大使館
1943年1月
ブリタニアに到着したエイラは大使館で大使のキミ・コーレマイネンに挨拶をしに執務室へと向かった。
「エイラ・イルマタル・ユーティライネン少佐、ただいま着任しました」
「ようこスオムス大使館へ。本来ならコーヒーでも出してもてなしたいところだがそうも言ってられん。今日朝突然ブリタニア国王エドワード六世がユーティライネン少佐と会いたいと言ってきた。時間まであと一時間もないからすぐに礼装に着替えて謁見するための準備を整えてくれ」
「ええ!?ちょっと待ってください。わたし今礼服とか持ってませんよ!」
「どういうこどだ。軍人なら礼服くらい持っているだろう」
大使の疑問はもっともである。しかしこれにはウィッチ特有の事情があった。
「ウィッチの服装規定がかなり緩くて基本的に野戦服が礼装として成立するんです。これは各国共通でそのためウィッチは礼装を持っていません。しかしブリタニアに来るにあたってウィッチではなく駐在武官の服装規定が適用されることになったんです。それが正式に決定されたのはかなり最近でまだ礼服わたしの手元に届いてないんです」
「いつ届く予定だ」
「今日勲章やわたしの私物と一緒に大使館に届くはずです」
それを聞いて大使はほっと一息つくと安心したように言った。
「ならさっき届いた少佐宛の荷物がきっとそれだろう」
「届いているんですか?なら良かった、多分入っているはずです」
無事に礼装に着替えたエイラは初めて着ることになった礼装の胸元にある勲章や飾緒の重みを感じながらエドワード六世との謁見に臨んだ。
この突然知らされたエドワード六世との謁見は前例のないウィッチの駐在武官を一目見てみたいというエドワード六世の希望によるものでありその謁見では勲章の授与もされることとなった。また、ブリタニアから勲章の授与があったことからスオムスの同盟国であるカールスラントとオラーシャもまたブリタニアと同格の勲章を大使館経由で授与することとなった。謁見は比較的スムーズに進みこの謁見の後エイラはブリタニア空軍司令部に行きトレヴァー・マロニー大将との会談に臨んだ。
「スオムス空軍駐在武官エイラ・イルマタル・ユーティライネン少佐です」
「ブリタニア空軍トレヴァー・マロニー大将だ。早速だが君が運んできた物を渡してもらおうか」
挨拶もそこそこにマロニー大将が言った。
「わかりました」
エイラは机の上に外交行嚢を置くと蓋を開けると中身の確認を促した。
「こんなに小さなものが本当に奴らのコアなのか?」
「間違いありません。閣下は見たことないのかもしれませんがウィッチであれば一目でわかるはずです。不安でしたらウィッチに確認されてはいかがですか」
マロニー大将の疑いの言葉に思わずムッとしながら言った。
「気を悪くしたのなら謝ろう。偽物を持ってきたなどと思ってはいないが思っていたより小さくて驚いただけだ」
「いえ、確かに知らない人からすれば疑いたくもなります。お気になさらないでください」
「ありがとうそう言ってもらえると助かる。さて、では今後について話そう。まず事前に聞いているとは思うがユーティライネン少佐には第501統合戦闘航空団に赴任してもらう。この隊は現在カールスラント空軍のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐が指揮官を務めていて戦闘隊長が扶桑海軍の坂本美緒少佐だ。同じ国ならともかく別の国の同じ階級の人間が指揮するのもその指揮下に入るのも何かと問題がおきるだろう。そこで少佐には副司令官として赴任してもらう」
「副司令官では戦闘隊長よりも立場が上になって根本的な解決にはなってないのではないですか?」
「確かに通常の部隊ではそうだ。しかし統合戦闘航空団においては階級が同じ場合殆ど同格として扱うことにした。戦闘隊長はネウロイとの戦闘では司令官に次ぐ次席指揮官として副司令官を指揮下に置く。そして副司令官は戦闘以外での次席指揮官であり主な任務は補給や基地の管理など基地司令官のようなものとなるように規則を作った」
「同じ国同士ならともかく違う国同士です、指揮系統が複雑になりすぎませんか」
おそらくその辺のことはマロニー大将も考慮済みだとは思いながらもエイラは質問した。
「少佐のいうことはもっともだが少佐は駐在武官としての仕事もあるだろうから501の運営には深く関わらないだろうからそこまで大きな問題にはならないと考えている。もしも問題が出るようならそちらで対応してくれ」
エイラの負担が大きくなる上問題が起きた時はこっちに丸投げかよと思いながらもエイラは了承した。
「わかりました。しかし明らかに副司令官の方が権限が大きいのによく扶桑がそれで納得しましたね」
マロニー大将はそんなことを言われると思っていなかったのか一瞬驚いた顔を浮かべてから答えた。
「ああ、少佐は知らないのか。扶桑は伝統的に指揮官先頭という考えがあって戦闘隊長の方が権限の大きい副司令官よりもいいらしい。だから二つ返事で了承してくれた」
エイラとしては楽ではあるが思わずそれでいいのかと聞きたくなっだがこれ以上そのことに触れる必要もないと判断しエイラは本題に移ることにした。
「それで今後の情報提供はどのようにするおつもりですか」
「月に一度統合戦闘航空団の指揮官との会議がある。今まではヴィルケ中佐か坂本少佐のいずれかにきてもらっていたんだが今後はヴィルケ中佐とユーティライネン少佐が交互に来ることにして二ヶ月に一度私と少佐が会える日を作り研究結果もこの時に渡す。我が国とスオムス両国の友好のためにもくれぐれも知られることのないようにしてくれ」
「勿論です」
こうしてマロニー大将との会談を終えたエイラは大使館に向かい他の駐在武官との顔合わせを済ますと今度は各国の大使や駐在武官との顔合わせを兼ねたパーティーに出席することになった。
パーティーでは次から次へとくる各国の大使や駐在武官との挨拶をしながら乾杯をしお酒を飲む。いつかの嫌な記憶が蘇るが前回のような無礼講の場ならともかく正式な社交の場ではそんなことは起きないだろうと思いながらも戦々恐々としながら各国大使達との挨拶に勤しんだ。
「楽しんでいるかユーティライネン少佐」
一通り挨拶が終わったエイラにスオムス陸軍の駐在武官であるペール・サーリネンが中佐が声をかけてきた。
「はい、みなさん紳士的で話も面白くてすごく楽しいです」
「それは良かった。ところで飲んでいるのはワインかい?」
「はいそうです」
エイラの答えを聞くと一度周りの様子を確認して誰も聞いていないことを確認すると声を小さくして言った。
「葡萄ジュースも用意されているはずだからもし無理をしているのならウェイターに頼むといい」
「あるんですか?」
「酒が苦手な人もいるから大抵のパーティーでは雰囲気を損ねないよう酒に似た飲み物が用意されていることが多い。今回はユーティライネン少佐がいるからなおさらおいてあるはずだ」
もしかしたら前回のパーティーでもあったのかなと思ったがあの雰囲気では相手すらなかったすぐに思い直し今度からジュースがあるかどうか一度聞こうとエイラは心に決めた。
「ありがとうございます。聞いてみます」
サーリネン中佐の言う通り葡萄ジュースが置いていて(しかもすごく美味しい)エイラはサーリネン中佐に感謝しながら残りの時間を楽しんだ。
今回は503部隊のフーベルタ・フォン・ボニン少佐の役職の副司令官と戦闘隊長の関係ついて少し考えたんで書きます。
字面だけ見ると副司令官の方が偉く見えるけどそれなら戦闘隊長を置く意味ってあんまりないのかなと思いました。というのも数の少ない統合戦闘航空団で戦闘において司令官、副司令官、戦闘隊長のうち2人以上が基地に残るケースってあまりないと思うんですよね。基本的に戦闘隊長以上の役職の人間が出撃するなら戦闘隊長をおく必要はないです。司令官を補佐するとしてもミーナ隊長やラル隊長が一人で捌ける量の作業量なら負担は軽くなるにしてもあまり副司令官の存在意義が見出せません。
で、個人的に考えた結果これは司令官と副司令官のうちどちらかはかなりサボっているのではという疑惑が出てきました。もちろん隊長や副司令官が戦闘指揮をとっていて戦闘隊長が形骸化している可能性もありますがなんかボニン少佐はすごくサボってそう(偏見)と考えたまでは良かったんですけど統合戦闘航空団の隊長会議にサフォーノフ中佐が出席しなかったのって実はサボっていたのではという疑惑が湧いてきました。もしかしてサフォーノフ中佐の外面がすごく良いだけで中身はハルトマンとかクルピンスキー寄りだったりするのでしょうか。503部隊でアニメか漫画作ってくれないかな。
さて、エイラは副司令官に就任しましたがサボるもよし仕事してミーナの負担を減らすもよしの役職で一体何をするんでしょうかね。