やっと彼女を出せます。
エイラが赴任して一週間ほど経った頃、新たに一人のウィッチが501統合戦闘航空団に加入した。到着した際の顔合わせでは夜勤明けのエイラは自室で睡眠をとっていたため挨拶などはまだ出来ていなかった。しかし事前にミーナ中佐からナイトウィッチであることは聞かされていてエイラの指揮下に入って夜間哨戒を主に行うと言われていた。
その彼女が今日から夜間哨戒を行うため出撃する前に顔合わせをしようとハンガーに来ていた。ハンガーの扉を開けて中に入ると魔法力を発現したことによる光が見えたため光の出所に向かうと銀髪に黒い軍服を着たウィッチがストライカーユニットの前に立っていた。薄暗いハンガーの中で魔法力の発現による光と彼女の白い肌と銀髪があいまってどこか神秘的な空気を纏っていて暫くの間エイラはその光景に見惚れていた。
「誰?」
エイラの視線に気付いた彼女が問いかけた。
「あ、えっとわたしはスオムス空軍少佐エイラ・イルマタル・ユーティライネン。この部隊の副司令を務めてる」
「わたしはオラーシャ陸軍中尉サーニャ・リトヴャクです」
「リトヴャク中尉には今日からわたしの指揮下で夜間哨戒をしてもらうことになるんだけど話は聞いているか」
「はいミーナ中佐から夜間哨戒中はユーティライネン少佐の指示に従うようにと言われています」
「今から夜間哨戒に行くのか?」
「そのつもりだったんですけどストライカーユニットのエンジンが故障して動かないんです」
「故障箇所を確認したいからストライカーユニットを見せてもらってもいいか?」
「はい」
リトヴャクの承諾を得てエイラは故障箇所の確認をする事にした。エイラは自分のストライカーユニットの調整をすることもあるため多少の故障ならエイラで直すこともできた。
「あー、これはすぐにはムリかも。この基地にオラーシャのストライカーユニットの部品の備蓄がないからどこからか調達しないとダメだな」
「じゃあ今日は…」
「飛べないな」
「すみません」
消え入りそうな声で言った。
「ユニットが壊れたのは仕方ないさ。だからそう肩を落とさずに直るまでは地上勤務をしといてくれたらいいよ」
「はい。すみませんユーティライネン少佐」
「あ、そうだ。わたしのことはエイラでいいぞ」
「わかりました、エイラ少佐。あの、わたしの事もサーニャって呼んでください」
「わかった。じゃあサーニャは今日夜間哨戒はしなくていいから部屋に帰って休んでユニットが直ったら改めて夜間哨戒を始める事にしよう」
翌日、エイラはまずサーニャの原隊であるオラーシャ帝国陸軍第586戦闘機連隊に連絡を取りストライカーユニットの部品が余っていないか確認をした。
「ありませんか」
『申し訳ありません。我々も出来れば部品を提供したいのですが我が隊のユニットの稼働率自体が半分ほどにまで落ちていて整備も共食い整備でなんです。そのためユニットの部品に余剰がないんです』
「そうですか。わかりました、こちらでなんとかする事にします」
この部隊はブリタニアにいる唯一のオラーシャ軍の航空ウィッチ部隊でありこの部隊に部品がなければそれはすなわちブリタニアにオラーシャのストライカーユニットの部品がないことを意味した。
この次にエイラが連絡したのはブリタニア空軍のマロニー大将に連絡をしてオラーシャのユニットの部品をブリタニア軍が保有していないか尋ねた。結果は先ほどと同じで部品はなかった。
「うーん、ブリタニアにはやっぱりないのかなぁ」
ブリタニアにないとなるとオラーシャから直接輸送するか他の国で余っている部品を探して持ってくるしかない。しかしオラーシャから輸送しようにも元々北極海を経由してブリタニアまでくるような船はなく、ごくたまにくるオラーシャからの輸送船はオラーシャの東から太平洋を経由してパナマ運河を通ってきていた。
「どこかにユニットが余ってる国とかな…いか…な」
そんなことを呟いているとふと一つの国の名前がエイラの頭の中に浮かんだ。エイラの故郷スオムスである。昨年からカールスラントの工廠が稼働しストライカーユニットが安定供給されるようになったスオムスならばオラーシャのストライカーユニットの部品に余剰が出ているのではないかと思いついたのだ。
早速エイラは確認を取るためにスオムス軍参謀本部に連絡を取った。
『確認を取らなければ詳しい量などは分かりませんがオラーシャ製のユニットはあります。しかし仮にあったとしても外交的な話が絡んでいるため安易にそちらに送ることはできかねます』
エイラの電話に対応した装備部の少佐が答えた。
「それはわたしの方で解決するので問題ありません。詳しい数と種類を後で駐ブリタニア大使館のユーティライネン少佐宛に送ってください」
『わかりました』
その次にエイラはオラーシャ製のユニットを送るための根回しをするためマンネルヘイム元帥に連絡をした。
『話はわかった、根回しはしておく』
「ありがとうございます」
『早ければ来月初めに第一便がそちらに届く事になる』
「早いですね」
各国との調整を考えると一月はかかるとエイラは考えていたためその速さに驚いた。
『今月末ぐらいからスオムスの工廠で発生している装備の余剰をブリタニアとオラーシャには送る計画がある。その積み荷の一部を501部隊宛に割り当てれるか交渉する。おそらく通るだろうから今のうちに他に必要なものが有れば言っておくといい』
「あ、それじゃあ他のオラーシャ軍の航空ウィッチにもユニットを送れるようにできませんか」
第586戦闘機連隊のもまた装備が不足していることを思い出したエイラはマンネルヘイム元帥に要請した。
『他の部隊か。わかった任せておきたまえ』
「ありがとうございます。あと今後オラーシャからストライカーユニットを運べるようにできないでしょうか」
『スオムスにある分だけでは足りないということかね?』
「はい、どれだけこの状態が続くかわかりませんが流石にスオムスにある分だけでは長期間賄うのは難しいと思いますので」
『オラーシャが了承すればその件は可能だろう。外務省に伝えておく』
「ありがとうございます」
『では君の活躍が聞けるのを楽しみに待っているぞ』
部品調達の目処が立ったためエイラはサーニャに報告しに行く事にした。
「サーニャ!ユニットの部品調達できそうだぞ!」
食堂で誰とも話さず一人で寂しそうに夕飯を食べていたサーニャに言った。
「本当ですかエイラ少佐」
「ああ、とりあえずスオムスにあるオラーシャ製のユニットと部品を送ってもらえる事になった。あとうまくいけばオラーシャからもユニットを送ってもらえるかもしれない」
「ありがとうございますエイラ少佐」
その時夕飯を食べながら二人の話を聞いていたミーナ中佐が声を上げた。
「ちょっと待ちなさい、それは一体何の話?」
「何の話ってサーニャのユニットが壊れてたから部品を調達するって話だけど」
「ええ、その話は聞いたわ。私が聞きたいのはどうしてスオムスやオラーシャの名前が出てくるのかということよ」
てっきりブリタニア国内で部品の調達をすると思っていたのに他国にまで話が広がっていることにミーナ中佐は驚いていていた。
「ブリタニア国内にはオラーシャ製のユニットの予備がないけどスオムスにはあることを思い出してさ。頼んだんだ」
「頼んだってそんなすぐに済む問題でもないでしょう。一体どうやったの」
ミーナ中佐は脳裏に軍規を無視して強引に装備を調達して多くのウィッチの顰蹙を買っていた同僚の姿を思い浮かべながら言った。
「普通にスオムス軍の装備部に連絡して備蓄状況を聞いてマンネルヘイム元帥経由で根回ししたんだよ」
軍規に触れるような方法をとっていると思っているミーナ中佐はさらに問いただした。
「サインの偽造とか他所に運ぶ積み荷を強引に奪ったりしてないでしょうね」
「何言ってんだ。そんなの軍規違反だろ」
「そ、そうだけど」
エイラが赴任した当日の様子からかなりの問題児と思っていたためあまりにもふつうのこたえにやや拍子抜けしていた。
「エイラ少佐、軍規違反したの?」
サーニャが不安げな表情で尋ねた。
「してないよ。軍規違反しなくても手に入るのにするわけないだろ」
その答えに思わずミーナ中佐が言った。
「軍規違反しないと手に入らないのなら違反するみたいな言い方ね」
「さて、今日の夕飯は何かなー」
その言葉を聞かなかったふりをしてエイラは夕飯を食べ始めた。
「ちょっとエイラさん!?」
その行動に不安になったミーナ中佐が思わず大きな声を上げたがこの問いに対してエイラは答えをはぐらかすばかりで明確に否定することはなかった。
この話書くのかモノローグみたいにするか迷いましたが結構迷いました。このサーニャのユニット調達がなんとなく神聖な感じのイメージがあって自分なんかが書いてもいいのか迷ったましたがこのエピソード自体がエイラを少佐にまで階級を上げたきっかけでもあるのでちゃんと書くことにしました。
今回は原作でエイラがしたというサーニャのストライカーユニット調達に関して書きます。
原作のエイラがサーニャのユニットを調達するのって階級的にも動くお金の金額的にも結構無理があると思うんですよね。仮にできたとしても開始まで多少の時間がかかるだろうし結局サーニャのユニット調達するくらいなら他の国のユニットで完熟訓練して使う方がマシって結果になりそうなんですよね。
だから元々ブリタニアオラーシャ間の航路は考えられていてそこにエイラがサーニャのユニットの話を持ち込んだ結果、それが後押しとなってスオムスを経由しての航路が開通したとかそんな感じなのかなと考えています。