「ふわぁ〜」
サトゥルヌス祭の翌日、大きく伸びをしながら体を起こしたエイラはしばらくそのままの体勢でぼんやりとした後呟いた。
「頭が痛い」
つまるところ二日酔いである。覚えている最後の記憶は、可愛らしい寝巻きとナイトキャップを被ったポクルイーシキンがあまりの煩さに目を覚ましてアウロラ、ラル、ロスマン、エイラ達4人全員を執務室に正座させた状態で小一時間説教をされたのは覚えているがそれからどうやって部屋に戻ったのか全く記憶に残っていなかった。
「うん?うわっ!サーニャ!?」
まさか部屋を間違えたのかと思い思わず部屋を見回したがエイラがこの基地に来るにあたり持ってきていた背嚢も置いてあり間違いなくエイラの部屋で合っていた。
「また部屋間違えたのかぁ?」
やや起床時間には早いが陽は登りはじめ早起きな人間なら起きていてもいい時間帯であり起こすべきかと考えたが、気持ちよさそうに寝ているサーニャの顔を見るとため息をついて言った。
「たく〜。今日だけだかんな。ほんとに今度こそ絶対今日だけだかんな」
眠っているサーニャが聞いているはずもないがエイラはサーニャに向かってそう言うとじっとその顔を見つめた。
次の瞬間、突然ドアが開いたと思うとツインテールの少女、ガリア空軍少尉ジョーゼット・ルマールがノックもなしに入ってきた。
「サトゥルヌス祭の次は年末大掃除!年越しまであと一週間、基地中ピカピカにしちゃうんだから!」
「な、なんだ!?」
「はぇ?」
その声の大きさに目を覚ましたサーニャが眠たそうに声を上げながら状態を起こした。
「さ!着替えが済んだら出てってください!」
そう言って着替え終わったエイラとサーニャの背を押して部屋から追い出した。
「な、なんだ?」
「眠い」
※
「502にも変な奴はいるんだなぁ」
「ジョゼさんって普段は静かな人なんだけど年末の大掃除だけはやる気が出過ぎて人が変わっちゃうんだ」
「勘弁してくれよぉ」
二日酔いの所に無理やり叩き起こされるのは流石にしんどかった。
「イッルもサーニャさんも休暇なんでしょ。年明けまでこっちにいるの?」
「休暇じゃないぞ」
「あれ、そうなの?けど隊長が休暇みたいなものだから普段の仕事の疲れが取れるようもてなすようにって今朝のミーティングで言ってたよ」
「もてなされるはずなのに部屋から追い出されたのか。もしかしてこれが502流のもてなしかたなのか?」
到底もてなす気があるとは思えなかった。
「それはほら、多分綺麗に掃除された部屋で寝てもらいたかったんじゃないかな」
それならエイラ達が起きてから掃除をすればいいだけでニパ自身その言い訳が苦しいことがわかっているのか苦笑いを浮かべていた。
「あ、サーニャ」
エイラの視線の先には窓の外を眺めているサーニャがいた。
「サーニャ。何見てんだ?」
「街を見てたの」
「サーニャさんペテルブルクに来たことあるんですか?」
「いいえ。大きいけど寂しい街」
「みんな疎開して街に民間人がいないからね」
残っているのは防衛のために配備されている軍の部隊のみ。それさえ基本的には市内ではなく街の外に陣地を構築していて市内には司令部施設と物資の集積所がある程度で平時とは比べ物にならないくらい静かだった。
「でもいつか、みんな戻って来れるよね」
「そのためにわたしたちは戦ってるんだ。きっと戻って来れるさ」
サーニャの初陣はブリタニアであり疎開が終わった街に駐屯して戦うという経験は恐らくなくペテルブルクが初めてだ。その考えに思い至ったエイラは一つの提案をすることにした。
「そうだ、今からちょっと街に行ってみよっか。人はほとんど居ないけどさ、久しぶりにオラーシャの街を散歩しよう」
「え、でもエイラ仕事はいいの?」
「まだまだ時間はあるし大丈夫。それにどうせ今日は二日酔いでまともに仕事できないだろうからな」
「ユーティライネン少佐、リトヴャク中尉ここにいましたか」
「すまんが少し時間をもらえるか」
エイラ達と反対側から歩いてきたラル少佐とロスマンの二人が声をかけた。
「はい、なんでしょうか」
「スオムス方面の戦況について知りたくてな」
「ああ、一言で言うなら例年通りだな。本当ならラドガ湖が凍るのが少し遅かったから少し余裕があるはずだったんだけどグリゴーリの影響でいつも通りギリギリの戦いをすることになってるな」
「つまりこちらに援軍などをよこす余裕はないと言うことか」
人手も物資も少ないスオムスから援軍のあてなど元々あるはずはなかったがそれでも一縷の望みに賭けて尋ねたがラル少佐達の予想通りの返答が返ってきた。
「いや、それは少し違うな。余裕がないのは確かだけどガリアが解放された影響とスオムス自体の生産力の上昇で物資についてはグリゴーリとラドガ湖両方面に対して対応できるまでにはなっている」
ガリアの巣破壊前まではガリアに対する主な攻勢拠点はブリタニアだったがネウロイに占領されていなかったガリア南部にも防衛のための部隊がいた関係である程度の物資が集積されていた。ガリア北部の解放により集積されていた物資が北部と共有することが可能となり補給が大幅に見直された結果多少の余裕ができその一部がスオムスに流れてきていた。
「つまりグリゴーリを破壊すれば余裕ができると言うことか」
「問題は人手がちょっと足りないってことなんだよな。特にウィッチの不足は深刻だ。今回鉄道がネウロイに奪われたのもそれが原因だしな」
「奪還は難しいのか?」
「北方方面軍の保有する502以外のウィッチ全てとスオムスに残っている予備戦力、それと防衛のための戦力を全て投入すれば確実に取り返した上で数ヶ月の間維持が可能だな」
「スオムス軍ウィッチは精鋭揃いだろう。そこまでの数を投入する必要があるのか?」
「鉄道があまりにもグリゴーリに近すぎるんだ。報告によると小型ネウロイだけで500前後、中型が20〜30、大型が1。数だけなら防衛部隊を投入しなくてもなんとかなるかもしれないけど仮に投入しなかったとすれば不測の事態に対応できない。例えばラドガ湖方面からネウロイがくればそれに対処する必要があるしグリゴーリから援軍がくればこっちも増援を出す必要があるからな」
「ままならないな」
「あと一個戦隊もあれば余裕を持てるんだけどなぁ」
「どこからかうば、融通出来ないのか?」
一瞬出掛けた本音にエイラとロスマンの視線が鋭くなったが深く追求することはなかった。
「ガリアに注力してるから無理だろうな。一人二人ならなんとかなるかもしれないけど流石にその程度じゃ意味がないし無駄に合同参謀本部から睨まれるだけだな」
「イッルとサーニャさんが参加しても無理なの?イッルなら一個戦隊くらいの戦力はあるよね」
「あのな、いくらわたしでも出来ないことはあるんだよ。第一わたし達まで行ったらスオムスを守るウィッチがいなくなるだろ」
「あ、そっか」
もっとも、エイラ達が行ったところで小型ネウロイによるゲリラ戦に徹された場合は個々人の質よりも数がものを言う戦いとなるため実力を発揮することが出来なくなると予想された。
「わたし達が行くのは…」
「部隊の半数までだな。それ以上はオラーシャ方面のネウロイを押し留めきれない可能性がある」
ニパの言葉を途中で遮ってラル少佐が言った。
「ですよね」
「スオムス自体の防衛はギリギリ出来てるけど状態としては不健全極まりないな。ペテルブルク方面の補給が途絶えがちと言う点で陥落一歩手前って感じだしスオムスも少しでもネウロイの攻勢が厳しくなれば陥落は免れないだろうな」
兵器工廠の完成などで物資に余裕ができたはずなのにスオムスの状態は依然として変化のないことに思わずため息が出るのだった。
ブレイブ二期とかしないんですかね。
ストライクウィッチーズ三期の感じからしてアンナ、ヴァシリーの片方ないしは両方を破壊済みっぽいですから結構面白そうなストーリーになりそうなのに。それにロスマン先生がどうなったかとか気になることが色々ありすぎてすごくやって欲しいです。