「リベリオンがウィッチの交流を求めてきているんですか?」
「この間ルッキーニがスオムスに来た事に触発されたみたいだな」
リベリオンはロマーニャ公国の公女が護衛のウィッチを連れてスオムスを訪れた後、一ヶ月程してからウィッチ隊の交流を求めてきた。
ルッキーニ率いるウィッチに正式着任前とはいえ自国のウィッチを訓練で大敗させたロマーニャのウィッチと、飛ぶ鳥を落とす勢いのエイラが交流したと言うのはリベリオンにとってあまり面白い話ではなかった。
「スオムスとロマーニャだけが世界のウィッチ事情の最先端を行くのは、大国のリベリオンとしては面白くない。交流を求めてきた事情としてはそんな所だろうな」
「別にロマーニャのウィッチとは特別何かあったわけではありませんし、我々からも何かを与えたわけじゃありません。リベリオンは警戒しすぎなのではないでしょうか」
「そう言ってやるなよ。他の国から見れば、スオムスは軍事的には強国だ。そのスオムスが連邦国家となって初めて他国の軍事組織と関わりを持ったとなれば、警戒するのも無理はないんじゃないかな」
現在の国際社会におけるスオムスの立ち位置を、エイラは正確に理解できてはいない。だがスオムスが連邦国家となる前の、オラーシャやカールスラントの動きに配慮して立ち回る必要のあった以前と違い、多少ではあるが周りの国を動かす事ができるようになった事は自覚していた。
「ロマーニャから得るものは何もなかった。だけどそれをリベリオンに言ったところで信じてもらえないだろうし、そもそも言う必要はない。向こうはウィッチの交流と同時にストライカー・ユニットの技術交流も求めてきているんだ。随分と高く買ってくれてると思わないか?」
スオムスでは旧バルトランドの企業、サーブがジェットストライカーを開発している。だがリベリオンが求めてきたのはエイラやサーシャが使っていた旧式のレシプロストライカーの技術だった。
「レシプロストライカーの技術なんてネウロイと戦っていた頃と大差ありません。ふっかけるつもりですか?」
レシプロストライカーに関してもリベリオンの方が技術は上だろう。だがスオムス以外の国はそう考えていない。殆どの国ではレシプロストライカーにジェットストライカーを上回る何かが、スオムスだけが気がついている優位性があると考えている。それ故の技術交流だった。
「そんな事しない。ただ良心的にスオムスにそんな凄い技術はないって繰り返すよう外交官達に伝えたさ」
レシプロストライカーに優位性なんてものは存在しない為、レシプロストライカーとジェットストライカーの技術交流はするべきでは無いと、リベリオンの外交官達には耳にタコができるくらいに繰り返して伝えていた。たがそんなにも頑なになると、そこまでして隠したい技術とはなんなのか、気になるのが人の性と言うものだった。
「人が悪いですね。そんなことすればますます高い値段を提示してきますよ」
「不思議なもんだよな。向こうは最新のジェットストライカー二機の現物と設計図。それと現在開発中の試作機ジェットストライカー一機の現物と設計図をくれるそうだぞ」
「代わりに何を渡せと言われたんですか?」
「わたしとサーシャのストライカーだ」
中古のストライカーと最新のストライカーの交換。詐欺同然の取引にサーシャの顔を顰めた。
「ラル隊長でもそこまで悪質な事はしませんでしたよ」
「アイツがするのは交換じゃなくて強奪だからな。悪質どころかただの犯罪だよ」
「悪質なのは認めるんですね」
意外だと言うふうにサーシャが言うと、エイラは頷いた。
「この件に関してはどう返答しようがリベリオンからの疑念は無くならない。疑念をはらうのなら現物を見せるのが一番だけど、こちらが機密情報を簡単に見せるような国だと思われるのも面白く無い」
「最大限搾り取ってしまおうと」
「そう言う事だ」
エイラの意見は理解できなくないが、サーシャには一つ懸念があった。
「それで私達が隠し事をしていると因縁をつけられたらどうするんですか?」
「大国としてのプライドもあるだろうし、いくらなんでもそんな事しないだろ」
大国リベリオンがスオムス程度にいいようにやられたなど、大国のプライドが邪魔して言えないだろうとエイラは考えたが、サーシャの考えは違った。
「大国がスオムス程度の国にいいようにされたからこそ、プライドを傷つけた報復をしようとするのでは無いでしょうか。もしもそれで何かしらの報復を受けたらスオムスは耐え切れません」
「大国のプライドがあるから難癖を付けれないと見るか、あるからこそ難癖をつけてくるかもしれないと見るのかか」
「どちらもあり得る話です。ですので、もしもリベリオンが後者の動きをした際の対策は必要です」
深刻そうに語るサーシャに対して、エイラは何処か他人事のような様子だった。
「深刻な問題だとは思えないな」
「カールスラントだけでなくリベリオンとまで対立する事はスオムスの発展が著しく遅れかねません。周辺国が混乱している今、スオムスは遅れを取り戻すべく国力を大きくしなければならないのに、これが深刻な問題なわけないじゃないですか」
「深刻な問題どころか、寧ろチャンスだと思うぞ」
話をまとめるためか、エイラは口元に手を当てて少し考えた後、再び口を開いた。
「リベリオンが文句を言ってきたら、友好かどうかを問わずにできる限り多くの国にストライカーを送りつけるんだ。それでスオムスが嘘をついていないって事を立証させて、リベリオンの虚言を批判するんだよ」
「なるほど、我が国としては古いとはいえストライカーを無くす事で一時的に軍事力が下がりますが、代わりにリベリオンの信用を削ぎ落とすと。ですが他の国が同調する可能性もありませんか?」
「そうかもな。だけど全ての国が歩調を合わせてって訳にはいかないし、何よりレシプロストライカーになんの優位性もない事は時間がたてばいずれ証明される事だ。なら同調して後に嘘つき呼ばわりされるよりは、今のうちにリベリオンを批判した方が後々得する事になるはずだぞ」
レシプロストライカーに優位性なんてものがない事はいずれ全世界が知る事だ。それが早いか遅いかの違いでしかなく、仮にリベリオンが何か言ってきたとしてもスオムス側に真実がある以上はどうとでもなる話だった。
「確かにそうですね。でしたら、この際もっとふっかけても良いのではないでしょうか」
「サーシャ、何事にも限度ってものがあるだろ。やりすぎたらいくら正しくても批判されるぞ」
「ですが我々がレシプロストライカーに他の国が知らない何かがあると思われているのに、二機と三機では少し安すぎる気がするのですか。どうせならもう一つ、最新の戦車か陸戦ユニットあたりを提供させても良いと思うのですが」
ジェットストライカー以上での性能があるかもしれないレシプロストライカー二機と、ジェットストライカー三機の交換はスオムスからすれば十二分の取引だが、リベリオンも安い取引だと考えている可能性が高い。ならばもう少しふっかけても良いと言うのがサーシャの主張だった。
「気持ちは分からなくないけど、寧ろここで良心的な国だと思わせてリベリオンの心象をよくしておいた方がいいと思うんだよな。そうしたらこの詐術がバレるまではリベリオンは友好国だ」
「確実に何か手に入るわけではありませんが、何かあった時には味方になる可能性があると。確実な利益よりも不確実な利益を求めるんなんてらしくないですね」
「軍事ならそれでもいいと思うんだけど、これは政治だからな。短い間だとしても心象はいい方がいい」
「心象ですか……」
曖昧ではあるが、人間関係においては案外馬鹿にできないものだった。
「それに今回取引を持ちかけてきたのはリベリオンで、条件も殆どリベリオン側の提示したのを丸呑みする形だからな。バレた後に自分達がヘマをしただけって結果の方がスオムスに対するリベリオン側の批判も少ないだろ」
「殆どと言う事は、何か付け足したんでしょう。何を付け足したんですか?」
「設計図だよ。しかも使われている技術まで事細かに書かれた奴だから、これでスオムスの技術は大国に追いつくぞ」
ネタはないので今回後書きはなしです