あとバルクホルンハルトマンの一撃離脱がすごい綺麗。
「うわわ、落ちるー!!!」
「あら、また落ちたみたいね」
新しい書類を持ってきたミーナ中佐が思わずそうつぶやいた。
「今日だけで何回落ちたんだよ。修理費だってタダじゃないのに」
窓の外から聞こえる悲鳴に思わずエイラがボヤいた。
501部隊は世界中からエースを集めただけあって通常の部隊と比べるとユニットの損耗が少ない。そのためはじめはかなり多かった予算も日を重ねるごとに減らされていき、現在では通常の部隊の80%程度の予算でやりくりしていた。ここに宮藤が加わったことによりやや予算が圧迫され始めていた。宮藤とリーネのために新しく予算をブリタニアから引き出してはいたが、それはあくまで訓練完了後の新兵を前提とした額であり、訓練未了の訓練生というべき人物に与える額としては少なかった。そのため訓練では優秀で思いのほか消費していないリーネ用の予算から宮藤に転がしているのが実情だった。
「というか坂本少佐ももう少し訓練内容を軽くするとかしてくれよ」
「そろそろ大規模作戦がありそうな雰囲気があるしあまり悠長なことは言ってられないから無理ね」
「それはわかっているけどこのままいくと予備費に手を出しかねないぞ」
「それは困ったわね。どうにかできないの?」
「難しいな。もともと今月からは夜間哨戒をしない前提で予算編成していたのにこの前のネウロイの襲来で復活させたからな」
「流石に今の状況で夜間哨戒を無くすわけにもいかないわね」
「だよなぁ。嗜好品を削るのも難しいしどうしようかななぁ」
全く手がないわけではないがそのどれもが出来ればやりたくはない手段ばかりだった。
「大丈夫よ、あなたならきっとどうにかできるわ」
これもお願いねと書類の束を追加するとエイラが文句を言う前にそそくさと逃げるように執務室から出て行った。
翌朝監視所からネウロイが出現したとの報告が入り坂本少佐以下六名が緊急発進した。
今回も予報と大幅にずれてネウロイが襲来したが、前回と違い警戒を厳にしていたため早期に発見することが出来た。しかし
「大変よ。哨戒艇が低空を高速で接近するネウロイを発見したわ」
「ということは最初のネウロイは囮か?」
「そうみたいね。出られるのは私とエイラさんだけかしら。サーニャさんは?」
「夜間哨戒で魔力を使い果たしている。ムリだな」
手でバッテンを作りながら答えた。
「じゃあ二人で行きましょう」
「待ってください!私も行きます!」
宮藤が肩で息をしながら駆け込んできた。
「あなたが実戦に出るのはまだ無理よ」
「足手まといにならないよう精一杯頑張ります!」
「訓練が十分じゃない人を戦場に出すわけにはいかないわ。それにあなたは撃つ事に躊躇いがあるでしょう」
「撃てます!守るためなら!」
「いいんじゃないか出撃さしても」
「正気?」
二人が驚いた表情を見せた。
「仮に突破されたり第三のネウロイが現れた時、基地にいるより空中にいた方が何かと都合がいいだろ?」
「けど彼女はまだ半人前よ。もしもそんな状況になれば最悪死ぬ事になるわよ」
「私も行きます!二人合わせれば一人分くらいにはなります!」
エイラが口を開くよりも先に今度はリーネが部屋に駆け込んできて珍しく大きな声で叫んだ。
「九十秒で支度なさい」
「「はい!」」
※
「敵は三時の方角から基地に向かってくるわ。私とエイラさんが先行するからここでバックアップをお願いね」
「「はい!」」
「じゃあ頼んだわよ」
二人にそう声をかけるとミーナ中佐とエイラは速度を上げてネウロイへと近づいていく。
「攻撃開始!」
ミーナ中佐の合図に合わせて二人はネウロイの斜め上から射撃を開始する。
「早い」
速度が速すぎてエイラが予知する数秒先では弾が到達する頃には既にネウロイはさらに先へと進んでいて当てることが出来なかった。
「今までより圧倒的に早いわ。一撃離脱じゃ無理ね。速度を合わせて」
親指を立てる事で答えると二人は一気に急降下してネウロイの後ろを取り攻撃を開始する。流石に真後ろからの攻撃とあってネウロイに弾が命中し始める。しかしその時突然ネウロイが中程で分離するとさらに速度を上げた。
「加速した」
「速すぎる!まずいわね」
エイラ達のストライカーユニットをはるかに上回る速度で飛び始めたネウロイを止める術はない。そうなると必然的にこの先に待機する宮藤、リーネの二人に基地の運命が託される事になる。
「結果的に二人を上げておいて正解だったな」
「そうね。少しでも敵にダメージを与えて速度を遅くしてくれたらいいのだけど」
リーネらしき機影が必死に銃を撃っているのが見えるがミーナ中佐の願いも虚しくそれらが命中する気配はなくこのままリーネ達の元にネウロイが到達するかに思われた。しかしその時不意に二人の機影が重なり一つとなり一時的に射撃が止んだ。
「何をするつもりかしら」
あと少しでリーネ達の元にネウロイが到達すると言う時、リーネ達が放った弾丸がネウロイに命中しネウロイは粉々になって砕け散った。
「やったのか!?」
「嘘でしょう」
正直なところエイラ達は二人がネウロイを撃墜できるとは思っていなかった。仮にこれが既知のネウロイであればできる可能性はあったが今回現れたのは今まで見たことのない新型のネウロイだった。新型ネウロイは熟練のウィッチでも撃墜するのが難しい。何故なら魔眼持ちでもいない限りコアの位置の特定が困難だからだ。原則としてネウロイはコアを破壊しなければ倒すことが出来ず新型ネウロイの討伐はまずその位置の特定から始まる。そのため倒すには基本ある程度の時間をかける必要があり今回のようにあっさりと倒す事ができる方が稀なケースと言えた。
「あっ」
「あらあら」
リーネ達が喜んで抱き合う姿を眺めていた二人だったがバランスを崩した二人が海に落下したのを見て声を上げた。
「嘘だろ。せっかく無傷で終わったのにあれじゃあ二機ともオーバーホール必至じゃないか」
せっかく組んだ予算をまた組み直さないとならない事実に絶望すら覚えた。
「初撃墜なんだから浮かれるのも仕方がないわよ。多めに見ましょう」
「それは中佐が予算を組む側じゃないから言えるんだよ。わたしの代わりに予算を組んでくれよ!」
ミーナ中佐のマイペースな物言いに思わずエイラは声を荒げた。
「そうしたいのは山々だけど今回のことについて上と協議しないと行けないと思うから無理そうね」
「そんなのすぐ終わるだろ。戦果さえ上げれば上はいつも前線のことは前線に任せるとか言うだけなんだから」
これが他の人間なら通用しただろうがエイラとて上とやり取りすることのある立場だ、その言い訳は通用しなかった。
「ほ、ほら今回も予測が外れたからそれの文句も言わないといけないから」
「それは確かにそうだな。けどそれだけならどうせはぐらかされて終わるんだから予算編成くらい自分で」
「あっ!二人が浮かんでるわね、早く助けるわよ!」
これ以上この話を続けたくなかったのか無理矢理話を終わらすと二人の救助に向かった。
なお、まだストライカーユニットを履いたまま遊泳する訓練を受けていなかった二人は海に浮かぶ際ストライカーユニットを脱いでいたこと、脱いだストライカーユニットは海の底に沈み回収不可能だったことをここに追記しておく。
501部隊ってどれくらいの数のユニットを保有しているんですかね。手に入りにくいサーニャのユニットは結構な数確保してるっぽいですけどブリタニア人のリーネとか比較的多くの部隊がブリタニアに展開しているカールスラントはどうなんですかね。各員一機づつとか?あるいは機種で各歩数を決めているとか?