ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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久しぶりに結構時間がかかった。


友達

ペリーヌ達によるヴィシー強襲に対するガリア政府の反応は、ルーデルにとっては意外なものだった。

 

「私達の献身を讃えて勲章の授与を行うか。存外、ガリア政府は気前がいいんだな」

 

ルーデルやペリーヌは今更勲章に価値など見出せないが、今回協力してくれたウィッチ達にとっては大いに喜ばしいことだった。

 

「気前がいい訳ではありませんわ。単に今回の戦果を私達だけのものではなく、ガリア政府と私達で分け合いたいと言うだけですわよそれ」

 

呆れた様子のペリーヌ言っている意味を、ルーデルは理解できなかった。ルーデルにとって勲章は政府が個人に対してその功績を認め、場合によっては褒賞によりその個人を縛る物という認識だったからだ。

あくまでも勲章は個人に対して与えられる物であり、政府と個人が何かを分け合うためにあるのではない。

 

「政府が私達に対して今回の功績を理由に勲章を渡す。その際、ガリア政府によるヴィシー攻撃作戦の功績とでも銘打っておけば、今回の作戦は政府主導による物だったと思われるでしょうね」

 

「なるほどな。気に食わない話だが、確かに上位組織があたかも自分達が主導したかのように振る舞えば、大抵の人間はそれを信じるだろうな」

 

ペリーヌの行動はガリア政府の支持、あるいは支援を受けてな物であった。そんな筋書きを作り出そうとしているのだとペリーヌは考えた。

これは今回の功績をペリーヌ達に独占させないだけでなく、ペリーヌとガリア政府が強く結びついていると内外にアピールする事にも繋がり、ガリア政府にとってはメリットの大きい話だった。

 

「ですので私は今回の件で与えられる褒賞は全て辞退するつもりですわ」

 

「そんな事をすると参加したウィッチから不満が出るんじゃないか?」

 

「あくまで私だけですわ。シビリアンコントロールの原則に立ち返ると、ガリアの議員である私が軍を指揮したという事はとんでもない不祥事ですもの。ましてやそれを政府が追認したとなれば、他国から見たガリアは民主主義国家として正しいとは言えませんわ」

 

「なるほど。それなら不満は少ないだろうな。だが政府が無理に何かしらの褒賞を与えてきた場合はどうするつもりだ」

 

「それについては問題ありませんわ。この後左派新聞社の取材を受けて、明日か明後日あたりに私が今回の件で褒賞を求めておらず、寧ろこれについて罰を望んでいるという記事を出す事になっていますので」

 

ガリア政府の思惑通り勲章を受け取れば、ペリーヌと政府の関係はイコールで結ばれる事になる。だがここで受け取りを拒否すれば、ペリーヌと政府が同一の存在ではなく、別の思惑を持っているというアピールができる。

 

「だが今回勲章の受け取りを拒否しただけでは、ただクロステルマンが原則に誠実な人間であると言う印象を抱かせるだけになるのではないか?」

 

多少政治に詳しい人間であれば、今回の件だけでもペリーヌと政府が必ずしも良い関係ではないと言う事は分かるだろう。だが大抵の人間はそうではない。

 

「そうですわね。ですので今後活動を続ける中で、私と政府の方針が一致しない場合は明確な拒絶の意思を示し続ける事が肝要ですわ」

 

一度だけならペリーヌの意思が世間に伝わる事はないだろう。だが積み重なればその意思は確かに世間の人々にも伝わる。だがそれにはあまりにも時間がかかりすぎる。

 

「手緩いな。それでは我々の戦果を政府が上回り、この戦争の端役へと成り下がった後になるかもしれないぞ」

 

戦力という点でペリーヌ達はガリア政府はおろか、反乱軍にすら負けている。今回大きな戦果を上げる事ができたのは、反乱軍が蜂起した直後では組織としてまだ不完全だったが故だった。

もしも反乱軍の体勢が整っていれば戦果はもっと小さくなっていただろう。

 

「だとしても、私にはこれ以外に打つ手がありません。後は政府の不甲斐なさに期待するしかありませんわ」

 

勢力としては砂粒同然のペリーヌにそもそもの打てる手が限られている。ペリーヌ自身の名声を利用するのも限界があり、いずれ手詰まりになる事は明白だった。

 

「そんな事はない。今回の作戦で勲章を与えられる人間が後一人、それもクロステルマンに近い人間が勲章を辞退すれば話は大きく変わる」

 

「私は私の目的の為に、他の人に犠牲になってもらおうとは思いませんわ。ましてや、これはガリア国内の問題。本来この国の人間でない貴女にまで犠牲を強いる事などできませんわ」

 

ルーデルはペリーヌの望みのためにストライカーを履いて戦闘までこなした。それは上がりを迎え、シールドを張れないルーデルには極めて危険な行為だ。ペリーヌはそんなルーデルにこれ以上負担をかけたくはなかった。

 

「今更勲章の一つや二つ貰えなかった所で文句など言わん。私が一体いくつの勲章を持っていると思ってるんだ」

 

ルーデルの言葉にペリーヌは小さく笑った。

 

「それもそうですわね。貴女が協力してくれるのならそれに越した事はありませんが、今回の勲章の授与はガリアに住む上で貴女に有利に働くはずですわ。本当に拒否してもよろしいのですか?」

 

ガリア国民ではないルーデルが、ガリアから勲章を授与された。等級にもよるが、それは間違いなく今後ガリアで生活する上で大きな糧となる。

 

「別にお前が面倒を見てくれるのだから問題ないだろう。それともなんだ。お前は私が困った時に助けてくれないような薄情な人間なのか?」

 

「まったく、貴女はどうしてそんな意地悪な事が言えますの。そう言われて私が断れる訳ないじゃないですの」

 

眉を八の字にして困った様子のペリーヌに、ルーデルは笑みを浮かべた。

 

「なら何も問題はないな。私もガリア政府からの勲章を、褒賞を全て辞退する」

 

あっさりと言ってのけるルーデルに、ペリーヌは言葉が出なかった。お礼を言うのも変であり、かと言って何も言わないのもおかしな話だった。

 

「何を黙りこくっている。この後の取材があるんだろう。ふさわしい服装に着替える。化粧を直す。やる事は色々あるだろう」

 

そう言って立ち上がり部屋を出ようとするルーデルの手を思わずペリーヌは掴んだ。

 

「なんだ。どうしたクロステルマン」

 

「貴女は……貴女はどうしてこんなにも私に力を貸してくださるのですか?」

 

ペリーヌの質問に、ルーデルは訳がわからないというように首を傾げた。

 

「おかしな事を聞くんだな」

 

「そんなにおかしな事でしょうか。私は貴女に何も……いえ、屋敷の一室を貸したり衣食住を提供したりとよくよく考えたら色々としていますわね」

 

ルーデルは一方的にペリーヌに力を貸してくれていると思ったが、よくよく考えたらペリーヌはこれまで随分とルーデルを手助けしてきた。

 

「ですがその分それは子供達の世話を無給でしてくれていますし、その分は帳消しと言って良いでしょう」

 

給料を出すと言う話がなかったわけではない。だがそれはルーデル自身が断り居候として屋敷に住む事になっていた。

 

「私は今現在、貴女から一方的に力を貸していただいているのですわ。その理由が分からないんですの」

 

「随分と小難しい事を考えているんだな、クロステルマン」

 

「小難しいですか? 人は良くも悪くもなんらかの利益があるから人の為に行動するのです。私はガリア議員となり、様々な人たちと関わりそれを知りましたわ」

 

ガリア議員となったペリーヌに近づいて来る者はペリーヌの持つガリア議員としての力を貸してもらおうとする者ばかりであった。

それらの人々はペリーヌが力を貸す代わりに、彼らにしかできない事をペリーヌに提供してきた。例えばペリーヌがストライカーを手に入れられたのも、軍にいた頃の伝手と議員となってから関わりを持った人々の力あっての事だった。

 

「お前が軍にいた頃、誰かを助ける事に利益を求めたか?」

 

「求めませんでしたわ。それが私達の使命でしたもの」

 

ウィッチとして、ネウロイから人々を守る。それはウィッチとなり戦うペリーヌの使命であり、責務だった。

 

「質問を変えよう。私がお前の屋敷を訪ねた時、どうして追い返さなかった」

 

「友人が訪ねてきて追い返すなどできませんわ」

 

「私も同じだ。友人が目的を達成するのに私の助けが必要なんだ。手を貸す事にそれ以上の理由が必要か、ペリーヌ」

 

ルーデルの言葉に、ペリーヌは気恥ずかしげに頬を赤く染めた。

 

「それもそうですわね。友人が力を貸してくれている事に対して、理由を求めるのも変な話ですわね」




ネタが切れちゃいました。
今後は不定期で思いついたら書きます。
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