これまで特に進捗のなかったネウロイの研究に動きがあったのは10月のことだった。
「ネウロイの出現時間を予測できる?」
「そうだ。ネウロイのコアを利用することによりネウロイの襲撃をかなり正確に予測できるようになった。これの試験を501部隊でやってもらうことになる」
「ネウロイの研究をしていることがバレますがよろしいんですか?」
501部隊はエースが集まっていることもあり広報の役割も兼ねている。そのため世界中が注目していて各国は面子を保つ為に自国の最新兵器と共にエースを送りこんでいる。その兵器の情報を得る為のスパイなどがかなり501に紛れ込んでいるため秘匿性の高いネウロイ研究の試験を501部隊で行うのはあまりにリスクが高いといえた。
「構わん。我々がしていることがネウロイの兵器利用だとバレなければいい。なによりこれは我が国の国防に直結する。秘匿するよりは公表してしまった方が都合がいい」
あなた達がロンドンに抱え込んでいる自国のウィッチを出せばそんなもの必要ありませんよねという言葉を済んでのところで飲み込んでエイラはそうですかと言った。
「それに最近研究が漏れているのか他国のスパイらしき人間が嗅ぎ回っている形跡がある。近々手を打つ予定だがスオムス側でも対応して貰いたい」
「わかりました。我が国にこの事を知っている人間は少ないうえ信用のおける人間しか関わっていないのでまず無いとは思いますが…」
内心バレたのかとドキドキしながら答えた。
「特にカールスラントと繋がりの深い人間を重点的に洗ってくれ。他の国も動いているが特にカールスラントがしつこく嗅ぎ回っている。少佐の周りでもカールスラントの人間がいるのなら気をつけてくれ」
「了解です」
バレているにしろしないにしろ、これは釘を刺されたと言うことかなと思いながら次にハルトマン達と会う時までに対応を協議する必要があると思った。
「それでその予測というのはいつから試験がされるんですか」
「11月に開始する。わかっているだろうがこの事はくれぐれも口外しないように注意してくれ」
「了解です。ところで兵器利用の方はどの程度の進捗状況なのでしょうか。できれば一度この目で確認しておきたいのですが」
ブリタニアに来てから一度も実際の現場を見せてもらっておらずスオムスからもその事をせかされていた。
「残念なことにまだまだ見せられるようなものではない。もうしばらく待ってもらいたい」
「本国からは進捗状況に関わらず一度目で見て確認するように言われています。なによりも実物を見るのはスオムスの権利です」
「それは少佐個人ではなくスオムスの要請ということか」
「はい」
「…わかった、手配しよう」
これがエイラ個人の思惑ならともかくスオムスの意向ならばマロニー大将も否やと言えず了承した。
「ありがとうございます」
「だが条件がある」
「条件…ですか?」
「他国の動向が気になる。情報保全のために準備を万全にしたい。それまで待ってもらいたい」
「具体的には?」
「来年の2月頃まで待ってもらいたい」
「長いですね、できれば今年中にお願いしたいのですが」
エイラ個人としては待ってもいいのだがスオムスが最近かなりこの事に関して急かしてきていた。
エイラは知らない事だがこれはカールスラントに原因があった。最近カールスラントがかなりこの研究に関心を示し始めていてカールスラントはスオムスに対して更なる情報を引き出す事を求めていた。
「今月と来月はスパイの対処で忙しくなる。年末年始も様々な国から人が来るからそれらの中にあるであろうスパイ連中への対処がある。2月しか無理だ」
詭弁だなとエイラは思った。確かにマロニー大将が言う事は事実だろう。しかしエイラ一人を案内できないほど人手不足になるとは考えにくい。果たしてブリタニアに実験を見せる気があるのだろうか。
「待てませんね。本国は直ぐにでも確認するよう言ってきています」
「そう急かさずにもう少し待て」
「これまで一度も実際の現場を見せてもらえていない以上急かすなと言う方が無理でしょう」
「少佐、無理なものは無理だ。すまないが諦めてくれ」
エイラもこのことに関して譲る気は無いが結局のところ選択権はブリタニアにある。マロニー大将が意見を変える気がない以上これ以上は無駄だと思い渋々ながらも了承した。
「…わかりました。けど2月までには絶対に見せてくださいよ」
「約束しよう」
※
マロニー大将との会談を終えたエイラはカールスラントに対する情報提供がブリタニアにバレている可能性があることからスオムス大使館でその対策を協議することとなった。
「ブリタニアは我々から情報が流出しているとどれくらい確信を持っていると思う」
コーレマイナネン大使がエイラに尋ねた。
「おそらく証拠はないと思います。もしも証拠があればあの場でその事を出して研究結果を渡そうとしなかったでしょうから状況証拠からスオムスだと判断したのだと思います」
「道理だな。だがそれならば経路がバレるのも時間の問題かもしれんな」
「何か手を打つ必要がありますか?」
「カールスラントとオラーシャに一時的に連絡を取り合う事を辞めるよう要請しよう」
「オラーシャもですか?」
てっきりカールスラントだけだと思っていたエイラはその理由を尋ねた。
「片方だけやめてない腹を探られるのも面白くない。詳しいことは上の連中が決めることになるがまず間違いなく両国とのやりとりをやめることになるだろう」
「わかりました。差し当たって今回はどうしますか?できれば今回から辞めた方がいいと思いますが」
「流石に急にやめることはできないから今回はそのままやる事にしよう。だがそれとなく連絡官にはこの事を伝えといてくれ」
「了解です」
コーレマイネン大使が眉間に皺を寄せ少し考える素振りを見せた後口を開いた。
「少佐、ブリタニアに本当に実験を見せる気があると思うか?」
「わたしもそれは気になっていました。現状では見せる気はあると思います。しかしどうにかしてスオムスとの縁を切ろうとしているように感じます」
「そうか。なら尚更カールスラントとオラーシャとのやりとりを停止するよう要請しなければならないな。両国ともこれがあるからスオムスを秘密同盟に組み込んだわけだから無くなれば同盟を解消しようとするだろうからな」
同盟一つとっても大国に左右される、小国の悲しい性である。
「そう簡単に解消されますかね」
「秘密同盟だからな、解消したところでバレるのはせいぜいもう一つの同盟国にだけだ」
スオムスにもっと力が有れば、そう思わずにはいられなかった。
アニメ一期にあってそれ以外にはなかったもの、それはネウロイがいつ来るかと言うのを予測するシステムです。一体どうして予測できたのかを考えてみるとやっぱりウォーロック、ひいてはネウロイのコアが関係していたのではないかと思いました。
いつ頃からウォーロックが作られていたのか分かりませんがもしかしたら兵器にする過程でコアを使った予測ができることに気付いて研究をしていない時、あるいは週に一回とかのペースで予測のためにコアを使っていたのかなと思って今回の話を書きました。いつの間にか消えていたネウロイの予測システム、単純にネウロイ側が対策しただけとも取れますがこんな話があったのなら面白いと思いました。