あ、あそびじゃないですよ。勉強です。
エイラがブリタニアに来て一月ほど経った時、ブリタニアとの一度目の研究結果が渡されることとなった。とはいえブリタニアもコアを受け取って一ヶ月ではわかることも少なく、実験の光景も見たがなにをやっているのかさっぱりわからなかった。大使館で資料を大使に渡した際に連絡官と会う時間と場所、そして確認のための合言葉を聞き基地へと帰還した。
帰還したエイラは連絡官との会合の場所として指定された自分の執務室で書類仕事をしながら連絡官が来るのを待つことにした。情報漏れを防ぐためエイラには来る時間を教えられず、また誰が来るのかも分からないことから悶々としながら待っていると夜間哨戒の始まる30分ほど前になって扉がノックされた。
「どうしたんだハルトマンこんな時間に」
一度寝るとスクランブル発進以外では起きてこないハルトマンが訪ねてきたことに驚きながら尋ねた。
「エイラの淹れたコーヒーが飲みたくなって起きてきたんだ」
コーヒーの話題を振ってくることはカールスラントの連絡官の合言葉の一部であるがウィッチが連絡官とは考えにくいためやや訝しみながらもエイラは事前に教えられていた言葉を発した。
「別にいいけどいい豆はないぞ」
「ブリタニア産のコーヒー豆があればいいよ」
ブリタニアでコーヒー豆は作られていない。これはカールスラントの連絡官の合言葉でありこの時点でハルトマンがそうであることが確定した。このことにエイラは内心驚きながらもとりあえずコーヒーを用意することにした、
「…すぐに用意するから椅子に座って待っといてくれ」
「あ、コーヒーはもう一人分用意しといて。もうすぐ来ると思うから」
「いつ来るのか知ってるのか?」
「うん、同じ時間に来るって聞いてる。私は少し早く来たから多分もうすぐ来るんじゃないかな」
階級的には下のハルトマンがオラーシャの連絡官が来る時間を教えられているのに自分が教えられていないことになんともいえない気持ちになりながらも三人分のコーヒーも用意していると再び扉がノックされた。
「サーニャ?夜間哨戒前に来るなんて珍しいな」
サーニャは夜間哨戒の前は基本的にストライカーユニットの調子を確認していてエイラがそこに訪ねることはあってもサーニャが執務室に来ることは滅多になかった。
「燃料が入っていなかったんで補給を頼みたいんです」
「燃料?昼に整備班が入れてくれてたと思うんだけど」
「ブリタニア産の燃料が欲しいんです」
ブリタニアで燃料は産出されていない。これはオラーシャの連絡官の合言葉でまさか連絡官二人がウィッチとは考えてもいなかったエイラは驚きに目を見開きながらも言葉を発した。
「それはロンドンで採れるやつか」
「はい、そうです」
この言葉にエイラは大きく息を吐き出した。
「これで全員揃ったわけか。まさか連絡官が二人ともウィッチとはなぁ」
「自分だってウィッチじゃん」
「わたしは軍大学行ってるからいいんだよ」
エイラとハルトマンがそんな話をしているところにサーニャが遠慮がちに言った。
「あの、夜間哨戒の時間もあるのでできれば早めに本題に入ってもらえると嬉しいです」
「ごめんサーニャ。ハルトマンが変なこと言うから怒られたじゃないか」
「えー、私のせいなの」
ハルトマンが文句を言うのを無視してエイラは話し始めた。
「伝えることって言ってもあんまりないんだよな。一ヶ月くらいじゃそんなにわかったことはないみたいだ。けど上手く使えば兵器にはできることは間違いないみたいだな」
カールスラントとオラーシャからは大使館を通して連絡官に伝える情報はできる限りオブラートに包んで伝えるように言われていた。これは情報漏れをした際に詳細がわからないようにすることとこの二人が連絡官だったことに起因する。おそらく殆どのウィッチがネウロイのコアを使った兵器を作るための実験に反感を示すと考えているため両国は感情的に動いて情報が漏れることを避けるためにエイラに対してこのようなオーダーをしていた。
「それだけ?」
「それだけだ」
「えっ、少なくない?」
ハルトマンが拍子抜けしたように言う。
「一ヶ月の実験ならこんなもんだろ」
「こんなの伝える必要あるの」
「別に内容は関係ないんじゃないかなぁ」
「どう言うこと?」
「多分カールスラントとオラーシャは現段階でどれくらい研究が進んでいるのか知りたいんだと思う。もしも研究が佳境に入っていればスオムスに渡った研究資料を受け取って自分たちも研究を開始する、もしくは条約違反を突いて政治的な力を削ぎつつ研究を全部持っていくつもりだと思うぞ」
「条約違反?そんなにヤバイ研究なの?」
ハルトマンの問いかけにエイラは自分のミスを悟った。てっきり二人は詳細は知らないまでもこの研究がバレると国際的な立場が悪くなるものである事くらいの認識はしていると思っていた。
「ハルトマン、サーニャこれは聞かなかったことにしてくれ。」
「聞かなかったことにって言われても…
条約違反ならミーナ中佐に言って告発するよう根回ししてもらおうよ。サーニャもそう思うよね」
問いかけられたサーニャは困ったような顔をしながらもそれを明確に否定した。
「わたしはブリタニアの出来事を本国に伝えることが任務ですからそれは出来ません」
「サーニャの言う通り軍人なら任務には逆らえないし証拠がないから告発も無理だよ」
「さっきの口振りからしたら研究内容を知ってるようだったけど違うの」
「知らないし仮に知ってても言わないよ」
ハルトマンの問いかけに嘘で返すとハルトマンはその嘘を見抜こうとするかのようにじっとエイラのことを見つめてきた。
「なんか今夜でエイラの印象が変わっちゃったな」
しばらくエイラのことを見つめてからハルトマンが呟いた。
「ふーん。どんなふうに変わったんだ」
「私と近い性格だと思ってたんだけどトゥルーデ以上に融通の効かないカールスラント軍人って印象に変わったよ」
「融通の効かないカールスラント軍人かぁ。わたしはただこの件があまりにも政治が絡みすぎるから告発するべきじゃないって言ってるだけで融通が効かないわけじゃないんだけどな」
「だからそれが融通が効かないって言ってるの。別に伝えることが命令であってバラしたらダメなわけじゃないんでしょ」
「バラしたらスオムスが困るんだよ」
「どうして?」
「それはいえないけど」
ブリタニアの件がバレると言う事は同時にスオムスが条約違反をしてネウロイのコアを渡したと言うこともバレる。その上それをやったのがエイラだなんて口が裂けても言えるわけがなかった。
しかしこれまでの話の流れからなんとなくエイラがハルトマンの想像以上にこの件に深く関わっていることを察したのかそれ以上ハルトマンはこの事は追求しなかった。
「ご馳走さま、コーヒー美味しかったよ。これからもまたたまに飲みにくるね」
「あ、わたしもそろそろ夜間哨戒に行ってきます。コーヒーご馳走様でした」
そう言って二人が出て行った後思わずエイラはひとりごちた。
「告発か…。バルバロッサ作戦の時にあの事を告発していればわたしもハルトマンの意見に賛成できたかもしれないな」
マンネルヘイム元帥の予言は当たっていたんだなと思いながらあの時告発していればと言う少しの後悔が胸をよぎった。
ふと思ったんですがガリア国民ってどうなってるんでしょうね。
カールスラントは国民含む大規模な撤退があったと明記されていますがガリアはそんなものないんですよね。
仮にネウロイの被害を受けるのが殆ど北半分だとしても結構めんどくさそうですよね。オストマルクとかの難民もブリタニアとのガリア南部に来るとしたら許容量超えそうな気もする。ガリア北部にもブリタニアに避難した人もいるだろうしなんならリベリオンとかノイエカールスラントあたりに行った人もいるかもしれない。
そう考えると様々な政府が乱立したっていうのは想像以上の大問題だったんだなと今更ながらに思いました。
戸籍の問題とかもあるだろうし年金とか公務員の給料の未払い。死亡した人の保険がどうとかでガリアって単純に復興する以外にも問題は山積みなんだなと思いました。