ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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随分と寒い、と言っても例年と比べたらまだ暖かい気もします。


ノイエ・カールスラント

「ノイエ・カールスラントにでの対ウィッチ戦闘における指揮か」

 

それはバルクホルンがラルから伝えられたノイエ・カールスラントでの任務だった。

世間一般ではノイエ・カールスラントの反乱軍にウィッチは確認されていないとされているが、軍部には違う情報が入ってきていた。

 

「今の所は両軍共にウィッチによる戦闘行動は確認されてないです。ですが反乱軍側は非正規戦でウィッチを利用しているとの情報があるまであります」

 

バルクホルンの呟きに答えたのは、ヘルマ・レンナルツ中尉だった。彼女は大戦期からノイエ・カールスラントにあるジェットストライカーの実験部隊に所属し、戦後も実験部隊に所属して新型ユニットのテストパイロットをしているるウィッチだった。

 

「非正規戦か。民間人によるゲリラの噂は聞いているが、それにウィッチが加わっていると言う事か?」

 

「不明であります。現場にウィッチが確認されているのは事実でありますが、そのウィッチが何をしているのかまでは判明してないであります」

 

「判明してないだと? ただ現場で見学してるだけではあるまいし、そんな訳ないだろう。いた以上は何かしているはずだ」

 

後方の補給路に対する妨害や補給拠点の焼き討ちなど、ノイエ・カールスラントのゲリラ作戦がこの内乱に与えた影響は極めて小さい。だが喉に引っ掛かった小骨のように、カールスラント軍に不快感を抱かせていた。

 

「簡単な話であります。ウィッチが現れたとされる場所には、生存者が一人もいないのであります」

 

「……皆殺しと言う事か。だがそれならなぜウィッチが現れたとわかるんだ」

 

「ウィッチ以外にあり得ない。そんな殺され方だったと報告書には書かれていたであります。生憎自分には閲覧権がなく、詳細は分かりかねますが、バルクホルン大佐でしたら閲覧できるはずであります」

 

ご覧になられますかと問いかけるレンナルツにバルクホルンを首を横に振った。

 

「今回私に与えられた任務は対ウィッチ戦闘での指揮だ。対ウィッチ戦とはあくまでも反乱軍が保有する正規兵としてのウィッチだと解釈すべきだ。ゲリラなどと言う、下手をすればただの反乱軍のシンパが勝手にやってるだけかもしれない連中の相手までするべきではない」

 

全てのゲリラが反乱軍と直接的な繋がりを持っている訳ではない。中には個人の意思で反乱軍に協力しようと思い、突発的に武器を持ち出してカールスラント軍に銃口を向ける者もいる。今回のゲリラがそうではないと言い切れなかった。

 

「ですが内乱で発生しているゲリラ達の中で最大の脅威はこの推定ウィッチのゲリラであります。放置しては更なる犠牲者が出ることになります」

 

「そうかもしれないな。だがもし仮にそのゲリラが反乱軍の直接指揮下にあったとして、どうやって止めると言うんだ」

 

ゲリラの強みは特定の戦線を持たない事にある。神出鬼没に現れては、相手に対して嫌がらせのような攻撃をする。ゲリラ、それも特定のゲリラを撃破しようとしても、一体どこにそのゲリラが来るのかが分からない以上手の出しようがなかった。

 

「あるいはゲリラの出現場所には何か規則性があって、次の出現場所が予測可能だとすれば話は別だ。だがそんな簡単に分かるのならば、おそらくもう既にそのゲリラは鎮圧されているだろう」

 

「そうでありますね。自分も、実験機を破壊されたせいで少し感情的になっていたであります」

 

さらりと放たれた言葉にバルクホルンはレンナルツを二度見した。

 

「実験機を破壊されただと?」

 

「はい。まぁ、幸運な事にジェットストライカーではなく、上層部が推進している新型レシプロ機の方でありましたが。おかげでウチの隊から新型機輸送に際して護衛ウィッチを派遣する事になってしまい、肝心のテスト業務が滞ってしまっているであります」

 

「その実験機は確実に破壊されたんだな?」

 

深刻そうな表情でバルクホルンが念を押すと、レンナルツは少し考えた後に答えた。

 

「おそらく間違いないかと」

 

「おそらくと言うのはどう言う事だ」

 

「運んでいた車両が爆弾か、ウィッチの固有魔法で吹き飛ばされてしまったからであります。周囲にはトラックの破片と死体、それとストライカーのパーツなどが転がっていたそうすが、予備部品なども運んでいたためこれを根拠にストライカーが破壊されたと断言する事はできないであります」

 

レンナルツの言葉にしばし考えた後、バルクホルンは口を開いた。

 

「不味いかもしれないな」

 

「何がでありますか?」

 

「このゲリラが反乱軍の手先であるのならまだいいが……」

 

思い浮かんだ最悪の想定にバルクホルンは言葉を紡ぐことを躊躇った。

 

「まだいいとはどう言う事でありますか! 我々はゲリラにより被害を被っているのであります奴らにより殺された仲間を思うのであれば、不用意な発言をするべきではないであります!!」

 

「す、すまない。だが事と次第によってはカールスラントだけの問題に留まらない可能性がある。確かにさっきの発言は不用意だったかもしれないが、ゲリラが反乱軍の手先である事は想定される中で一番マシな可能性だ」

 

「どう言う意味でありますか?」

 

この事実を伝えるべきかバルクホルン迷ったが、ノイエ・カールスラントでは副官として共に行動する事になるレンナルツに隠し事をするのもよくないと考え伝える事にした。

 

「もしかしたらゲリラは他国のスパイなのかもしれない」

 

「す、スパイでありますか!?」

 

「考えてもみろ。新型ユニットともなれば、輸送状況こら護衛まで全て秘匿されている。なのにピンポイントで狙ってきたと言う事は、ゲリラ側が確度の高い情報を持っていた事の証左だ」

 

もちろん偶然の可能性もある。だが偶然にしては出来過ぎていると言うのがバルクホルンの考えだった。

 

「それにジェットではなくレシプロだったのもきな臭い。もしこれが本当に破壊されたのならいい。だが破壊したように見せかけて持ち去ったのであれば、尚更他国のスパイの可能性が高い」

 

「実験機とはいえレシプロストライカーは反乱軍側も欲しがると思いますが、違うのでありますか?」

 

「反乱軍ならわざわざレシプロの実験機など狙わないだろう。狙うなら現役で使われているジェットか、かつての戦争で使われたレシプロストライカーを狙うだろう」

 

ゲリラからすれば実験機を狙うメリットは薄い。莫大な金がかかっているため、金銭面ではダメージを与えられるかもしれないが、それが戦局に影響を及ぼすかといえば首を傾げざるを得ない。ましてや、それを実行したのがゲリラの中でも特に有力な部隊となれば尚更だ。

 

「仮に本当にそのゲリラきウィッチがいるのなら、鎮圧部隊の司令官や、ノイエ・カールスラントの行政長官とかみたいなとんでもないものを狙うはずだ。その方がこちらに与えるダメージは大きいからな」

 

「た、確かにそうかもしれませんが、大きい目標は相応に護衛も堅固であります。撃退されるリスクを嫌った事も考えられるであります」

 

レンナルツの言葉にバルクホルンは頷いた。

 

「そうかもしれないな。だから確認の為に罠を仕掛けようと思う」

 

「ゲリラとの交戦は避けるつもりだったのではないのですか?」

 

「そのつもりだったが、このゲリラがカールスラントの脅威となるのなら話は別だ。少なくとも正体を暴く必要がある」

 

ただの反乱軍ならいいが、もしも他国が絡んでいるのなら事は重大だ。

 

「もし大佐の考えが正しいのであれば、我々だけで解決する事はできないでありますな」

 

「その時はラルやガランド中将を巻き込んでどうにかするさ」

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