ペリーヌに従う事を決めたウィッチ隊の数はルーデルの予想を超えた。ペリーヌを慕うガリアウィッチは多く、声をかけた部隊から横のつながりを頼りに多くのウィッチが集まった。
「多すぎるな。これだとかえって身動きが取りにくい」
「ウィッチ最大のメリットは、小さくレーダーに感知されにくい割に攻撃力防御力共に軍艦並みな事ですものね」
「そうだ。スオムスのように少数を分散配置しての機動防御や浸透強襲と言った運用がウィッチの強みだ」
スオムスとバルトランドの戦争は、現代において初めてウィッチが組織的に用いられた戦争だ。戦争の内容には各国が注目し、戦争からの戦訓を自国に活かそうと研究が進んでいる。ジェットストライカーからレシプロストライカーの回帰もその一つだった。ルーデルもペリーヌを通して手に入れた戦争の記録と、自身の経験から現代におけるウィッチの運用について独自の見解があった。
「少数でありながらその破壊力は師団にも匹敵しうる。エイラさんや、彼女の姉であるアウロラさんと言ったウィッチ達は正しく師団に匹敵するウィッチでしたわね」
「ウィッチの実力によって戦闘能力は大きく変わるがな。ではウィッチ最大のデメリットはなんだと思う?」
「そうですわね、戦闘能力の高さが個人に依存する事でしょうか。私のような強力な固有魔法でも持っていない限りは、せいぜい大隊クラスの破壊力に収まるでしょうから」
師団クラスの戦闘能力と言うが、それはあくまでもエイラやアウロラと言ったごく一部に限った話だった。
「いいや、違う。最大のデメリットは殆どのウィッチが正規兵としての訓練を受けていない事だ」
「ウィッチも銃器の扱いなど正規兵としての訓練を受けていますわ」
「あんなものが正規兵の訓練な訳があるか。精々民兵よりはマシ程度のものだ。私は何度か正規兵の、それも陸軍歩兵の訓練に参加した事があるがウィッチが受ける訓練が遊びに思えるくらいには厳しいものだった」
ルーデルは自身の部隊への訓練に取り入れられる事があるかもしれないと思い、何度か通常の部隊の訓練に参加していた。そこで知ったのは、そもそもウィッチと通常の兵士とでは訓練内容からして全く違うという事だった。
「座学に関しては特に顕著だ。一般的な士官であれば学ぶ事を、ウィッチの士官は一切学んでいない。個人的な興味から学ぶ者もいるが、組織としてはしていないのが実情だ」
「まぁ、多くのウィッチは上がりを迎えると同時に軍を去りますから、それをする必要性は低いのでしょうね」
「そうだな。ごく少数の頭のいいウィッチを隊長にしておけば数の少ないウィッチの作戦行動は成り立つ。それがネウロイ相手であれば尚更だ」
「人が相手では違うと言う事ですわね」
人とネウロイでは知能面においては人の方が上だとされている。ネウロイ相手であれば指揮官にはそれほど高い能力は求められないが、人相手であれば能力は高ければ高い方がいい。
「人相手であれば小規模で戦争に大きな影響を与えるウィッチは将校クラスの判断能力がなければならない。そうでないと間違った判断で悪い影響を与えかねないからな」
「今私の元に集まったウィッチはおよそ五十人。隠密行動をするには少し規模が大きいですわね」
「ウィッチ隊として考えなければ少ないが、ウィッチは一人一人が大きな戦闘力を持つ。どんな作戦でも一個中隊もあれば人相手には十分だからな」
「そうですわね。ではここから特に実力の高いウィッチを抽出して南部軍の前線部隊を撹乱するために攻撃しますか?」
当初は南部の反乱軍の司令部を奇襲する予定だったが、戦果を上げてペリーヌの手で反乱鎮圧に乗り出すことに方針を変えた。本来なら少しずつ戦力を拡充するつもりだったが、思った以上に戦力が集まった事から計画を前倒しにするべきなのではないかとペリーヌは考えた。
「本来は少しずつ戦力を大きくし、この方面の軍のトップを抱き込むつもりだったが、これなら計画を変更していいだろう」
「つまりトップを抱き込まず、逸早く行動を起こしたメリットを活かすと言う事ですわね」
「そう言う事だ。我々だけで反乱軍を鎮圧するために行動を開始する。今なら先制攻撃で大打撃を望めるからな」
ペリーヌ達の予想以上の戦力がその場にはある。対地攻撃用の装備も対地攻撃ウィッチもいる。師団クラスの敵であれば粉砕するのに十分な戦力だとルーデルは考えていた。
「集まったウィッチの中に対地攻撃を専門とするウィッチは少ないですわ。これでどれだけの南部軍を相手にできるか……」
「なにも航空戦の専門家が対地攻撃をしてはいけないという決まり事はない。実力の低い連中には爆弾を持たせて対地攻撃をさせればいいだろう。反乱軍が今現在、それほど多くのウィッチを保有しているとも思えんしな」
ウィッチの運用は難しい。その原因はウィッチを指揮する指揮官の確保の難しさにある。ストライカー・ユニットを手に入れて使わせるだけなら簡単だ。しかし部隊として運用するとなるとベテランかつある程度の教育を施されたウィッチが必要になる。
南部軍にもその要件を満たすウィッチはいるはずだが、蜂起したばかりの南部はそれらの所在を正確に把握できていない。把握できていたとしても、まだまだ勢力を拡大している南部軍はそれらの指揮官となるウィッチを再配置するには少し時間がかかる。今であればその隙をつけるとルーデルは考えていた。
「後になればなるほど、私達が戦果を上げる機会はすくなくなりますものね。相対的な戦力差が大きくない今のうちに戦果を上げ、仲間を増やす契機にするわけですわね」
後手に回っているガリア政府と、それに対して先手を打った南部。その南部よりもさらに一手先を行く事ができれば、この反乱の趨勢に影響を与える事ができる。
「問題は何処を攻撃するかだ。反乱軍に対して大きな被害を与え、かつ世間的に見ても私達が活躍したように見える場所。そんな場所を攻撃しなければいくら先制攻撃ができたとしても私達の活躍が過小評価される事になりかねない」
「この際南部軍に対して被害を与えると言うのは考えなくてもいいと思います」
ペリーヌの言葉にルーデルは眉を顰めた。
「まさかこの後に及んで同じガリア国民だからなどと言うつもりではないだろうな」
「そう言うわけではありませんわ。私達が戦果を上げたと世間に思わせ、相対的に政府が活躍していないと思わせられればいいのです。であれば、戦果は世間に対してわかりやすく提示されるものであれば良いのです。それが軍事的にはどれだけくだらないものであったとしても」
「……随分と政治家らしい考え方だが、今回の目的としてはそちらの考えの方が良さそうだな」
軍事的なメリットのない作戦を実行する事に、軍人としてのルーデルは躊躇いを覚えた。だが今のルーデルは軍人ではなく、あくまでもガリア議員ペリーヌの友人であり、彼女の目的の為に戦っている。そのペリーヌが軍事的なメリットは度外視していいと言うのならルーデルはささらに大人しく従うしかなかった。
「ならば何処を強襲するかだが、私としてはヴィシーがいいと思う」
「同意しますわ。ヴィシー政権時代は首都として扱われましたし、攻撃すれば分かりやすく戦果を上げたと見られる事でしょう」
ヴィシーは南部支配地域の中では北部に近い位置にある。あるいはその歴史的な意義から多少守備隊の数は多いかもしれないが、他のどの場所よりも攻撃目標としては魅力的だった。
「決まったのなら。ならば行動は早い方がいい。早く作戦を立てるぞ。政府の連中が立て直して反撃してからでは遅いからな」
ペリーヌ達の敵は何も南部だけではない。潜在的には北部は、ド・ゴールは敵だ。北部の政府が行動を開始する前にペリーヌ達は作戦を実行しなければならなかった。
いわゆるテキヤとかってくじ引きに細工したり、金魚掬いのポイを薄い紙使ったりと色々してるわけですけど、ウィッチが例えば未来予知でくじ引きの当たり外れを感知されたり、あるいはテレキネシス的なので金魚を掬ったフリをしたりするのをどうやって防ぐのか。魔法力を発言された時点で腕力ではどうにもならないし、かといってルールに明記してないと何をいっても言われなかったで押し倒すことのできるウィッチ。
まぁ、悪人相手なら別に多少卑怯な手でもウィッチが勝つ分にはいいと思うけど、真面目に縁日に屋台出してる人がウィッチの被害に会うのは少しかわいそう。