スオムス駐在武官、ブリタニア空軍大将とどちらかというと仕事としての側面の強い二人と面会した後も各国の駐在武官や大使と言った政治色の強い相手との面会が続いた。相応に神経をすり減らしていたが唯一良かったこととして相応にいいものをお見舞いにもらえたと言うことだった。もっとも、中には酒やタバコといった未成年に渡すべきではないものも混ざっていたが…。
カーティス医師が面会に関して制限を設けたこともあって政治色の強い鬱屈とした面会が一週間ほど続いたがそのかわりエイラの体調は医師の想像よりも回復していた。それらの面会が終わってやっと501部隊の面会が許可された。
「ヤッホーエイラ!調子はどう?」
「ハルトマン、サーニャ!今までは最悪の気分だったけど二人の顔を見て吹っ飛んだよ!」
軽い調子で入ってきたハルトマンとその後ろから入ってきたサーニャを見てエイラは笑顔を浮かべた。
「お見舞いここに置いとくね」
サーニャが見舞いの品を机の上に置くと怪我の具合を尋ねた。
「これを見ればわかるだろうけど、前みたいに飛ぶのは無理だな」
そう言ってシーツを捲って足を見せた。
それを見たハルトマンは目を見開きサーニャは小さな悲鳴を上げた。
「エ、エイラ大丈夫なの?」
「治癒魔法を使ったから傷は塞がってるし痛みとかはないな」
右足の残った部分を動かして二人にアピールした。
「エイラ…引退するの?」
サーニャが少し寂しそうな顔をしながら尋ねた。
「いやしない。退院したら501に復帰する予定だ」
それを聞いたサーニャは嬉しそうな顔をしたがその反面ハルトマンは難しい表情を浮かべた。
「本気?ネウロイが来るタイミングを正確に予測できる今は夜間哨戒は必要なくなるんだよ。だからエイラもサーニャンも昼間の戦闘に参加することになるけどその足だと戦闘は無理でしょ」
「そんなことないさ。訓練すれば戦闘もできるようになるって言われてる」
「それは嘘でしょ。前にウィッチに関する医学書を読んだときに片足が欠損すると飛ぶことは不可能だって書いてたよ」
「ハルトマン医学書とか読むんだな」
一年以上一緒の部隊にいて初めて知った事実に思わずそうつぶやいた。普段のだらけきったハルトマンの様子からそんな真面目な本を読む姿など想像できなかったが普通のウィッチが知っているはずもないため本当のことなんだろうと思った。
「こう見えても医者の家系だからね。ウィッチを辞めたら医者になるつもりだし」
「へー、ちゃんと将来のこととか考えてるんだな」
「当たり前じゃん。私達はネウロイをから本国を取り返すために戦ってるんじゃなくて平和な生活を取り戻すために戦ってるんだよ。平和になったらウィッチなんかいらなくなるしその時に自分がやりたいことを考えることって当然じゃないかな」
意外と一番将来のことを考えているのはハルトマンなのかもしれないな。ミーナ中佐やバルクホルン、ペリーヌは本国の奪還を目標にしていてその先のことなんか何も考えていないみたいだけどハルトマンはちゃんと先の事を考えて行動している。
「エイラはネウロイを全部倒した後にしたい事とかないの?」
「あるよ。わたしはその目的のためにずっと戦い続けてるんだから」
「なら今ネウロイと戦うことに拘らずに引退して自分の好きな道を進んだらいいんじゃないの。ネウロイと戦うだけが人生じゃないんだからさ」
「別にネウロイと戦うことに拘って前線に居続けようとしてるわけじゃなくてただわたしが自由に飛びたいから前線に居続けたいんだ」
「それって教官とかになってもできるんじゃないの?態々危険な前線でやることかな?」
ハルトマンの正論に反論する事ができずエイラは口を閉ざした。
「だから後は私達に任せて引退して後方でゆっくりしとくといいよ」
なんの反論もないことにエイラが納得したと思ったのかハルトマンが諭すようにそう言った。
「それだけは絶対にできないよ。今更わたしが前線から離れて後方で過ごすなんて許されるわけがないんだ」
「許されない?一体誰が許さないって言うの?」
「それは…」
つい口を滑らして胸の内を吐露してしまい口籠もった。
「エイラが怪我で引退するって言って怒る人なんか501にはいないよ。サーニャンもそう思うよね」
「はい。少し寂しいけどその怪我なら無理せずエイラは引退したほうがいいと思います」
501部隊のみんなは怒らない、そんなことはエイラもよくわかっている。
「今のわたしってさ、色んな人の犠牲を犠牲にして今があるんだよ。
いや犠牲じゃないかわたしが殺したんだ」
「殺した?まさかエイラを襲った犯人のことじゃないよね。あれはエイラが気にやむことじゃないよ」
「そうじゃない。1941年のオラーシャ奪還作戦でわたしが見捨てた人達のことだ」
「見捨てたって…。私にはどんな状況だったかわからないけどそれって上から命令されたからじゃないの?」
「それだったらわたしもそんなに気に病まないよ。それは指示した指揮官の責任であってわたしの責任じゃない」
もしもこれが命令されて行ったことであればどれほどよかっただろうか。当時スタラヤルーサの司令官だったキュヒラー大将はエイラに見捨てるよう要請したがキュヒラー大将に命令権はなくあくまで要請でしかなかった。最終的にスタラヤルーサやデミャンスクの部隊を見捨てる判断をしたのはエイラ自身でありその判断によって戦死したのはおそらく10万人を超えている。
「当時現場にはわたしに命令できる人間がいなかった。わたしは自分の意思で決めたんだ。部下を守るためとはいえ本来なら許されるべきじゃないんだよ、こんなの殺人と変わらないんだから」
「エイラがいたくらいでその結末は変わったの?」
「あまり変わらないだろうな」
エイラのいたスタラヤルーサは当時奪還していた地域の中で最前線への物資集積所となっていた。エイラがいたくらいではその場所からペテルブルクまで撤退するのは無理だった。
「わたしは部隊指揮とかした事ないしエイラみたいな決断をしたこともないよ。けどそれって仕方がない事なんじゃないの?」
「仕方のないことさ。けどなハルトマン、仕方ないで死んだ人間がその遺族が許してくれると思うか?
「それは…!
「許すわけがないだろ。
少なくとも死んでいったカールスラント軍人とオラーシャ軍人とその遺族のためにこの二つの国土の奪還、これは最低でも成し遂げたい。その時わたしが後方で指揮しているのならまだいい、けど後方でぬくぬくと過ごしていることだけは許されないんだ」
「けど死ぬよその足じゃ」
「カールスラントが特殊な義足を作ってくれることになってる。それがあれば右足がない分ユニットに送らない魔法力を補ってくれるから多分死ぬことはない。未来予知の魔法もあるしな」
エイラとてこの足じゃまともに戦闘はできないだろうと言うことは分かっている。しかしカーティス医師の協力で前ほどは無理でもストライカーユニットで飛ぶことができる目処が立っていたことがエイラが頑なに復帰しようとしていた理由の一つだった。エイラとてみすみす死にに行くつもりはない。まだまだやるべき事がたくさんあるのだから。
「そこまで言うんだったらもう私は何も言わないよ」
「ハルトマンさん本気ですか?」
まさかハルトマンが了承すると思っていなかったサーニャが驚いたように声を上げた。
「だって説得できそうにないもん。サーニャンはできるの?」
ハルトマンにそう言われて意を決してエイラに言った。
「ねぇエイラ、わたしはエイラに死んでほしくない。エイラの分も頑張るから大人しく引退して休んでいて」
「ごめんなサーニャ、そのお願いだけは聞いてあげられないんだ」
普段サーニャに甘いエイラもこのお願いだけはきくわけにはいかなかった。
「どうしてもダメなの?」
「ごめんな」
死なせた人達のためにもエイラは飛び続けなければならない。そのためにはサーニャのお願いを聞いてあげるわけにはいかなかった。
ルミナスウィッチーズのアイラ少尉をどうにかして出したいと思う今日この頃。タイミングとかは決めてるんでルミナスウィッチーズがそれまでに放送されて諸々のエピソードがわかれば出そうかなと思っています。
ふと思ったんですがアニメ三期で出た氷山ネウロイってどこからきたんでしょうか。ネウロイの行動範囲的にオラーシャの巣っぽいですけど単純に北極とかに巣がある可能性も否定しきれないですし結構謎の存在ですよね。誰か面白そうな考察とか有れば教えてください。気になって夜しか眠れません。