当日の30分前に本文完成とかいつぶりだろうか?
日が沈み始め辺りが暗くなり始めた頃、宮藤を確保した一行は基地へと辿りついた。
「あれ?誰がいるよ」
初めに気付いたのはルッキーニだった。普段この基地では見ない軍服を着た兵士達が滑走路に立っていた。
「あれは…マロニー大将とエイラさんね」
その中央に他の兵士とは違う軍服を着た二人の人物がいることに気が付いたミーナ中佐が言った。
「ご苦労だったバルクホルン大尉。無事連れて帰れたみたいだな」
着陸したバルクホルンに対してエイラがそう声をかけた。
「宮藤の処分については扶桑海軍に一任することになった。同時に私、エイラ・イルマタル・ユーティライネン少佐を除いて全員に転属命令がでた。
明日の朝8:00までに荷物をまとめてこの基地を出るように」
そう淡々とエイラが言った。
「バカな。そんな事をしたら501の戦力がなくなるじゃないか。一体どうやってこのブリタニアを守るつもりだ」
「その事なら心配には及ばん。ブリタニアは私直属の第一特殊強襲隊が守る」
そういうマロニー大将の言葉に呼応するようにしてさっきの銀色の飛行体が降りてきた。
「それは…」
「紹介しよう。ウィッチに変わる新しい対ネウロイ用兵器、ウォーロックだ。これさえあればウィッチ隊など必要なくなる」
そう言って不敵な笑みを浮かべた。
「私、見ました!エイラさんが人型のネウロイにナイフを振り下ろしてて…それで実験室みたいなところでコアをそれに入れて…」
「何を言っているんだ!?」
「でも私見たんです!」
「宮藤、お前が何を見たか知らないが証拠の無い事をこの場で話してもそれはただの妄言にしかならないぞ」
助け舟を出すかのようにエイラが言った。
「そして閣下、説明は正確にするべきです。この基地でテストをして成功すればの話でしょう。なんのために私だけが501を離れずにいると思っているのですか」
マロニー大将に鋭い視線を送って咎めた。
「ウォーロックに失敗などあり得んよ。君はゆっくり特等席で見物しているといい」
そう言ってマロニー大将が不敵な笑みを浮かべた。
「一つ質問、よろしいですか?」
エイラとマロニー大将の会話が終わったのを見計らってミーナ中佐が口を開いた。
「あなた達は人型ネウロイの危険性を知っていた。その上で私たちに知らせなかった理由はなんですか?」
「なんの話だ?人型ネウロイの危険性など知らんが」
「なら何故エイラさんはスオムス義勇独立中隊が出会った人型ウィッチの報告書、それもスオムス語ではなく英語の報告書なんて持っていたのですか?」
それを聞いた瞬間マロニー大将はエイラに視線を向けて尋ねた。
「話したのか?」
「そんなわけないでしょう。あれが表に出ることの危険性はわたしだってよくわかっています。
ミーナ中佐、わたしの執務室のものを勝手に見たのか?」
「申し訳ない事をしたと思っているわ」
かけらもそう思っていなさそうな声音で言った。
「けど人型ネウロイがウィッチを洗脳して操るなんて重要な事を隠していたことに比べたら些細なことじゃないかしら?」
「そうでもない。悪いがそれを知った以上原隊に返す事はできないな」
そう言ったエイラの手には、いつの間にか拳銃が握られていた。
「ミーナ中佐、貴女のその探究心を悪いとは言わない。だけどそれで得た情報を正しく使えないのならばその身を滅ぼすことになるぞ」
「私を殺すつもり?それなら残念だったわね。もうこの情報は私の仲間に伝えてあるわ」
勿論これははったりだった。この事実を知ってすぐに宮藤の脱走があったから誰かに伝える時間は全くなかったがそれを知らないエイラにはこれは効果的だった。
「ミーナ中佐、貴女はもっと賢い人だと思っていたんだけどな。
その情報がどれほどわたし達にとって不都合か説明しなくてもわかるだろ?大人しく誰に伝えたのか教えるんだ」
苦々しげな顔をしてそう言った。
「上層部の保身の為の手助けなんかしないわ。全ウィッチに伝えてこの脅威を共有させてもらいます」
ミーナ中佐がそう言った瞬間キョトンとした表情を浮かべた。
「一体人型ネウロイを隠す事の何が上層部の保身に繋がるんだ?」
「どうしてってウィッチがネウロイの手に渡る上最悪スパイとして使われるような可能性さえあるネウロイの存在を隠していたのよ?
当然隠していた上層部の責任問題になるでしょう?」
「どうやらわたしは中佐のことを過大評価していたみたいだな」
「…どう言うこと?」
そう尋ねながらもミーナ中佐は言いようのない不安に襲われていた。
上層部に対して切り札になると思っていたがエイラの様子を見る限り自分は何か大きな勘違いをしているのではないかと思わざるを得なかった。
「少佐、そう簡単にその結論に辿り着くウィッチは戦争を俯瞰的に見ることができてかつ一般兵の感情を正確に理解できるウィッチだけだ。ヴィルケ中佐が優秀なウィッチ隊指揮官なのは私も認めるがだからと言って彼女が軍人として優秀とは限らないだろう。もう少し噛み砕いて説明した方がいい」
珍しくマロニー大将がミーナ中佐を褒めるような言葉でフォローしたがそれはどこか見下したような口調だった。
「…たしかに中佐の言う通り上層部の人間何人かの首が飛ぶだろう、けど問題はそんなことじゃない。第一わたしだって上層部の保身に協力する趣味はない」
「ならどうして…」
「これが公になると最悪全てのウィッチ隊が解散することになるからだ」
「そんな事をしてどうやってネウロイと戦うつもり?」
「多分通常兵器でじゃないか?それかウィッチの魔法力を利用した兵器とか」
どこか投げやりな態度でエイラは答えた。
「そんなので守れるわけないでしょ!」
「けどウィッチが敵に回るよりは幾分かマシだろう」
その言葉をミーナ中佐はすぐに理解できなかった。しかしウィッチの指揮官としては優秀な部類に入る彼女がそれを理解するのにそう時間は掛からなかった。
「…洗脳されたウィッチが味方に攻撃を加えると言うの?」
「可能性は捨て切れないな」
エイラは問いかけに対して断言はしなかった。
「そうでしょうね。それなら人型ネウロイ自体の目撃例は少ないのだからリスクとしては許容できるはずだわ。上層部もそう思ったからその事実を知っていてなお使い続けていたのでしょう?」
「たしかに君の言う通り私達はそう考えた。だがそれはあくまで私達上層部の考えでしかないのだよ」
ミーナ中佐の問いかけにマロニー大将が答えた。
「どう言うことですか?」
「兵士まではそうとは限らないと言うことだ。
考えてもみろ。今まで味方だったウィッチが突然自分に対して銃を向けてくるかもしれないんだぞ、そんな恐怖を抱えながら一緒に戦うことなんてできるわけないだろ?」
「けど私達ウィッチしかネウロイに対するまともな対抗戦力はないのよ?それは我慢して一緒に戦うしかないわ」
「詭弁だな。もし一度でも銃を向けられたら嫌でも警戒せざるを得なくなる。いくら理屈では分かっていても感情はそう簡単に制御できない。きっとどこかで爆発するだろうな。
第一洗脳できるのが人型ネウロイだけだと言う保証がどこにある。ネウロイと戦って帰ってくるたび仲間から疑いの目を向けられる事に中佐は耐えられるのか?」
「それは…そうかもしれないわね。けどウィッチは世界中でネウロイと戦っているんだからいつか洗脳されて味方を撃ってバレるわよ」
「だから秘匿しているんだ。もしも味方を撃つウィッチが現れてもそれは一人のウィッチの叛逆ですむ。兵士に犠牲は出るかもしれないが最悪、洗脳されたウィッチ一人をどうにかすれば事はすむ。
だから大人しく誰に話したかわたしに言うんだ。公表する事はウィッチのためにならない、むしろウィッチの首を絞めることになるぞ」
そう言ってミーナ中佐に対してエイラは誰に伝えたのか教えるように迫った。しかしそこに思わな助け舟が入った。
「いいじゃないか少佐。どうせこのウォーロックが有ればウィッチなんぞ必要なくなるのだからな」
「閣下、まだ成功したわけではないでしょう」
「少佐は心配性だな。実験場での試験結果は良好だった。あとはネウロイに対して優位を保てるのかどうかが問題だったのだよ。
だがそれもさっきの人型ネウロイで証明された。人類の勝利はすぐそこにまで迫っているのだよ」
「しかし…」
「それに監視させたい者からの報告によると彼女が誰かに連絡を取ったようなそぶりを見せなかったようだ。違うかねヴィルケ中佐」
「…そうですね。たしかに誰かに伝える時間はありませんでした」
悔しそうにミーナ中佐は答えた。
「では今すぐ荷物をまとめたまえ。時間があるとはいえ明日の朝にはこの基地を離れなければならないのだからな」
勝ち誇ったようにマロニー大将がそう言った。
アニメだと出なかったけどサイレントウィッチーズとかの人型ネウロイの洗脳みたいなやつ、あれって一番の脅威は全体に周知される事によってウィッチが敵かもしれないと疑わせる事ですよね。そうなると連携は乱れるしウィッチによっては精神的に病む者も出そうだし兵士の方も場合によってはウィッチを害そうとするかもしれないですし。
そう考えるといらん子中隊をカウハバに下げたのってメチャクチャ英断だったんだなと思いました。