ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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来週から誤字の訂正とちょっとした手直しをしていく予定です。


正義

1944年2月

やっとのことで要望が通りネウロイのコアの兵器利用、その視察のためにエイラはロンドン郊外の空港から車でマロニー大将の元に向かっていた。

特にやる事もなく暇な移動中はいつも通りお気に入りのリベリオンのゴシップ誌を読んでいた。今日の記事はミーナ中佐と坂本少佐の熱愛報道で記事には執務室で二人がキスしている(ように見える)写真が載っていた。我ながらよく撮れていると思いながらさらに記事を読み進めていく。

ろくに舗装されていない道をガタガタと揺られながら記事を読んでいると突然車が止まった。

 

「どうしたんだ」

 

後部座席から運転をしているスオムス軍の軍曹に声をかけた。

 

「すみません、子どもが座り込んでいて進めないんです」

 

そう言われて座席の間から前を見ると確かに男の子が1人座り込んでいた。

 

「退くように言ってきます。少し待っていてください」

 

そう言って運転席を降りると子供に近づいて行った。それを見届ける事なく再びゴシップ誌に目を落とした。

子どもに道から退くように注意する声を聞きながらゴシップ誌を読み進めていると突如エイラの耳に乾いた銃声が届き顔を上げた。

 

「軍曹!大丈夫か!?」

 

視線の先には血を流して倒れている軍曹と拳銃を持って立っている子どもの姿があった。

容体の確認と子どもの身柄を確保する為に車外に出ようとした次の瞬間シューという音がしたと思うと下から突き上げるような衝撃と爆発音がエイラを襲った。

 

「な、何が起きたんだ」

 

咄嗟ではあったが魔法力を発現したことにより最小限のダメージに収めることができたが横転した車に右足が挟まれて身動きが取れない状態になっていた。

 

「まだ生きている奴がいるぞ!」

 

音を聞きつけたのか誰かが近づいてきた。

 

「おーい助けてくれ。足が挟まって動けないんだ」

 

助けを求めるために声を上げるがちょうど車が間に挟まっていたためよく見えず上体を起こして声の主を見た。

そこにいたのは十人ほどの男女でその手にはリベリオン製の自動小銃を持っていて服装は明らかに軍隊のものではない。そしてそのうちの一人が持っていた撃ち終わったカールスラント製のパンツァーファウストはエイラをこんな目に合わしたのが彼らであることを如実に物語っていた。

 

「ユーティライネンがまだ生きているぞ!」

 

一人の男がそう叫ぶと彼らは銃を構え突如発砲した。エイラはシールドを張ることによりその銃撃をやり過ごすそうとするがシールドが苦手なエイラはそのタイミングがやや遅れ左肩に一発の銃弾を浴びることになり再びエイラは地に伏せた。

 

「シールドは一方向にしか出せないはずだ。回りこめ!」

 

そんな声と共に敵が二手に分かれて回り込む気配がした。

このままじゃ殺される。その一心でホルスターから拳銃を引き抜くと上体を起こし反撃を開始した。

やや先行している右側の敵に狙いをつけて引き金を引いた。

 

「うぎゃっ!」

 

当たった男が悲鳴をあげて倒れる。

 

「銃を持っているぞ!」

 

「どういう事だ!持っていないと言う話のはずだろ!」

 

「知るか!こっちは十人いるんだ、数で押せば勝てるぞ!」

 

そんな事を話している間にもエイラは銃撃を続けさらに敵の人数を減らしていく。

 

「くそっ!何をしている早くしろ!」

 

エイラが使用するラハティL-35の装弾数は八発。薬室にも一発入るが安全のために普段は入れていない。予備のマガジン一つを合わせた十六発が現在エイラの携行している弾丸の数になる。

 

「死ね!人類の敵!」

 

八発撃ち切ったリロードの一瞬の隙をついて側面に回り込んだ敵が叫びながら発砲した。

 

「わたしが人類の敵ってどう言うことだよ!」

 

シールドを張りながら叫んだ。

しかしそれに対しては銃弾の雨で返答を交わしまともな答えは望めそうにない。そうとわかれば即座に反撃に移り二回引き金を引く。これで残りは二人、残弾は六発。その後立て続けに迫る敵二人を撃退しとりあえずの危機は去った。数人、呻き声をあげている者もいるが皆重症でエイラを害するほど元気な者はいないように見えた。

 

「軍曹、無事なら声を上げてくれ!」

 

エイラ一人ではとてもでは無いが車を退かせそうもなく必然的に助けを呼ぶこともできない。そのため怪我の具合によっては軍曹に助けを呼んでもらう必要があり声をかけた。

 

「お父さん…?」

 

返ってきたのは軍曹の声ではなく子供の声だった。

軍曹を撃った子供がその手に拳銃を持ちながらエイラのことを人類の敵といった男にふらふらと近づいていった。

 

エイラは内心かなり動揺していた。人を撃った事が初めてだったからではない、子供の姿がネウロイにより親を奪われる子供と重なったからだ。もちろんこの場合親がエイラを殺そうとしたという点でネウロイとは大きく異なる。本来自分が守るべき存在のはずの子供から親を奪ったと言う行為がネウロイと重なりエイラは動揺した。

お父さん、お父さんと倒れた男に話し続ける姿を動けないエイラはただ見ていることしかできたなかった。

永遠に続くかのように思えたその時間もそう長くは続かなかった。男の子がふらりと立ち上がったと思うとエイラの方にゆっくりと近づいて来た。その顔はネウロイとの戦争が始まって来て以来最もよくみて来た表情をしていた。親兄弟や友人をネウロイに殺された人々がネウロイに対して見せる表情、憎くて憎くて堪らないと言う顔がエイラへと向けられていた。

 

「ま…」

 

待て、と言おうとした口をエイラは閉ざした。ネウロイに親を殺された子が復讐のためにネウロイを倒す、それと同じ事で自分を殺す事は正当なことなのでは無いかと思ってしまったからだ。しかし今ここで自分が死ぬことによる人類への喪失を考えると簡単に死ぬわけにもいかない、そう考えて手を前に出しシールドを張ろうとするがどうしてもそれが本当に正しいのか分からずシールドを張る決心がつかない。

結論を出せずにいるエイラにゆっくりと狙いを定めた男の子が引き金を引こうとした時、再びシューと言うパンツァーファウストの音がしたと思うと車が爆発した。

燃料に引火したのかさっきよりも大きな爆発が起こりエイラは車から数メートル吹き飛ばされた。その際に頭を打ち意識が朦朧としていて動く事ができなかった。

 

この後のことはあまり覚えていない。複数人が走る足音がしたと思うと話し声が聞こえ始めた。

 

「実行犯は全員殺せ!一切の証拠を残すな!」

 

男が命令する声が聞こえたと思うと銃を撃つ音が聞こえ生き残っていた者たちが悲鳴を上げるのが聞こえた。

 

「クソっ!この下手くそ!車に当てたから物が燃えて無くなったじゃ無いか」

 

別の男が悪態をついた。

 

「ユーティライネンは生きているか?」

 

女が問いかける声が聞こえると誰かがエイラの腕を取り脈を計った。

 

「大丈夫だ、生きてる」

 

「よし、そっちはオーダー通りだな」

 

初めに命令をしていた男の声だ。

 

「しっかし殺しちまった方が後腐れが無くていいのにどうして教授はこいつを殺すなと言ったんだろうな」

 

「おい!余計な事は言うな、聞かれるぞ!」

 

女が注意した。

 

「聞いてる奴なんかいるわけないだろ。もしいたとしてもそいつはこれから死ぬんだからさ」

 

「ユーティライネンがいるだろ」

 

「気絶してるんだから聞こえやしないさ」

 

「おい!そこのガキが生きてるぞ。さっさと殺せ」

 

初めに命令していた男がそう言った直後銃声と子供の小さな悲鳴が聞こたた。

 

「撤収するぞ」

 

命令していた男がそう言って足音が離れていく。

エイラが覚えていたのはここまでだった。




今回はサーニャを連絡官にした理由の一部を書こうかなと思います。
簡単に言えば不思議な点が多いからなんですよね。
まずブリタニアにいる事からしておかしいんですよ。オラーシャがウラル以東に撤退しているなら戦力は絶対に欲しいのにブリタニアに送られているって言う事がまず解せない。送れるとしたら1939年の早い段階ですけど既にオラーシャの近くにネウロイがいるため貴重な戦力を遊兵にすることになるブリタニアに送るかと言われるとあまりなさそう。
仮に軍事関係のイベントでの派遣だとしてもそれならベテランを送るはずなんでサーニャが行く意味もない。
1939年の終わりなんかもってのほかです。普通に考えれば1939年の冬にはスオムスにネウロイが来ているのでその頃はオラーシも相当焦っているはずだからブリタニアに戦力を送る余裕がないはずなんですよ。
これが38年に送られているのなら納得できなくはないですけど今度は一年以上ブリタニアにある意味がわからない。
なにより39年になった頃にはは戦力として使えるだろうし仮に年齢がネックだとしても普通に考えて殆ど戦闘が起きないであろう首都に予備戦力として置かれてもいいはずなんですよね。
その他にもいくつか不思議な事があったから初めはサーニャ主役で書こうとしてたんですけどよくよく考えると原作エイラもなかなかおかしいなと思ってエイラ主役に変えました。例えばサーニャと仲良くなったユニット調達のエピソードがそれですね。
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