それにノヴゴロド付近の巣をブレイブかサイレントが破壊したかも?
12月下旬になりサトゥルヌス祭が近づき、24戦隊第二中隊が駐屯するスール=メリヨキ基地でもその準備が始まろうとしていた。
「今年もサトゥルヌス祭の季節がやってきた。例年であれば盛大に祝うが今年はネウロイが侵攻してきているからそうもいかない。そこで今年は規模を大幅に縮小して行うことにした。」
朝食の席でルーッカネンがそう通達すると隊員達からブーイングが飛び出したがそれを鎮めてさらに続けた。
「ネウロイの急な出現に対応するためサトゥルヌス祭では一個小隊は飲酒禁止だ。これは後でジャンケンかくじ引きで決める。それと、今日は急遽マンネルヘイム元帥がここの視察にいらっしゃることになった。そこでイッルに元帥の案内係をしてもらう」
「わたしじゃ階級が低すぎるから元帥の案内係には相応しくないと思います!最低でもニーナとか士官がするべきです!」
ネウロイの襲撃がいつきてもおかしくない最前線のこの基地で最高司令官の案内役などという大役は、もし仮にネウロイが襲撃してきた際はエイラに守る義務が発生するし仮に戦死するなどということがあればその責任はエイラに問われることとなる。そんな役目を引き受けたいと思うわけがなくエイラはその役目を回避しようと反論した
「元帥がイッルに案内を頼みたいと依頼しているからな。断る理由もないしイッルが案内をしてくれ」
元帥がエイラを指名しているとあっては流石に逃げる事はできない。渋々ながらもそれを受け入れたエイラは元帥の視察がネウロイの襲撃で中止になることを祈った。とはいえそう都合よくネウロイが来るわけもなく、マンネルヘイム元帥が到着し基地の視察が始まった
「ようこそお越しくださりました。私は第24戦隊第二中隊隊長のルーッカネン中尉です。こちらは本日の案内を務めますユーティライネン軍曹です。」
「スオムス軍最高司令官クラウス・マンネルヘイムだ。今日は急な要請にも関わらず応じてくれ感謝する。では早速案内をたのめるかね」
こうしてエイラの案内によりマンネルヘイム元帥の前線視察が始まった。
視察自体は滞りなく進んだがエイラを一番困らせたのは元帥だった
「ユーティライネン軍曹君は普段友人達から何と呼ばれているのかね?」
そういきなりマンネルヘイム元帥が訪ねてきた。
「友達からはイッルって呼ばれています」
「そうか。なら私も君のことはイッルと呼ぶから君は私のことをおじいちゃんでも呼んでくれ」
「流石に最高司令官をおじいちゃん呼ばわりするのは無理です」
「私は別に構わんよ。孫くらいの年齢の娘に元帥と呼ばれるよりおじいちゃんと呼ばれる方が私は嬉しいがね」
結局これは他に人がいなければという条件でエイラが妥協することで落ち着いた。それ以外に特に問題はなく少し早く視察は終わった
「ご苦労だったイッル。まだ次の予定まで時間があるから少し話をしないかね?」
「話ですか?今日の視察で十分すぎるほどしたと思います」
「いやいや、さっきまでの世間話と違い少し真面目な話だ」
そう言ったマンネルヘイム元帥の顔ははさっきまでと違い真剣なものになっていた。
「実は今回の視察の一番の目的は君に会うことだったんだ」
「わたしにですか?」
「そうだ。イッルは知らないだろうが実は君が士官学校時代、軍高官の中でとても優秀なウィッチがいると噂になっていてね。一度会ってみたいと思っていたんだ」
「ウィッチの中で優秀だとしてそんなに噂になるものなんですか?確かウィッチの士官教育は通常の士官候補生と比べるとかなり簡単と聞きました。それならウィッチの中で優秀でも士官候補生全体からするとそんなに優秀ではないんじゃないですか?」
「我が国においてはウィッチの士官候補生と通常の士官候補生の教育にほとんど違いはない。一番の違いは合格ラインがウィッチの方がかなり低く設定されているということだ。そんな中君の優秀さというのは全ての士官候補生合わせても上位に入るほどだった。そんなウィッチはそうそういない」
「わたしに会おうとした理由はわかりました。けどどうして今だったんですか?」
「今回のネウロイの侵攻を我が国はギリギリ食い止めることができた。しかしいつまでもこのままという訳にはいかない。必ず反抗作戦が行われる。なのに対ネウロイ戦のスペシャリストたるウィッチはどの国においても軍首脳部にはいない。これでは有効な反撃ができるはずもない。だから君に軍大学で参謀教育を受けてもらい私の幕僚として反抗作戦立案に加わってもらいたい」
「わ、わたしが軍大学にですか!?」
「そうだ。ぜひ入学してもらいたい」
「わたしを高く買ってくださってるのはありがたいですが辞退させていただきたく思います」
「なぜだね」
軍大学で参謀教育を受けるというのはスオムス軍のエリート街道を突き進むということでありスオムスのウィッチでその道に進んだものは今までいなかった。そんな名誉をまさか断られるとは思わずマンネルヘイム元帥は心底驚いたという顔をしていった。
「わたしは空が飛びたくてウィッチになりました。それはネウロイが侵攻してきた今でも変わりません。むしろ今はそのネウロイを倒すために空を飛びたいと思っています。だから空を飛べなくなるその提案は辞退させていただきます」
「そうか、君の考えはよくわかった。だが気が変わったらいつでも言ってくれ。すぐに席を用意する」
「わかりました。そんなことは起こらないと思いますけど」
「そうでもないと思うがね。力を持つものは自然とそれにふさわしい地位へと誘われるものだ」
こうしてマンネルヘイム元帥の視察が終わりエイラはニーナ達のもとにサトゥルヌス祭の準備を手伝いにいきその日は終わり迎えた。
サトゥルヌス祭当日の午後になると料理の得意な隊員達が今夜のサトゥルヌス祭に向けて料理を作り始めた。
「アンネリが料理得意なんて知らなかったんだな」
「そうかイッルは今年配属されたばかりだからこのことを知らなかったね。アンネリの作る料理は美味しいんだけど本人があまり作りたがらないからこういう機会じゃないと作ってくれないんだ」
「ボクも去年のサトゥルヌス祭で食べてから何回もお願いしてるのに作ってくれないんだよね」
そこまでアンネリの料理が褒められるのを聞いているとエイラも晩ご飯への期待が膨らんできたがある疑問が湧いてきた。
「けど最近は補給も滞りがちだったけどそんなに豪華な料理って作れるのかな」
「それならこの間マンネルヘイム元帥がサトゥルヌス祭用に食料を手配してくれていて今日は結構豪華な料理になるみたいだよ」
「へー、そうなんだ。イッルは元帥の案内係してたのに聞いてなかったの?」
「聞いてない。言ってくれたらよかったのに」
三人が喋っているうちに料理も出来上がり、楽しいサトゥルヌス祭の時間がやってきた
机にはスオムスの伝統料理であるカレリアパイやシナモンロールも酒やジュースが並んでいる
「うわー凄い。ねえアンネリが作ったのはどれなんだ?」
「そこにあるカレリアパイはあたしが作ったやつだ」
アンネリが指差したカレリアパイを食べると
「美味しい!アンネリすごく美味しいよ!」
「そうかそれは良かった。そっちのニシンの酢漬けもあたしが作ったやつだ」
「わーい食べる食べる!」
「あたしが作ったやつ以外もうまいから食べるんだぞ」
一通り料理を食べ終わったエイラがデザートにシナモンロールやサルミアッキを食べているとニーナが外に出ていくのが見えた。気になったエイラもニーナを追って外に出ていった。
外に出るとベンチに座って夜空を見上げているニーナを見つけた。
「ニーナ何してんだ?」
ニーナの隣に腰掛けながらそうたずねた。
「イッルか。ちょっと夜風に当たりたくなってね」
そういうニーナの顔は少し赤くなっていた
「もしかしてお酒飲んだのか?」
「アンネリに勧められて少しだけ飲んだよ」
「あんまり強くないって前言ってなかったか?」
「そうだったっけ?それよりイッル星が綺麗だよ。地上はネウロイに破壊されたけど夜空はネウロイが来ても変わらないねぇ」
「何当たり前のこと言ってんだ。やっぱり結構酔ってるんじゃないか?」
「ふふ、そんなことないよ。それにしても星は綺麗だなぁ」
酔っ払ってるニーナは人の話を聞かなくなるんだとエイラが思っていると
「お、いたいた。二人とも何してるのー?」
そう言いながらミッコとアンネリが近づいてきた
「ニーナが酔っ払ってめんどくさくなってる」
「イッル、私は酔ってなんかいないよ」
「酔っ払いはみんなそういうんだよ」
「あれ?ニーナってお酒かなり弱くなかったっけ」
「そうだな。ヴィーナをコップ一杯も飲めないくらいには弱いな。今回はヴィーナを三杯くらい飲ませたからかなり酔ってるんじゃないか」
アンネリはそう言いながら持ってきていたグラスに水を注ぐとニーナに渡した
「流石に飲ませすぎたからな。水飲んで休め」
「そもそもアンネリがニーナに飲ませなかったら良かったんじゃないのか?」
「祭りの時ぐらい酒を飲んで楽しまないと損だろ」
「そうそう。楽しまないと!イッルも飲む?」
「こらミッコ!イッルはまだ十歳だから酒は早い。今飲ませたらミッコみたいな胸になるだろ!」
「お酒と胸は関係ないじゃんか!」
「そうだね、アンネリの言うとおりいくら貧乳仲間を増やしたいからってイッルに飲ませるのはダメだよ」
「ニーナまで酷い!ボクだってまだまだ成長するんだよ!」
「イッルはポカポカして暖かいなぁ」
ニーナはエイラを抱きしめながらそう言った
「ニーナ話聞いてる!?」
「あれ?ミッコちょっと静かに。」
アンネリが何かに気付いた。
「なんで?」
「イッルが寝てる」
そう言われてニーナに抱きしめられているエイラを見ると確かに眠っていた。
「はしゃぎすぎて疲れたんだろうね。ニーナにあんなに強く抱きしめられてるのに起きないなんて」
「あったかいな〜」
「ニーナも酔っ払ってるし二人とも部屋に運んだ方がいいかな?」
「そうだな。ここにいても風邪を引くだけだしな」
こうしてエイラにとって24戦隊第二中隊で迎える初めてのサトゥルヌス祭は寝落ちという形で幕を閉じた。
今回の後書きはブリタニアの戦力について軽く考察を載せます
ブリタニアは自国出身ウィッチを実は501と504にしか送っていない。おそらく列強に挙げられると考えられるブリタニアにしては少ないと思う。けどこの二つの配置場所が重要になる。島国であるブリタニアは海上を飛べるウィッチが他国と比べて多いと考えられる。海上と陸上では航法が違うため陸軍国であるカールスラント、オラーシャ、ガリアなどは海上にネウロイは殆どこないうえ海上を飛ぶこと自体が稀なためかなり少ないと考えられる。そのことからブリタニアは自国防衛の他に地中海のシーレーン防衛が主任務として連合軍から当てられると考えられる。そうなるとローマーニャの504にブリタニア出身のウィッチが配置され、502や503にはブリタニアのウィッチがいない説明がつく。なお、506にブリタニア空軍のウィッチは存在するがどちらも元々ガリアとベルギカという他国出身であることからこの二人は例外とします。
結論としてブリタニア自体の航空ウィッチはものすごく少ないわけではないと思うが、それはおそらく1941年あたりまでで1945年にはかなり戦力を減らしていると考えられる。理由は列車砲の輸送の際の護衛の数、地中海の島の失陥などから十分な戦力がシーレーン防衛に当てられていないと考えられるからだ。他にも詳しい理由や具体的なウィッチの数など書きたいことはあるがそれはまたいつかの後書きでか書かせてもらいます。
あ、そうそう。お酒は20歳になってから飲んでくださいね。