ダイヤのエースが飛ぶ理由   作:鉄玉

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章毎の話数が当初の想定の倍の話数になっている事に最近やっと気付きました。


ペテルブルク大戦略 中編

「昨日は結局話し込んじゃってペテルブルク観光ができなかったけど今日こそは」

 

「やあ少佐、ちょうどよかった。サーニャちゃんの部屋を教えて欲しいんだけど」

 

曲がり角を曲がってきた薔薇の花束を持ったクルピンスキーにそう声をかけられた。

 

「さ、サーニャになんかようか」

 

「可愛い女の子をデートに誘うのに理由があるのかい」

 

「サーニャに妙な色目使うな!」

 

「ならエイラ君なら良いのかい?」

 

左手をエイラの顎に添えてそう言った。

 

「お、おおお前見境ないのかよ!」

 

エイラの質問にクルピンスキーは小さく笑みを浮かべると堂々と言った。

 

「ないね!」

 

「逃げろ〜!サーニャー!!危ない奴がいるぞ!」

 

「はっはっはっは!危ない恋ほど燃えるものだよ!サーニャちゃーん!!」

 

サーニャの部屋をクルピンスキーが知らない以上、執務室あたりに逃げ込めばクルピンスキーの凶行を止めることが出来た筈だが今のエイラにその余裕はなくそのままサーニャの部屋にクルピンスキーを連れて行ってしまった。

 

「サーニャちゃん!」

 

クルピンスキーが部屋に飛び込もうとするのを腕で押さえつけながら扉を開けると窓際に下着姿で佇むサーニャが目に入ってきた。

 

「エイラ!」

 

突然ノックもなしに入ってきたエイラにサーニャは眉を顰めて怒りをあらわにした。

 

「ち、違うんだこれには訳が!」

 

「これはこれは、まさにオラーシャの新雪の如き汚れのない美しい!」

 

クルピンスキーの言葉に困惑したような表情を浮かべた。

 

「サーニャをそんな目で見んな!」

 

エイラがクルピンスキーの目を手で隠しながら言った。

 

「独り占めなんてずるいよ」

 

「なにしているんですか!」

 

いつのまにかサーニャの部屋の前に来ていたポクルイーシキンが言った。

 

「さ、サーシャちゃん」

 

「なぁこいつどうにかしてくれよ!」

 

エイラが助けを求めた。

 

「隊長からもてなすように言われていたから僕なりにもてなそうとしていただけです」

 

事実を語られるとまずいと思ったのかクルピンスキーが先手を打ってそう言った。

 

「はぁ〜。本当にもう」

 

大きなため息をつくとたたまれていたサーニャのワイシャツを手に取りサーニャに羽織らせた。

 

「ありがとうございます、ポクルイーシキン大尉」

 

「サーシャで構いませんよ。それとも愛称が似ていると呼びづらいですか?」

 

「いえ。じゃあ、わたしのこともサーニャって呼んでください」

 

「ありがとう。でも…ふふ。なんだがサーニャさんは他人とは思えませんね」

 

「わたし達、似てますか?」

 

「そうであれば光栄です」

 

クルピンスキー達と話すのとは違い柔らかい雰囲気で談笑する様子をじっと見ていると突然その矛先がエイラに変わった。

 

「ユーティライネン少佐、お時間はおありですか」

 

サーニャと話していた時とも、クルピンスキー達と話す時とも全く違うオラーシャのブリザードのような冷たい声音で尋ねた。

 

「いや、まぁあると言えばあるけど…」

 

いつも通りではあるのだが、サーニャと話していた時とのあまりのギャップに内心驚きながらもエイラは言った。

 

「ならよかったです。あなたの飛行技術をウチの部隊の者に教示してください」

 

そう言うとエイラの返事も待たずに手首を掴むと半ば引きずるようにして歩き出した。

 

「頑張ってくださいね少佐殿。サーニャちゃんのことは僕に任せて」

 

そう言うクルピンスキーの襟元にポクルイーシキンの手が伸びがっしりと掴むとエイラと同じように引っ張った。

 

「何を他人事みたいに…。さっ、行きますよブレイクウィッチーズ」

 

数十分後、エイラ、ポクルイーシキン、雁渕ひかりの3人はストライカーユニットを履いて空を飛んでいた。

 

「菅野さん達、連れてこなくてよかったんですか?」

 

ひかりが尋ねた。

 

「あの3人は飛行技術の問題じゃないからな。無理に戦闘方法を変えて実力が落ちるくらいなら今のままの方がマシだ」

 

その3人は今地上で整備班からユニットの構造についての講義を受けていた。ユニットについてよく知ることによりユニットの不調を早期に発見することに繋がるとエイラが進言したからだ。

 

「本当はあの3人こそどうにかして欲しいんですけどね」

 

「それならわたしに指導させるより出撃させないようにする方がいいんじゃないか」

 

「そんなことが出来るほどの余裕はありません」

 

「だろうな。なら戦闘の主軸としてではなくサポートに徹するよう使うしかないだろ。それが出来ないほどニパも他二人の実力も低くないだろ」

 

ニパは直接の戦闘はあまり関係ないけどと思いながら言った。

 

「そうですけど性格的に向いているとは言えません」

 

「出来ない訳じゃないんだからそうすべきだろ。さ、そんなことよりひかりの教導だ」

 

結局この日もまたサーニャとペテルブルク観光をすることなく終了することとなった。

 

「さぁ今日こそ一緒に街に行くぞサーニャ」

 

そう言ってサーニャの手を掴んで駆け出すとエイラの固有魔法である未来予知に反応があった。

 

「こっちだ」

 

そう言って身を隠すとラル少佐とポクルイーシキンの二人が廊下を歩いて行った。

 

「リトヴャク中尉はいいな。彼女がいれば夜間哨戒に穴がなくなる」

 

「そうですね。専門外の下原さんが夜間戦闘をこなす必要もなくなりますから一人くらいナイトウィッチが欲しいですね」

 

明らかにサーニャに関係のある事を話しながら歩き去っていった。

 

「よし行ったな。今のうちに」

 

その瞬間再びエイラの未来予知に反応があった。

 

「伏せろサーニャ!」

 

「へ!?」

 

「サーニャちゃんどこかな〜。今日こそもっとお近づきになりたいのに〜」

 

薔薇の花束を持ったクルピンスキーが歩いて行った。

 

「全く、みんなサーニャサーニャと。未来予知による絶対回避がなければ捕まってたぞ」

 

「エイラはさっきから誰と戦っているの?」

 

「安心しろサーニャは私が守る!」

 

「え?う、うん」

 

一体何から守ると言うのかよくわからないままサーニャは頷いた。

 

「エイラ、そんなに街にいきたかったの?」

 

固有魔法を使ってまで障害を避けようとするエイラにサーニャが尋ねた。

 

「ま、まあな」

 

その時曲がり角から下原が現れエイラが驚きの声を上げた。

 

「うわぁ!?」

 

「おでかけですか?」

 

「ああ、ちょっとな」

 

未来予知に反応がなかったことから安心してそう答えた。

 

「そうですか、いってらっしゃい」

 

「ああ」

 

玄関も近くおそらくこれが最後であろう関門を超え安心していたエイラに予想外の出来事が起こった。

 

「もうすぐだぞ、サーニャ!?」

 

突然サーニャの足が止まったのだ。

 

「あぁ〜幸せ〜!!!」

 

エイラが振り返るとそこにはサーニャを思いっきり抱きしめている下原の姿があった。

 

「あ、あの…」

 

「うわぁ!!!何してんだよお前!!!」

 

「ああもうサーニャさん可愛いです、小さいです!私もう我慢出来ません!」

 

サーニャの頭に顔を擦り付けるように動かしその度にサーニャが苦しそうにうめき声をあげている。

 

「こ、こら!サーニャから離れろ!!」

 

「後生です!もう少し、もう少しだけこの小さ可愛さを堪能させてくださ〜い!」

 

「うー、はーなーせー!」

 

必死にサーニャから引き離そうとするが力が強くてびくともしなかった。

それを物陰で見つめる人影が二つ、菅野とロスマンだった。

 

「久しぶりにでたわね、下原さんの病気が」

 

「俺らに続いて501からも犠牲者か」

 

小さくて可愛い人物に目がない下原によりこの二人もまたサーニャと同じ目に合っていた。

 

「普段は物静かで奥ゆかしくて静かな子なんだけど…」

 

「あれ地味に応えるんだよな」

 

結局この日は下原によりサーニャが疲れ切ってしまったためペテルブルク観光をする事なく終わるのだった。




ラル隊長って結構やりたい放題してますけど特にお咎めがないなっていったいなんなんですかね。やっぱり優秀なウィッチは貴重だから一人でも多く確保しておきたいからなんですかね。
だとしたら絶対ラル隊長わかっててやりたい放題している気が…。
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