ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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前回の後書き消したつもりだった余談が消しきれてなかったので続き追加しました。


会議

エイラの懸念が現実になるまで長い時間はかからなかった。

九月の終わり頃にペトロザヴォーツクが一時的にネウロイの手に落ちたのを皮切りに、ムルマンスクからの補給線に対する攻撃は日に日に強さを増して行っていた。

その防衛のために502部隊以外のペテルブルク軍集団隷下の航空ウィッチ隊が防衛のために出撃していたがそれも12月の始めには消耗が激しく限界が見え12月3日、その一部がネウロイにより完全に破壊された。

 

「幸いなことに破壊された鉄道はフレイアー作戦で使う予定の地点から大きく外れているがこのままでは作戦の要の一つである502部隊への補給が完全に断たれる事になる。知っての通り他の基地と違いペテルブルクへの補給はその殆どがこの鉄道を使って行われている。

ヘルシンキからの補給を増やせばペテルブルクに集積されている物資と合わせて大きな作戦を行わなければ半年ほどは持つだろうがそれでも補給が安定しないという事は兵士の士気に関わる。今回はその改善策を打ち出すために参謀諸君の知恵を借りたい」

 

主席参謀が現状の説明を行なった後、マンシュタイン元帥が言った。

 

「大型輸送機を使って輸送するのはどうでしょうか?」

 

オラーシャ人の作戦参謀の一人が言った。

 

「できないわけではないがいつまで続ける気だ。燃料の備蓄的に一ヶ月程度ならば出来なくはないが燃料が枯渇してフレイアー作戦に影響が出かねんぞ」

 

カールスラント人の後方参謀がその意見に難色を示した。

 

「ならば北方方面軍本隊に要請して燃料を送らせればいいでしょう」

 

「本隊は既にペテルブルク軍集団に燃料備蓄の殆どを差し出している。そんな余裕はないだろうさ」

 

これを言ったのはスオムス人の後方参謀だ。

 

「ならば連合軍合同参謀本部に対して対グリゴーリ戦の為にさらに物資を送るよう要請すればいいんじゃないか?」

 

「残念だが合同参謀本部のお偉方はあまりこちらの方面を重視していないようでな、断られたよ」

 

主席参謀が答えた。

 

「ならば列車を増やして輸送量を増やせばいいだろう」

 

「簡単にいうな。今でさえかなりギリギリなのにこれ以上増やしたら混線して収集がつかなくなるぞ」

 

「ならば鉄道を敷けばいいだろう」

 

「フレイアー作戦に予算も資材も投入していてそんな余裕はない」

 

「民間から車を徴収して大規模輸送を行うのはどうだ」

 

「その燃料はどこから用意するんだ!第一雪でまともに走る事ができん!」

 

「なら輸送ソリだ!」

 

「数が少ない上に輸送量も少ない。焼け石に水だろうな」

 

「ないよりマシだろう」

 

後方参謀以外の参謀が案を出しそれを後方参謀が補給面から却下する図がしばらく続いた。

 

「ユーティライネン少佐は何か案はあるか?」

 

一通りの案が出たと見たマンシュタイン元帥がエイラに声をかけた。

 

「補給線の強化ができないのならば従来の補給線を奪還するしかないでしょう」

 

「だがそのための戦力はペテルブルク軍集団にはないぞ」

 

「まだスオムスには精鋭の第24戦隊を筆頭に三個戦隊が残っています。バルト海を渡ってくるネウロイの為に一個戦隊は置いとくとしても二個戦隊はこちらに回せます。それと我々が保有しているウィッチを合わせれば奪還と維持は可能なはずです」

 

「可能だろうがそれには今現在我々が保有するウィッチ隊の損害の回復を待たねばならない」

 

「同意します。ですからバルトランドに働きかけましょう。あの国がウィッチを出してくれれば我々の残存部隊とスオムスに残した部隊とで奪還は叶うでしょう」

 

エイラが話し終わった時、会議室にはなんとも言えない雰囲気が漂っていた。

 

「…たしかにバルトランドの戦力が有れば可能だろう。だがあの国は今までも物資と金は出すが軍隊は一切出さなかった国だ。とてもではないがウィッチを派遣するとは思えんな」

 

マンシュタイン元帥が言った。

 

「このままグリゴーリを放置すればスオムスが落ちるかもしれません。そうなれば対岸の火事とは言えませんから流石に送ってくれると思いますが?」

 

「あの国は平和ボケしすぎている、無理だろう。何よりスオムスの不敗神話への信仰が高すぎる」

 

「スオムスの不敗神話ですか?大戦初期なんかはスオムスはかなり負けていますが…」

 

エイラはスオムス不敗神話なんか聞いたこともなかった。

 

「スオムスは開戦以来、他の国と違って領土を大幅に失った事はないだろう。それを指して不敗と言っている。一部の国、特にバルトランドはそれに対する信頼が高い。

スオムスが約6年にも渡ってネウロイを食い止めていたこと、ネウロイが来るスカゲラク海峡に面した沿岸部やシェラン島、ゴッドランドなどはたびたび攻撃を受けているがそれらはとっくの昔に疎開していて軍関係者以外はいないこと。これらの理由から民間や向こうの政治家連中にとっては対岸の火事もいいところだ。きっと今回も大丈夫だろうと思って物資と金を送る以外何もしないと思うが」

 

「三つ目のネウロイの巣ですよ。流石に援軍としてウィッチくらい送ってくれてもいいと思いますが…」

 

「それが分からぬくらい平和ボケしているのだよ。おそらくあの国は三つ目の巣ができたと聞いても自国の輸出が増えて儲かるくらいにしか考えていないだろう」

 

「流石にそれはないんじゃないですか?」

 

そう言ってエイラは同意を求めるように周りの参謀を見渡したが皆マンシュタイン元帥と同意見なのかサッと目を逸らした。

 

「まさか…本当にそんな事があり得るんですか?」

 

「残念な事だがな」

 

補給線の奪還にバルトランドの力を借りられないのならば別の方法を考える必要があった。

 

「…ならバルトランドを脅しましょう」

 

「脅す?随分と物騒な話だな。バルトランドは仮にも味方だぞ」

 

「分かっています。直接的に軍事力などを用いて脅すのではなく危機感を煽る事で脅すんです」

 

「というと?」

 

「オーランド諸島とヘルシンキからスオムスは全てのウィッチ隊を引き上げると通告するんですよ。そうすれば作戦そのものには参加してくれないかもしれませんがヘルシンキとオーランド諸島防衛のための戦力を貸し出してくれるかもしれません。そうすればスオムス軍の残存部隊を全て含める事ができ多少マシな状況で作戦を展開できます」

 

「それならオーランド諸島からの撤退で良いのではないか?」

 

スオムス人の参謀が首都ヘルシンキまで無防備な状態にすることに難色を示した。

 

「いかにこちらが危機的状況であるかを知らせる為にもスオムス保有のウィッチ隊は全て補給線奪還に投入する動きを見せるべきです。でなければ脅しになりません」

 

「一考には値するがそれにはスオムス政府との協議が必要だな」

 

「では別の手段を考えますか?」

 

「そうだな。当面は輸送ソリで物資を送りつつユーティライネン少佐の案を進めよう」

 

「輸送ソリの数も十分とは言えませんが…」

 

後方参謀が言った。

 

「ペテルブルクは502部隊が行動できればいい。それくらいの量ならば輸送ソリで十分賄えるだろう」

 

「可能ですが他の兵士達は宜しいのですか?」

 

「極論を言えばウィッチ隊が活動できれば輸送が細くてもペテルブルクの防衛は可能であり士気を保つ事も可能なはずだ。補給は大きな問題ではあるがフレイアー作戦が成功すれば全て解決する。言ってしまえば補給の改善は不測の事態に備えての物であるから早急に手を打たなければならない訳ではない。よってこの方法をもって502部隊への補給だけは十全となるようにする」

 

防衛の大半をウィッチ隊が担当している都合上ペテルブルクにいる非ウィッチの兵士の士気はウィッチ隊ほど優先する必要はないためマンシュタイン元帥はそう結論づけて会議は終了した。




ストライクウィッチーズの世界って相手がネウロイというあまり高い知能を持っていなさそうな敵だからなんとなく補給軽視が酷そうな気がします。
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