ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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かき氷が美味しい


空の上

ガリア南部で反乱が勃発した一時間後、ペリーヌは空の上にいた。

 

「作戦を立てると私は言いましたわよ」

 

「作戦。なんとも甘美な響きだな。私がもし参謀将校ならば作戦を立てる為に一週間は屋敷に滞在していただろうな」

 

ルーデルにしては珍しい皮肉だった。少し驚きながらも、ペリーヌはルーデルらしい意見だとも思った。

 

「戦場では議論を重ねるよりもたった一つの行動が状況を好転させる事がありますものね」

 

先手を打たれた現状、暫くの間はガリア政府は後手に回り続ける事になる。いずれ反撃のために先手を取りにいくだろうが、もしもそれが遅れるような事があればこの戦争は不必要に長引く事になりかねなかった。

 

「反乱軍はヴィシー政権時代に軍事、民間共に重要地となったトゥーロンを中心に南部の主要都市での蜂起だ。いまだに勢力が拡大しつつある事を見るに、まだ反乱軍の組織体制が完全なものではない事はまず間違いない。ここは一つ、スオムスに倣うべきだ」

 

「スオムスに、つまりバルトランドとの戦いにおいて、決定打となったのはスオムスによるバルトランド首都の急襲。つまり私達も南部側の首脳部を襲い組織を瓦解させると言う事ですわね」

 

旧ヴィシー政権時代の組織体系を流用した形で組織を作っていると考えられるため、誰がどんな役職についているかはかつてのヴィシー政権の組織に関する資料を確認すれば推測は容易だった。

 

「そうだ、と言いたいところだが一つ問題がある」

 

「どこに司令部があるかと、首脳部を破壊する事により下の人間達が混乱しガリア南部全土が混乱しかねない事ですわね」

 

「それ以前の問題だ。そもそも奴等の首脳部がどこにあるのか私達は知らない。今ならば奇襲できても、一度してしまっては奴らも警戒する」

 

「なるほど。ですが彼らが司令部を置くとすればヴィシーか、今回最初に蜂起が確認されたトゥーロンではありませんか?」

 

ヴィシーはガリア南部軍の成り立ちからして密接な関わりがあり、トゥーロンは経済基盤としては南部で最大級だ。司令部を置くとすればそのどちらかだとペリーヌは予想していた。

 

「可能性は高い。仮にそのどちらかに司令部があると仮定しても確率は五分だ。実際はそれが確定しないから、確率はさらに低い。そんな低い確率に基づいて作戦行動に出るのは馬鹿のする事だ」

 

ペリーヌからすれば、ルーデルはかなり博打染みた作戦を立て遂行してきた印象しかない。本人曰く、それは十分な勝算あってのものなようだが、今回の作戦とルーデルがこれまでしてきた作戦の成功率にそれほど大きな違いがあるとは思えず、ペリーヌは返事に窮した。

 

「かと言ってどこに司令部があるかを馬鹿正直に探していては敵の体勢が整う事になりかねない」

 

「そうですわね。ですが妙案があるからこそ、こうして飛んでいる訳ですわよね」

 

「妙案というほどではないが、一応あるな」

 

妙に歯切れが悪いルーデルに、ペリーヌは少し不安を覚えた。

 

「我々が反乱軍に与すると言って奴らに近づくのだ」

 

「南部軍に入るのですの!?」

 

「違う。そのフリをするだけだ。私達は世界でも有数のウィッチで、かつ旧式とはいえストライカー・ユニットを持っている。奴らからすれば喉から手が出るほど欲しい存在のはずだ。もしも反乱軍に入ると言えば、必ず上層部に話が通るはずだ。その過程で敵の司令部がどこにあるのか知ることもできるだろう」

 

ルーデルの意見は正しいのだろう。だが反乱を起こしたとは言え同じガリア人相手に騙し討ちをするような事は、ペリーヌはしたくなかった。

 

「同じガリア人同士で騙し討ちなど、気が乗りませんわ」

 

「そんな問題ではないだろう、クロステルマン。これは戦争なんだぞ。手段を選んで手をこまねいていては無駄な犠牲が出る事になる」

 

ルーデルの言う言葉正しいとペリーヌは思ったが、同時に今回の反乱に対してそれを当てはめるのは、ともすれば最悪の一手につながるのではないかと言う疑念があった。

 

「相手が完全に他国であればそうかもしれませんわね。ですがこれはガリア国内の問題です。ただ勝てばいいという問題ではありませんわ」

 

「どう言う意味だ」

 

「ガリア南部の反乱を鎮圧したとしても、ガリア南部と言う政治基盤はそのまま残る事になりますわ」

 

「政治基盤だと? 今は戦争の話をしているのであって、政治の話ではないぞ」

 

唐突に出た政治基盤と言う言葉に、ルーデルは眉を顰めた。

 

「いいえ、大いに関係があります。例えばガリア北部が南部の人達を武力で完全制圧したとして、それで南部から北部に対する遺恨が払拭できるかといえば、そうではありませんわ」

 

「遺恨の払拭というが、武力に訴えてきた以上はこちらも武力で返すしかないだろう。それによりさらなる遺恨が生まれたとしても、それは奴らの自業自得というものだ」

 

「その考えが間違っているとは思いませんが、かと言っても正しいとも思いません。結局のところ、この戦争はガリアにとっては失うモノしかない戦争なのです。その失うモノをできる限り減らすために、今回の戦争は勝ち方も考えなければならないのではないかと思うのです」

 

反乱鎮圧後も、ガリア南部の選挙区は残る。そして反乱鎮圧後にそこから立候補し、政治に携わるのは反乱によりなんらかの被害を受けた被害者達だ。たとえそれが旧ヴィシー政権が蜂起した事が原因だとしても、直接被害を与えるのは北部の政府側になる。反乱鎮圧後の混乱を最小限にするためにも、南部の人間が納得するような終わらせ方を考えなければならない。

 

「難しい話だな。本来、ただ勝つだけでもかなり手間がかかるのに、それに加えて勝ち方も選べとは」

 

ルーデルは珍しく呆れた様子でペリーヌに視線を向けた。

 

「だがそれくらい強欲な方がウィッチらしいというものだ」

 

小さく笑ったあと、ルーデルは鋭い視線をペリーヌに向けた。

 

「そんな強欲なクロステルマンに問おう。我々の勝利方法はなんだ。通常の勝利方法ではダメというのならそれに従うが、せめて勝利方法くらいは教えてもらわなければどうしようもないぞ」

 

「実のところ、私にもまだどうすればいいのか分かっていませんの」

 

「それだと困るぞクロステルマン。イタズラに時間を消費する余裕は無いと分かっているだろう」

 

なんらかの方針を考えついていると思っていただけに、その声音は呆れを多分に含んでいた。

 

「勝利方法はともかく、この戦争の落とし所についてはある程度考えていますわ」

 

「落とし所か。ガリア南部の連中は現在の北部による搾取構造に不満を持ったからこその蜂起だったな。ならば富を公平に分かち合うようにするとか、そんなところか」

 

ガリア南部は重税を課され、その税金によりガリア北部は復興していた。その構造を改革する事で、ガリア南部の反乱後の混乱を止めるのかとルーデラは考えた。

 

「いいえ、それは最低条件でしかありません。それを達成すると同時に、その件の責任者を処断する事で戦後のガリア南部のガス抜きをするのですわ」

 

「責任者というと、財務大臣あたりを更迭するのか?」

 

「そんな小物ではありませんわ。この反乱を理由に、ガリア大統領ド・ゴールには政界を引退してもらいますわ」

 

予想外の大物の名前に、ルーデルはペリーヌの正気を疑う思いだった。

 

「仮に反乱を鎮圧すれば、たとえその原因がド・ゴールにあったとしても鎮圧そのものは奴の手柄だ。北部で奴は絶大な力を手にする事だろう。そうなれば財務大臣あたりをスケープゴートにして、今回の出来事は誠に遺憾な事だとでも嘯いておけば、奴の首は安泰だろう。違うか?」

 

「間違っていませんわ。ですから、南部側の鎮圧をド・ゴールの手柄にさせないように立ち回りながら、同時に南部からの恨みをこれ以上北部に向けさせないようにする必要があるんですの」

 

ただ勝つのではなく、南部の恨みをこれ以上増やさず、そして全ての恨みをド・ゴール一人に背負わせる。難しい条件にルーデルは頭を抱えそうになった。

 

「こうなれば、少し動きを止めて改めて考えをまとめる必要がありそうだな。一度地上に降りるぞクロステルマン」




ウィッチって確か空飛んでる時とかは魔法力か何かで体を保護してるみたいな設定があるんですよね。小説の一緒だよにあったはずです。
テレビとかの作中描写的に水には濡れるっぽいですけど、温度とかはある程度保護できるみたいですね。まぁ、それもある程度で高度さんまんめーとるに向かった時はコート羽織ってましたし気持ち程度でしょうね。だとしても暑い日とかに他の人よりも多少気温がマシに感じるのなら羨ましい限りですね。
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