ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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冷房をつけなくてもいいくらい涼しくなって嬉しい今日この頃です。
それはそうといつの間にか前書きが一言日記みたいになってるのは一体どういう事なのか。


縞ズボン隊

各国がエイラの大統領就任に大使、あるいは外務大臣を寄越して挨拶に来るのに対して、ロマーニャ公国が第一公女を送り込んできた事はスオムスに少なくない混乱を巻き起こした。

 

「公女ですか。オラーシャには皇帝がいて、当然皇女もいますから相応の滞在施設と警備する人材が存在しますが……」

 

所謂王族に該当する者がいないスオムスにはそんなものは存在しない。これまでそう言った身分の者を受け入れた事がない訳ではないが、ネウロイとの戦争以前の話でありそのノウハウは失われていた。

 

「旧バルトランドの人間ならもしかしたら対応できるかもしれないけど、できそうな奴らは殆どは退職するか、王族について国外に出たからな」

 

バルトランドは王族を追い出しはしたが、国民全員が王族に否定的な訳ではない。とりわけ王族に近かった侍従や近衛兵は、現政府から離れて王族の帰りを心待ちにしている者も多いという。

 

「数少ない政府に残った者は、基本的には新人や王族に対して忠誠心が低く階級の低い者達ですからね。あまり信用はできませんね」

 

「そうだな。となると旧オラーシャ領土から使えそうな奴を探すのはどうだ? ペテルブルクって昔は首都だったんだし、そういう事経験した奴も多少はあるんじゃないか?」

 

「そういう人達はペテルブルクがネウロイの侵攻で陥落した時に責務を全うしたか、皇族のいる首都に離脱するかして存在していませんよ」

 

ペテルブルクは最初期のネウロイの侵攻に対し十日程度の抵抗で陥落することになった。だがその十日は当時としては破格の時間だった。オストマルク陥落からノヴゴロド南部にネウロイが確認されるまでは一週間程しかかからず、そこからペテルブルクが十日も抵抗する事ができたのは軍人だけでなく、非ウィッチの有志による頑強な抵抗があったからだった。

また抵抗に際してはペテルブルク市内ではなく、市街で迎え撃った。街と市民に対する被害を最小限に止めたことで、後にペテルブルクがネウロイに対する反抗の拠点の一つとなった事はその犠牲がただの犠牲ではなく、未来へと繋がる犠牲であった事は戦後のペテルブルクを見れば明らかだった。

 

「残念な事だな。だけどそうなると民間から探すのは難しいのか」

 

「ところで先方は受け入れに対して何か注文をつけてきているんですか?」

 

「公族の護衛ウィッチ、縞ズボン隊の受け入れだな。連中、公女の護衛は自分達でするつもりらしい」

 

暗にスオムスを信用できないと言われているようで不愉快な気持ちになるが、他国から見て連邦国家として歩み始めたばかりのスオムス国内の情勢が不安定なのだはないかと勘繰るのは無理からぬ事だとも理解していた。

 

「受け入れるしかありませんね。確か縞ズボン隊の隊長は元501のルッキーニさんでしたよね」

 

「そうだな。だけど縞ズボン隊は公族の護衛が任務なんだぞ。その隊長のルッキーニが海外に出るとは思えないよ。なんせ他にも公族はいるんだからな」

 

「それもそうですね。統合戦闘航空団に所属したウィッチは貴重ですし、それが現役ともなれば尚更です。国外に出して万が一があっては取り返しのつかない損失になりますね」

 

現役のロマーニャウィッチで唯一統合戦闘航空団に所属経験があるのがルッキーニだ。そんな貴重な人材を、ほんの少し前まで戦争中だった国に送り込むとは到底思えなかった。

 

「公女を祝いの使者に選ぶって事は、ロマーニャにとってスオムスが重要な国だと思ってるって事だから有難くはあるんだけどなぁ」

 

現在スオムスとロマーニャは大きな利害関係にない。お互いヨーロッパの北と南の端っこにある国という以外には共通点もなく、公女を、祝いの使者として選ぶ理由は見当たらなかった。その事がエイラに不気味な不安を与えていた。

 

「不安な気持ちは分かりますが、ロマーニャ公女は今の所一番の大物です。国益に繋がるかはさておき、これまで以上のもてなしが必要でしょうね」

 

「文化財として国が管理してる城や宮殿の使い所だな」

 

スオムスという国ができる前、この土地はオラーシャやバルトランドに所属していた歴史がある。両国ともにヘルシンキには城や宮殿を建築しており、それらは現在スオムス政府の管理下にあった。

 

「人が長い間住めるかはさておき、滞在先として短期間提供する分には問題ないでしょう。いくつかの施設は電気水道を完備していますから、多少不便でも大丈夫でしょう」

 

不安を感じながらも、一国の公女を迎え入れるべく行われた準備は、結局無駄になった。

ロマーニャ公国第一公女、マリアとの会談を終えたエイラはロマーニャ側の希望で縞ズボン隊のウィッチとの懇親会を行うことになっていた。

 

「久しぶりだね、エイラ!」

 

最後に見た時よりもいくらか背の高くなったルッキーニが昔のような調子で挨拶をしてきた事は、エイラに安堵を与えると共に少しばかりの怒りを覚えさせた。

 

「久しぶりだな。けど護衛として来るのなら事前に教えてくれても良かったんじゃないか?」

 

ルッキーニが来るとわかっていれば、エイラはあれほど公女の受け入れに対して気負うことはなかっただろう。そんな思いから思わず苦言を呈した。

 

「だって聞かれなかったんだもん。縞ズボン隊の誰が護衛としてついてくるのか聞いてくれたらいくらでも答えたよ」

 

ルッキーニはあっけからんとした調子で答えるとエイラは何も言えなくなった。

 

「公族を護衛する近衛ウィッチ隊の隊長が国外に出てくるとは思わないだろ」

 

「縞ズボン隊って実質的にマリアの私設護衛部隊だから、部隊人数も一個中隊以下の数で、隊長でもエイラみたいにデスクワークばっかりってわけじゃないよ」

 

ロマーニャは国の規模としては、かつてのバルトランドよりも少し大きいくらいの大きさだ。大国と言われるには心許ないが、かといって中小国というには大きい。ウィッチの数としてもスオムスなどと比べるとはるかに多いが、カールスラントなどと比べると少ない。近衛ウィッチ隊が中隊以上の規模では国防に影響が出る恐れがあるためこの規模に収まることになった。

 

「公女一人の護衛に一個中隊なら十分すぎる戦力だと思うけどな」

 

「よく分かんないけど、ウィッチをいっぱい国に所属させるのに公族の護衛ウィッチにしておくと軍所属とは別で予算が降りるんだって」

 

「あー、なるほどな」

 

ルッキーニはその意図が分からなかったようだが、軍のトップとして事務方にも関わったエイラにはそれだけで十分だった。つまるところ、ウィッチを大量に確保したいが、その予算が軍にはない。それなら公族側の予算でそれを賄おうという考えから縞ズボン隊を近衛ウィッチ隊と銘打ち公族所有の部隊としたのだろう。

 

「まぁ、元気そうで良かったよ。サーニャ以外だと久しぶりに501時代の戦友に会えて嬉しいぞ」

 

「あたしはこの間シャーリーと会ってきたんだ」

 

「シャーリーか。確かストライカーのテストパイロット兼ウィッチ養成学校の校長だったっけ?」

 

国家としては大きいが、意外とエースウィッチが少ないリベリオンの貴重なエースであるシャーリーはその経験を後輩達に伝えるウィッチ養成学校の校長となっていた。それは扶桑の坂本がなりたいと望んだ役職であり、奇しくも就く事が叶わなかった役職であった。

 

「そうだよ。シャーリーの卒業前の教え子と模擬戦したんだけど、シャーリーみたいにスピード重視じゃなくて、ロッテを組んだ堅実な戦い方だったよ」

 

「相手はジェットストライカーだったのか?」

 

「うん。けどあたしはフィァットG55だよ。ロマーニャはまだジェットストライカーを配備してないから」

 

ロマーニャは多少の領土問題はあっても、基本的に周囲の国は友好国だ。軍備に関して急いで整える必要はなく、ストライカーユニットのアップデートなどはかなり遅いものとなっていた。

 

「結果はどうだったんだ?」

 

「あたしの部下はみんな落とされちゃった。やっぱりレシプロストライカーじゃジェットストライカーには勝てないよ」

 

分かりきった事ではあったが、ルッキーニが訓練したロマーニャでも精鋭揃いであるはずの近衛ウィッチ隊でさえ、ジェットストライカー相手では勝負にならなかった。

 

「部下はって事はルッキーニは違うんだな」

 

ネウロイの撃墜スコアこそそれほど高いものではないが、ルッキーニの才能はエイラに勝るとも劣らない。ジェットストライカー相手でも簡単にルッキーニが負けるとは思えなかった。

 

「当たり前じゃん。いくら卒業間近と言っても実戦経験すらないウィッチに撃墜されるわけないじゃん。全員撃墜してあたしが勝ったよ」

 

ルッキーニの言葉にエイラは当然だと頷くのだった。




後書き〜。何も思いつかないですねぇ。

あ、もしもストライクウィッチーズで一本書こうと思ってる人がいたらちょっとしたアドバイスみたいなのを。

1950くらいからの各国空軍とかの装備をいくつかストライカーに変えて出してきたんですけど、日本語wikiだと記載に抜けてる装備があったりするんですよね。どうやって抜けを見つけるかというと、装備品の配備開始と退役を調べて次世代装備との間に配備時期の空白地帯がないかを調べます。それで空白があれば、抜けてると想定して英語版で調べます。
で、英語版は日本語版よりも情報多い場合が多いですけどそれでも不安なんで、次にその時に採用されたであろうメーカーのページに飛んで作られた装備を調べます。それに関しても当然英語版と、例えばロマーニャであれば可能ならイタリア語版も調べて何も見つからなければその時期は何らかの原因で当該装備ははなかったと結論づけます。

ちなみにスオムスの場合だといろんな国から輸入があるのでイギリス、アメリカ、ロシア、ドイツと念の為にスウェーデンのメーカーも調べた記憶があります。それで該当する年代の装備のページを開いて配備国を調べます。後確かフィンランド軍はホームページでも調べた記憶あります。

まぁ、こんなの専門書があればwikiに頼る必要もないんですけどね。というか本来は専門書を用意するべきなんですが割と行き当たりばったりなせいで用意できない事が多い……
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