ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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予想以上にこの話に時間がかかりましたけどこの話で最後です。
そのうちここの五話は編集し直して三、四話くらいに纏めます。…多分



いっしょだよ5

夕食の時間が近づき三人は目を覚ました。昼間の暑さはだいぶおさまっていたが寝ている間に描いた汗を吸った肌着がじっとりと肌に吸い付いて気持ち悪かった。

 

「汗で体がベタベタだよ」

 

「じゃあ汗かきついでにサウナに行こう」

 

宮藤のぼやきにエイラが答えた。

 

「サウナ?」

 

「ほう、宮藤はサウナ知らないのか」

 

ニヤリ、とエイラが笑った。

そのままエイラに言われるがままにサウナに連れて行かれた宮藤はその洗礼を受けることとなった。

 

「うう、これじゃさっきと変わんないよ」

 

「スオムスじゃ風呂よりサウナなんだぞ」

 

「サーニャちゃんって肌白いよね」

 

エイラの説明を無視して宮藤が呟いた。

 

「どこ見てんだお前」

 

そう言ってエイラが宮藤の前に顔を寄せた。

 

「いつも黒い服着てるから余計目立つよね」

 

それすらも無視して顔を動かしてサーニャを見ながら言った。

 

「〜!!!サーニャをそんな目で見んな〜!!!!」

 

エイラが髪を逆立てて叫んだ。

それから暫くサウナで体を温めると今度は宮藤を連れてサウナの横にある小さな川へと向かった。

 

「こっちこっち」

 

「ほ、ほんとに大丈夫なんですか?」

 

「サウナの後は水浴びに限るんだ」

 

「確かに冷たくて気持ちいいですけど…」

 

恥ずかしそうに頬を赤らめた。

 

「恥ずかしがるなよ!女同士だろ」

 

その時、どこからともなくサーニャの歌声が聞こえてきた。

その声につられて二人は川の下流へと進んでいくと水に濡れたサーニャが大きな岩の上に座って歌を歌っていた。

思わずその光景に二人で見入っていた。

 

「何故だろう。なんかこう、ドキドキしてこないか宮藤」

 

「う、うん」

 

するとその視線に気づいたサーニャが歌うのをやめ立ち上がった。

 

「あ、ご、ごめん」

 

「なんで謝るの?」

 

「いや、邪魔しちゃったから。あの、素敵だね。その歌」

 

「これは、お父様がわたしのために作ってくれた曲なの」

 

そういうサーニャの声音はどこか嬉しそうだった。

 

「お父さんが…」

 

「小さい頃、いつまでも雨の日が続いてて、わたしが退屈して雨粒の音を数えていたらそれをお父様が曲にしてくれたの」

 

「サーニャはネウロイが来る前はウィーンで音楽の勉強をしていだんだ」

 

「素敵なお父さんだね」

 

「宮藤さんのお父様だって素敵よ」

 

「え?なんで?」

 

キョトンとした顔で尋ねた。

 

「お前のストライカーは宮藤博士がお前のために作ってくれたんだろ。それだって羨ましい事だよ」

 

「へへへ、だけどせっかくならもっと可愛い贈り物の方が良かったかも」

 

「贅沢なやつだな。あれいくらすると思ってんだよ」

 

ストライカーユニットの値段をよく知っているエイラは心底呆れたというふうな口調で言った。

 

「あはは…」

 

今日もまた、エイラとサーニャに手を引かれ雲の上に出た宮藤は昨日と同様はしゃぎ回っていた。

 

「ねえ聞いて!今日はね、私の誕生日なの!」

 

唐突に宮藤が言った。

 

「え?」

 

「なんで今まで黙ってたんだよ!」

 

少し怒ったような口調でエイラが言った。

 

「私の誕生日はお父さんの命日でもあるの。なんだかややこしくて、みんなに言いそびれちゃった」

 

宮藤にとっては父の死は既に受け入れたことだったが今更同情されるのも照れ臭く言い出せずにいたのだった。

 

「バカだなぁ。こういう時は楽しいことを優先したっていいんだぞ」

 

「えーそういうものかな」

 

「宮藤のお父さんだってお前の誕生日が自分の命日だって理由で祝われないよりは祝われた方がきっと嬉しいはずだろ」

 

そんな二人の会話に何かを思い切った様子のサーニャが宮藤に向けていった。

 

「宮藤さん、耳を澄まして」

 

「え?」

 

するとサーニャの魔導針の輝きが変化してエイラと宮藤のインカムに聞きなれない音が流れてきた。

 

「あれ?何か聞こえてきたよ」

 

「ラジオの音だ」

 

「夜になると空が静まるからずっと遠くの山や地平線の向こうからの電波も聞こえるようになるの」

 

「へー、すごいすごい!こんなことできるなんて!」

 

「夜飛ぶ時はいつも聞いているの」

 

宮藤がはしゃぎ回るのをよそにエイラがサーニャに近づくと囁いた。

 

「教えてよかったのか」

 

「うん。今日だけは特別」

 

「サーニャがいいならいいけど…」

 

さらにエイラが何かを言おうとした時、突然ラジオの音が乱れついでサーニャの魔導針の色が慌ただしく変化しサーニャの顔が青ざめた。

 

「なんだこの音?」

 

「これ、歌だよ…」

 

「どうして…」

 

その歌は紛れもなくサーニャ自身が夕方にも歌っていたものだった。

 

「敵か、サーニャ?」

 

エイラに声をかけられ我に返るとサーニャは口を開いた。

 

「二人とも避難して。敵が狙っているのは…」

 

その時、魔導針を通して見ていたネウロイと目が合ったような感覚と同時にネウロイから狙われている時独特の感覚を感じサーニャは二人を置いて急上昇した。

それにエイラも続こうとするが宮藤が反応できていないことに気づき立ち止まった。その間にサーニャはさらに距離を取りエイラのストライカーユニットでは追いつけなくなった。

エイラがサーニャに戻るよう命令しようとした時、遥か遠くの雲の中からビームが放たれサーニャの左足のストライカーユニットを破壊した。

 

「サーニャ!」

 

落ちてくるサーニャを受け止めるとエイラが怒鳴った。

 

「バカ!一人でどうする気だよ!」

 

「敵の狙いはわたし…。間違い無いわ。わたしから離れて。一緒にいたら…」

 

そう言っている間にも第二波のビームが来るがそれはエイラの未来予知で未来位置からさりげなく遠ざける事で避けた。

 

「バカ!何言ってんだ!」

 

「できるわけないよ!」

 

「だって…」

 

どこか怯えた様子のサーニャを見てエイラは宮藤にサーニャを預けるとフリーガーハマーを持ち二人に背を向けた。

 

「何する気なのエイラ?」

 

宮藤の肩越しにサーニャが尋ねた。

 

「決まってるだろあのネウロイを倒すんだ。サーニャは場所を指示してくれ。大丈夫、前ほどの力を出せないとしてもたかが一機のネウロイくらいにやられたりしないよ」

 

どうするべきか迷っている様子のサーニャの様子を見てエイラはさらに続けた。

 

「あいつはサーニャじゃ無い。あいつはひとりぼっちだけどサーニャは一人じゃ無いだろ。わたしたちは負けないよ」

 

エイラの励ましにコクリと頷くと口を開いた。

 

「ネウロイはベガとアルタイルを結ぶ線の上をまっすぐこっちに向かってる。距離、約3200」

 

「こうか?」

 

「加速してる。もっと手前を狙って」

 

サーニャの指示に合わせて角度を変える。

 

「そう、あと三秒」

 

「当たれよ!」

 

三つ数えてフリーガーハマーを三発少しづつ狙いをずらして発射する。

着弾とほぼ同時にお返しと言わんばかりネウロイからビームが飛んでくる。しかしそれはフリーガーハマーのダメージがあったのか不正確だった。三人の足元をネウロイが通過し雲が波打つ。

 

「外した?」

 

「いいえ、速度が落ちたわ。ダメージは与えてる…戻ってくるわ!」

 

「戻ってくんな!」

 

今度の攻撃は左右に避けることでかわされた。

 

「避けた!?」

 

宮藤が驚いて叫んだ。

 

「くそ、いい加減出てこい!」

 

再び三発発射すると最後の一発が命中した。

 

「「出た!」」

 

エイラと宮藤が同時に声を上げた。

 

そのまま真っ直ぐにネウロイは三人の元に向かってくる。

フリーガーハマーからMG42に持ち替えたエイラは向かってくるネウロイにその銃口を向けた。

 

「エイラ、ダメ、逃げて!」

 

「そんなヒマあるか!」

 

実際問題、エイラ一人、あるいはサーニャのストライカーユニットが壊れていなければ避けることができただろう。しかし今は宮藤がサーニャをおぶっていて機動力が落ちていることからエイラはその選択を取る事ができなかった。

ネウロイがビームを放つよりやや早く、宮藤がエイラの前に大きなシールドを展開した。

 

「気がきくな宮藤」

 

「大丈夫、サーニャちゃん。私達きっと勝てるよ」

 

「それがチームだ!」

 

二人の励ましを聞き、サーニャは宮藤が肩からかけていた機関銃を手に取るとその銃口をネウロイに向け引き金を引いた。

二人からの機銃掃射を受けてもなお突き進んでくるネウロイも二人の弾が切れる寸前にコアが露出し砕け散った。

その運動エネルギーから崩壊するネウロイの破片が奔流となって三人に襲いかかるが宮藤の強力なシールドはそれを一切通さなかった。

やがてその奔流も止みまばらにネウロイの破片が飛び散る中半ば放心状態でホバリングする三人の耳には未だに歌のメロディが聞こえていた。

 

「まだ聞こえる…」

 

エイラが呟いた。

 

「なんで、やっつけたんじゃ…」

 

宮藤も信じられないと言ったように言った。

 

「違う。これはお父様のピアノ」

 

サーニャはそう断言しながら右足だけとなったストライカーユニットを動かし宮藤から離れて上昇する。

 

「そうか、ラジオだ!届いてるんだよ!この空のどこかから!すごいよ、奇跡みたい!」

 

「いや、そうでも無いかも。」

 

「え?」

 

「今日はサーニャの誕生日だったんだ。正確には昨日かな」

 

「え?じゃあ私と一緒?」

 

宮藤が驚いてエイラを見た。

 

「サーニャのことが大好きな人だったら誕生日を祝うなんて当たり前だろ?

この世界のどこかにそんな人がいるならこんなことだって起こるんだ。奇跡じゃ無い」

 

どこか得意げにエイラが言った。

 

「エイラさんって優しいね」

 

「そんなんじゃねぇよ。バカ」

 

「バカって…」

 

「第一これだって…、いややっぱりなんでも無い」

 

二人が話している間もサーニャは空高く昇っていく。

 

「お父様、お母様、サーニャはここにいます…ここにいます…」

 

届かないと分かっていてもサーニャはそう呟いた。

 

「お誕生日おめでとう、サーニャちゃん」

 

「あなたもでしょう?」

 

「え?」

 

「お誕生日おめでとう。芳佳ちゃん」

 

「おめでとな」

 

サーニャに続いてエイラもそう言った。

 

「ありがとう」




505部隊以降って創設時期がいまいち特定しづらいくて少し困ってます。どこかに正確な時期を書いた資料とか無いでしょうか。
一応ノーブルウィッチーズは持ってますけど正確な日時があまりなくて結構難しい。特に本編との時系列がどうなっているのかいまいちわからないからもう一回読み直す必要がありそう。
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