ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

36 / 304
前回の話投稿してから気付いたんですけどエイプリルフールだったんですよね。全然気付かず投稿してからエイプリルフールネタにするんだった!て思ったらゴシップだから実質エイプリルフールみたいなもんかって勝手に納得してます。…いいですよね?
ちなみに今回エイラが出ないので悪しからず。


隊長会議

ミーナがエイラの立場について違和感を持ったのはヘルシンキで501、502、503の3つの統合戦闘航空団の司令官クラスが集まった時のことだった。

これらの戦闘団が抱える共通の問題に人員不足があるが第502部隊の隊長グンドュラ・ラル少佐はそれを解消するために強引な手法で人員を集めることで有名だった。直近で言えば501部隊から坂本少佐などが引き抜きに合いそうになっていた。

 

「オラーシャの冬は厳しくてな、ユーティライネンを502に移そうとしたんだが…」

 

欲しい人材の話になった時、第502統合戦闘航空団の隊長グンドュラが唐突にそんなことを言い始めた。

 

「ちょっと、そんな勝手なことは許さないわよ!」

 

部隊運営に関することをかなりエイラに任せているためエイラを引き抜かれることは他の誰を引き抜かれるよりも大きな痛手となる。そのため誰がなんと言おうとミーナはエイラを渡す気はなく即座に抗議の声を上げた。

 

「グンドュラ、統合戦闘航空団にはそれぞれ事情があるんだ一方的に自分の事情を押し付けて勝手に引き抜くんじゃない」

 

ミーナの抗議に追従して第503統合戦闘航空団の副司令フーベルタ・フォン・ボニン少佐もまた声を上げた。

 

「ありがとうフーベルタ。貴方を崇拝してもいいかしら」

 

思わぬ援護射撃にそんな言葉を漏らした。

 

「なにより冬の厳しさで言えばオラーシャも負けていない。ユーティライネンはオラーシャにこそ必要だ」

 

「訂正するわ。グンドュラに似てきたわね」

 

「やめろ。戦争が始まってから一番傷つく言葉だ」

 

「そもそもどうしてサフォーノフ中佐はここにいないの。503の司令官は彼女でしょ?」

 

「サフォーノフ中佐はチェラビンスクの防衛を一手に担うお忙しい方だ。それに誰かさんと顔を合わせたくないんじゃないかな」

 

グンドュラに2人の視線が集中する。

 

「どうして私を見る」

 

「503に何をしたの」

 

確信を持ってミーナは尋ねた。

 

「何かするわけないだろ。サフォーノフ中佐は物静かで優しくて人当たりが良く部下に慕われているウィッチだ。私ともいい関係を保っている。ただ少し誤解があっただけだ」

 

「そのことでサフォーノフ中佐から伝言を預かっている」

 

そういうと手紙を取り出して読み上げた。

 

『ブロニスラバ・フェオクチストバナ・サフォーノフから親愛なるグンドュラ・ラルへ、くたばれ』

 

「まあ素敵」

 

普段から煮湯を飲まされているミーナからそんな言葉が溢れた。

 

「偽造だ。あの礼儀正しいサフォーノフ中佐がそんな汚い言葉を使うわけがない」

 

「そこまで怒らせたという結論にはならないのか」

 

「そんなに嫌われるようなことじゃないだろ」

 

どうやら心当たりはあるようだ。

 

「502結成の時ポクルイーシキンを横取りしたからだろうなぁ。もともと503がリストアップしていたんだ。あれで嫌われないというのは無理がある」

 

「ただの偶然だ。サフォーノフ中佐の申請書が停滞したのは私のせいじゃない」

 

グンドュラが嘯いた。

 

「グンドュラが人事に金を渡して書類を止めさせたという噂がある」

 

「古今東西噂に真実はない、嘘ばかりだ」

 

「本当に?」

 

疑わしげな視線を向けながらフーベルタが尋ねた。

 

「金ではなく酒を渡した」

 

「早くグンドュラを逮捕しないとカールスラントの評判が落ちる一方ね」

 

呆れたようにミーナが言った。

 

「サフォーノフ中佐がカールスラントを憎むようになったらどうするんだ。我々は間借りしているんだぞ」

 

「なぁフーベルタ、お互いオラーシャの戦いが過酷なのはよく知っているだろう」

 

同情を誘うように言った。

 

「もちろん理解している」

 

「だから君も引き抜くつもりだったんだ」

 

「その件についても伝言がある」

 

再び手紙を取り出すと読み上げた。

 

『ブロニスラバ・フェオクチストバナ・サフォーノフよりグンドュラ・ラルへ、さっさとくたばれ』

 

「本当に素敵」

 

「サフォーノフ中佐の冗談のセンスには目を見張るものがあるな」

 

「このところの激戦でサフォーノフ中佐はお疲れだったがこれを書いている時は驚くほどイキイキとしていた」

 

「元気の元になれたようで私も嬉しい」

 

「他人の懐に手を突っ込むのはやめようじゃないか」

 

そう言ってフーベルタがグンドュラを諭した。

 

「安心しろ。ユーティライネンの件で流石に懲りた。もうしない」

 

「嘘おっしゃい。貴女が懲りるなんて天地がひっくり返ってもあり得ないわ。今なら怒らないから何を企んでいるのか吐きなさい」

 

「本当だ。ユーティライネンの引き抜きがバレた時にマンネルヘイム元帥とマンシュタイン元帥、それにカールスラントとブリタニア、オラーシャの大使に散々怒られたからな。もうユーティライネンに手を出すつもりはない」

 

各国の思惑が色々と絡み合っているようだしなと付け足した。

 

「それじゃまるでエイラさん以外には手を出すみたいな言い方ね」

 

「情勢を考えると手に入るものは手に入れておきたい。あと、優秀なウィッチがいると周りに自慢できる」

 

「全然懲りてないじゃないの」

 

「安心しろ、今回で最後だ。確かハルトマンとバルクホルンもヘルシンキに来ているんだったな」

 

「2人に手を出したらタダじゃおかないわよ!」

 

事務方の主力がエイラならば実戦部隊の主力はこの2人だ。2人を引き抜かれると戦力がかなり落ちるため即座に拒否した。

 

「困難に敢然と立ち向かうのがカールスラントのウィッチだ」

 

どんな手を使ってでも引き抜く、そう言わんばかりにラル少佐が言った。

 

「私、どうして拳銃を置いてきたのかしら」

 

馬鹿は死んでも治らない。ラル少佐の強欲さもまた治ることはないだろう。

 

「待て2人が来ているのか」

 

フーベルタが2人の会話に割って入った。

 

「ええ、随行に選んだの」

 

「僥倖だ、あの2人がチェラビンスクにくれば503も安泰だ」

 

「おいおい、フーベルタは強欲だな。私がハルトマンをもらうから、そっちはバルクホルンを持っていけ」

 

「生まれて初めてグンドュラのことが好きになった」

 

「私、どうして機関銃を持ってこなかったのかしら」

 

まさかボニン少佐まで敵に回るとは思わずそんなことを口走った。

 

「さて、2人を説得するには…」

 

「貴女達、ここから一生出さないわよ」

 

「私が動けなくても部下がいる。クルピンスキーはハルトマンにたくさんの遊びを教えた女だ、誘えば靡く」

 

「バルクホルンはうちだぞ」

 

「2人とも軍法会議なんて生温いわ。私が一生カールスラントの土を踏めないようにしてやるわ!」

 

実力を持ってバルクホルン達の引き抜きを阻止したミーナ中佐がその事に気がついたのは501基地に帰還してこの会議の報告書をまとめていた時のことだった。

話している時は頭に血が上っていて気がつかなかったがエイラの引き抜きの当事者はブリタニアとスオムス、そしてカールスラントの三国だ。しかしこれに何故かオラーシャも加わってグンドュラを叱責している。本来であれば特に関係のないはずのオラーシャまでそこに加わるのは明らかにおかしい。そう考えるとカールスラントの大使からも叱責があったのも妙な話だ。本来ならばマンシュタイン元帥からの叱責だけでいいはずなのに大使からも叱責されると言うのもエイラが駐在武官である事を考慮したとしても過剰なのではないかと言う疑問が湧いてきた。それにあの時確かグンドュラがエイラには各国の思惑が絡んでいるとか言っていたような…と考えていると、まるで図ったかのようにグンドュラから電話がかかってきた。

 

「こんばんわグンドュラ。貴女から電話なんて珍しいわね」

 

普段はミーナからの苦情の電話が多く仮にグンドュラから電話があっても確実にミーナからの苦情の話が出てくるためグンドュラから電話する事はかなり珍しかった。

 

『次の作戦用に送ってくれた物資の礼をしておこうと思ってな』

 

「気にしなくていいわよ。本当はそっちに人員を派遣したいのだけど流石にそれは上が許してくれなかったからせめてもの気持ちよ」

 

『先の話だがストライカーユニットの新型が配備されるらしい。確かBf109のK型と言ったかな、それのテスト要請が来ていたんだがそっちに譲ろうと思う』

 

「本気?グンドュラが譲ってくれるなんて明日は槍が降るのかしら」

 

カールスラント、いや世界一強欲なウィッチであるグンドュラがただで譲るなどあり得ないと思い思わずそんな言葉が溢れた。

 

『物資を送ってくれてせめてもの礼だ。受け取ってくれ』

 

「ありがたく受け取ることにするわ」

 

少し不気味に思いながらも受け取らない理由もなくありがたく受け取ることにした。

 

『そうしてくれ。こちらもプレゼントを受け取ったからな』

 

グンドュラが不穏な言葉を発した。

 

「…え?」

 

『扶桑に坂本の愛弟子がいるだろう』

 

「美緒の?いるでしょうね」

 

『下原と言うんだが坂本が欧州に呼び寄せようとしていたようだが書類が不思議な動きをしてな、502の所属になった。礼を言っておいてくれ』

 

「私から美緒に説明しろって言うの!?なんて言えばいいのよ!」

 

『持つべきものは良き友人だな。今度酒でも送る』

 

「貴女なんか友達じゃないわよ!第一貴女今回で最後とか言ってたじゃないの!待って、切らないで!待ちなさい!」

 

そう言っている間に電話は切られツーツーと言う音が流れた。

 

「二度とグンドュラの言うことなんか信じないわ!」

 

グンドュラに対する怒りでさっき湧いた疑問が消え去りこの疑問が再び湧くまでまた暫くの時間を要するのだった。




うーん、いよいよ後書きに書くネタが無くなってきました。
正確に言うとあるんですけど先の展開に関わってくるから書けないことが多いんですよね。
今回はバルカン半島について。ダキア、モエシア、オストマルクが陥落した時点でバルカン半年自体が陥落したのかなって初めは思っていたんですけどよくよく考えるとギリシャに山脈があるからそこで上手いこと止めれればバルカン半島の陥落は防げるんだなって気付いたんですけどその場合今度はイスタンブールがどうなってるのか気になるんですよねあそこが落ちれば実質黒海がネウロイの手に渡ったようなものだと思うんですけどもし人類側ならここを通ってセバストポリに対する補給があったと思うので多分落ちてるんだろうなと思っています。陸よりも海の方が圧倒的に多くの物資を送れますからね。
ブリタニアがシーレーン防衛のためにウィッチを派遣しているのではないかと言う話を書いたと思うんですけどぶっちゃけギリシャ保持するくらいなら渡してしまって浮いた戦力がをよそに回した方がいいんじゃって思いました。
あ、それともうすぐブリタニア編が終わります。なんとか投稿開始から一年以内で原作に突入できそうです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。