今回はミーナ中佐の一人称視点で話が進行します。
ガリアにあるネウロイの巣が消滅した翌日、第501統合戦闘航空団は正式に解散となった。解散を惜しむ声は多かったが長きにわたりブリタニアの安全を守ってきた彼女達に休息をと言われるとそれを拒否する者は少なかった。
もっとも、これは表向きの理由であり実際は左遷同然の扱いだった。ブリタニアを守ったとはいえその過程に於いていくつかの軍規違反があった事、上層部にとって都合の悪い事実も多く知られていたことからほとぼりが覚めるまで関係者の多くは解散を理由に閑職に回されら事になった。
ミーナ達も新設された第一特殊作戦航空団へと原隊から所属を移していた。
「本当にマロニー大将は逃亡しようとしていたと思うか?」
第一特殊作戦航空団の執務室でノルマンディー地方への上陸が成功したと言うことをトゥルーデとエーリカに伝えた直後、唐突にトゥルーデが尋ねてきた事に私は即答できなかった。
「わからないわ。怪しいところがあるのは事実だけど……」
怪しいと言えば怪しいけど証拠にもならないような根拠しかなないしエイラさんがそんな事をするとも思えない。何より理由がない。
「確証はない……か。ハルトマンはどうだ?」
トゥルーデは怪しんでいるみたいね。
「知らなーい。エイラはああ言っていたんだしそれが事実なんじゃないの」
トゥルーデと違ってエーリカはあまり興味がなさそうね。エイラさんとは仲が良かったように思うけど気にならないのかしら。
「そうか……」
そう言ったきり重たい空気が執務室に漂いみな口を閉ざしてしまった。
「ユニットの調子見てこよっと」
「…私も武器の手入れをしてくる」
唐突にエーリカがそう言うと執務室から出て行って少ししてトゥルーデも執務室から出て行った。
暫くの間書類をめくる音だけが部屋に響いていたけどどうしてもさっきの事が気になってだんだんスピードが落ちてきたところで私はあの日の出来事の報告書を取り出しそれを読みながらあの日の事を思い返す事にした。
基地に帰還した私達は部隊を沈没した赤城乗り組員救助班とマロニー大将に対応する班の二つに分けて作業を開始した。
救助といっても船もなくストライカーユニットの燃料も魔法力も無かったから近隣の基地に対して沈没した赤城の乗組員の救助の依頼と泳ぎついた人たちに対して毛布とかを渡すだけしかできなかったわ。これはトゥルーデを隊長として、シャーリーさん、ハルトマン、サーニャさん、ルッキーニさん、リーネさん、宮藤さん達がこの活動を行う事になったわ。
残ったメンバーは拘束したマロニー大将達の身柄を引き渡すために近隣の基地に対して憲兵隊の派遣要請や暫くの間勾留するための場所に移動させたりしていた。
「どうしてブリタニアの憲兵隊じゃなくカールスラントの憲兵隊に連絡したんだ?」
マロニー大将達を軟禁先の執務室に案内し終わったエイラさんが尋ねてきたのは近隣のカールスラント軍の基地に憲兵隊を派遣するよう要請し終わってしばらく経ってからだった。
「ウォーロックのことを隠蔽されるからよ」
エイラさんならそれくらい分かりそうなものだけどどうしてそんな事を聞くのかしら。
「されるだろうな。けどそれのどこが悪いっていうんだ」
「ええっ!?」
横で近隣の基地に救助活動を要請していたハルトマンが驚いた声を上げた。
「たとえ何処の憲兵隊が来ようと今回の件は連合軍の足並みを乱さないために赤城が沈んだという事とガリアの巣が解放されたという事実だけが発表されると思うぞ。だからウォーロック隠蔽阻止のためにカールスラントの憲兵隊を呼んでも意味がないさ。
むしろ中佐の行為は各国のウォーロック技術争奪戦に拍車をかける事になるぞ」
たしかに今この状況でウォーロックの暴走を公表する理由はない。ウォーロックが暴走して赤城を沈めたとはいえガリアの巣は破壊されている。エイラさんの言う通り都合の悪い部分を上層部は隠そうとするだろう。
けどウォーロックの技術を各国が欲しがるとはどう言う事なのかしら。
「ネウロイの技術を使っているのよ?そんなの欲しがるわけないじゃない」
たしかにウォーロックは強かったけど暴走した時があまりにも危険すぎる。私たちは全員でやっと止められるような代物を使いたがる国があるとは思えなかった。
「そうかな。たった一機で巣にいるネウロイ全てを撃破できるんだぞ。暴走した事に目を瞑ればこれほどまでに強力なものはないだろ。第一ウィッチだってネウロイに操られる可能性があるんだから危険性自体はさほど変わらないさ」
「制御できると思うの?」
言われてみればたしかに一理ある。けどそれは暴走しなければの話だし今のところネウロイに操られたウィッチなんて私は見た事がなかったから危険性としてはウォーロックの方が上なのではないかしら。
「さぁな。それは科学者連中が考える事であってわたしの考える事じゃないさ」
そう言ってエイラさんは肩をすくめた、、
「そんなことよりハルトマンは連絡が終わったなら早く救助の手伝いに行ってこいよ」
さっきから手を止めてこちらの話を聞き耳を立てていたエーリカをエイラさんが咎めた。
「それもそうだね。いってきまーす」
小走りに部屋を出て行ったエーリカを見送ってから私は改めて口を開いた。
「貴女の主張は分かったわ。けどカールスラントの憲兵隊が来るのはもう避けられないわ」
「それはわたしが上手くまとめるよ。一応ブリタニア側にはわたしから連絡しておくけど多分カールスラントの方が早いな」
マロニー大将の不正の件にしか頭がいっていなくてブリタニア軍に連絡しなかったのは失敗だったようね。
本国がウォーロックを欲しがるとは思えないけど本国がウォーロック欲しさに先行したなどと言う要らぬ誤解を受けるのは本意ではない。マロニー大将の罪を糾弾したいのはやまやまだけどそれで本土奪還が遅れるのなら私は目を瞑らざるを得ない。
「お願いね。じゃあみんなの手伝いにいきましょうか」
「いや、わたしはマロニー大将を見張っとくよ。ないとは思うけど逃げられでもしたら面倒だからな」
「それもそうね。どんな処分が下るにせよ閣下にはキチンと説明責任を果たしてもらう必要があるものね」
逃げたところでブリタニアからの移動は困難だから殆ど意味はないけど用心に越したことはないわね。
「じゃあまた後でね」
異変が起きるまで、そう時間は掛からなかった。
エイラさんと別れて救助活動に参加していると突然基地の方から銃声が響いた。
「ミーナ、今のは……」
「ええ、銃声ね」
今基地の中にいるのはエイラさんとマロニー大将とその部下。そして医薬品とかを取りに行っているエーリカ、サーニャさん。そのマロニー大将の部下を除いた全員が拳銃を持っているから故障して暴発した可能性もある。だから誰かが撃たれたと簡単に断じる事はできないけど……
「誰が撃たれたんでしょうか?」
「ええ!?」
「落ち着けまだそうと決まったわけじゃない」
不安がるリーネさんと宮藤さんをシャーリーさんが宥めた。
「様子を見に行ってくる」
銃声に不安がる他のメンバー達のためにトゥルーデが基地に向かおうとした時、二発目の銃声が基地から響いた。
「ミーナ!」
「ええ。シャーリーさん、ここをお願い!行くわよトゥルーデ!」
一発なら暴発とかの可能性もあるけど二発目となるともう誰かが撃たれたとしか考えられない。進入者か、あるいは四人の内誰かか、もっともその可能性が高いのは執務室にいるはずの二人だと考えて私とトゥルーデは執務室への道を急いだ。
執務室に入った私達の目に飛び込んできたのはエイラさんを治療するサーニャさんと胸と首から血を流して仰向けに倒れたマロニー大将の姿だった。
「エイラさん大丈夫!?」
「この通りだよ中佐」
無事を示すように手を振ってきた。どうやら命に別状はないみたいね。
「よかった無事なのね。マロニー大将は…」
「死んでるよ」
エイラさんに代わってハルトマンが答えてくれた。
「一体何があったの?」
「マロニー大将がエイラを撃って逃走しようとしたみたいだよ」
「隙をついて返り討ちにしたけどな」
エイラさんの机には発砲したと思われる血のついたウェブリー・リボルバーが置いてあった。
「エイラさんが無事なのは良かったけマロニー大将からの証言は得られなくなったわね」
「そうだな。まぁ閣下の持っていた資料で真相の究明は十分できると思うぞ」
「そうね」
エイラさんの治療が終わってさらに詳しく事情を聞こうとしたところでブリタニアの憲兵隊が到着して聞きそびれてしまった。その後約5分遅れてカールスラント軍も到着したのだけど当事者のマロニー大将が逃亡を謀った上射殺されたから無関係の国の軍隊が関わる事は許さないと言ってカールスラント軍が捜査に加わることはできなかった。
ただその捜査もおざなりなものでエイラさんの証言をそのまま採用しただけで捜査らしいものは一切しなかった事に私は一抹の疑念を感じた。
隙をついてマロニー大将を射殺したと言うが義足の、もっと言うと利き手側の肩を負傷したエイラさんがマロニー大将からそう簡単に拳銃を奪えるのか、そもそも射った後そのまま逃走すれば良かったのにどうして奪われるほどの隙ができる時間、執務室に留まったのかしら。
疑問は尽きないけどエイラさんはこの件に関して最低限以上のことを喋ろうとしないしもう一人の当時者は既に死んでいる。真相を知る事はおそらくできそうにないし疑問は尽きないけど考えたところで結論が出る事はないしもう一人の当事者のエイラさんが話そうとしない以上なにがあったのかわかるはずもないわね
マロニー大将死亡の話って本当は25話くらいにできるかな〜って思って書いたたんですよね(原作前12話原作12話くらいの内訳)。
それが倍以上の話数がかかってやっと書けました。
明日はハルトマン視点です。