。
「私が議員を辞めて、他の方達も軍を引退すればそれも容易になるでしょう。十年かそこらでこの夢は叶うと思いますわ」
「十年ですか。長いですね」
「ネウロイとの戦い開始から今に至るまでの時間よりも少し短いと考えたら我慢できません事?」
ネウロイとの戦争は1939年に始まっり、現在は1950年。戦争開始時にはリーネもペリーヌもまだ軍に入っていながったが、それでもネウロイが現れた時の大人達の慌てようはよく覚えている。
「まさかあの時は被害があそこまで拡大するだなんて思っていませんでしたよね。黒海の沿岸にネウロイが現れて、それに対して各国が軍を派遣して対応する。その辺りまではまだ大人の人達はあまり騒いでなかったような画家します」
「そうですわね。それが敗北してネウロイの支配領域が広がるにつれ、段々と焦りが生まれ、疎開する人が出始めましたわ」
オストマルクガ陥落したあたりで、ペリーヌの周りにも疎開を考える人物が出始め、カールスラント領土にネウロイが侵攻し始めたあたりでそれを実行に移す人が出始めたとペリーヌは記憶していた。
「ブリタニアだとガリアが陥落するまで避難する人は殆どいなかったと思います」
「そうなのですか?」
「殆どの人がドーバー海峡があれば、水が苦手なネウロイはブリタニア本当には来ないって」
実際は飛行型のネウロイがブリタニア半島に飛来し、ガリア解放までの数年間に渡りバトルオブブリテンと呼ばれる長い航空戦を繰り広げる事になった。
「何もネウロイは地面を歩くタイプだけが全てではないというのに……」
過ぎた事とはいえ、あまりに楽観的な姿勢に思わずため息が出た。
「幸い初期のブリタニア侵攻はそれほど規模が大きくなかったですし、被害は殆どありませんでした。お陰でその後はすぐにみんな避難したみたいですよ」
「……そういえば今のガリアに新たな脅威出現に関しての避難計画はありませんでしたわね」
ブリタニアの対応の不味さに眉を顰めていたが、もしまた同じような事態になった時の対抗策がガリアに用意されていない事に思い至った。
「今度の議会で議題にしますわ」
「もう、久しぶりにゆっくりできているんだから仕事の事なんか忘れてしまえばいいのに」
「そうはいきませんわ。今の私はガリア国民からの選ばれた議員。であるならばその義務を果たすために、休日であろうとゆっくりと羽を伸ばすなどしたいられませんわ」
ペリーヌが生真面目な正確である事はリーネも重々承知しているが、それでも休める時はできる限り休んで欲しいと願っていた。
「たまには休んでいいと思いますよ。それじゃないといざ何か会った時に万全の体調出ないと、それこそガリアの国民の為になりませんよ」
「いつでも万全の体調でいるから大丈夫ですわ、なんて言っても信じてもらえませんわよね」
長い付き合いのリーネに、こんな詭弁が通じるとは思えず問いかけるような口調でペリーヌは言った。
「当たり前ですよ。体調っていうのは何も肉体的なものだけじゃないんですよ。バルクホルンさんが精神的な理由でネウロイに打ち負けた事があるみたいに、心身両方が万全でないと」
「あの時は随分と衝撃を受けましたわ。まさかあのバルクホルン大尉があんな怪我をするなんて思いませんでしたもの」
衝撃を受けたが、同時にどんなエースでも自分達と同じウィッチであり撃墜される時はあるのだと思い知らされた。
そんなバルクホルンの事例を引き合いに出されてはペリーヌとしても反論のしようがなかった。
「わかりましたわ。ともかく今は仕事の事は考えず、友人との楽しいティータイムと洒落込む事にしますわ」
ペリーヌの言葉に、リーネはパッと笑顔を浮かべると立ち上がった。
「だったらスコーンを持ってきますね。実はまだ焼きたてが余ってるんです」
「ぜひお願いしますわ。放っておいて子供達が勝手に食べて虫歯にでもなったら大変ですもの」
リーネの作るスコーンはペリーヌも大好物だ。笑顔を浮かべて了承するのだった。
ふと思ったのがストライカーユニットを戦闘機規模に大型化させて、現在の小型軽量の万能ユニットから超重量級攻撃ユニットとして使えばそれはそれで面白そうですよね。まぁ、正直レーダーに感知されにくそうなストライカーユニットの方が使い勝手は良さそうですけど。そもそも今のストライカーユニットで十分な火力とシールドがありますし、大型化して出力アップは過剰な気がしますね。