ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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缶詰で指を切りました。蓋のとってみたいなのが取れて少し空いたところから指入れて無理やり開けたら切りました。


考える

地上に降りたペリーヌ達が最初にした事は、現状使える物の確認だった。

 

「私達が使える物は、この二機のストライカー・ユニットと私達自身のみ。当然武器はありません」

 

「それともう一つ、時間だな。私達はガリア政府に先んじて行動を開始した。その分初期対応においては私達が先行する事になる」

 

「その貴重な時間の消費を少なく作戦を練る必要がありますわね」

 

ペリーヌ達に与えられた時間はそう多くない。ガリア政府が南部の蜂起に対して武力制圧に乗り出すか、南部側の戦力が整い北部への侵攻を開始するか。それまでに方針を決定して行動を開始しなければならない。

 

「ド・ゴールに対する責任の追求は現状でも可能ですが、問題は彼の手で解決されてしまうとそれができなくなると言う事ですわね」

 

「その為にも解決はクロステルマンが主導する必要があるわけだが、やはりそれにはある程度の力が必要だ」

 

「否定はしませんが、同じガリア人に対して銃口を向けるのは気が乗りませんわね」

 

ルーデルの言わんとする事は単純だ。いくらペリーヌ達が歴戦のウィッチでも、まともな武器がなくては戦うことができない。

ペリーヌの屋敷にも自衛用の拳銃くらいはあるが、軍隊相手にそれはあまり役に立たない。何より、拳銃は屋敷においてあり今は手元になかった。

 

「なにも攻撃のためだけではないだろう。自衛手段としても武器はあった方がいい」

 

「ですがあれば必ず攻撃にも使うことになりますわ」

 

「そうしなければ反乱軍を止める事はできない。違うか?」

 

武力を持つ敵に対して素手で挑むような事をルーデルはしようと思わない。ペリーヌのガリア人を傷つけたく無いと言う思いは尊重するが、それはあくまでもペリーヌの安全が確保された上での話だった。

 

「言葉で南部の人々を諌められるのであれば、それが最善なのですが……」

 

「南部の言葉を聞かなかったのは北部の、ガリア政府だ。今更言葉で鎮める事はできないだろうな」

 

「そうですわね。ですが武力を用いて南部軍を攻撃して過剰に弱らせては、ド・ゴールを失脚させる事ができなくなる可能性がありますわ」

 

ガリア南部の力が弱くなりすぎれば、相対的にド・ゴールの力は強くなる。これでは彼を失脚させる事は難しく、ペリーヌはほどほどに南部を弱くし、反乱を鎮圧してド・ゴールの力を削ぐ必要があった。

 

「やはり力がいるな。クロステルマンが何を言おうと、現状を止めるには私達の力だけでは足りない。屋敷のビショップ達にもストライカーがあればともかく、あるのは二つだけだ。これでは圧倒的に力が足りていない」

 

「ただでさえストライカー二機を引き取るので各方面に迷惑をかけたと言うのに、これ以上の戦力増強は難しいですわ」

 

「少し頭が硬すぎるなクロステルマン。戦力が必要な事は事実で、お前もそれを認めている。それは間違いないな?」

 

「ええ、ですがそれを捻出するのは……」

 

ペリーヌの返事を聞くや否や、ルーデルは立ち上がった。

 

「行くぞクロステルマン」

 

「ちょっとルーデルさん!? 行くって一体何処に……」

 

何も言わずに行動を開始したルーデルに驚きながらも、ペリーヌストライカー・ユニットを履き動く準備をしていた。

501にいた頃から、こんな風に強引な行動をする同僚との付き合いがあったため、こう言う時は大人しく従った方がいいとよく理解していた。

 

「クロステルマンがストライカーを集めるのに使ったのはガリアの権力者達だろう」

 

「そうですな、それがどうかしましたか?」

 

「頭が硬いな、クロステルマン。お前もあの戦争を生き抜いたウィッチならば、多少は狡賢さと言うものを身につけているものだと思っていたのだがな」

 

「生憎私は502のラル隊長のような事とは無縁でしたので」

 

狡賢いと言えば、多くのウィッチが502の隊長だったグンドュラ・ラルの事を思い浮かべる。ペリーヌ自身は彼女の被害に会ったことはないが、501の隊長だったミーナやエイラが彼女の事を散々批判していたのを聞いていた為、その悪辣さはよく知っていた。

 

「あいつは狡賢いんじゃない。性格が悪いと言うんだ」

 

ルーデルらしく無い冷たい物言いにペリーヌは驚いた。そんなペリーヌの様子に、ルーデルは苦々しげな様子で言葉を続けた。

 

「昔部下を、アーデルハイドを奪われそうになった事がある。いくら人手が足りて無いと言っても、対地攻撃部隊の隊員奪おうとするなど正気の沙汰では無い」

 

予想外の場所にまで伸びていたラルの魔の手に、ペリーヌは唖然とした。

 

「話が逸れたな。私が言いたいのは、何も正攻法で戦力を集める必要はないと言う事だ」

 

そう言って飛び立つべく滑走を始めたルーデルをペリーヌは慌てて体操しながら問いかけた。

 

「正攻法以外って、一体どう言う事ですの?」

 

「簡単な話だ。近くのウィッチ隊に出向いて直接話をつける」

 

それはペリーヌが予想していた何倍も強引な手段であり、狡賢いなどと言う言葉とは無縁な行為だった。

 

「それの何処が狡賢い手段ですの?」

 

「何処からどう見ても狡賢いだろう」

 

「むしろ対極にあるように見えますわ」

 

ただでさえ軍上層部にはストライカー・ユニットの件で恩義があると言うのに、こんな事で軍上層部に迷惑をかけるわけにはいかなかった。

 

「現地部隊が独自の判断でクロステルマンに協力する分には、ガリアの権力者共に借りを作る事にはならんだろう」

 

「現地部隊が勝手に行動すれば、ストライカーを手配してくださった軍上層部に迷惑をかける事になりますわ」

 

「それはどうだろうな。今の軍の幹部達はド・ゴールの元部下達が多い。今回の反乱で奴が失脚すれば巻き添えになる者も少なくないだろう」

 

「だからこそ軍は必死で反乱を鎮圧しようとしますわ。そうか鎮圧が成されればド・ゴールの名声は高まり、彼に付き従う者達の栄達も約束されたも同然ですもの」

 

事実、軍は南部に部隊の移動を開始している。政治的な理由からまだ鎮圧は開始していないがそれは時間の問題だった。

 

「軍人とは常に予備のプランを用意しておくものだ」

 

「作戦を立てるときには不測の事態を予期して様々なパターンでの検討を繰り返しますが、それがどうかしましたの?」

 

「ド・ゴールの権力維持にだけ力を割くなど軍人としてはあり得ない。他にもサブのプランをいくつか用意するだろう」

 

ルーデルの意見は一見するとまともなように思えるが、ペリーヌにはいささか議論の余地があるように感じられた。

 

「軍隊は古来、貴族や王族に使えるものでしたわ。時代が代わり、民のために戦うようになったからと言って、それが直ぐに変わるわけでもありません。少なからず、ド・ゴールに対して忠誠心を抱いている人もいるでしょう」

 

「かもしれないな。だが全員ではない。全員でなければ付け入る隙はある。とにかく近くのウィッチ隊と接触し、私たちの味方につける」

 

忠誠心を持つものがいたとしても、それは全員ではない。

 

「そしてその部隊の上官をこちらに抱き込むと」

 

「できれば中部ガリアの軍の実戦部隊のトップを抱き込みたいところだな」

 

「随分と大きく出ましたね。ですがこの地域は南部ガリアが蜂起すれば最前線となる事が確定している地域です。この地域の実戦部隊のトップはド・ゴールの息のかかった人物であることは間違いありませんわよ」

 

この地域が最前線になる事は、ガリアを真っ二つにしたド・ゴールであれば分かっていた事のはずで、その地域のトップがド・ゴールに対する忠誠心が低いはずがなかった。

 

「まぁ、そうだろうな。だからできればと言った。とりあえずウィッチ隊を手中に収め、戦果を上げる。そしてそこから少しずつこの地域の部隊をクロステルマン派に塗り替える」

 

「クロステルマン派とは大袈裟ですわね」

 

「大袈裟なものか。ド・ゴールを失脚させ、南部との仲を取り持つと言うのなら自身の派閥を持たなければならない。うだうだと理由をつけて権力を持ちすぎないように立ち回っていたようだが、いい加減覚悟を決めろ、クロステルマン」

 

ルーデルから見て今までのペリーヌは、ガリアの分裂を防ぎたいと言いながら、そのための力を持つ事を躊躇っているように見えた。だが事ここに至ってまで権力を忌避する事は、ガリアの為にはならないとルーデルは思った。

 

「……そうですわね。私も覚悟を決めますわ」




魔法力って人と使い魔だけなのでしょうか。と言うか、魔法を持った動物が使い魔になるのか。
魔法力を人間だけと考えるのは早計な気もしますし、動物も魔法力を持ってそうな気もする。なら使い魔はやっぱりただの動物が魔法力を持った存在な気がする。うーん、よく分からん。
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