エイラ暗殺未遂事件はリベリオン政府の大掃除と、リベリオンからスオムスに対する当初予定していた以上の技術供与と、リベリオン企業のスオムス誘致と言う形で終結した。また下手人であったケイシー・ミッチェルはスオムスからの要望で大きな処分が降る事はなく、軍に残れることとなった。
「教団の一件は我が国とリベリオンが情報統制しましたが、当然大国には意味のない行為です」
情報統制を始めたのはエイラ暗殺未遂が起きた後であり、諜報に強い国であれば情報統制をするまでの短い間の時間で情報収集するのに十分な時間だった。
「そうだな。ブリタニアとかあたりは当然のように知ってるだろうし、いずれは中小国にも噂という形で伝わるだろうな」
「ウィッチ排斥か管理の厳格化か、あるいは何も買えないのか。今の所は一カ国を除いて何かアクションを起こしたという話は聞きません」
オラーシャとカールスラントはそんな暇がなく、扶桑は元々軍内でウィッチの力が大きくなく対策を取る必要がない。リベリオンとブリタニアは今回の事件の原因をよく理解している為、ウィッチだけに何かするという事はなかった。
「ですが一カ国、ガリアだけは軍内のウィッチを強制的に退役させ始めています」
「あの国はペリーヌを筆頭としたウィッチ中心の派閥と、ド・ゴール中心の派閥が争ってる上に南部での内乱が続いてるからな。ウィッチを排斥する理由があれば積極的にするだろうな」
「ですがいまだに反乱軍勢力が力を持っているのに、敢えて今それをする必要があるのでしょうか」
ペリーヌが機先を制して攻撃した為今は政府軍が押しているが、少しの綻びでその構図が逆転する事は十分に考えられた。
「ペリーヌ達は最初の攻撃以来殆ど動きがないよな」
「はい。政府との確執からまともな補給もないみたいですし、ここぞという局面では動いていますが戦局に及ぼす影響は限定的です」
ガリア南部の反乱からもうそろそろ一年が経過するが、戦況は悪い。開戦直後にペリーヌが戦線を押し込んで以来、大きな戦線の変化はない。
「ド・ゴールはペリーヌと反乱軍の両方を警戒するあまり大胆な行動に出られないし、そんな内情を知らない反乱軍も攻勢に出にくい。ペリーヌはそもそも数が少ないから政府と連動する必要があるけど、肝心の政府がペリーヌ達を信用してない」
「ガリアは長引きそうですね」
「だな。オラーシャとカールスラントはもうそろそろ目処がつきそうだけど、ガリアだけはいつ終わるかさっぱり分からないな」
「カールスラントは七十万ほどの兵力を動員し、もはや鎮圧は時間の問題。オラーシャもウラル以外の反乱軍に力はなく、肝心のウラル反乱軍もこも山脈を迂回され工業地帯の約半分を失陥してシベリアの奥地へと押し込まれつつあります」
スオムスとバルトランドの戦争に端を発した欧州の混乱は治りつつあった。スオムスが連邦国家として成立した時点ではまだ両国ともに本腰を入れて鎮圧に取り掛かっていなかった。しかしヨーロッパ大陸に第三の大国が出現しうる状態となり変わった。両国ともに数十万単位の軍を起こし、一気呵成に反乱の鎮圧に取り掛かり、後一年もせずに反乱を鎮圧できるところまで来ていた。
「スオムスは大国と比べて国力は小さいですが、成長の余地は大きいです。いずれ脅威となるスオムスを牽制するために、自国の内憂を片付けるつもりなんでしょう」
サーシャの言葉にエイラは口元に手を当てしばらく考えを巡らせると口を開いた。
「軍縮と軍拡。欧州はどっちに進むと思う?」
「ネウロイとの戦争後は軍縮傾向でした。内乱が終われば各国はそれと同じように軍縮へと進むのではないでしょうか」
「だけど最近は戦争当事者じゃないはずのリベリオンと扶桑まで軍拡してるだろ。今現在はネウロイとの戦争後の軍縮から軍拡にトレンドが変わってるんじゃやないかな」
欧州では反乱の鎮圧や戦争のためといった理由がつけられるが、太平洋側の国々は平和そのものだ。それらの国が軍拡をする理由は定かではないが、少なくとも平和であるはずの国においても軍拡は既定路線となっている。
「軍需産業が不審となり、それらの工場から解雇された失業者達の事がオラーシャでは問題になっていました。多分、リベリオンや扶桑も同じなんじゃないでしょうか」
スオムスはどの国よりも高い割合で軍とその関連組織、そして軍需産業に振り分けていた。だがその国力からその状態を長く維持する事は難しく、他国と比較すると早い段階で内政に注力し人材を民間で再雇用させていた。
「となると軍縮で出た失業者対策に民間経済を活性化させるか、新たな脅威を利用して軍拡するか」
「この場合、新たな脅威は我々スオムスという事になるんですかね」
「カールスラントにとってはそうかもな」
客観的に見てスオムスは危険な国だ。バルトランドを併合し、オラーシャの一部を切り取り自国領として連邦を国家を形成した。国力ではまったく及ばないが、軍拡の大義名分としては十分だった。
「オラーシャはカールスラントが軍拡するのを見て同じように軍拡せざるを得ない。いや、もしかしたら扶桑が軍拡した時点でオラーシャは対扶桑を見据えて軍拡を始めるかもしれない」
「そうなればスオムス関係なくカールスラントは軍拡せざるを得なくなります」
「それは困るな。わたし達に軍拡するような余裕はないぞ」
スオムスは現在でもすでに限界まで軍を拡張している。これ以上の軍拡は経済的にも困難だった。
「世界的な流れを考えれば逆行する事になるかもしれないけど、スオムスとしては軍縮したいよな」
「そうですね。ですがバルトランドの技術とリベリオンからの技術、そしてスオムスの質の高いは兵を合わせれば少数でも十分な力となるでしょう」
連邦内で言えば、最も高い技術力を持つのが旧バルトランドだ。スオムスはネウロイとの戦争で様々なものを供与され、その中には技術関係のもあった。しかしそれを発展させる事ができずスオムスの技術は他と比べて遅れていた。だかそれを補ってあまりある高い実力のある兵士がいた。
連邦国家となり技術面での遅れも取り戻し、後は国力を増強するだけとなった。
「問題はスオムスそのものの国力だな。国力増強となれば人口を増やす必要があるけど、それは一朝一夕でできるものじゃない」
「少なくとも二十年は必要でしょうね。それまでスオムスは平和であり続けなければなりません」
戦争があればそれだけで人口は減る。それは国力の減少に繋がりスオムスが目指す事とは逆行している。
「二十年後にこのスオムス連邦があればの話だけどな」
「あるに決まってるじゃないですか。その為に私がいて、エイラさんがいるんです」
「そうだな。二十年後にスオムスがある為にも、今頑張らないとな」
スオムスの未来のウィッチの未来考えなければならない事が多くて大変だと思いながらも、それをするのが自分の大統領という立場なのだと思いエイラは気を引き締めた。