後世において、エイラのストックホルム強襲ほどの戦略的意義のない焼き直し作戦などと揶揄されることのある、ペリーヌ・クロステルマンとハンナ・ルーデルによるガリア南部の反乱軍勢力圏の都市、ヴィシーへの強襲は当時はエイラのストックホルム強襲と同程度の驚きを与えた。
「先例があったとは言え、意外とクロステルマンも高級将校としての才能があったようだな。それともこれはルーデルの奴の入れ知恵か」
カールスラント独自に手に入れた、つい先日に行われたガリア共和国議員ペリーヌと元カールスラント軍人のルーデルによるウィッチ隊によるヴィシー強襲作戦の概要に目を通しながら、ラルはバルクホルンに問いかけた。
「意外と言うほどでもないさ。ペリーヌは名家出身だけあって元々頭は良かった。昔は私含めエイラやミーナと言った階級が上の人間が何人もいたからそれを披露する機会がなかっただけで、機会さえあれば当時から面白い作戦を建てられたはずだ」
「なるほどな。ならクロステルマンが506の隊長になる誘いを断らずにいれば、少し経路の違った506が誕生していたかもしれないな」
それはそれで面白そうだとラルは笑った。
「相手がネウロイであれば、素直に笑えたんだけどな」
「史上最高の対地攻撃ウィッチを副官に、人対人の戦争を遂行するか。ユーティライネンといいクロステルマンといい、どうして自分から首を突っ込むのだろうな。こんなくだらない事は専門家連中に任せればいいものを」
ノイエ・カールスラントでも反乱は起きているが、ウィッチの派遣はガランドとラルの尽力で食い止められていた。
「専門家連中か。その専門家の中にウィッチが組み込まれない事を願いたい所だが、もう手遅れかもしれないな」
スオムス軍の実働部隊のトップにウィッチが任命された時点で、少なくともスオムスではウィッチが対人においてもウィッチが使われる事を想定していたのだろうとバルクホルンは思った。
「スオムスとバルトランドの戦争でウィッチの有用性は示され、クロステルマン達のウィッチ部隊でのヴィシー強襲でそれは補完された。この流れを止めるのは難しいな」
「……ノイエ・カールスラントにウィッチを派遣する事になるのか?」
「上層部に命令されれば、止めるのは難しいだろうな」
スオムスのストックホルムヘの奇襲攻撃は、エイラ個人の実力の高さ故に戦果を上げたと言い張ることができた。だが今回のペリーヌとルーデルのヴィシーへの強襲は、数はともかく実力では大きく劣る。平均的た実力でガリアウィッチなら大きく勝るカールスラントウィッチであれば、同じような運用をすれば今回の強襲以上の戦果を上げる事は疑い用がなかった。
「クロステルマンは余計な事をしてくれた、と言いたくなるな。もちろん必要に駆られてだけという事は理解できる。奴がガリアの政権の中心になった方がカールスラントとしてもありがたい。だがウィッチとしては、他の方法がなかったのかとも言いたくはなる」
「ド・ゴールはガリア北部の民には優しかったが、南部に対する政策は苛烈だった。いずれこうなる事は目に見えていたが、ペリーヌが積極的に行動を起こす事は予想外だったな。こんな事なら政府に働きかけてガリアに介入させるべきだったな」
「ド・ゴールの政策で起きる混乱がカールスラントにまで波及する事を恐る者もいた。もしかしたらガリアの反乱は未然に防げたものだったのかもしれんな」
各国のさまざまな思惑が入り乱れた結果、ガリアの反乱が起こった事をラルは知らない。仮にカールスラントが反乱抑制に動いたとしても、いずれガリアで反乱が起きる事は変えられなかっただろう。
「だがそれを今更言っても自体が好転するわけでもない。目下我々の一番の問題は、ノイエ・カールスラントの反乱鎮圧だバルクホルン」
「ただの教官に過ぎない私にそれを言ってどうする。それはガランド中将やグンドュラ、お前の仕事だろう」
「そうでもない。今カールスラント空軍に所属するウィッチで、大規模な実戦部隊を指揮できるような奴はお前くらいのものだ」
戦時中のエースウィッチの多くは戦後、軍を離れた。ミーナやハルトマンがその最たる例であるが、他にも多くのウィッチが市井で自分達の人生を謳歌している。
「エースと言う点では、伯爵がいるだろう」
伯爵とはかつて502部隊に所属していたカールスラントのエース、ヴァルトルート・クルピンスキーの事だ。彼女もまた、数少ないカールスラント空軍に残るエースウィッチだった。
「確かにアイツなら指揮は出来るだろうな。だが残念な事に奴は今動かせない。オラーシャ国境地帯のウィッチに対する指揮権を与え、ワルシャワの反乱軍がカールスラントに来た時にはそれらを率いて後方に下がるよう頼んである」
「ワルシャワの反乱軍か。アレがこちらに来るとは思えないが、反乱軍などと言う無秩序な組織がどんな動きをするか分かったものではないからな」
秩序ある国家である筈のスオムスでさえ、その動きの予想はできなかった。一体どこの誰にスオムスがオラーシャに侵攻するなどと予想できたというのだろうかという話ではあるが、この前例があるからこそ現在のカールスラントは全方位に対して警戒感を高めていた。
「そもそもの話として、私はグンドュラはウィッチの対人戦闘には反対の立場だと認識していたのだが、今の話だとそうではないのか?」
「もちろん反対だとも。だが同時に、たとえ我々がそれに反対していても相手は必ずしもそうとは限らないだろう。その時にウィッチに対抗しある戦力がないのは問題だ」
「そのためにノイエ・カールスラントでウィッチに対人の戦闘経験を積ませるつもりか?」
バルクホルンの問いかけに、ラルは一瞬何を言っているのかわからないと言うような顔をした後、小さく笑った。
「すまん、私の言い方が悪かった。目下の目的はノイエ・カールスラントの反乱鎮圧だが、大規模な実戦部隊とはつまる所ウィッチを除く空軍部隊の事だ」
「尚更わからないな。それについてはわざわざウィッチに拘る必要はないように思うが」
バルクホルンはウィッチとしては優秀だが、同じ階級の非ウィッチの軍人と比べたら落第もいい所だ。軍人としての専門的な教育はほとんど受けておらず、この階級まだ来れたのも個人の武勲による所が大きいからだ。
「現状ノイエ・カールスラントの反乱ではウィッチ隊は少数だ」
「なら通常部隊でも対応可能だろう。私が行く必要はこれっぽっちもない」
「それがあるんだ。今後ウィッチが対人戦に駆り出されるようなことがあるのならば、それに応じた戦術が必要になる。規模が小さいと言う事は、戦った時に我々が受ける被害も小さいと言う事だ。ここで戦訓を得てウィッチ達の教育に取り入れ、未来の犠牲者の数を減らしたい」
ラルがバルクホルンに求めている役割は観戦武官に近いものだった。現状のカールスラントはウィッチの直接的な脅威に晒されてはいないが、いつかその脅威に晒されるかもしれない。その時に対応策を持つために、現役の教官であるバルクホルンにウィッチによる対人戦の知見を得て欲しいと言うのがラルの考えだった。
「未来の犠牲者か。それがネウロイに勝つためならいくらでも言えるんだが、人との戦いで勝ち残るためと言うのは、なんだか腑に落ちないな」
「同感だ。だが最後の盾である我々が最悪の事態を予期せずにいると言うも、それはそれで問題だろう。いざという時にこの状態を予想していませんでしたでは、国民に申し訳がたたないからな」
ネウロイに対抗しきれずカールスラントは本土を脱出しノイエ・カールスラントに移住する事になった。その過程で失われたものは多い。もしも軍がネウロイに対抗できていればそんな事にはならなかったはずだった。そんな思いが少なからずラルにはあった。
「そう言う事なら、不本意ではあるがその任務を受けよう。それで、私はいつノイエ・カールスラントに向かえばいいれ
「これはまだ私とガランド中将との間でしか話し合われていない事だからまだ時間がかかる。暫くの間はスオムスとガリアから届くウィッチによる対人戦闘、対ウィッチ戦闘に関する報告書を読んで新人達の訓練に活かしてくれ」
ネタ切れです。割とマジで。
それはそうと最近少しストライク・ウィッチーズものが増えたような気がする。気がするだけかもしれませんが。もっと増えて欲しいなぁ。